邂逅輪廻



「んでさ。結局、どーなんの?」
「どうなるんだろうね?」
 質問に質問で返してはいけないとは良く言うけれど、実際に想像がつかないんだからしょうがない。
「商人同士の戦いって、具体的に何をどうするんだろう」
「うーん、相手の店にチンピラを送り込んで暴れさせるとか」
 小規模店ならいざしらず、両名が大商人同士の今回は、そんな小さなことやってられないと思う。
『ホイミ』
 言葉と共に、蓄えた魔力をシスの傷口に流し込んだ。元が魔法使い志望なだけに、どうもこの回復呪文って奴は苦手だけど、アクアさんが大怪我した場合なんかを考えたら、そう好き嫌いも言ってられない。
「しっかし、下手な回復呪文だよねー。傷口塞がるの、普通の三倍くらい掛かってるよ」
 魔法の才能が全く無いシスに言われたくないやい。
「回復呪文の秘訣は、大いなる愛ですの。アレクさんも、自らの内にある愛を自覚すれば、きっとうまくなりますわよ」
 アクアさんの底が知れないところは、これが本気なのか冗談なのか、判別が付かない点だ。一年以上一緒に旅をしてるけど、この人を理解しようとすればするほど、深さを思い知らされて、体感的には遠ざかってる気さえする。
「アクア学って、一生を費やすに値する学問として確立されてもおかしくないと思うんだよ」
「ですの?」
「何の話さ」
 言ってみただけで、僕にもちょっと、良く分からない。
「そういや、今まで気にしたこと無かったけど、回復呪文って、どういう理屈で治る訳?」
 何度と無くお世話になってきて、今更気になるシスも、大概、大物だと思う。
「ホイミや簡略的なベホイミは、人間が本来持ってる治癒力を増幅させることで回復させるだけなんだ。だから、余りに酷い怪我だと後遺症や傷跡が残ることもあるね」
 骨が粉々になるまで砕けてしまった場合なんか、どんな医学的な施術をしたとしても、元の機能を取り戻すのは難しい。それは、人間の持つ治癒力を超えているからで、それを促進するだけの初歩の回復呪文で補い切るのは、まず無理だ。
「アクアさんが使うベホイミは、僕のものとは根本的に違ってて、魔力そのものを治癒力に転化したり、場合に依っては、空間に溜まっている魔力の素みたいなものまで利用して回復させてるんだ。だから練度次第では、どう考えても助かりそうもない怪我人でも治せることがある」
 幸いにして、僕の周囲で、その処置が必要になった人は居ないけどね。
「んじゃ、ザオラルやザオリクって、その発展形ってこと?」
「んー」
 その質問に、僕は意識せずアクアさんを一瞥してしまう。
「アクアさんが居るのにこんなこと言うのはあれなんだけどさ。僕みたいに魔法使いの勉強した人の常識としては、そんな呪文は存在しないってことになってるんだ」
「はい?」
 うん、シスって、頭そのものは良いし、事の本質を見極めるのは得意だけど、この手の情報には疎い分、良い反応してくれるよね。
「いやいやいや。ザオラル、ザオリクって言ったら、僧侶とか神父の代名詞だってのは、子供でも知ってることじゃん」
「じゃあ、シス。義賊のお爺さんが死んだ時、生き返らせて貰おうとか思わなかったの?」
 身内が旅立った時、大抵の人は一度は通る道だと思う。
「ん? いやー、それは考えたこと無かったけど、寿命死は流石に無理なんじゃないの」
「仮に町の神父さんに持ち込んだとしても、多分、天寿だから無理って言われただろうね。
 他にも、『損耗が余りに酷過ぎる』だとか、『信心が足りない』とか、ありとあらゆることを言って断ってくるから」
「言われてみれば、割と命懸けの仕事のはずなのに、知り合いに生き返ったみたいな話してる人、居ないかも」
 そこまで行ってるなら、少しは怪しもうよ。
「んで、何で無いものをあるってことにしてる訳?」
 そう問われて、僕は又、アクアさんを見遣った。
「えー、まあ、あのね。いわゆる奇跡と称して、教会の権威を高める為っていうのが定説、かな?」
 言葉を選んだようで、微妙な表現になってしまった感は否めない気がする。
「役者を雇ったり、仮死状態の人をあたかも完全に死んでる様に見せ掛けて目覚めさせたりしてさ。蘇生呪文がある様に思わせてるって訳」
 もう、ここらへんまで来ると、遠慮とか面倒くさくなってきたよ。
「人は死んだら生き返らない。これは基本だよ。だからシスも、あんま無茶しないでね」
「へいへい」
 真面目な話に、このおざなりな反応。これでこそシスって思う辺り、毒されてる気がする。
「人が人を生き返らせるなんて、やっぱり踏み込んじゃいけない領域なんだと思うよ。そりゃ、レイアムランドの巫女さんが言ってた、神様くらいの力を持ってるなら、話も変わってくるんだろうけどさ」
 多分、アクアさん達が崇めてる『神』と、巫女さん達が言ってた『神』は同じ様で別物だと思うんだよね。何て言うか、宗教家の神様は、自分達の都合の良い様に解釈してるって言うか。いや、学者にもその方向性が無いかって言われたら否定は出来ないんだけどさ。
「たしかに、その様な一面があるのは事実ですわ」
 おっと、アクアさん、その部分については認めるんだ。
「ですが主は全てを見通され、等しく愛を注がれておりますの」
 まあ、敢えてここでアクアさんと喧々諤々の宗教論争をする気は無いんだけどさ。
「アレク様。準備が整ったそうなので、客間までお越し下さいとのことです」
「あ、はい」
 召使いの男性と思しき人にそう声を掛けられて、腰を上げた。
 どうでも良いけど、立場上しょうがないといっても、様付けはやめて欲しいもんだよね。こう、背筋がむず痒くなるって言うか。
 何処までも勇者適性が無い自分に、世の切なさを感じ入ってみたりもするよ。


「アレクさん。私は今が生涯に何度か訪れる、勝負の時だと実感しております」
「はぁ」
 話の全容が掴めない以上、適当な相槌を打つしかないよね。
「その内の一つが、妻との結婚でした」
「あら〜」
 そして、中年男性の冗談は、今一つ理解に苦しむ部分がある。僕もおじさんと呼ばれる年齢になったら、分かるんだろうか。
「全財産を賭け、スピル一派との対決をすると決意しました」
 僕から手紙を受け取ったのが、今朝の朝一番。今はまだ昼御飯くらいの時間だっていうのに、決断が早過ぎる。僕だったら、三日と言わず、二月くらいは悶々と悩む事案だというのに、この人は何なんだろうか。これが商人として成功する為に必要な才覚だと言うなら、僕には無理だと思うんだよ。
「と言いますか、クワットさんの全財産って、具体的に何ゴールドくらいになるんですか?」
 実際に、貨幣で動かせるお金はそこまでじゃないと思うけど、この家やお店、商品、備品の価値に加えて、信用で借りられるものまで加えるとしたら、それこそ国を買い上げられそうで怖いものがある。
「正確な額は日々変動しておりますので、やや曖昧ですが、大体で良ければ、そちらの資料に」
 言われて目の前に置かれた紙の束を手に取った。
 えーと、どう読めば良いかは今一つ分からないけど、多分、この表の合算値だから――。
「……」
 え?
「足し算を間違えてる訳でも、桁の認識がおかしい訳でもないですよね?」
「恐らくは」
 いやいやいや。幾らポルトガで一、二を争う大富豪だからって、この額はおかしいですって。普通に働いたら、一万回は人生やらない限り稼げない数字じゃないですか。
 見ず知らずの僕にポーンと船をくれるなんて言い出した人だから、何か普通じゃないとは思ってたんだけど、実は子供に小遣いをあげるくらいにしか思って無かったんじゃなかろうか。
「これ全部賭けるってことは、ひょっとして、スピルも同じくらいの資産を持ってるってことですか?」
「推察するに、私の方が六四で上回っているというのが濃厚だが、不確定要素が多くてね。最悪の場合、こちら陣営が少ないというのも、ありえるやも知れない」
 こういう人達がなりふり構わずお金を集めるから、貧困が無くならないんじゃないかと、ふと思う。だけど同時に、ある程度ちゃんとお金を扱える人が巨万の富を動かしてるからこそ、世界の秩序が保たれてる様な気もする。だって、普通の人が好き勝手にお金を動かしたら、それこそ混乱の極みになりそうな訳で。結局、どちらが正しいのかは、若すぎる僕には、今一つ分からない。
「うーん、ゼロもここまで並ぶとお金って感じがしないよねー。
 ん? 逆にこれだけあると、ちょっとくらい減っても気付かれない?」
「残念だけど、クワットさんみたいに、一代で財を成したタイプの商人は、一ゴールドの間違いも許さないくらい細かいから、儲けられるんだと思うよ」
 それにしても、本人の前で言うシスは、やっぱり凄いよね。
「いえいえ、私など、世界に居る三大豪商に比べれば微々たる商いしかさせて頂けておりませんよ」
 まだ上が居るんですか。本当に、どうなってるんです、この業界。
「ってか、何でその三つのグループは、スピルのことを放っておいているんですか」
 足元を、良く分からない虫だか沢ガニだかに齧られてる状態なのに、何の対処もしないのは不自然だ。
「一因として、軽く見ているというはあるでしょうがね。最も大きい理由は、いずれかと繋がって容易には手出し出来ないといったところでしょう」
 うわー、何だか、更に難易度が上がる話を聞いた様な気がする。
「と言っても、所詮は表面的な利で繋がっているだけの関係。我々が介入したとしても、本気で守るようなことも無いでしょう」
 本当でしょうね。やですよ。只でさえモンスター達と相対して忙しいっていうのに、世界中の暗殺者から狙われるみたいな展開は。
「それで、この資産を使って、具体的に何をどうするんですか?」
 生憎と、僕の金銭感覚は、路銀と小遣い銭程度が精一杯で、この規模のお金の使い方なんて想像も付かない。シスが言うみたいに、働きもせずダラダラとのんびり人生を送るっていうのも、本気で考えちゃう額なんだもの。
「お金というものは、その額に応じて役割があります。一ゴールドであれば子供が駄菓子の為に握り締め、十ゴールドであれば庶民が少し張り込んだ夕食の為に割き、百ゴールドであれば平均的な成人男性の日当、千ゴールドであれば業物の剣を手にしたりと、ね。
 この額には、この額に相応しい使い道があるのです」
 何だか、用兵術っぽくなってますけど、商売の話で良いんですよね?
「詰まるところ、買収です」
 あれ、意外と普通の単語が出てきたような。言葉自体は、結構、物騒な気もするけど。
「買収って、幹部でも取り込もうっての?」
「いえいえ、幾ら商人が利に聡いとはいえ、義も重要です。その様な裏切りをしてしまっては、今後、この世界で生きていくことは難しいでしょう。
 仮に居たとしても、恐らくは数名。有効な手段とは言えません」
「じゃあ、何を買うんです?」
 どうも、この業界には疎くて発想が貧困にならざるを得ない。
「言いましたでしょう。全てを、ですよ」
 正直、何を言っているか分からない。
「ゴールドが、各国の信頼を基に成り立っているという話は聞いたことがありましょう。ですがそれは国家に限りません。世の、人に関わるありとあらゆるものが、信頼という曖昧なものを基準として切り売りされているのです」
「土地や、高価な宝飾品なんかを担保に、お金を借りたりですか?」
「それも一つでしょう。返済が滞った際、等価以上の価値を持つ物品を渡す契約に、信用があるから成り立つ契約という訳です」
 確かに、浪費癖のある人に、積極的にお金を貸そうとは思わないよね。
「我々が保有する店も、実績のある店であれば、仕入れ品を後払いで済ませられることがあります。
 尤も、これを悪用して、計画的に店を潰す輩も居るのが困ったものではありますが」
 お金って、人間にとって凄い発明品だけど、新たに露骨な欲望も生んだ訳で、実に困ったものだよね。
「これは、後払いを認める契約書、手形と呼ぶこともありますね」
 言って、クワットさんは真ん中に大きく数字が書かれた紙を見せてくれた。他にも何だか文字と思しきものが書かれているけど、細かすぎて判別は付かない。
「一定の期日を迎えると、これを現金と引き換えることが出来ます。もしもそれが成されないと商人界のブラックリストに載り、いずれは誰とも取引が出来ない状態に陥ってしまう訳です」
「あの、一つ質問が」
「どうぞ」
「それ、紙ってことは硬貨より遥かに偽造が簡単ですよね。偽物が大量に出回ったら、あっという間に店が潰れません?」
 真っ先にこんな発想をするようになってしまったのは、シスか、或いはクワットさん達、商人の影響か。僕は将来、どんな大人になるんだろうね。
「もちろん、相応の対策が取られております。只の紙切れに見えるやも知れませんが、偽造防止措置は幾重にも取られています。
 そして当然、その収支は硬貨同様、厳密に管理されていますし、不自然な流れがあれば独自調査をし、場合に依っては、第三者に調停を求める場合もあります」
 成程。そりゃ、僕が思い付くことくらい、ちゃんと対応してるよね。
「他にも、まだ数こそ多くありませんが、株という方式をとる店もあります」
「株?」
 ああ、また良く分からない単語が増えていく。
「要は商売を立ち上げる時、出資者を募って、成功を収めた場合、利息以上の返礼を約束する証明書の様なものです。もちろん、身銭を切る以上、経営に口を出すことも出来ますが、同時に商売が失敗した時には只の紙切れと化すものです」
 パトロンというか支援者を、もっと広く薄く募集する手段ってことでいいのかな。たしかに、商売を始めるにはどうしても元手が要るけど、徒手空拳の若者にはお金もなければ、コネもない。商才もやる気もある人を掬い上げるには、良い方法かも知れない。
 いや、スピルみたいなのも大量に出てくる可能性があるから、必ずしもそうとは言い切れない気もするけどさ。
「って言うか、経営に口を出せるって」
 大商人の組織は、ある程度までは現場の人間が動かすけど、重要な問題については、クワットさんみたいな上の人間が決めるっていうのが僕の認識だ。幾らお金を出してるって言っても、外部の人間がとやかく言う状況が、今一つ理解出来ない。いやまあ、クワットさんにお金だけ出して貰って、好き勝手してる僕だから思うのかも知れないけどさ。
 だけど、少額であっても、お金を出してる以上、もう外部の人間とは言えないのかな。商売人の、そういったところの機微が今一つ理解できなくて困るよ。
「我々の戦術は、平たく言ってしまえば、この株や手形を買い占めることです」
「……」
 ん?
「それを買うと、何か良いことがあるんですか?」
 ある程度、話が広がってくると、情報の処理に頭を占拠されて、思考を放棄するのが僕の悪癖だ。
「株というものは、言うなれば店そのものを切り売りしているようなものです。そして手形は信頼の証明書の様なもの。額面が同じでも、明日にも潰れそうな店の手形より、固い商売をしている店の方が価値が高いのは簡単に想像頂けるでしょう」
「ちょっと待って下さい。株はたくさん持てば持つほど発言権が上がるのは分かりますけど、手形は只の引換券ですよね。そんなものを買っても、スピル側は何の打撃にもならないんじゃ」
「たしかに、額面通りや、金利を差っ引いた程度では、こちらに何の得もありません。ですが世には、半年後の一万ゴールドより、今の百ゴールドを必要とする方が幾らでも居るのですよ。私のコネクションを使えば、もっとマシな換金が出来ますがね。この手の作業は、結果的に信頼を落とすことに繋がるのです」
 うわ、今、ちょっと、商人界の暗部を垣間見ましたよ。いわゆる、買い叩きって奴ですか。これくらいのこと、平気の平左でやってるとは思ってましたけどさ。
「そして、手にした株や手形を抵当に、更に金を借り、更に株を買い漁る……言うならばお金を媒介とした殴り合いの様なものですね」
 世の中には、硬貨袋で頭を殴るなんて言葉があるけど、こういう世界もあるんだなぁ。
「総合で五割以上の株を収めれば、経営権のほぼ全てを握ることが出来ます。当然、借金は残りますが、経営規模は倍になり、それにも耐えうる体力を有することになるのですよ」
 恐ろしい、お金の世界は、本当に恐ろしい。
「ちなみにですが、勝算はどれくらいに?」
 単純計算すると、相手資産の五割強も持っていれば食い散らかすことが出来ることになっちゃうけど、相手も馬鹿じゃない。防衛措置を取ってくるだろうし、下手をすれば泥沼の喰い合いだ。そこを見計らって第三者が狙ってくることもあるとすれば、同程度の資産を持っていると言っても、楽観は出来ないんじゃなかろうか。
「甘く見積もって、四六で不利といったところでしょうか」
「……」
 け、ケホッ。お茶が喉のあらぬ方向に入ったよ。
「は、八割くらいの勝算が無いと、商人ってのは動かないと思ってたから驚きました」
「その認識も、それ程は間違っていない。けれども、前に言ったでしょう。商人という生き物は、ここぞという勝負どころでは、全財産を投げ打ってでも、更に資産を増やす道を選ぶ、と」
「こんな可愛い奥さんが居るのに、ですか?」
 もちろん、従業員の生活もクワットさんの双肩に掛かっている訳で、軽々に動くことは出来ないはずなんだけど。
「私は〜、旦那様が居れば、どんな生活でも平気ですから〜」
 さりげなく、この奥さんが最強なのかも知れないと、ちょっとだけ思った。
「アレク君。商道に入って日の浅い君が、そんなことを言うのは分からないでもない」
 え、いつの間に、僕が商道に入ったことになったんですか。そう言えばクワットさん達の子供って見たことも聞いたことも無いですけど、まさか僕を後継者候補になんかしてませんよね。
「だが、商人の戦いというのは、食うか食われるかの、戦争なのだよ。主君が功をなして下も引き上げられるのと同様に、私が商売を広げると、部下達も又、その恩恵を受ける。無論、夢破れて屍が転がることがあるやも知れぬが、それが戦争というものではないかね」
 は、把握しました。
 もしかして僕達に気を遣ってこんなことを始めたんじゃないかとも少しは思ったんだけど、この人は根っからの商人だ。僕達はあくまで切っ掛けに過ぎない。
「にしても、それって相当、時間掛かりますよね」
 とりあえず、思考を作戦そのものに戻して冷静に考えてみる。大洋越しにお金を媒介して侵食しようっていう話なんだから、数日やそこらでどうこう出来る話じゃない。
「ええ、少なく見積もっても数カ月はね」
「ってことは、僕達は旅を続けて良いんでしょうか」
 正直、専門じゃない僕達がここに長々と居ても出来ることは少ない。もし、特に目的のない旅だったら、後学の為に雑務くらい手伝ったかもしれないけど、明確にやらなければならないことがある訳で。数カ月の時は、余りに長すぎる。
「それでも構わないがね。折角だから、船をこちらに呼び寄せ、その間は少し休養に充てたらどうかね」
「いえ、とりあえずは一回戻ります。やり残したこともあるので」
 兄さんの剣も置き去りだし、ジョージさんや何かに報告もしなければならない。そりゃ、一年以上も旅してるんだから、少しのんびりしたいって願望が、無い訳じゃないけどさ。
「そうかね。では、私達は私達で動き出させて貰うよ」
「お願いします」
 武器は武器屋と言うけれど、物事は専門家に任せるべきなのかな。勇者って、ひょっとしたら架け橋なのかなと、ちょっとだけ思ってみたりした。

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