「ただいまー」 ルーラで移動時間が極端に少なかったから、ほんの数刻の話だったのに、気疲れが尋常じゃないのは、不思議な話だよね。 「お帰りなさいませは、奥様の専売特許だと思われますの」 わーい、帰ってきた先も、混沌極まりないよー。 「あれ、シス。いつもみたいに唸り声あげないの?」 「なーに、言っちゃってるかなぁ。あたしともあろう人が、そんな訳の分からないことする訳無いじゃない」 ところで、チラッと見えた褐色の瓶は何かなぁ。 聞き込み続けるって別れ際に言ったよね? 何でちょっとほろ酔い状態なの? 「アクアさんも、ちゃんと注意してくれないと」 「難しい話ですわ」 「何がさ」 「シスさんは、わたくしより足が速いんですの」 え、何。声が聞こえないところまで逃げた上で飲んでたってこと? 何でそうも無駄に情熱を燃やせるのか、ちょっと分からなくなってきたよ。 「てめぇも充分、トリオ漫才じゃねぇか」 「うむうむ」 その件に関しましては、否定出来る要素が無いから困ったものだと思うんだよね。 「それでは、儂は一旦、執務室に戻るぞい」 「あ、お疲れ様でーす」 「会見人を放ったらかしてきたゆえ、どうなっておるかたしかめねばの」 え、えー。仕事投げ出してまで来たんですか。何か優先順位、間違いまくってる気がしてならないけど、アダムスさんじゃしょうがないか。 「姉さん、お帰り」 「リオール。実に衝撃的な話があるけど、聞く心の準備は出来た?」 「ん?」 わ、わー。ちょっとその話は待ったー。 「ね、ねぇ。もう夕方だし、晩御飯でも食べながら今後について話しあおうよ」 「特に、異論は無い」 ふぅ。何だか、凄く無駄な先延ばししてる気もするけど、どうしたものかなぁ。 「うんうん。お酒飲みながらの一時は、淑女としては外せないポイントだよね」 そして君は、まだ飲む気なの? 「酒飲みのことを、ウワバミって言うんだっけかな。 ウワバミって何のことだっけ?」 「たしか、大きな蛇のことだったと思いますわ」 成程、丸呑みするからってことかな。 「まあ、トウカ姉さんを丸々取り込んだ、ヤマタノオロチに比べればまだまだだよね」 自分でも、何に対抗してるのかは良く分からないけど、とりあえずシスの酒癖については、今後も見守っていかないといけないと思うよ、本当。 「それで、何か面白いものはありましたの?」 「うーん、どうだろう」 メロニーヤ様が書き記したオーブについての紙片は、確たる裏付けがあるものじゃない。余り自信満々に言って恥を掻くのもあれだから、ちょっと抑え気味に表現しておこうっと。 「とりあえず、これ見てもらえるかな」 言って、紙片を書き写したものをテーブルに広げた。 「これは……よもや、全てのオーブについて書かれておりますの?」 さすがはアクアさん。頭の中身は混沌としてても、ことの本質を理解する能力は高くて助かるよ。 「パープル、イエロー、ブルーは揃っておりますから、これが正しいとすれば、残りの場所は全て判明したことになりますわね」 「でも、これはあくまで、その可能性があるってだけの話だから。 仮にその時点で正しい情報だとしても、いつ書かれたものか分からない以上、今もあるとも限らない訳で」 唯、何も取っ掛かりがない状態から見れば、ワラよりはすがれるものなのかなって感じではあるよね。 「ゲゲ、海賊の村って」 「ん?」 何か、シスが変な声を出さなかった? 「どしたのさ」 まさか、一応、同じ賊としてのシンパシーか何か? それとも、義賊としての名声が凄いみたいだし、嫉妬的なものがあったりするの? 「いや……ちょっと知り合いが居るって言うか、何て言うか」 「知り合い?」 もしかして、賊の世界って、僕が思ってるより小さなものなんじゃなかろうか。 「ほら、あたし、七歳から義賊の爺さんとこで暮らしてさ。三年前に死んでからギルドに所属したってのは話したでしょ?」 「ここにも、結構、苦労続きの人生を送ってる人が居た」 う、そんな言い方されると、父さんは居なくても、十一歳まで兄さん、母さん、爺ちゃんと暮らしてた僕が悪いみたいじゃない。 「ま、そのこと自体はどーでもいいんだけどさ。 七歳から十歳の時に、もう一人、年上の助手が居たんだよね。いわゆる兄弟子、いや、女だから姉弟子かな」 「そこら辺は、初耳だね」 別に、わざわざ触れることじゃないと言えばその通りなんだけどね。 「でさ。その人、爺さんと微妙に反りが合わなかったみたいで、五年前に飛び出した訳。 まー、ちょいちょい手紙くらいはくれたから、絶縁状態ってレベルでも無いんだけどさ」 「『その人』なんて言い回しするからには、シスともそんな仲良くなかったの?」 「んー、どうだろう。とりあえず、手紙を貰っても積極的に返事しないくらいの関係かな」 それは只の筆不精なのか、本当に仲が悪いのか、微妙に判断に困るなぁ。 「んで、その姉弟子さんが海賊の村に居るっていうことになるのかな」 話の流れから判断すると、そう取るしか無いんだけど、シスのことだし、或いは他の可能性も――。 「そ。今はお頭やってるらしいよ」 「……」 シスの話は、いつだって予想を遥かに上回ってくるよね。 「ん、赤ってことは、レッドオーブがあるかもってこと?」 「そだね」 「あー、そういや、いつだったか、凄く綺麗な赤い宝珠を手に入れたって、自慢げな手紙がきたことあったなぁ」 「……」 えーと、ちょっと待ってね。言いたいことを簡単に纏めるから。 「何でそんな大事なこと、今まで話さなかったの?」 レイアムランドで話を聞いた時点で、すごーく関連がありそうな情報だよね。 「すっかり忘れてたから」 「……」 あー、そうだった。シスは何処までも感覚の人で、僕とは根本的に頭の構造が違うんだった。 「とりあえず、御飯食べたら手紙を書いてみようか。今でもあるのかっていうのが気になるし、大きさと形で大体の見当は付くだろうから」 「それ、多分、無駄だよ。基本的に、あんま話聞いてないって言うか、質問に対して、真っ当な返事が出来るタイプじゃないから」 シスにそっくりだなぁなんて思っちゃったけど、よくそんな人が良くお頭なんてやってるなと、割と本気で考えちゃったよ。 「ま、それでも一応、お願いするよ。行くとすれば世界半周の話だし、裏は出来るだけ取っておきたいから」 「りょーかい」 さて、と。もう一つ、並行で考えなきゃならないことは、と。 「誰か、テドンってどういうところか知ってる?」 僕は、一年前までアリアハンから出たことがない。しかも、この旅路で近付いたことがないせいもあって、この地方のことはさっぱり知らないっていうのが本当のところだ。 「言う機会を、逸していたのだけれど」 不意に、シルビーさんが小さく手を上げた。 「その町はネクロゴンドに程近いということもあって、五、六年程前、既に滅ぼされている」 「!」 言葉の意味を、理解しかねた。 「何……それ」 何しろ、時代が時代だ。滅ぼされた町の話は幾つも聞いたことがある。だけど実際に目の当たりにしたことがない為に、声がうわずってしまう。 「まあ、私も、見た訳じゃないから、それとグリーンオーブに繋がりがあるかどうかは何とも」 それもたしかに、道理だ。少し、ここを足掛かりに、情報収集してみるしか無いかな。 「ネクロゴンド、か」 「クレインは、どうしたの?」 「俺ぁ、ちょっくら、探りを入れに行くことにするかね」 「ネクロゴンドに?」 繰り返すまでもなく、ネクロゴンドは魔王バラモス城直下の、いわばお膝元だ。徘徊する魔物もそれに見合った強さを持っているはずだから、僕としては真っ先に後回しにしたんだけど――。 「心配すんなよ。俺ぁ、バラモス以外だったら、大抵の魔物にゃ、負けやしねぇよ」 「べ、別に、心配なんてしてないんだから!」 「……んだぁ、それ?」 「アクアさん監修、正しいツンデレさん講座のたまもの」 「相変わらず、ロクなことしねぇアマだな……」 その件に関しましては、リーダーとしてノーコメントを貫かせて頂きます。 「もう少し声を震わせて、視線を外すと尚良しですの」 しまった! ノリでやっちゃったけど、これは本筋の話が進まない流れだ! 「ふむ。ネクロゴンド」 あれ、シルビーさんはどうしたの? 「これで私達の次の目的地も、ネクロゴンドと定まった」 「はぁ?」 いや、そりゃクレインじゃなくても、変な声あげちゃうよ。 「やはり、仮にも孫弟子として大師匠様が死地に赴くのを黙って見ている訳にはいかないであろう」 「勝手に殺すな!」 「うん、でもクレインってこの中で一番強いのは間違いないけど、さっくり死にそうな意味でも一番だよね」 「てめぇも敵か!」 あ、分かった。更に、この中で一番、いじりがいのある性格してるんだ。 「クレイン。何処かで悟らないと、結婚どころか人間関係構築も無理だと思うよ」 「その、捨てられた子犬を憐れむような目はなんだ!?」 いや、何ていうか、境遇を理解しちゃった以上、同情せざるを得ないって言うかさ。 「何にせよ、これはお嬢様としての命令。拒否権などあるはずがない」 「お嬢様なら、それ相応の態度をとりやがれ!」 「姉さん、お嬢様って、何?」 「……」 あーあ。ついに触れちゃった。まあ、うまく誤魔化す手段も思い浮かばないし、考えてみれば僕は無関係な訳だし、静観するしか無いよね。 「聞いて驚けリオール。私達は何と、かの大賢者メロニーヤ様の、実の子供である可能性が濃厚となった」 「冗談は、笑えてこそ冗談なのだと思うんだけど」 リオール君の反応は、至極真っ当な物だとは思うんだよね。 「たしかに、今は状況証拠しか無いやも知れぬ。しかし、近い将来、法的にも親子となり、財産を全て手に入れるとここに誓おう」 「すげぇ殴りてぇ。つーか、女じゃなきゃ、間違いなく殴ってるな」 あれ、シャンパーニの塔で、シスのこと気絶させてたよね? もしかして、シスって女として数に入ってないのかな。 「そして、僕のことも、そんな目で見てたんだね?」 「てめぇは一体、何を言ってやがる」 ゴメン。自分でもちょっと、悪乗りが過ぎたって思うよ。 「やっぱり、クレインには一緒に来て欲しいけど、個人の意見は尊重しないとね」 「体の良い厄介払いだろうが!」 流石はクレイン。僕が言いたかったことを、一言で纏めてくれたよ。 「じゃ、そういうことで。僕達は自分の部屋に帰るから。 今後の身の振り方については、じっくり話しあってね」 「あ、逃げんな、コラ!」 只でさえ混沌として訳が分からなくなってきてたのに、これ以上、引っ掻き回されちゃ溜まんない。 ここは一時戦線離脱という名目で、距離を置かせて貰おうと思うんだ。 「あ、クレイン、おはよう。清々しい朝だねぇ」 翌朝、相も変わらずお酒が残らない僕に対して、クレインは下手な二日酔い以上に疲弊しきっていた。 「てめぇ……良く俺の前に面ぁ出せたもんだな」 生まれた時から勇者の息子なもんで、ある意味、打たれ強さは鍛えられてるよ。 「それで、どう纏まったの?」 「ネクロゴンドには行く。が、あいつらは置き去りにする」 「成程」 「ってのを真っ先に思い付いたんだが、よくよく考えてみりゃぁ、行き先がバレてんだから後を追ってくるだろうな」 「かもね」 「あいつらの強さで、生き延びられると思うか?」 う、うーん。あんまはっきり言うのははばかられるけど、ダーマ準拠で一人前にもなってないとなると厳しいかも知れないなぁ。 「第二の方策として、てめぇらが乗ってきた船に押し付けるってのがあるんだが――」 「何、その僕達の意志をきっぱり無視した発想」 「これも考えてみりゃ、あいつらが逃げ出しゃそれまでだって気付いて諦めた」 僕達を気遣った訳じゃないっていうのが果てしなくクレインらしい。 「結局、ネクロゴンドの中でも、裾野の部分を探りながら奴らを鍛えるしかねぇんだろうよ。 ちっ。徹底的に調べてやるつもりだったってのに、出鼻をくじかれたな」 「クレインって、何だかんだで面倒見が良いんだね。 折角だから、僕に魔法と剣術も教えてくれない?」 「そこまで手が回るか!」 えー、名目上、弟子ってことになったんだから、そのくらいしてくれても良いじゃない。 「あ、そう言えば聞く機会が無かったんだけど、クレインってダーマ的にレベル幾つなの?」 強さの目安にしかならないとは言っても、気にならないと言えば嘘になるからしょうがないよね。 「魔法使いで三十八、戦士で二十二だが、それがどうした」 「……」 こ、心が涙を流しそうだなんてことは、無いんだからね! ってか、魔法使いがそろそろ神域に差し掛かってるとか、分かってたつもりだけどやっぱり凄い人なんだなぁ。人間的には全く尊敬出来ないけど。 「そういうてめぇは……そうさなぁ。あのメラを見る限り、魔法使いで二十前後ってとこか。戦士はその三分の一として……勇者レベルは五に満たないくらいかねぇ」 う、何、スキャニングもしてないのにその的確な判断能力。 「もしかして、七大老の後釜狙ってない?」 「ねぇよ」 たしかに、宮廷魔術師さえドロドロしてて面倒とか言い出すクレインに、権力の巣窟であるダーマの幹部は無理かも知れないね。 「ま、所詮は参考程度の数値だからな。てめぇの魔法使いとしての才は、俺が保証してやるよ。 そこから何処まで伸びるかまでは、知ったこっちゃねぇけどな」 何だろう。第一印象が最悪で、言葉遣いが乱暴な反動か、クレインが凄く良い人に見えるんだけど。 「はっ! これがアクアさんの言う、ツンデレ理論!?」 「大概、毒されやがってきてるなぁ」 たまにだけど、僕自身もそう思わないでも無いよ。 「お、いたいた」 不意に、シスが廊下の先から顔出してきた。 「例の姉弟子から、手紙帰ってきたよ」 「早いね」 「お頭なんて言っても、所詮は管理職だから暇なんじゃないの。やっぱ賊は、自分で動いでナンボでしょ」 その件に関しては、同意していいものか良く分からないからノーコメントで。 「それで、何て書いてあったの?」 「うーん。文面そのまま読むね、『赤い宝石ぃ? 見たければ、あんたがこっちに来なさいよ』」 「実にシンプルだね」 何だろう。こんな早く返事が来たのは、単に書くのに時間が掛かって無いからってことなのか。 でも、まだ保有してるって部分では間違いないとも言える。この感じなら、行くって返事すれば、それまでは売り払ったりしないだろうし。 「これで賊なんてのは体験主義者だからね。ロマンは持っても、直接に見たもの、聞いたものしか信じないってとこはあるかな」 「結局、真偽を確かめるには、見に行くしか無いってことになるんだね」 「ま、あたしにとっちゃ、そーていの範囲内って奴だね」 世界半周、か。だけどこれが一番有力と言えば有力な情報だしなぁ。 「よし、決めた。海賊の村に行こう」 基本的に、その時まではウジウジと悩む僕だけど、一度結論を出すとサッパリとしたものなんだよね。最初から出来れば心配とか掛けないで済むんだけど、生来のものだし、簡単にはねぇ。 「で、クレイン達はネクロゴンド、か。 あ、そうだ。何かあった時の連絡先って、どうすれば良いのかな?」 仲間と言うほどに親密かは微妙だけど、少なくてもクレインは打倒バラモスの同志だ。良い機会だし、情報の遣り取りをしていこうと思うんだ。 「キメラの翼だと場所指定しか出来ないから、僕達みたいに旅してる人達にはどうにも不便だよね」 ちなみに、姉弟子さんからの返信は、ダーマの受付を経由して貰ったもので、シス個人宛てに出されたものじゃない。 「あぁ? 固有の魔力を篭めりゃ、そいつに向かって飛んでくぞ?」 「……」 え? 「そ、そんな能力あったの?」 「まぁ、それなりに技術が必要だから、あんま一般的にゃ知られてねぇ話かもしんねぇな。 ちょっと貸してみな」 「あ、うん」 言われるまま、道具袋からキメラの翼を取り出し、手渡した。 クレインが翼の付け根に人差し指を当てると、そこから小さな光が発せられる。 「ほれよ。三つもありゃ良いだろ。何かあったらこれを使って、手紙でも寄越しな」 「クレインから僕達にはどうするの?」 「おめぇの魔力に向けて射出してやんよ。ルーラの応用ってことになるな」 そ、そんな細かい仕事も出来るんだ。こと魔法に関しては、メロニーヤ様の言う通り、天才の領域なのかも知れない。 「さてと、俺ぁ、ガキ共のお守りだ。ちったぁ、叩いて響く鐘なら良いんだがな」 「頑張ってね」 あ、自分でも分かるくらい、他人事の空気が出ちゃった。 「そういや、どうせてめぇのことだから、勇者レベルが低いとか、どーでも良いこと悩んでんだろ」 う、図星過ぎて返す言葉も御座いません。 「勇者ってのは良く分からねぇ生き物だからな。単に剣と魔法が優れてりゃ良いって訳でもなく、人を導かなきゃなんねぇとか小難しい条件がついてきたりもする。 だけどな。そういう面倒なこと抜きにして、一発でてめぇが勇者だって認められる方法があんだろうが」 「そ、そんな都合の良いものなんてあるの? それって、僕でも出来る――」 そこまで口にしたところで、はっと一つのことに気付いた。 「そう、何故か勇者が好んで使う雷撃呪文、ライデインだ」 魔法使いと僧侶の両系統に属さない呪文は幾つかあるが、その中でもライデインは、その華々しさから勇者の象徴として扱われている。 「僕が、ライデインを――?」 今までは僕は、魔法使い系統の攻撃呪文を主体として、それに次ぐ形で基本的な回復呪文を憶えてきた。逆に言えば、二つの系統から外れたものは意識してこなかった訳で、何だか真横から殴られたような、そんな意外な心持ちになってしまう。 「ま、出来るかどうかはてめぇ次第だ。当然、俺ぁ使えねぇから、自分で何とかしな」 言って、手をヒラヒラさせてクレインは歩き去っていった。 後に残された僕は呆然としたままシスを見詰めていた。だけど、間が持たなくなったのか、いつもの調子で口を開いてくる。 「何にしても御飯食べよー。お腹すいたまんまじゃ、頭も動かないでしょ」 「う、うん、そうだね」 僕の当面の目標は、世界に散らばるオーブ、トウカ姉さんの解放手段、兄さんの行方を探しだすことだった。だけど旅人として一人前になりつつある今、僕自身の在り方についても考えなければならない時期に差し掛かっていると気付かされる。 勇者とは一体、なんなのか。強くあることは必然として、その方向性と心の有り様はどうあれば良いのか。すぐさま答が出るものでは無いけれど、心にしっかり留めることにして、とりあえずはシスを追って食堂へ向かうことにした。 Next |