十三年前、一人の男がアリアハンより旅立った。彼の名はオルテガ。かの地で比類なき武勇を誇った豪傑である。その目的は、天下に巣食う魔物達を掃討すること。そして、諸悪の根源たる魔王バラモスを、この世界から抹殺することである。 オルテガは、勇敢であった。各地で魔物達を打ち倒し、その名を轟かせた。 だが、終焉は突然に訪れた。魔王の本拠地と言われるネクロゴンド近郊での死闘で、その身を火山へと躍らせてしまったのだ。 世界の希望は、敢え無く最期の時を迎え、緩やかに破滅へと時計の針を動かすかと思われた。 だが、平和への意志が断たれた訳では無かった。 四年前、一人の男がアリアハンより旅立った。彼の名はアレル。勇者オルテガの長子である。齢十六にして父の魂を受け継いだ少年は、その精神を存分に知らしめた。各地で悪党やモンスター達をひれ伏し、旅は順調であるかの様に思えた。 ところが、彼の道も又、不可解な幕引きを迎えた。世界各地に散らばる伝説の宝珠、オーブを捜し求める最中、消息を絶ったのだ。 人々は落胆の感情を漏らすと共に、アレルが生きていることを信じ、待ち続けた。だが時は無情に流れ、いつしか諦めの感情が心を支配する様になっていった。 そして現在、一人の少年がアリアハンより旅立とうとしている。彼の名はアレク。勇者オルデガの次子、即ちアレルの弟である。アレクも又、父や兄と同じく、バラモスを許せぬ心を持っていた。 しかしながら、父や兄とは一つ違う点があった。彼は剣技の心得が無い、魔法使いを志す少年だったのだ――。 Next |