僕と彼女と探偵と
〜偽られた蒼穹〜 地の巻

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 (登場人物)
 入瀬いりせ喬弘たかひろ:理工学部応用化学科教授。大学一号棟から転落死する。

 穂積ほづみ恭一きょういち:入瀬研究室助手。眼鏡に白衣姿。言葉遣いが汚い。
 えん秀玄しゅうげん:入瀬研究室所属の博士課程一年生。中国からの留学生。片言の日本語。
 栗林くりばやし裕美ひろみ:入瀬研究室所属の修士課程二年生。お下げに眼鏡という地味な出で立ち。



 結局、香良洲先輩の勢いに負けた源警部達は、僕達が現場に残る事を許可してくれた。
 しかし、教授室が密室であった事には変わりなく、先輩は「密室を解く上で最も重要なのは、室内の状況を詳しく知ることです!」と高らかに言って、まずは警部に説明を要求した。
 警部は少しためらうが、拒否しても無駄だと悟ったのか、あっさりと説明を始めた。
「ま、何はともあれ、実際に教授室の中を見てもらえれば分かりますよ」
 そう言って、背後にあったドアを開いて中に入っていく。
 警部に続いて、僕や飛月、先輩、更には穂積さん達も中に入っていった。
 室内は思ったより狭く、入った入り口から横長――窓と、廊下に続くドアの方向に長い――だった。
 そして、その狭い室内には、資料と思われる本や論文のファイルが詰め込まれた本棚が並び、窓際にはパソコンの置かれたデスクが配置されていた。
 ……とどのつまり、狭い室内が余計に狭くなっていたのだ。
 しかも今は、鑑識の人が複数人、部屋に入っている為、更に狭く、蒸し暑く感じる。
 しかも窓が事件当時そのままに開け放たれている為、冷房は効果を弱め、熱気が入ってきている。
 風が時折入ってくるのが唯一の救いだろうか。
 そんな中、警部はハンカチで額の汗を拭きながら解説を始めてくれた。
「見ての通り、この部屋と外界を結ぶ出入り口は二つあります。一つ目は、今入ってきた研究室と繋がるドア」
 僕はそういわれて、背後のドア――今は研究室側に開かれたままだ――を振り返って見る。
「二つ目は廊下と繋がるドア。……あ、ここを出るとすぐにエレベーターと階段のあたりに出れますね」
 指差した先には、入ってきたドアとは垂直の関係の位置に立て付けられたドアがある。
 造りがしっかりしているし、どうやらあちらがメインの入り口のようだ。
「教授が落下した当時ですが、まず研究室側のドアは内側からロックをかけられていました。ここのロックは見ての通りツマミを九十度回すだけという簡易的なもので、研究室側からは鍵穴も無いので開けることは出来ません。ここは日頃から施錠されているそうです」
 改めてみると、確かにそれはよく洋室のドアに付いていたりするタイプの鍵だった。
 しかし、研究室と繋がるドアを遮断するとは……変わった教授だ。
「……で、次に廊下側のドアですが、ここも当然鍵が掛かっていました。こちらには合鍵が三つあります。一つは教授本人が所持していたもの。これは遺体のズボンのポケットから見つかりました。で、残りの二つは大学の事務室が保管していました。今日はずっと事務所にあったことを事務員の方が確認しています」
「……ということは、第三者が鍵を持ち出すことは不可能だった、ということですか?」
 香良洲先輩がいつの間にか手にしていたメモ帳にカリカリとペンを動かしながら尋ねた。
 その姿は探偵というより、むしろ新聞記者のようだ……。
「まぁ、そういうことですな」
 ひとまず、警部の解説はここで一段落を迎えた。
 では、今までの情報を脳内でまとめてみよう。

 まずは研究室側のドアは内側からロック済。教授室側からしか開閉は不可。
 次に廊下側のドアも施錠済。鍵は落下した本人のズボンの中に一つと、事務室に二つ。この二つは誰も持ち出されていない。

「つまりは、ここは外部から鍵をかけることが出来ない状況下にあった……ということなんだ……」
「ま、そういうことなんだよ」
 僕のつぶやきに、警部が反応してくれた。
 しかし、これで諦めないのが先輩と飛月なわけで、彼女達はすぐさまドアの周囲を調べ始める。
「こういう場合、糸を通す隙間が必ずあるはずです! 飛月氏も注意して探してください!」
「ラジャー!!」
 部屋にいた鑑識の人たちも二人をとめることは出来ないようで、ただただ呆然としている。
 すると、いきなり僕は背中を小突かれた。
 僕の背後にいたのは苑部さん。
「…………だから、止めてって言っているでしょう……」
「ですから、僕なんかに出来るわけ無いじゃないですか……。なんなら苑部さんが手本を見せてくださいよ」
「わ、私はっ…………と、とにかく! 人に頼らないで何とかして見せなさいよ!」
「んな無茶苦茶な……」
 僕と苑部さんがそんな会話を繰り広げている間も、先輩達は調査の手を止めていなかった……。



 飛月達の調査も空しく、結果としてドアにそういった隙間が見つかることは無かった。
 随分と密閉性の高いドアらしく、双方ともにドアの周囲は完全に隙間がないように作られているそうだ。
 結局、教授室では芳しい結果が得られないまま、教授室にいては鑑識官の邪魔だからと研究室へと戻った。
「ふふふ、糸を使ってロックをするという陳腐なトリックではないということですか。面白い……」
 場所は変われども、先輩は相変わらず燃え上がっている。
 しかし、周囲も先輩の暴走には慣れてきたのか、平然としている。
 警部も、先輩を横目で少し気にするものの、話を続けた。
「……あ、そうでした。一応、皆さんの事件前後、何をしていたか聞かせてもらえませんか?」
 すると穂積助手は露骨に嫌な顔をする。
「おいおい……まさかあんたも俺達を疑ってるっていうのか? これは自殺だろ?」
「そうデすヨ。これじゃマルデ、ボク達のアリバイを調べテルみたいダ……」
「あ、いやいや。これはただの確認ですのでご心配なく。それとも何ですか? 聞かれてはマズいことでも?」
 警部の言葉に二人は不満の言葉を否が応にも止めざるをえなかった。

「ふむ。反論がないようなので続けますよ? とりあえず尋ねますが落下当時、皆さんはこの研究室に揃っていたのですか?」
 すると、穂積さんが答えた。
「俺は先生が落ちる少し前にトイレに行ってたからいなかったよ。栗林もいなかったよな?」
「は、はい……。私は先生に頼まれていた物を印刷する為に四階の印刷室にずっといました……」
「つまり落下当時は、袁さん一人が研究室にいた、と?」
 苑部さんの問いに、袁さんが首を縦に振る。
「そ、外かラ物音と悲鳴ガしテ、それで何事カと思ッテ、外を見たら飛び降りだって分かっテ……そレデすグに穂積助手が戻っテきテ……」
「戻ってきたら、こいつが下を覗いていたんだ。それで『先生が落ちた!』って騒ぎ出したんだよ……」
「だ、ダッテ、教授室の真下に死体があっタシ、先生の部屋の窓が開いてイタんだカラ、ソレくらいの予想はつくでショ!!」
「だけどなぁ、あそこの窓は大体いつも開いてるし、落ちたのを見てないのに落ちたって言うのは少し怪しいよなぁ」
「ほ、穂積助手だって、あの時は信じてイタじゃないッスかァ!! そレに怪しいっていっタラ、あなタだって助教授推薦の件で――」
「んだと!? 俺がやったとでも言うのか!? だったらお前だって、例の論文盗作でなぁ――!!」
 いつの間にか汚い言葉を二人がぶつけ合っている。
 僕達はただ呆然と見ていただけだったが、果敢にもそこに割って入る人がいた。
「あー、はいはい! とりあえず落ち着いてください。ね!」
 警部だ。
 彼は強引に二人を引き剥がし、気を落ち着かせる。
「とにかく、袁さんはここで入瀬さんが落下したと推測したわけですね? そうすると、落下直前に教授室に入瀬さんがいた事を知っていたということですよね?」
「そ、ソウですヨ……。落ちル一分くらい前には戻っテキたみたいダったし……。ドアが開く音が聞こえたシ……」
 その言葉に警部はすかさず反応する。
「戻ってきた……つまり、それまでは外出していたのですか?」
「まぁな。落ちる何分か前に廊下側のドアから出て、こっちに一回来たんだよ」
「来た……というと何かあなた方に何かを伝えに?」
 すると穂積さんが答えるより早く、栗林さんの口が開いた。
「こ、今度の学会で使う書類のい、印刷を頼まれました……。それで、私は印刷室の方に…………」
「それは、あなたを指名して頼んだのですか?」
「い、いえ……。誰かという事でしたので、それで一番年下だった私が……」
 なんというか、栗林さんは見た目通り、積極的に頼み事を引き受け、裏方に徹する性格なのだろうな……と思ってしまう。
 そして、彼女の言葉がようやく終わったのを見計らったかのように、今度は穂積さんが喋る。
「……まぁ、その足でトイレ行ったみたいだがな」
「トイレ……ですか?」
「そうだよ。俺がトイレ入った時、入れ違いに出ていく姿を見たし。多分トイレ行くついでに頼んだんだろ、印刷を」
 聞いた事を警部はさらさらと手帳にメモしてゆく。

「それで話は戻りますが、入瀬さんの飛び降りを疑ったあなた方はどうしたんです?」
「そりゃ、確認したよ、隣にいるはずの教授が無事かどうか。俺達はとりあえずここと繋がっているドアの方をノックしたんだけど返事が無いし鍵は掛かってるし……」
「ソれで、今度は廊下側のドアから確認しタのですガ、ソッチも駄目デ……」
「まぁ、だから急いで下に行って確認しようってことになったって訳だ」
 それで、下に来た穂積さん達は僕達を押しのけて、確認をしたわけか……。
 あれ? そうだとすると栗林さんはその頃は……と思ったが、それは当然ながら警部達もそう思うわけで、苑部さんが尋ねていた。
 栗林さんは、おどおどしながら話し始める。
「わ、私は、その……印刷したものを持って戻ってきたら、もうここには誰もいなくて…………。それで、外が騒がしいから窓から下を見たら、そしたら…………」
 とそこで、栗林さんが涙ぐみ始めた。
 その時は分からなかっただろうが、後々考えてみれば、自分が師事していた教授が亡くなったを目撃していたのだ。悲しむのも無理はないだろう。
「辛い気持ちは分かるわ。……だけど、お願い。もう少し先のことを教えてくれる?」
 そんな栗林さんを苑部さんが宥めながら次の言葉を促す。
「はい……。それで、私も袁先輩のような嫌な予感がして、教授室をノックしたんですが返事がなくて……。だから、急いで下へ行って、そこで穂積さん達と合流しました……」
「そこで入瀬さんの事を確認した、と?」
「はい……うぅっ……そうです」
「そう……ありがとうね」
 苑部さんが栗林さんに優しく礼を言っていた。
 それを見ると、先程までの厳しい姿が嘘のようだ……。
 しかし、だとしたらどうして、栗林さんはさっき下にいなかったのだろう?
 僕が苑部さんにそのことを小声で尋ねると、彼女は「栗林さんは警察が教授室へ検証に行く際に立会人として先に上に戻っていた」と教えてくれた。
 苑事実を知って成る程……と一人で納得してると――
「ちょっと待って待って!!」
 突然大きな声が耳元で響いてきた。

 声の発生源はすぐ隣、飛月だった。
 その声に、僕や先輩といった近くにいる人は勿論、穂積さんや警部、果ては研究室を調べていた警察関係者達も何事かと飛月のほうを見た。
 注目が自分に集まったのを確認すると、飛月は言葉を続けた。
「少し考えたんだけど、やっぱり自殺は無いわよ! だって、入瀬先生は今度の学会で自分が使う書類を印刷するように頼んでいたんでしょ!? 今日自殺する人間がそんな事をするかしら?」
 声が些か大きすぎるが、飛月の言う事はもっともだ。
 死後に自分が出る予定になっている学会の事など、考える必要など無いだろう。
 警部もそれを理解したらしく頷く。
「成る程。君の言う事には一理あるね。確かに不自然な行動かもしれないなぁ」
 だが、そんな中異論を唱える者がいた。それは助手の穂積さんだった。
 彼は飛月に負けないくらい声を張り上げる。
「だけどなぁ、部屋は鍵が掛かってたんだぞ! これはどう説明するんだよ!?」
 他殺説を阻む最大の難関。それが密室という状況だ。
 もし教授が犯人によって落とされたのだとしたら、その後犯人は施錠された部屋をそのままにそこから出なければならないのだ。
 つまり『密室は如何にして作られたのか?』というのが問題なのだ。 
「そ、それは…………」
 流石の飛月も、そこまでは答えを用意していなかったらしく、言葉を詰まらせる。
 穂積さんはやれやれといった様に首を横に振った。
「だろ? やっぱり自殺なんだって! お前、ミステリーとかの読みすぎなんだよ」
「だ、だけど、行動を考えるとやっぱり――」
 穂積さんの挑発に、飛月も勢いづくが、その間に警部が入ってくる。今回二度目の介入だ。
「まぁまぁ、今はこれくらいにしてくださいな! 今の段階では自殺他殺を決め付けずに双方の可能性を考えて捜査していますので!」
 警察の介入とあれば流石に止めざるを得ない。
 二人が落ち着いたのを見ると、警部は言葉を続ける。
「とりあえず、今のところはこれで結構です。後ほど聞く事がありますので、この大学の敷地内に留まっていてください。では、また後程」
 と、とりあえずの聴取の終了を告げる。
 研究生達がやれやれといった感じに、研究室から出てゆく。
 これ以上、警察のいるこの空間にいても息苦しい、といった感じなのだろう。
 警部も、苑部さんの一、二言何かを告げると、捜査に戻っていく。

 結果的にその場に残ったのは僕達、理工ミステリ研と苑部さんのみ。
 隣にいた飛月は、明るい彼女には珍しく、しゅんとした表情をしていた。
「まぁ、さっきのは仕方がないって。飛月の言ってる事は真っ当だったんだからさ、これから密室についてを考えていけばいいじゃないか」
「莞人……」
「ほら、飛月言ってただろ、『立ち止まらずに前進あるのみ』って。前向きにいこうよ」
「莞人氏の言う通り! ミステリにおいては壁にぶつかるのは当たり前! 紆余曲折の末に真実が見えてくるのです!」
 先輩も妙に張り切っているようだ。……まぁ、いつもこんな調子かも知れないが。
「そ、そうよね! こんなのあたしらしくも無い! それじゃあ、そうと決まったらとっとと考えましょうよ!」
 すっかり飛月は元気を取り戻したようだ。
 やっぱり飛月はこうでなくては……改めてそう思う僕であった。



 入瀬研究室から一つ上の階にある二十階、つまりは最上階。
 ここは、全ての部屋が会議室となっており、二十階の会議室は全て常時解放されている。
 僕達は、今回の事件について討論する為に、そんな数ある会議室の中の一つ“第二会議室”にいた。
 会議室奥のホワイトボード前に陣取って椅子に座る僕達。
 僕と飛月と先輩、そして……苑部さん。
「……で、どうしてなっちゃん刑事がここにいる訳?」
 飛月が椅子に座ったところで、当然な質問を投げかける。
「だから、なっちゃんって呼ばないでって言ってるでしょうに……」
 とうんざりしたような口調で、苑部さんはここにいる理由を話し出した。
 ……そして話により、彼女は警部からの特命で、僕達に同行していることが分かった。
「とどのつまりは、あなた達が暴走するのを未然に防ぐのが役割なんだけどね」
 と、僕達を挑発するようなことを言ってくれやがった。
 まぁ、これによって飛月と苑部さんの間で当然ながら口論があったがその途中部分は省略するとしよう。
「はぁはぁ……。い、いいわよ! 見てなさい、今にあなた達警察よりも早く謎を解いて見せるんだから! 覚悟しなさい、なっちゃん!」
「だから、なっちゃん言うなって言ってるでしょう!」
 二人とも気が強いもの同士だからたちが悪い……とは口が裂けても言えない。
 僕はとりあえず、場を沈めるために話題を変えることとする。
「と、とりあえず密室について考えていこうか! それさえ分かれば他殺の可能性があるってはっきり言えるんだからさ!」
「うむ……とりあえず言い争っていても意味が無いのは分かりきっていますしね。それですよね、お二方?」
 先輩も僕に同調してくれた。
 そして、その言葉が効いたのか、飛月と苑部さんは落ち着きをようやく取り戻してくれる。

「では、今回の密室……よく思い出してみましょうか」
 そう言って先輩は、ホワイトボードに教授室を中心とした間取り図を描いてゆく。そこに書き足されてゆくのは密室の状況。
「……まぁ、というわけで、糸を通すような隙間も無ければ、ロックのツマミに仕掛けを施した痕跡も無かったので、今回機械的な密室技法は使われなかったと見ていいと思います」
 機械的技法は、ミステリに出てくる密室において初期の頃から愛用されてきたトリックの王道だ。
 だが、今回はそれが通用しそうに無いというのだ。
 これには同感だ。第一、機械的技法の場合に大概重要となるなのは密室突入後のその細工の痕跡消去であり、警察が突入に立ち会っていた今回の件ではそれが出来ない。
「よって今回の件、私個人としては、心理的な技法が使われたのだと思うのです」
「“心理的な技法”って何かしら?」
 苑部さんが質問をしてきた。ミステリ用語のようなものだったので、無理もないかもしれない。
 僕がそれに応え、簡単に説明をする。
 心理的技法とは単純に概論を言ってしまえば、犯人が周囲の人間の心理を利用して、“密室と思わせる”密室技法だ。
 一番簡単な例を挙げるとしたら、鍵の掛かっていないドアの前で閉まっている演技をするアレである。
 そして、これに限らず、心理的トリックは“演技”を多用する。
 機械的技法のアイデアに枯渇してきた現代、ミステリにおける密室もこの“心理的技法”が多用されてきている気がするのは僕だけだろうか……。
 まぁ、最後の一言は口にしなかったが、大体以上のような説明を苑部さんにしてあげた。
 すると、苑部さんは難しそうな顔をする。
「う〜ん……今回は、落下直後に穂積さんと袁さんの二人組が、そして遅れて戻ってきた栗林さんも鍵かかかっている事を確認したのだし、それはないんじゃないの?」
「確かに今回は完全に鍵が掛かっているといえるでしょうね。……ですが、こんなのはどうでしょうか?」
 先輩が不敵な笑みを浮かべて推理を語りだす。
「そもそも廊下側のドアは鍵さえあれば開閉できるんです。ならば、それを利用しない手はありません」
「で、でも鍵は事務室保管の物と遺体の内ポケットに入っていた物のみで……」
「先生の鍵は、後で入れられたのだとしたら?」
「……え?」
「つまり、犯人は先生の鍵を奪い、それを使って部屋を出てから施錠、それから現場に急行して遺体に再接近して鍵をこっそりと内ポケットに戻したんです」
 成る程。鍵は生前から教授がずっと所持していたという先入観を利用した心理的技法かもしれない。
 先輩の推理が正しいとしたら犯人は、あの三人の中で遺体に触れるくらい近寄った人物。
 ということは……
「――つまり、犯人は遺体の確認をしに再接近した穂積助手なのです!」
 その瞬間、飛月と苑部さんは一瞬だが、『おぉ』と同時に出していたのが聞こえた。
 確かに穂積さんが入瀬教授の遺体に近づいていたのは僕達も見ていた事実だ。
 だが、僕達が見ていたからこその矛盾点もそこにはあった。
「で、でも先輩、穂積さんあの時、そんなことしてましたっけ?」
 そう、確かに見ていたことは動かぬ事実だが、先述のように遺体の内ポケットに何かを入れるような怪しい動きがあれば、それこそ近くで見ていた僕達が気付かないわけが無かった。
 事実、僕には穂積さんは、遺体を見渡していたくらいだったように見えた。
 すると先輩はがっくりと首を落とした。
「…………そうなのよ、そこが問題なんですよ」
 って、あっけなく認めた!?
「私達がこの目で見ていたというのが痛手になるのが情けないですよ……」
「施錠されているのは確実、鍵には手を出せない、となると、やっぱり難しいかと……」
 つまりは機械的、心理的の両技法ともに、考えるのが困難という事である。
 こんな状況で、『これは本当に解けるのか?』という焦りも少しずつ現れてくる。 
 先輩も平静を取り繕っているが、出てくる案にも念動力や魔法といったヤバ目のものが入り混じってきている。
 そしてそんな中、飛月が、椅子から立ち上がると窓を開け、そこに寄りかかった。
「ねぇ、とりあえず休憩しない? 自然の風を浴びれば少しは頭がリフレッシュするかもよ」
 そんな言葉に誘われ、僕達もクールダウンの為に一時休憩を取る事とした……。

 窓を開けたことにより、熱気も入ってくるがそれにも増して、入ってくる自然の風は冷房を浴び続けた身には心地よかった。
「あなた達……まだ、考える気なの?」
 それは苑部さんからの『もう諦めたら?』とも取れる言葉。
 しかし先輩と飛月がそれを否定した。
「私達は決して諦めません!」
「壁にぶつかったってそれをぶち破る位の勢いで立ち向かえば、きっといつか報われるはず!」
「ま、そう言うと思ったけどね。もしここで諦めてたら、それこそ中途半端だって非難していたかも」
 苑部さんは半分呆れ顔であったが、それと同時に笑みも浮かべていた。
「その為にも今はちゃんと休憩を取って…………あれ?」
 そう言うと、窓に身を乗り出していた飛月は、更に下へと上半身を乗り出す。
「飛月! あ、危ないって!」
 僕が窓に寄って注意するが、飛月はそれを聞こうとしない。
 それどころか、下を見ながら笑っていたのだ。
「そうよ……そうだったのよ……ふふふ、あーはっはっはっは!!」
 笑いが本格的に成ると、ようやく飛月は身を元に戻してくれたが、その後は更に“危ない”人のように笑いはじめた。
「ひ、飛月? な、ど、どうしたの?」
 僕が心配してこえをかけると、彼女は僕の肩をいきなり掴んだ。
 そして叫んだ。
「そうよ、窓よ、窓から出たのよ!」
「ま、窓?」
 突拍子も無く、窓というフレーズを連呼する飛月。
 その様子に、僕だけでなく苑部さん、そして先輩ですら驚いている。
「犯人は先生を落とした後、窓から脱出したのよ。ロープ伝いに真上にあるこの第二会議室に! だとしたら、これは密室でも何でもなくなるでしょ、だって窓は“閉まってなかった”んだから!」
 突然の推理披露に呆気にとられた。
 窓から脱出とは流石飛月らしい大胆な発想というか、今まで誰も気付かなかったのが情けなくなるような発想というか……。
 飛月の推理を聞いた先輩は顔を明るくして、拍手する。
「素晴らしい、素晴らしいわ! 飛び降りだから窓が開いていて当然だし、どうしても人の目はドアと鍵にいくから、まさか窓が侵入経路だとは思わない。つまり。これは人の先入観をうまく使いつつ、ロープという機械的技法も取り入れた複合型の密室なのね!」
 飛月の密室解法に対し、ミステリチックな論評で褒める先輩。
 そして、それを聞きながら照れて後頭部を掻く飛月。
 確かに密室……いや、もう密室ではないか、今回のトリックとしては別に滅茶苦茶な案でもないだろう。 
「これが正しいとしたら犯人は……」
「この高さをロープで登るとなると、ある程度の時間が掛かるのは必至。そして袁さんは研究室にいて、それから間もなく穂積さんも戻ってきていた事を踏まえると……時間的に余裕のあった栗林さんが一番怪しいという事ですわね……」
 ……え、栗林さんが?
 不本意ながら、それには問題が生じる。僕はその問題を口にしてみる。
「そ、そう考えるという事は、あの栗林さんがロープを命がけで登ったって事ですよね」
「確かにそうなりますね……」
 何処から見ても文化系の見た目の彼女が実はロープ登りを得意としているようにも見えない。
 ……だとすると無理が無いか、この案は。
 僕と先輩が少しずつ疑問を抱き始めると、当の飛月も「あれ、あれれ?」と戸惑いだした。
 そして、そこに苑部さんが止めを刺した。
「それにね、飛び降りてすぐに袁さんが外を見たんでしょ? なのにロープを登る姿を見たって証言が無いのはおかしいわ。あと、あなた達も落ちた直後にこの建物の上の方を見たんじゃないの?」
「あ――!!」
 すっかり“人の目”という存在を失念していた。
 何よりも僕達も確かに落下直後にどこから落ちたのかと思い無意識のうちに上のほうを見ていたことを忘れていた。
 視力は人並みだが、あの時怪しい姿はどこにも無かったはずだった…………。
 ここに来て疑惑が出てきたことに対して、さぞや飛月はがっかりしているだろう、うつむいて黙ったままだった。
 そんな姿を見て、僕はまた慰めの言葉をかけようかと思い、肩を叩こうとする。だが――
「まだよ、まだ終わらないわ!! 私は九十九飛月、後ろを振り返らない女よ!!」
 飛月は元気だった。
 だが、偶には後ろを振り向いてくれ! と思ったのは口にしない。



 『現場百遍』なんて言葉、誰が考えたのだろう。
 などと思いながら、僕達はミステリ王道の行動であるソレを実行に移していた。
 現場である教授室の前には、制服警官が立っていたが、苑部さんの口利きによって難なく中へ入ることが叶った。
 と言うわけで、先輩がノブを握り、ドアを開くわけだが…………

 キィィィィィィィ!!

 とドアを開いただけで、耳を塞ぎたくなるような嫌な音がしてきたのだ。
 飛月なんかは露骨に耳を塞ぎ、嫌な顔をする。
「うわっ! 何なの、このうるさい音は?」
「こりゃ、蝶番がイカれてるんじゃないかな」
 開くときも凄いが、その後閉める時も同様の嫌な音がしたのは言うまでも無い。
「これだけ大きい音だったら、誰かがドアを開閉したら研究室の中にいてもすぐに分かるわな」
 室内に入り、閉まったドアを見ながら一人心地にそう呟いた。
 そして、改めてその廊下側のドアから奥行き方向に長い室内を見渡す。見渡すと行っても、狭い室内なのだが。
 一応、現場検証は一段落ついたのであろう、中に人は誰もいなかった。
 そんな室内を、飛月と先輩は縦横無尽に見て回りはじめた。
「特別に入れてあげているのだから、勝手に室内の物に触れないように! 特にあなた方二人はね」
 苑部さんが念を押すように、動き回る二人に注意する。
「莞人氏と飛月氏ならご心配なく。彼らはとても優秀な会員ですから、そのような不躾な事は致しません」
「あのね……あなたと九十九さんに言ってるんですよ」
「って、あたしは確定なの!?」
 狭い室内に女性の姦しい声が響く中、部屋調べは続いたが、どうにも新発見は無い。
 秘密の抜け穴もなければ、鍵穴やツマミに細工をした跡も無い。
 もっとも、そんなものがあれば、警察が先に見つけているはずだが。
「やっぱり駄目ですね……」
「えぇ。この部屋は、窓が開いているのを除いたら、かなり完璧に閉鎖された空間のようですね」
 時間だけが過ぎてゆき、暴走気味だった二人ですら疲労の表情を見せる。
 今は、窓際で一休みしている最中だ。。
 かくいう僕も、壁に寄りかかってい天井を見ていた。黄ばんだ天井を…………。
 ……ん? 黄ばんだ?
 まさかと思い、寄りかかっていた壁から離れ、よく壁を見てみる。
「うわぁ、こりゃまた……」
 今度はデスクの方に目を見やるがやはり予想通りだ。
「どしたの?」
「ん? あ、あぁ。入瀬教授って余程の愛煙家だったんだなぁ、って思ってさ」
 飛月の問いにそう答えてやると、彼女は「どうして?」と言わんばかりに首をかしげた。
「ここの壁や天井がさ、よく見てみるとヤケに黄ばんでるんだよ。これって、ただの老朽化じゃなくて多分、煙草のヤニが主要因だと思うんだよね」
「ふ〜ん……。あ、でも言われてみれば、研究室やさっきの会議室よりも黄色っぽいかも……」
「だろ? でさ、灰皿見たら案の定吸殻の山ってワケ。つまりは、随分前から煙草を吸い続けた影響で黄ばみが進行したんだろうなぁって思ったんだ」
「成る程ねぇ。で、それと密室の関係は?」
「いや、特に。ただそう思っただけイテッ!」
 僕が最後の“け”の発音をしたと同時に飛月の拳骨が頭頂部に炸裂した。
「まったく! 真面目に考えなさいっての!!」
 何かモロ教え損だったようだ……。受講料を拳骨で返されるなんてどんな教育システムなんだ……。
 と、頭の痛みがひくのを待っていると、不意に研究室側のドアが開き、人が入ってきた。
「鑑識には下がらせたはずなのに隣から壁越しに声がすると思えば……やっぱり君達だったか」
「警部!!」
 入ってきた人の正体は源警部だった。
 苑部さんが急にかしこまり、背筋をぴんと伸ばす。
「あぁ苑部君、ご苦労様だね。それで、どうだい君達? 密室の謎とやらは分かったかい?」
 警部の問いに対し、きまずくなる僕達。
 だがそんな中、飛月が口を開いた。
「あ、あの……あたしの思いついたことなんですが…………」
 飛月は自分が先程考えた推理に一縷の希望を懸けて、警部に説明をした。
 すると次第に、警部の顔は、真剣になっていった。
「――ということなんですが……」
「確かに、密室と言うには不完全だったなぁ、この部屋は……。成る程、うまくそれを利用したと言う事ですか」
 警部が食いついたのを見て、先輩も身を乗り出してきた。
「何か野次馬達の中の目撃情報は届いていませんか? これに該当するような人を見たという」 
 しかしそれに対する警部の答えは、ノーだった。
「いや、今まで下で話を聞いていたのだが、落下直後に目撃した人の証言の中にもそのような人が見えたなどという証言はなかったな……」
「そ、そうですか……」
「いや、発想はいいと思うんだよ。だけど如何せん、こんな真昼間から突拍子もなくビル登りをするとは思えんしねぇ」
 冷静に考えれば、まさにその通りだ。
「しかし……そうなるとあの教授室での犯行が、やっぱり困難を極めるという事になりそうですね……」
 先輩が考え込む仕草をする。
 鍵無しに外側から施錠が出来ない。しかも鍵は事件当時犯人の手の届かない場所にあった。
 更に、窓からも脱出できない。
 確実に鍵が閉まっていたので、心理トリックも使えない。
 ここまで条件が揃っていると、状況はむしろ『教授室での犯行は不可能』というところまで来ているのではないか?
 でも、そうなると他殺説を全否定してしまう事となる。
 ということは、つまりはこれは自殺と言う事。……本当にそれでいいのだろうか?
 遺書は書かれておらず、死亡する直前に学会での発表について考えていた、更には落下時に悲鳴を上げていた……自殺する人間がする行動だろうか?
 やはり、飛月や先輩の言うとおり、他殺説も考える必要があるのではないか?
 だが、他殺説を考える上で最大の障壁は教授室の密室状態。
 今までの情報を集めた結論は『教授室での犯行は不可能』に近いということ。
 要するに、教授室はいつも通りだったということ。
 となると他殺説は否定された事と等しくなり――って、振り出しに戻ってるし……。

 ――だが、そんな堂々巡りをしているうちに、僕は一つの仮定をふと思いついてしまった。
 ――それは、今まで気付かなかったのが余りに馬鹿馬鹿しすぎるような仮定。
 ――それは同時に盲点でもあった仮定。
 ――これが真実なら他殺説が具体化することとなる。
 ――さぁ、どうする? この突拍子もない仮定に懸けるか?

 僕がそんな思索をしていると、隣に立っていた警部は腕時計を見ながら、苑部さんに声を掛けていた。
「あぁ、もうこんな時間か。あ〜苑部君? そろそろ引き上げる準備をしておいてくれ」
「は、はい。了解です」
「えぇっ!? もう引き上げるんですか!?」
「あぁ。現場検証も一通り終わったし、後は所轄の方と下の鑑識に任せて戻ってこいとの課長からの命令だからね」
「何とかなりませんか? 何なら私が一言叔父様に…………」
 飛月や先輩達は、引き上げに反対していた。 
 警部と苑部さんが引き上げてしまったら、恐らく僕の推理を真摯に聞いてくれる刑事がいなくなってしまうだろう。
 先輩の謎の圧力があればもしかしたら現場にはいられるかもしれないが、話を聞いてくれるかどうかは怪しい。
 だとすると、僕の推理は引き上げ前に言わないと意味を成さないということだ。
 けれども、それと同時に「これが間違っていたら恥をかくんじゃないか?」という不安感も募るのもまた事実。
 どうする? 言うか? それとも言わないのか!? 
 だが、そんな迷いの中、ふと彼女の言葉を再々度思い出した。

 ――立ち止まらずにとにかく前進あるのみ! そんな心持ちで挑まなきゃ!

 そうか、そうだよな……。
 先輩だって飛月だって、恐れずに推理を披露したじゃないか。
 ここで躊躇って言わなければ、何も得るものはないが、もし言って皆に知らせれば、何か新たに得るものがあるかもしれない。
 推理を披露する事を躊躇っちゃいけない!!
 僕は遂に決意した。
 決意の後の行動は早かった。
「ちょっと待ってください!!」
 引き上げに反対していた飛月と先輩の声が響く中、僕は、今日一番の大声を張り上げたのであった。



 僕の声に、飛月や香良洲先輩、そして源警部に苑部さんもこちらを向いてくれた。
「ひ、引き上げるって言うのなら、その前に聞いて欲しい事があるんです」
「聞いて欲しい事?」
「ま、まさか莞人、分かっちゃったの!? あの密室の謎が!」
「う、うん。まだ確証はないけど…………」
 すると、飛月だけでなく先輩までもが興奮してこちらに迫ってくる。
「ほ、本当なのか、莞人氏!?」
「早く教えてよ、どんなのかさ。さぁ!」
 期待の目を向けられ、再び不安に駆られるが、もう僕は逃げない。
 ここでまずは話してみなければ何も始まらない!
「うん。これはそもそもさ――」

 僕の推理を二人、そして警部と苑部さんも真摯に聞いてくれた。
 僕が大体を説明し終えると、彼女等は、僕の突拍子も無い推理に驚き、そして感心の声を上げてくれる。

「す、凄いじゃない莞人!!」
「矛盾の無い素晴らしい解答です!!」
「あ、いや、そこまで言われるような価値があるかは、まだ分からないよ……」
 とか言っているが内心、褒められてものすごく照れている。
 だが、これを有用かどうか判断するかは、警部達、警察次第だ。
 僕は、反応を見るために警部達の方を向いた。
 見ると警部は、決してあざ笑ったり呆れるような表情をせずに、真面目な顔で考え込む仕草をしていた。
「そうか、その手があったか」
 どうやら手ごたえはあったようだ。
 だが、一方で苑部さんは難しそうな顔をしていた。
「確かにこの方法なら、他殺説を主張する事は出来ますが……」
「や、やっぱり駄目なんですか?」
 恐る恐る尋ねると、苑部さんもばつが悪そうな顔をする。
「確かに方法論だけで言えばこれでいいかもしれない。だけどね、物的証拠が無いと犯人を確保する事は難しいと思うわ」
「物的証拠……」
「そ。犯人がこれをやったっていう証拠が無いと後で証拠不十分で釈放して、誤認逮捕だなんだで後で叩かれるわけで、そこら辺慎重になっちゃってるのよ」
 苑部さんの言い分は分かる。
 証拠がはっきりと提示できなければ、いくら本当の犯人が分かったところで取り逃がしてしまうのだ。
 だけど、今回の僕の推理では提示できる証拠はせいぜい……
「証拠になりそうなのは×××××に×××いる×××××か、例の証言くらいですよ」
 だが、これでは物証としては弱いかもしれない。
「そうね……。せめて犯行に使った×××××××が見つかればこっちも確実に捕まえられるんだけどね」
 だが、そんなものが都合よく見つかるはずも無いだろう。
 見つかる前に、犯人に処分されてしまうのが関の山だ。
「言っている事はもっともなのだがなぁ……どうしたものか……」
 警部も最後の最後で手詰まりとなった事にがっかりきているようだ。
 彼ら警察が僕の推理を信じている事はとても嬉しかった。
 だからこそ、今のこの状況が嬉しい以上に悔しかった。
 何とか、ならないのか?
「何とかできる案ならありますよ」
 僕の心を読んだかの如くのタイミングで、先輩が力強くそう答え……いや、言った。
「人間、やろうと思えば何とかなるものです。どうでしょう、飛月氏?」
「そ、そうよ! 人生は『成せば成る、成さねば成らぬ、何事も』なのよ!」
「成せば成る……か」
 飛月が言うと、それっぽく聞こえるのは何故だろう?
「で、君はどんなことを考えているんだい?」
 警部の問いに、先輩は真面目な顔になる。
「これにはあなた方警察の協力が必要不可欠です。分かりますか?」
「あぁ。私は莞人君の推理に懸けてみようと思う。だから君の案が妥当なら進んで協力しよう。苑部君もいいかい?」
「わ、私だって真実を目の前にみすみすそれを見逃すようなボンクラではありません! 真実の為なら協力しますよ」
 どうやら警部たちも協力体制を敷いてくれるようだ。
 本当に何から何までありがたいことだ。
 先輩と一緒に僕と飛月も頭を下げた。
「ありがとうございます。では、犯人追い詰め作戦の概要ですが――」
 先輩の作戦説明が始まった。
 この作戦を実行したら、もう後には退けない。
 だがもう僕だって、それなりの覚悟を持ってこの推理を皆に伝えたのだ。
 後は作戦が成功し、犯人が明確になるのに期待するしかない。
 いや、期待というのは確率的すぎるかもしれない。

 
僕達は確実に犯人を見つけ出さなければならないのだ!!





 【第零回 出題ミニ(?)コント】
 莞:莞人  飛:飛月  香:香良洲

 莞:とまあ、ようやく出題に漕ぎ着けたわけですが。
 飛:相変わらず文が長いわね。
 香:投稿した中では自己最高記録を出したって言ってたわ。
 莞:そんな記録を出されてもねぇ……。
 香:ところで……ここでも前置き長くしてしまっていいのですか?
 莞:そ、そうですよね! で、では手短に出題をどうぞ!!


 Q1:
 今回の事件の犯人は誰でしょうか?

 Q2:
 上記で挙げた犯人は、如何にして犯行を実現したのでしょうか?


 香:前置きより短い出題ですね。
 莞:……ち、ちなみに、「注意と補足」はいつも通りだそうで、省略するそうです!
 飛:それってただ面ど…もがっっ!
 香:ふふふ……飛月氏? 世の中知らない方がいいこともあるのですよ。
 飛:ぷはっ! はぁはぁ……。分かりましたよぉ……。そ、そういえば今回はヒントは無いの?
 莞:う〜ん………まぁ、しいて言えば実は答えみたいな事はここで出しちゃっている、ってことかな?
 飛:あぁ、成る程ね。それは確かに……。
 莞:解答してくれるという方はメールもしくはBBSでの感想レスに白文字書き込みでお願いします。
 香:解答に対する返信は、解答編掲載後になるので、ご了承下さい。
 飛:難易度低いぞ〜、とか、こんな話どこどこで見たことあるぞ〜、といったご意見も大歓迎です。
 莞:この作者にはいい薬になりますので。
 香:では、次回『偽りの蒼穹 人の巻』でお会いしましょう。御機嫌よう。


 <人の巻へ続く!>




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