一号棟十九階応用化学科、入瀬研究室。
 ここには、研究室の関係者である助手の穂積ほづみ恭一きょういちさん、院生のえん秀玄しゅうげんさんと栗林くりばやし裕美ひろみさんが警部の呼びかけによって再び集められていた。
 僕も、その場に立ち会っている。飛月と先輩は用があるといって席を外しているが。
 警部は、今までの捜査状況を簡潔に説明、結局自殺である可能性が極めて高いということと結論付けていた。
「……では、そういうわけですので、今日は我々は引き上げるとします。もし何か気付いた点がありましたら、管轄の署か私どもの方へ――」
「ちょっと待ったぁぁーーー!!」
 聞き覚えのものすごくある声が耳に飛び込むと、今度はいきなり、研究室のドアが開いた。
「今、自殺って事で纏めようとしてたでしょ? なら、その前にあたし達の話を聞いて!」
「我々が、今回の不可解きわまる転落事件に、一筋の光を与えてあげましょう!」
 中に入ってきたのは、言わずもがな飛月と香良洲先輩である。
 二人の、余りにも大袈裟な登場の仕方に、周囲は呆然としてしまう。
「え、えっと……君達は、つまり私達に何か言いたい事があるのかな?」
 警部がたまらず、そう聞きなおすと二人は強く頷く。
「えぇ。あたし達の推理が正しければ、それは自殺なんかじゃないの!」
「なっ……! じゃ、じゃあ、これは他殺だとでも言うの!?」
 苑部さんが、二人を睨む。
 だが、二人はひるまない。
「その通りです、苑部刑事! これはれっきとした殺人なのです! そしてその犯人は……この中にいるのです!!」
 香良洲先輩が力強く指差したのは、三人の研究室関係者が立っている位置。
 つまり……穂積さん、袁さん、栗林さんの内の誰かが入瀬教授を殺したと言っているらしい。
 これには、三人もまさかの展開であり、穂積さんあたりは驚きから怒りへと表情を変えている。
 そして怒鳴ろうとするが、それよりも先に先輩が口を開く。
「単刀直入に申し上げましょう。今回の犯人は……あなたです!!」


僕と彼女と探偵と
〜偽られた蒼穹〜 人の巻

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 犯人はあなた――そう言って指差した先。
 そこには、三人の中で右端に立っていた紅一点の院生がいた。
「そう、入瀬教授を自殺に見せかけ、十九階から墜落死させた犯人は栗林裕美さん、あなたなのです!!」
 空気が張り詰める。そして生まれる一瞬の沈黙。
 それは、他ならぬ栗林さんによって、打ち破られる。
「え、そ、そんな……わ、私!!」
「言い訳無用です。私達は、あなたには今回の犯行が可能であるという説明が出来るのですから!」
 栗林さんの言葉など無視するように、先輩が歯切れ良く、言葉を紡ぐ。
「説明って……あの、閉鎖された教授室での他殺方法を、かい?」
 警部の問いには飛月が頷く。
「そうなんですよ。……っていうか、あれはそもそも完全な閉鎖空間じゃなかったんです。ほら、窓が開いてたでしょ? そこを利用すれば――」
 それから説明されたのは、先程飛月が僕達に説明してくれたロープを用いた密室脱出トリック。
 そして、それを出来うるのは時間的余裕のあった栗林さんのみという事も、飛月は付随して解説した。
 だが、それは既に証言や体力的条件から遂行困難だと分かっているはずのトリック。

 ――では、何故今になってそれを説明しているのか?

 その理由は、これが先輩の考えた犯人を追い詰める“作戦”だからだ。
 この作戦を知っているのは、僕達と警察関係者、そして僕が犯人と推理した人以外の二人の容疑者。
 つまりは、犯人推定者以外の立ち会っている全員が知っているドッキリのようなもの。
 これはある意味、一か八かの懸けである。
 だが、確実な証拠を見つけるためには、先輩の作戦に懸けるしかなかったのだ……。

 飛月の推理が終わると、警部は予定通り納得したような顔をする。
 一方で、栗林さんはというと当たり前だが、懸命にそれを否定していた。
 だが、作戦の都合上、それを素直に聞くわけでもなく、警部は事情を詳しく聞きたいといって、栗林さんに任意同行を求めた。
 苑部さんの懸命な説得もあったお陰で、最終的には栗林さんは同行に同意し、こうして作戦の第一段落は終わろうとしていた。
 そして、栗林さんと苑部さんが一緒に部屋を出て、警部もそれに続こうとした時、先輩がもう一度呼び止めた。
「そういえば警部殿。捜査の段階で何か金槌やスタンガンといった物は見つかりませんでしたか?」
「いや……受けた報告の中には、そのような物は無かったが……」
「そうですか……。これが他殺だった場合、犯人は入瀬氏を落とす前に、彼を何らかの形で気絶させる必要があるはずなんです。もしそういった物品がどこかから見つかれば、確実な証拠になるはずなのですが……」
 警部も納得したような顔になる。
「それで、もし見つかっていないとすれば、それは適当な場所に捨てずに、犯人が持っているか隠していると思うんですよ」
「成る程……。では、日を改めてこちらを訪れて、調べてみようと思います。彼女の所持品やロッカー、それに現場になった第二会議室。探すところも恐らく限られるでしょうしな」
「えぇ。きっと見つかるはずですよ、きっと……」
 先輩は、ニヤリと口元だけ笑う。
「了解しました。――では、今日はこの辺で」
 そして、警部は研究室を去っていった…………。



 日が落ち始め、空を染める色が青から朱へと移ろいでゆく中。
 主を今日亡くした研究室。
 今は、誰もいない朱に染まる研究室。
 そんな薄暗い無人の部屋のドアが突然開き、一つの人影が中に入っていった。
 それは、照明のスイッチも入れずに室内を歩き、ある場所の前で立ち止まる。
 立ち止まった先にあるのは、院生や助手達が使うロッカー。
 数あるロッカーの扉の一つに手が伸び、そのまま扉は開かれる。
 その扉に付けられていた名札に書かれていた名前は――――栗林裕美――――。
 人影は、持っていた鞄の中から“それ”を取り出すと、そのロッカーの中に入れ――

 カチッ!

 ――ることはできなかった。
 いきなりついた照明の眩しい光に、思わず手を引っ込め、あたりを見渡したからだ。
「そこまでです!」
 凛とした声が、研究室に響いた。
 驚いた“その人”が、声のするほうを向くと、そこには香良洲先輩が立っていた。
 いや、先輩だけじゃない。飛月や源警部、苑部さんや“その人”を除いた研究室の二人もいる。
 そして、当然僕も。ちなみに、さっき電気のスイッチを入れたのは僕だ。
「とうとう尻尾を出したわね、真犯人さん!」
 指を差して高らかに喋る飛月に、向こうも戸惑っているようだ。
「あたし達はもう分かってるのよ。あなたが犯人だってことにね! そうでしょ、莞人?」
 ここで僕の名前を出されたのは段取り通りではなかった。
 だけど飛月に促されたので、とりあえず前へ一歩出る。
「他殺の可能性……僕がそれを探っていった結果、あなたが犯人だと辻褄が合う部分が多く出てきたんです」
 心臓が高鳴る中、僕は次の言葉を選ぶ。
「ですが、犯行を示す物的証拠はありませんでした。だから、先程は先輩や警察の皆さんの協力を得て、とある作戦を実行しました」
 喉が異常に渇くような感覚に襲われる。
 体中が緊張で震えようとしているのを、必死に堪えているのが分かる。
 だが、僕は喋り続けなければならない。これが僕の責務なのだから……。
「それは、あなたが本当に犯人だった場合、ここへと来るように誘導する作戦。そして、あなたがここへと現れたことで、疑惑は確信へと変わりました」
 緊張はピークを迎える。
 そしてそんな中、僕はあの台詞を遂に口にしてしまう。

「やっぱり、あなたが犯人だったんですね! ■■■さん!!」


 ――――


 時を遡ること数時間前。
 推理を話し始めた僕に、飛月がいきなり食って掛かってきていた。
「ちょ、ちょっとどういうこと!? 『犯行はここで行われていなかった』って!?」
 飛月が驚きながら、食って掛かるのも無理はないと思った。
 僕が語ろうとしているのは、今回の事件における大前提を色々と覆して成り立つ推理なのだから。
「この教授室が落下当時に閉鎖空間で、犯行が不可能だって言うんなら、犯行が別の場所で行われたっていう可能性も疑うべきだったんだ」
「でも、あたし達は、確かに入瀬先生は教授室の真下に落ちたのを見たじゃない。それなのにどうして……」
「落下地点の真上には、この教授室以外にも窓がある部屋があるよね? 例えば――」
 そう言うと、僕は天井を指差した。
 皆の視線も、自然とそちらへと向く。
「教授室の真上、二十階の第二会議室とかね。あそこの窓から落としても、落下地点は同じになるはずでしょ?」
 僕は加えて、そここそが真の犯行現場じゃないかと疑っていると説明した。 
 すると警部がうぅむと難しげに唸る。
「つまり君は、落下場所がこの教授室の真下だったから、ここから落下した……というのは思い込みだというのかね?」
「はい。それこそが今回、他殺説を否定的にした最大の先入観だったんだと思います」
「しかし、実際にこの部屋の窓は開いていたんだぞ。それは……」
「教授はヘビースモーカーのようでしたから、恐らく換気目的で常日頃から窓を開けていたんだと思います。もし、そうでないにしても犯人が事前に入瀬教授に開けるように指示しておく事も出来ますし」
 まさか、煙草の事まで推理に引っ張ることとなるとは、夢にも思わなかったが。
 だが、それでも警部は釈然としないようだ。
「それと……入瀬さんは落下直前、確かにここにいたんじゃなかったのかい? それはどう説明する気だ?」
 警部がぶつけた次なる疑問。
 それこそが、今回の二つ目の先入観だ。
「では、警部はどうして入瀬教授がここにいたのだと信じているんです?」
「それは、袁さんが外に出ていた入瀬さんが戻ってくるのを確認したいう証言を元に……って、まさ――」
「分かりましたわ! つまり入瀬氏の帰還を偽証できる立場にあった袁さんが犯人なのですね!」
 いきなり先輩が割り込んできた。
 正解である事を認めてほしいのか、僕の顔を覗きこむその目は、キラキラと輝いていた。
 僕はそんな輝きに思わず、胸をドキリとさせられてしまうが……。
「確かに! そう思うかもしれないですが、僕的にはそれは違うと思うんです」
「そ、そうなんですか……!?」
 肩を落とし、落胆した表情で溜息をつく先輩を見て、何か悪い事をした気もする。
 だが先述の通り、袁さんを犯人とするのは不適切だと僕は思うのだ。
「さっき僕が言ったみたいに、第二会議室から入瀬教授を落とす場合、当たり前ですが研究室を出なくてはなりません。そうすると、穂積さんがトイレに行っていたという事が障害となるんです」
「な、何でよ! 何でよりにもよってトイレが?」
「袁さんが犯人だった場合、少なくとも会議室の往復の為に外へ出るよね? もし、その時トイレから戻ってきた穂積さんと出くわしたら、自分はずっと研究室にいたっていう証言が出来なくなるんだよ。
 そうなったら、入瀬教授が教授室に戻ってきた云々の件の証言もあやふやになっちゃって、折角の自殺偽装も台無しになる可能性が出てくるはずだ」
 少なくとも、これを他殺とした場合は計画的犯行になる。
 特に今回は自殺に偽装する殺人計画なので、他殺の線を浮上させないようにするのが計画の最優先事項だ。
 だからこそ、自殺という結論に導く為のキーの一つである自分の証言を揺るがすような事態はまず避けるはずなのだ。
 飛月は、そこの理解が追いついていないのか、さっきから唸ってばかりだ。
「む〜……ナンか言ってる事がややこしいけど、じゃあ袁さんが犯人じゃないなら、証言は偽証じゃないって事でしょ?」
「うん。むしろ、袁さんは犯人に利用されたんだと思う」
 そう、犯人は証言を偽ったのではない。
 証言者である袁さんを偽ったのだ!



「犯人は袁さんに、『入瀬教授が部屋に戻ってきた』っていう証言をさせたかったんだ」
「それはつまり、袁さんがそのように錯覚するよう、犯人が偽装工作をしたということですか、莞人氏?」
 先輩の問いに、僕は首を縦に振る。
「先輩は、そもそも袁さんが、どうやって入瀬教授の帰還を知ったか覚えていますか? 実際にその姿を見て確認したんでしたっけ?」
「いいえ。姿は見ていませんが、ドアが開いて閉まる音がしたのでは? ここのドアは蝶番が五月蝿いので聞き間違いはないはずですし」
「そうですよね。だとしたら、誰がドアを開け閉めしてもその音は出るということじゃないですか?」
「……あ!」
 どうやら先輩は気付きかけているようだ。
 そして、警部や苑部さんも、同じようにはっとした表情となる。
 だが飛月だけは、相変わらず難しい顔をして悩んでいた。
「だからぁ〜、そんなまどろっこしい言い方しないで、はっきり簡潔に説明してってば!」
「ぐぁっ、わ、分かったから、手首を圧搾しないで……お、折れるからっ!」
 迫る飛月による実力行使で、僕の両手首は危機的状況に陥っていたが、説得が効いたようで何とか一命を取り留める事は出来た。
「だ、だから、廊下側からドアを開けて、そのまま廊下側から閉めてやるんだ。そうすれば、音だけ聞いた袁さんは経験則で中に人が入ったものだと錯覚するって訳だよ」
「あ、そうかそうか! ……って、でも鍵は掛かっていたんでしょ? それはどうしたの?」
「鍵は入瀬教授が持っていただろ? だったら、落とす前に気絶でもさせて奪えばいいんだよ。使った後に元のポケットに戻してやればいいし」
 もしくは、鍵をあらかじめ教授から借り受けていた可能性もあるが、ここでは先述の仮定で話を進めておく。
「なるほど〜。なんか、この前の事件のときの電話と同じ要領って事は分かった」
 ……どうやら、納得してくれたようだ。
 飛月の言った通り、これはこの前の和光さんの事件のときのトリックと似ているかもしれない。
 すると今度は、苑部さんのほうから声が上がった。
「莞人君の言う事を信じるとすれば、犯人は袁さん以外……外に出ていた穂積さんか栗林さんということね。……そうすると二人とも疑わしいけれど、犯人は特定できるのかしら?」
 研究室の外に出た事を名言している二人。
 彼らなら、第二会議室へ向かっても不自然ではない。
 だが、この殺人計画を一番滞りなく実行できるのは、唯一人しかいない。
 何故ならば――。
「事件の少し前。入瀬教授はどこへ外出したと思います?」 
「外出したけれど戻ってこないで、転落死した……となれば、あなたの推理どおりなら第二会議室に向かったんでしょうね。恐らく犯人に呼び出されて……」
「僕もそう思います。何度も言うようにこれは計画殺人ですから、事前に適当な理由を作るなりして、日時を指定して犯行現場に呼び出した可能性が極めて高いです」
「だけど、それがどうしたっていうの?」
 苑部さんは不思議そうな顔をするが、この点こそが重要だ。
「その外出の際、教授は研究室に立ち寄って、印刷の頼み事をしましたよね。それを引き受けたのは誰でしたっけ?」
「栗林さんですよ。そう証言してますし、周囲も認めています」
「そうです。だとすると、栗林さんは呼び出された入瀬教授を放っておいて、四階へ行ったという事になりますよね。もし、栗林さんが呼び出したのだとしたら、そんな事は入瀬教授に疑われるし、しないはずです」
「た、確かにそうね……」
「しかし、敢えて頼まれごとを引き受ける振りをして自分も第二会議室へ行ったという可能性もあるのでは?」
 警部の仮定も尤もなものだ。
 だけど、これに対する反論も用意してある。
「そうだとすると、入瀬教授も当然、その時に彼女と一緒に二十階へ行った事になりますよね。……ですが、だとすると穂積さんが教授をトイレで見たという証言に矛盾が生じませんか?」
「……うぅむ。そういえばそのような証言もあったな」
「更に言うならば、そもそも第二会議室へ向かったはずの入瀬教授をトイレで見かけたという証言自体がおかしいと思いませんか?」
「そうだな……。トイレへ行ったというのはあくまで教授室へ戻ってきたという仮定の上に成り立っていることだったからなぁ」
 もう、ここまで言ったら、犯人は一人しかいない。
 それはつまり、トイレで穂積さんと入れ違いになったという偽りの証言をした“あの人”。
「つまり、僕が推理によるならば、妥当な犯人は――――」



 ――――



 ――「やっぱり、あなたが犯人だったんですね! 穂積さん!!」――

 時を戻して、夕刻。僕はその犯人の名前をついに口にした。
「な、何を言ってるんだ、お前……。犯人は栗林じゃなかったのか?」
 名指しされた穂積さんは、驚き呆気に取られた様子だ。
「ですから、栗林さんが犯人という推理のも全て演技だったんですよ」
「事前に彼女とは打ち合わせ済みだったの。勿論、一階に下りたらすぐに釈放したわ」
 警部と苑部さんがそう言うと、栗林さんが穂積さんから顔を逸らした。
 穂積さんは、今度は袁さんの方を睨む。
「袁……お前もグルだったのか?」
「ぼ、ボクは最初っから自殺なんテおカシいと思っテタんだ! ダ、だカら――!」
 袁さんは声を震わせながら、必死に弁解をする。
 だが、穂積さんはそれを全く聞こうとしない。
 彼の顔に浮かんでいるのは、相変わらずの呆れた表情。
「ったく、どいつもこいつも……。そんなに俺を犯人にしたいのかよ。だったら説明してもらおうか? あの密室になっている教授室で俺がどうやって――」
「いいえ。それは説明する必要が無いんです……。何せ――」
 僕は、飛月や警部達が納得してくれた自分の推理を一つ一つ、穂積さんに茶々を入れられながらも説明する。
 真の犯行現場は教授室ではなく、一階上の第二会議室である事。
 ドアの開閉音で、袁さんに入瀬教授が戻ってきたように錯覚、証言させた事。
 そして……、穂積さん本人の証言が矛盾しているという事も……。
 説明していくうちに、穂積さんの顔にも少しずつだが焦りが見え始め、最終的には顔が明らかに蒼くなっていた。
「犯行までの一連の動きを纏めます。まず、事前に第二会議室へ呼び出しておいた入瀬教授が動いたのを確認して自分もそちらへ赴き、そこで彼を何らかの方法で気絶させます。その時、鍵を奪っておくんです。
 そうしたら一旦教授室の前まで戻り、そこで例の音の偽装を済ませて鍵を掛けます。後は音を立てないように会議室へ戻り、鍵を戻してから入瀬教授を落とし、研究室へと戻れば終わりです。
 穂積さんでも十分に可能な行程だと思いますが……どうでしょう?」
 そう締めくくる僕。
 もう、緊張もピークを越え、逆に喋りにも異常なまでの落ち着きが出てきていた。
 だが彼は、それでも反論する。
「馬鹿な! あくまでそれは推論だろうが! しょ、証拠はあんのか!?」
 穂積さんの罵声に、飛月が反撃する。
「だから、その証拠ってヤツを見つける為の作戦を実行したと言ってるでしょ! さぁ、隠した物を出しなさい!!」
 飛月が指差すと、あからさまに慌てた表情になる。
 すると、そんな彼へと警部と苑部さんが近づいてゆく。
「はいはい、ちょっと失礼しますよ〜。その隠している物を見せてくださいね〜」
「あ、ちょ、ちょっと! 何なんだよ、いきなりっ!」
 穂積さんが後ろ手に隠していた“それ”を、警部が取り上げた。
 “それ”は、黒く短い棒状の物体だった。
 警部がそれを苑部さんに渡すと、彼女はそれに触れ、先端を持って伸ばてみせる。
「……紛うことなき特殊警棒ね。ご丁寧に血痕まで残してくれちゃって」
 血痕……これはもう逃れようのない証拠だ。
「これで入瀬さんを殴って気絶させた、と見て間違い無いわね」
「そ、それは、俺のじゃなくてっ……」
 穂積さんは必死に弁解するが、最早それも白々しい。
「これは……そう! 忘れ物があったから戻ってきて、で、間違って栗林のロッカーを開けたら、偶然落ちてきたのを見つけてだなぁ……」
「え、えぇぇ!?」
 いきなり名前を出されて驚く栗林さんを見て、穂積さんは更に続ける。
「そうだよ! あいつの言うとおりだとしても、栗林が犯人って可能性だって十分にあるじゃないか!」
「そ、そんなっ! わ、私……」
「いい加減になさいっ! 人に罪を擦りつけようとする下衆が!!」
 調子付く穂積さんを一喝したのは、飛月でも苑部さんでもなく、あの香良洲先輩だった……。
「この部屋には袁さんの協力で、隠しカメラを仕掛けてあったのです。ですから、あなたが何をしていたかはもう我々の知るところなんです!」
「なっ、か、隠しカメラ!? え、えっとその……」
「私も見ましたよ。あなたがその血に汚れた証拠を栗林氏のロッカーに入れようとしていたところを! それなのに、何て往生際の悪い……」
 穂積さんは、後日捜査に来るという警察に栗林さんが犯人である事を確定させる為に、そのような事をしようとしたのだろう。
 このような行動に至るだろう事も先読みした先輩の作戦は結果として、ものの見事に成功し、その先輩によって穂積さんは追い詰められていた。
「お、俺は……俺は……」
 最早、穂積さんは言い訳も出ないほどになっていた。
「それとですね、穂積さん――」
 僕は そんな彼に言おう言おうとしていた事があった。
「偶然見つけたんだったら、何で“手袋”なんてしてるんです? 今、夏ですよ?」
 それは恐らく、指紋をつけないための措置。
 だけど今の季節は夏で、室内で手袋というのは異質極まりないわけで……。



 結局、これ以上穂積さんの口から反論の言葉が出ることは無かった。
 すると、今度は袁さんが声を張り上げた。
「ホ、本当に殺しタのカ!? 穂積助手!」
 その大きな声に、皆が袁さんの方を向く。
 だが、一方の穂積さんは黙ったままで、袁さんは引き続き叫ぶ
「何とカ言って下サいヨ! どうシてなんデス!? ヤッパり例の助教授昇カ――」
「あぁ、そうさ……。それのどこがいけない……」
 今度は答えた穂積さんだが、その声は震えていた。
「あいつが……あいつが助教授の推薦をしてくれれば……」
 助教授――確か、教授室での聴取でも袁さんが穂積さんに対して、助教授推薦云々と言っていたような気がする。
 恐らく、穂積さんが助手から助教授へと昇格するには教授の推薦が必須だったのだろう。
 そして、その推薦を入瀬教授はしてくれなかった。……大方こんなところだろう。
 念のため、栗林さんに小声で聞いてみると、その通りだった。
「学部も院も主席だぞ? 優れた論文だっていくつも出したんだぞ? 俺は助教授になれる器だったんだ! それなのに……あいつは……あいつは!!」
「いえ、私は入瀬氏は正しかったと思います。あなたには助教授になる資格などありません!」
 先輩は、極めて冷静に、だが力強く断言した。
「何だとぉ……!? 俺の事をしらない女にそんな事を言われる筋合いは――」
「あなたのように、自分の思い通りに事が進まないだけで人を殺すような身勝手な輩になど、助教授どころか助手、いえ研究者として相応しくありません。入瀬氏も、あなたのそのような性格を鑑みて推薦を与えなかったのでしょう」
「き、貴様ぁ……言わせておけば言いたい放題……」
 穂積さんは怒り心頭といった感じに肩を震わせていた。
 だが、対する先輩は冷静なままだ。
 ヤバイ……。僕の脳内ではエマージェンシーコールがレベル最大で発令されている。
「ちょっと……先輩、あまり挑発すると……」
「ですが、事実です」
 あぁぁ……そんな大声で言ってしまうと……。
「ふざけるなぁっ!!」
 穂積さんの叫び声。
 そして、苑部さんが持っていた特殊警棒を奪い取ると、その警棒で彼女に殴りかかる。
「きゃうっ!」
「苑部君!」
 倒れる苑部さん。
 警部の注意が、苑部さんへと向かった隙に、穂積さんは僕達のほうへと駆け寄ってくる。警棒を片手に。
 うわぁ……予想通りというか最悪の事態!?
 穂積さんは飛び掛らんとする勢いで、汚い声を上げながら先輩へと警棒を振りかざす。
「このクソアマがぁぁっ!!」
「先輩、危ない!!」

 ――その瞬間、僕は咄嗟に先輩をかばう様に前へ出ていた。
 ――つまり、予想される警棒の直撃ルート上に僕は出たわけだ。
 ――僕は、来るべき打撃を想像して、目を閉じる……。

 ……だが、いつになっても打撃は来なかった。
 不思議に思い、恐る恐る目を開ける。
 すると、そこにはうつ伏せになっている穂積さんと、それを取り押さえる飛月の姿があった。
「あ、あれ……?」
「二人とも大丈夫だった?」
「う、うん……」
「はぁ、まったく……。先輩に飛び掛ってきただけでも驚いたのに、先輩の前に飛び出すなんて無茶しちゃって……心配したわよ」
 飛月は、穂積さんの腕をひねり上げ、警棒を奪い取ると警部たちのほうへと投げてやる。
「まさか、こんな時に教わった護身術が役に立つとはね……」
「護身術?」
「そ。実家の方でちょっとね……」
 苦笑交じりに飛月は言う。
 相変わらず、飛月からは何が飛び出るか分からないよなぁ……。



 結局、穂積さんは倒れたまま連行という形となった。今頃は、警視庁の方へと送られているはずだ。
 警部達は、犯人逮捕に協力したということで僕達に感謝してくれていた。
 そのことで調子付いた先輩が「事件があったら、いつでも呼んでください!」と申し出ると、流石に苦笑していたが。
 そんなこんなで、警部達も本庁へと戻ってしまい、残された僕達は再び部室へと戻ることとした。

「それにしても、今日は見事な推理でしたよ、莞人氏。流石、我が理工ミステリ同好会会員です!」
 部室に戻り、先輩から暗号解読の賞品としてもらったアイスを頬張っていると、突然先輩がそんなことを言ってきた。
「密室の存在自体を先入観として利用するとは……私もまんまと騙されてしまいましたよ」
「そうそう! そんなことを思いつくなんて、あのダメ探偵兄貴の推理といい……もしかして血筋?」
 どんな血筋だよ……。
「う〜ん、でも僕としては、犯人を目の前にしてあれだけ啖呵の切れた二人も十分凄いと思うよ」
 僕なんか、緊張で体が震えそうになるのを必死に堪えていたくらいだ……というか普通はそうだと思うんだけど。
 一歩間違えれば、殺されるかもしれないのにあれだけ大きく出るなんてこと、僕には到底出来なそうだ。
「なぁ〜に言ってんのよ! 弱気な喋り方の探偵なんて、犯人に舐められるだけよ」
「それに、犯人と対峙した名探偵がしっかりした口調で犯人を追い詰め、最後に犯人へ説教をすることは、最低限の礼儀のはずですよ」
 舐められるというのは一応分かる。
 だが、礼儀ってのは何か違うんじゃないのか!?
 まぁ、それはいいとして……。
 僕にはどうしても先輩に聞きたい事があった。
 それは先輩が言及していた“隠しカメラ”という存在。
 確か、作戦の段階では警察が出て行った後の穂積さんの動向の監視と、彼が物証を隠しそうな栗林さんのロッカー等へ盗聴器を仕掛けておくだけに留まっていたはずだった。
 だからこそ、穂積さんがロッカーを開けた時点で僕や警部達は踏み込めたわけだった。
 だけど、隠しカメラなどという物は規模の大きさやコスト等から仕掛けていなかったはずだ。
 もしかしたら先輩が極秘に……とも思ったが、気になったので僕はそれについて尋ねてみた。
 すると、その解答は……
「そんなものは仕掛けていませんよ。当然ハッタリです」
 やっぱりハッタリかよ!――――
 大声でツッコミを入れたくなったが、ここは堪えよう。
「探偵たるもの、往生際が悪い犯人を追い詰める為には、多少の嘘をつくことは認められているのですよ。事実それで犯人は観念したのですから、それでよかったのです。ふふふ……」
 まぁ、そうかもしれないけど……だけど納得いかないような……。
「あぁ、それと莞人氏。先程はありがとうございました」
 すると先輩は、突然僕に向かって頭を下げてきた。しかも手をとって握ってくるし……。
 い、一体何なんだ!?
「あ、あの〜。ど、どういうことですか?」
「穂積氏が襲い掛かってきた時、あなたは私を庇おうとして、前に立ってくれたではありませんか。私、あれに大層心を打たれました」
 あ、あ〜あれか……。
 しかし、ここまで感謝してくれるとは変なところで律儀な人だな、先輩も。
「これは私も何かお礼をしなくてはならないと思うのですよ」
 手を強く握られ、先輩の顔が近づいている。
 お、お礼って、まさか……いや、そんな馬鹿な!?
「い、いや、まぁあれは咄嗟の事でしたし……。それに礼を言うなら、穂積さんを倒した飛月に……」
「ま、いいんじゃない? 先輩からの感謝の気持ち、ちゃんと受け取ってあげなさいよ」
 飛月はそんなことを言いながら、我関せずといった様子でアイスを幸せそうに頬張る。
 そうこうしているうちにも、先輩の顔は着々と近づいてくる。
「お礼、受け取ってくださいね」
 既に、吐息が顔にかかるくらいの距離。
 あぁぁぁぁ! 僕はこ、ここでっ…………するのか!? 飛月の目の前で!?
 だけどもう、断るにも断りきれないし……。

 ――――――――。

 どうしようもないと覚悟し、目を閉じて、その時を待つがそれはいつまで経っても来ない。
 目を開けると、先輩の姿は元に位置に戻っている。
「あ、あれ!?」
「どうしました、莞人氏?」
「あ、いや、その……」
 と、そこで僕は自分の手で何かを握っていることに気付いた。
 手を開き、握っていたそれを見てみると……。
 それは“文宗堂デザートサービスチケット”と書かれている紙の束だった。
「それが私からのお礼です。飛月氏と一緒に使ってくださいね」
 って、お礼ってこれのことかい!!
 じゃあ、さっき顔を近づけたのは……。
「そのまま渡すのもつまらないと思いましたので、少し趣向を凝らしてみましたが、驚きましたか?」
 そりゃ驚いたですがな! いろんな意味でね!
「え、何なに? いいもの貰ったの!?」
 僕の気持ちなど知る由もない飛月が、興味有りげに僕の持っているものを見に来た。
「わぁっ! ちょっと、これ凄いじゃない! いいんですか、先輩?」
「えぇ。今日の事件を解いたという褒賞も兼ねると、これでも足りないくらいだと思いますけどね」
 楽しげに話す二人。
 僕は、その横で今日の出来事を思い出す。

 朝停電になったせいで、大学に来て。
 部室に行ったら、先輩の暗号クイズにつき合わされ。
 昼過ぎには、飛び降り現場を目撃して。
 しかも、今度はそれの捜査に付き合わされて。
 犯人逮捕のために芝居をうって。それが成功して。

 そして日も落ちた今、このようにようやく休息を取れているのだ。
 恐らく飛月と先輩がいれば、毎日が今日のようにあわただしくなるだろう。
 事実、飛月がうちに来てからは色々と疲れるような日々が増えた気がする。
 これでもし、先輩もうちに来たら……。
「はぁっ……」
 それを想像すると、思わず溜息が出てしまう。
 確かに昔は、刺激がある日々なんてものにも少しは憧れたよ。
 だけどねぇ……。

 今日ほど、何もない平凡な日が恋しくなった日はないかもしれないなぁ……。 




★★★





 ――――

 うん、そういうこと。折角の偽装自殺も自分からボロ出しまくりじゃあねぇ……。まぁ、私達にしてみれば、入瀬が消えれば“彼”がどうなろうとかまわないんだけどさ。
 ――ん? あ、うん大丈夫よ。“あなたが計画を教えた”事実を消して“彼自身がすべてやった”っていう風に記憶の改竄は施しておいたから。今頃、取調室でそう自供してるんじゃない?
 ……え? あぁ、違う違う。驚くかもしれないけどさ、“彼”を犯人だって言い当てたのは警察じゃなくて、さっき言ったミステリサークルの子達の中の一人だったのよ。しかも、その言い当てた一人ってのが、女の子二人に振り回されていた冴えない男の子だったってわけ。でね、しかも“彼”を追い詰めるのに打った芝居も、その子達が考えたみたいなのよ。
 うちの大学にも凄いというか変な人が――って、え何、名前? 誰の? ……男の子の? えぇっと確か、タキガワ……タニカワ……タニカ……あぁ、そうそう『タニカゼ』だったはずよ。だけどそれが――って、どうしたの急にくすくす笑っちゃって? ……ま、まぁいいけどね……。
 で、とりあえず入瀬が死んだってことで、今後は動きやすくなったけど……私は今まで通りでいいのよね? ……うん、うん……分かったわ。でも“あんな物”をどうするつもりなの? まぁ、いい事に使う訳じゃなさそうだけど……。……あぁ、はいはい、分かったわよ。まだ内緒なのね? じゃあ、私は引き続きあっちで仕事してるからね。
 ……うん、うん。じゃあ、また今度ね。うん、それじゃ。

 ――――

 ガチャリ。

「……ふぅっ」
 女は電話を切ると、溜息をつきながら掛けていた黒渕眼鏡を外す。
 続いて、三つ編みお下げもほどき、長い髪をそのまま下ろすと、そこには先程までの地味な姿から一転、気だるそうな表情も相まって、妖艶な姿の女性が立っていた。
 そして、これこそが、彼女――栗林裕美の本当の姿であった。
 加えて言えば、昼間の彼女が見せた控えめでおどおどしている様子も地味な容姿同様に演技であり、本来の性格とは似ても似つかない。
 本当の姿に戻った裕美はベッドへとダイヴする。
「はぁ〜。やっぱ、このカッコの方が落ち着くわぁ〜」
 裕美は、とある“目的”の為に、今のような偽りの自分を見せ続ける生活をしている。
 本当の自分を見せられるのは、先程の電話先の相手――“目的”をともにする相手――と会う時等、ごく僅かなときのみ。
 当然、彼女にとって、自分と正反対の地味で控えめな“世間一般が認知する栗林裕美”を演じる事は楽な事ではない。
 だから、いつも家に帰るとすぐに、肉体的そして精神的な疲労からベッドへと飛び込んでしまう。
 裕美は横になったまま、リモコンでテレビの電源を入れる。
 すると映ったのは、ニュース番組。丁度、今日の入瀬教授の事件を報じていた。
 だが、ニュースキャスターが伝えるのは、事件が穂積による自殺に見せかけた犯行である、というところ止まりで、それ以上深くは進まない。
 裕美が暗示によって穂積の記憶を改竄したので当然なのだが、それでも彼女は、本当の事を分かっていないのにそれを真実として報じるニュースを見て笑ってしまう。

 結局、真実なんて絶対じゃないのだ。
 人の心がいくらでも、真実を自分の言いように捻じ曲げてしまう。
 それは、栗林裕美という人格もそうだし、入瀬教授を殺害した事件もそう。
 人は偽られた真実が蔓延する中で、満足して生きているのだ。 
 人は偽り、そして偽られる。
 それは、世界中の人間が例外無く。
 だから裕美も思う。

 人々を偽っている自分でさえも、誰かに偽られ生きているのだろう、と。
 もしかしたら、今窓に映る星空も、昼間に見た蒼穹ですら、誰かに偽られたものなのではないのか、と…………。



 <偽られた蒼穹 完>




〜後書き〜

 お待たせしました。解答編完成です。では早速、解答発表です。

 A:

 ・犯人は穂積恭一。
 ・犯行現場は教授室ではなく、その上の第二会議室。故に密室を考慮する必要はなし。
 ・扉の開閉音で袁に「入瀬は教授室に戻ってきた」という証言をさせた。

 問への解答の要点はこんな感じだと思います。詳しくは本編参照で(ぇ
 尚、穂積さんを犯人と考える上で考慮する点は――。

 ○計画殺人である事を考慮すると、袁と栗林の行動はそれに適さない。
 ○犯行現場を会議室とすると、穂積の「教授とトイレで会った」という証言は、違和感がある。

 ――こんなもんでしょうか。
 ……あい、すいません。色々と無理があるかもですね。
 でも、今回のトリックのテーマである「密室≠犯行現場」はちゃんと表現できた、と願いたいです。
 “密室”と銘打てば、トリックを探すのに必死になって、大事な事を忘れるだろうな〜というのが思惑でした。
 実際、いかがだったでしょうか〜?

 あと、栗林裕美に関しては、今後どこかでまたお目にかかるかもしれません。
 ……というか、これっきりだったら投げっぱなしってことですか、そうですか。
 キーキャラになる……はずです。

 次回は公約作品(予定)で会いましょう。
 以上、提供はcivilでお送りいたしました。では〜。




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