「あれ? もしかして……」 帰宅途中、街中で出会ったのは高校の時の友人だった。 互いに懐かしくなり、明日は日曜だしという訳で一杯やる事にした。 |
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とはいえ、あまり俺は酒に強くは無い。 居酒屋で瓶ビールを頼みちびちびやる事にした。 横にいるコイツはといえば、そんなの知った事かと言わんばかりの大ジョッキ。 むしろピッチャー。 と見紛うばかりの大ジョッキ。 この店の主人はこんなんで経営していけるのだろうか。 そんないらん心配をしながら、焼き鳥をつまんで一口ビールを飲む。 この苦味が美味いのだろうが、生憎それを理解出来ない俺の舌。 「ここの店にはよく来るんだよ」 けたけたと笑いながらソイツは言った。 見た目は軟派なくせに、こういった佇まいが好きだとは。 「悪くないだろ?」 酒はともかく焼き鳥は確かに悪くは無い。 一串食い終わりまた一口。 一人で飲む時より美味く感じるのは気のせいじゃないだろう。 店の角に設置された古ぼけたテレビは良く知らないお笑いの番組を映していた。 「最近は野球の盛り上がりが悪いからなぁ」 俺達が子供の頃はそんな事無かったのに、なんて言い出したので適当に受けて流した。 俺はそんなに野球が好きでは無いからなのだが。 焼き鳥一人前はあっさりと胃袋に消えた。 無論、瓶の中のビールはまだかなりの量を残している。 「……酒、弱いのか?」 そんな事は、と言おうとしたが正直に飲めない事を白状した。 けたけたと笑いながら、便所行ってこいよと言われたので小用ついでに鏡を見てみた。 顔が茹でた海老みたいな色をしていた。 「親父、お愛想」 便所から帰ってくると、アイツは会計を済ませようとしていた。 奢って貰う訳には当然いかない。俺も金を出そうと懐に手を入れて、 「いや、良いよ」 へらっとした笑顔を浮かべソイツは一括で店主に支払っていた。 「2,485円な」 店を出てから請求された。 「それじゃ、またな〜」 俺を気遣ったのか、金が無いのか。 ふらりふらりとアイツは街の雑踏へ消え去っていった。 俺は、ちょっと有難いと思ってしまった。 コップ一杯で頭がやられてしまうとは我ながら情けない。 体が温まるとアルコールの回りが早くなると聞いた。 しかしそれでも仕事の疲れを洗い流したくて、シャワーを浴びる。 少し熱めのお湯が皮膚を刺激して、意識ごと洗い流されそうに。 危ない危ない。 布団を敷きっぱなしにしておいて良かったと久々に思った。 ばふんと、力無く倒れこんで、意識が。 途切れそうで。 あ。 アイツの携帯番号、訊いてなかったな…… ま、いいか。 機会があれば また会えるだろ。 【後書き】 恋も 愛も 剣も 魔法も 感動も 笑いも 怒りも 哀しみも なーんも無いのですが。 日常の1シーンなんてこんなもんかと。 むしろ毎日てんやわんやだったら疲れます(笑) 3年後くらいの自分はこんな風になってそうだなぁとちょっと思いつつ。 ではでは。 【BGM:明日の彼方(水瀬えるも)】 |