邂逅輪廻



〜ある日の三人の人物のこと〜


 一人の男が歩いていた。男は騎士だった。

 男は盾を持ち、少しばかりの守りの魔術を使えた。男は、人を殺さなかった、倒さなかった、暴力を振るわず、守ることだけしかしなかった。男は人助けをし、そのたびに宿を拝借して、食べ物をもらい、旅を続けていた。

 男は、北西へ向かう道を歩いていた。



 一人の男が歩いていた。男は戦士だった。

 男は剣を持ち、弓を背負い、短剣を使い、少しばかりの殺す魔術と傷つける魔術を使用した。男は人を救うために人を殺し、傷つけた。男はもう、人を殺したくなく、剣を抜かずに拳を用いた。男は猟をし、魚を捕り、食用の草や実を食べて旅を続けていた。

 男は、北東へ向かう道を歩いていた。



 一人の女が歩いていた。女は流浪人だった。

 流浪人だったが、神に通じ、薬草や毒草に通じ、癒しと回復の魔術をたくさん使え、それはそれは美しい、柊の木でできた杖を持っていた。女は人の病気を癒し、生計を立てていたが、また村を旅立ち、流浪を続けていた。また、旅で見つけた珍しいものをお金と交換していた。

 女は南方へ向かう道を歩いていた。



 ある三叉路で、三人は出会った。

 まず、騎士が言った。

「我は争いを好まない」

 続けて戦士が言った。

「俺は人を殺したくない」

 そして流浪の女が言った。

「人を助けることこそがわたしの使命」

 三人は意気投合し、共に旅を続けることにした。



 三人が次に往くところは、暴君オガメスの国、シャルセオナ。

 そして三人は、後に『ブローロメスの六柱聖使徒』と呼ばれる六人のうちの、最初の三人。

 しかし、それは後のお話である。


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