邂逅輪廻



【学園ものの難点】
雅:芽依。真面目に考えると、うちの学園の生徒でもないお前がうろちょろしてるのは、
 やはり良くない気がする。
芽:雅人、制服プレイが好み?
雅:何だ、プレイってのは!? じゃなくて、せめて外見くらい、高校生くらいに変えたらどうだ?
 精霊ってのは自在に変えられる訳だし。
芽:たしかに一理あると思う。
雅:だろ? 何年も精霊やってるお前にしてみれば、精神年齢は似たようなもんだし。
芽:でも、問題がある。
雅:何だよ?
芽:キャラが皆と被ってくる。
雅:本格的に切実だな。おい。


【ある意味、隠語】
芽:雅人、将来の夢ってある?
雅:んー、真面目に考えたことは無いな。除霊屋でも開こうかと思ったことはあるが、社会的信用は皆無な
 商売だからな。分かる人だけ分かって貰えば良いなんて言えるほど、悟ってるわけでもないし。
芽:掃除屋、始めない?
雅:何だそりゃ? 清掃業者なんて、苦労が多い上に、ライバルが多くて大変だと思うんだが。
芽:そうじゃなくて、底辺で這いずる無価値なゴミを――。
雅:却下だ!


【縁起とか気にしない】
芽:新しいカレンダーを貰うとき、真っ先に仏滅の日取りを確認する。
雅:ほう。
芽:四つ葉のクローバーを見つけたら、一つだけ毟って三つ葉にする。
雅:ふむふむ。
芽:黒猫が目の前を横切ったら、追って一緒に遊ぶ。
雅:お前、本当に精霊か?


【濡れ衣全開】
風:世の中の理不尽な現象って、案外霊的な干渉に依るものが多いのよ。
 精霊屋なんてやってる雅人なら分かると思うけど。
雅:一応言っとくけど、精霊士、な。
風:例えば、ハイゼンベルクの不確定性原理。位置を特定したら運動量が分からず、運動量を測定したら
 位置が分からないなんて、意味不明も良いところでしょ。それに超紐理論。世界の構成基盤は紐で、
 十次元って、何がどうなってる訳って感じじゃない?
雅:それはお前の理解力が不足してるだけだ。


【総合科学部所属】
果:わ、わ、わ。紅茶に茶柱が立ったよ〜。
雅:いや、ちょっと待て。
果:芋羊羹だったはずなのに、食べてみたら栗羊羹だったんだ〜。
雅:それは包装か記憶、どちらかが間違ってると思うぞ。
果:今日も下駄箱に手紙が入ってたんだ〜。もう、あそこは郵便ポストじゃないのに〜。
雅:先輩は一度、自分の人気を色々な意味で自覚した方がいいと思うな。
果:ほんと、世の中不思議なことが多いよね〜。
雅:俺は科学とかを超越した先輩が一番不思議だ。


【推定二百歳以上】
果:風花ちゃん、誕生日二月九日なんだってね〜。
雅:何でもその日、風の日らしくてな。んで名前も風花、だそうだ。
果:私もそれで誕生日決めようと思うんだ〜。え〜っと、果物の日は――。
雅:いや、先輩。それは明らかに原因と結果が逆転してるから。
果:わ〜。果物の日って毎月八日なんだ〜。じゃあ、私の誕生日はそれで決まりだね〜。
雅:女の子にあるまじき発言をしてるって、先輩気付いてるか?
果:??


【与党政権もビックリ】
芽:雅人、費用対効果って知ってる?
雅:ん? コストパフォーマンスのことだろ。掛けた費用に対してどれだけ収益を上げることが出来るか。
 転じて、効率の良さって意味でも使われることもあるみたいだな。
芽:それって、私達にも当て嵌められると思う。
雅:どういう意味だ?
芽:獲得した人気を、総台詞量で割って多い人が勝ち。
雅:そりゃまた、随分と冷めた集計方法だな、おい。
芽:私、優勝候補。
雅:完全に自分本位のルール設定じゃねえか。


【そもそも芽依は精霊で】
芽:仮にもコントなんだからちゃんとオチを付けるべきだと思う。
雅:いや、心配しなくてもお前がちゃんと落としてると思うぞ。意図的かどうかは知らないが。
芽:だから、たまには雅人がボケに回って。
雅:いきなり無茶な要求をしやがるが……そうだな。この前、夜の墓場を歩いていたんだ。
 いや〜。いい年してお化けでも出るんじゃないかってビクビクしちまったよ。
芽:それは大変だった。
雅:――芽依。お前に突っ込みは無理だ。
芽:……?


【場にそぐわない】
風:浮世って刹那的なものだと思うのよ。
雅:何だ、いきなり壮大なことを言い出して。
風:ほら、盛者必衰って言葉もあるし、この世に絶対的なものって無いわけじゃない。
 太陽だってあと五十億年もしたら爆発しちゃうらしいし。
雅:まあそうかもな。
風:でも、だから生きてることに意味が無いなんて思わないのよ。どんな存在だっていずれ衰え滅する運命
 にある。だったら、先のことなんて考えないでこの一瞬に自身を燃焼していって人生を積み重ねる。
 それでこそ人なんだって言えると思わない?
雅:うーむ。大盛カツ丼をがっつきながらで無ければ良い話だったんだけどな。
風:ほへ?


【天然なれど天然に非ず】
果:意外と知られて無いんだけど〜。水ってとても不思議な物質なんだよ〜。4℃が最も体積が小さくなる
 温度だし、分子量に見合わない気化熱量だし、物質の溶出力はとても高いし〜。
雅:そういうものなのか? 身近過ぎるから、ピンと来ないな。
果:超純水って知ってる〜? 自然界には存在しない、純度を極限まで高めた水で、50mプールに耳掻き
 一杯分くらいしか不純物が入って無いんだよ〜。
雅:成程。先輩みたいに純粋な人間は、科学室でしか産まれないっていう暗喩で良いんだな?
果:??


【多機能化の波に乗り】
芽:携帯って便利。
雅:幽霊の類が電波関連機器に弱いって時代は終わったんだな……。
芽:遠くの人と何時でも何処でも話せるって革新的なことだと思う。
雅:確かになぁ。まあ本当に必要な会話してる奴は少ない気もするが。
  ところで芽依。さっきから一体何処に掛けてるんだ?
芽:あっちの世界。
雅:――!?


【だって凄い手間だよ】
風:ん〜。む〜〜。んーー。
雅:な、ふ、風花が悩んでいる!? い、いや。幾ら人間離れした思考と器を持つ風花とは言え、
 一人の女の子。ここは友人として優しく接してやるべきだろうな、うん。
風:あー、雅人。ちょっと相談に乗ってくれる?
雅:ど、どうしたんだ。何か深刻な悩みか?
風:蝶々とか甲虫が、あれだけ自身の組成を変えてまで幼虫期と成虫期を分離させてるのって、
 本当に効率的なシステムだと思う?
雅:己は、一体何を考えて生きとるんじゃい!?


【ラブコメごっこ】
果:雅人君、何か夢ってある〜?
雅:いや、特には無いかもな。そういう果凛先輩はどうなんだ? やっぱ世界最先端の科学者とかか?
果:うん、それも良いんだけどね〜。やっぱりお嫁さんになりたいっていうのはあるんだ〜。
雅:ほっほう。果凛ちゃんは可愛いんだな。
果:も、も〜。先輩をからかっちゃダメなんだよ〜。
雅:ははは。
芽:雅人、何だか幸せそう。
雅:頼むから、たまには息抜きさせてくれ。


【コントらしいオチ】
芽:私、夢がある。
雅:ほう。一応、聞いてやろうか。
芽:一度でいいから食パンを咥えて、『遅刻遅刻〜』って走ってみたい。
雅:恐ろしくどうでもいい夢に聞こえるが、考え様によっては青春に憧れるのも分かるからなぁ。
芽:うち、朝は和食派だったから。
雅:って、そっちなのかよ!?


【何か聞こえた】
風:芽依ちゃん、芽依ちゃん。死後の世界ってどんな感じなの?
芽:さぁ。
風:さぁって、芽依ちゃん、死んだから精霊になったんでしょ?
芽:私は元々地縛霊だから魂が何処に行くかは知らない。
風:あ、そうなんだ。残念、気になってたんだけどね。
芽:望むならすぐにでも知ることは出来る。
風:ん〜。でもまあ、いつかは行く所だからそんなに焦ることは無い気もするけど。
芽:ちっ。


【芽依ちゃん物申す】
芽:世の中には理不尽なことが多い。
雅:珍しいな。お前が世俗のことに意見を述べるなんて。
芽:例えば風呂場や寝床でも髪を下ろさない女の子。
雅:それは描き分け能力の欠如が原因だ。
芽:五月から六月、或いは九月から十月に掛けてシナリオが展開される作品が少ない。
雅:衣替えを描くのは現実問題大変だからな。
芽:友人や知り合いの、一卵性双生児比率が高い。
雅:世界中、何処の地域でも0.4%位って統計は出てるんだがな〜。
芽:雅人、詳しい。
雅:お前も、な。


【連敗街道中だから】
風:人って、堕ちる時は何処まででも堕ちるものだとか思う訳よ。
雅:いきなり何を言い出すんだ、お前は。
風:普段は気弱なのに集団暴行の加害者になったり、勝てないと分かりきった賭博に手を出したり。
雅:えらく偏ったダメ人間だな。身近なところでは、『ダイエットは明日から〜』とかか?
果:雅人君! それは別に大した失敗じゃないんだよ!
雅:な、何で先輩がそんなムキになってんだ?


【小学生料金で入場】
芽:人は誰もが羊水の記憶を持ってる。
雅:いきなりどうした?
芽:全身を水で浸らせて、何をするでもなく漂う。人は母なる海に抱かれた太古の記憶をそこに
 見出してるんだと思う。
雅:ほうほう。
芽:だから私はずっとこのままでいたい。
雅:プールから上がりたくないんなら、素直にそう言え。


【それは無理だ】
果:雅人君! ちょっと話、聞いてよ!
雅:ど、どうした? 珍しく声を荒らげて。
果:リボンが古くなったから、購買に買いに行ったら、『お嬢ちゃん、一年生だよね? だったら、
 このデザインね』なんて言われたんだよ〜。
雅:それは酷いな〜。この年季の入った白衣を見れば、入学したてかどうかなんてすぐ分かるだろうに。
果:雅人君! 中身について言及してよ!



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