【魂が穢れきってる】 月:あー、学生に戻りたい。 黄:ほとんど学生並の生活をしてる教授が、何か言ってるんだよぉ。 月:まあ、教授でいれば、休講にしても大したデメリットもないし、 必修科目で嫌がらせのごとく再提出させられるレポートもないから、一長一短なのだが。 黄:何か、もう、完全にダメなんだなぁとつくづく再認識させられたんだよぉ。 【かくいう黄龍もだけど】 月:教授会の冷たい視線をやり過ごす術さえ憶えれば、こんなにも楽な仕事はないだろう。 黄:最低の発想のようで、各学部、何人かこの手合がいるから困るんだよぉ。 月:更にこれを突き詰めると、その視線を快感に変えられるらしいのだから、私はまだまだだ。 黄:何を基準にして語ってるか分からんけど、どっちも世間一般では社会人失格なんだよぉ。 【腐ったミカン理論か】 月:教授として、精神をカンナやヤスリで削られるような日々。デトックスに勤しみたい。 黄:むしろあんたは、周囲の人間を削りまくってるんだよぉ。 月:魔性の女は、性を越えて人を惑わすものだからな。 黄:まあ言葉尻の問題で、色欲以外の堕落や怠惰もれっきとした心の迷いなんだから、 あながち間違っていない気もするんだよぉ。 【奇跡ってやっぱりあるんだよ】 月:偉い人は言った。憎悪や嫌悪感であろうとも、それは立派な影響力であると。 黄:居直りやがったんだよぉ。 月:私の場合は、更に敵対心や煩わしさも煽り立てるがな! 黄:コネと根回しが八割のこの業界でどうやって教授になったのか、 今更ながら不可解極まりないんだよぉ。 【エレベーター増やす方が早い】 月:こないだ、エレベーターが壊れてて階段でここまで登ったら、息が切れた。マジヤバイ。 黄:若手の上、若作りといっても、運動不足が体力低下に直結する年だというのを自覚するんだよぉ。 月:階段なんてものがあるからいけない。階移動は、全て緩いスロープにすればバリアフリー。 黄:一階上がるのにどれだけの距離を歩かないといけないのかとか、 室内が全部それで埋まるんじゃないかとか、真面目に考えてしまったんだよぉ。 【上司とも気さくに話し合える職場です】 月:食って寝てるだけで体力が増える方法はないだろうか。 黄:文系とはいえ、仮にも教授なんだから、自分で探せばいいんだよぉ。 月:そんなことができたら、私はとっくに億万長者だろ? 黄:分かってるなら言うんじゃねぇと、声を荒らげて言いたい気分になったんだよぉ。 【埃にまみれて朽ち果てる】 月:ジョギングウェアを買っただけで満足する、この基本。 黄:あー、やっぱ、もうダメなんだよぉ。 月:次はジョギングシューズを吟味する仕事に入るか。 黄:もしやこれ、業者にとって美味しいんじゃないかと思ったけど、 買い替え需要が皆無だから、結局のところ大して儲からないんだよぉ。 【人生のパラ振り間違えた】 月:安心しろ。大学サイドも、学生と教員の健康の為、トレーニングルームを作っただけで満足した。 黄:無駄だからそこ行けやと思ったけど、これが使うのがそもそも無駄なんだよぉ。 月:エキスパンダーびよーんが楽しくてぶら下がったら出禁になった過去がある。 黄:本当にこれ、知性と教養の象徴である教授なのか、疑問が尽きないんだよぉ。 【事前連絡すら来なかった】 月:こんちくしょー。 黄:帰ってくるなり、なんなんだよぉ。 月:教授会に行ったら、時間が変更されていて、とっくに終わってた。 黄:故意では無いとはいえ、無断欠席しても呼び出されないとは、割と本気で不憫なんだよぉ。 【予防線に近い気も】 月:素で忘れられたのか、居なくてもいいやと思われたのかが問題だ。 黄:どっちでも、哀愁具合に変わりは無いんだよぉ。 月:冷静に考えて、教授全員が気付かない訳がないから、後者なんだがな! 黄:分かっていて言うとは、さりげに自虐嗜好があるのではなかろうか、なんだよぉ。 【感覚が麻痺してる】 月:頭きた。これを機に、新教授会を設立する。 黄:プロレス団体みたいになってるんだよぉ。 月:そのアイディアもらった。 遺恨試合という名の出来レースを用意すれば、学内でも盛り上がるな。 黄:何か一部方面に失礼な発言があった気もするけど、 年がら年中失礼だから問題ない気もするんだよぉ。 【お釈迦様の掌だ】 月:事務に言ったら、作るのは勝手だが、 過半数が賛同するまで正式なものとは認めないと言われた。 黄:軽くあしらわれたんだよぉ。 月:それが学舎の悪いところだ。一つが権限を独占していると、風通しが悪くなる。 五分の一の賛同で複数作り、競い合わせるのが世の常道だと、説得に成功した。 黄:どっちにしろ、一人ですら集められる目処は立ってない訳で、 無駄な弁舌ごくろうさん、なんだよぉ。 【学問の本質とも言える】 月:あー、ダンジョン潜りたい。 黄:この世界に、そんなものはないんだよぉ。 月:プロフェッサーとか、素材集めや、モンスターの弱点探しに有用そうではないか。 黄:あんたの専門は社会学で、数ある学問の中でも、実用性が果てしなくゼロに近いものなんだよぉ。 【ほぼ占い師の口上に】 月:アラ探しなら、負けないよ? 黄:こんなにもしょーもない啖呵があったであろうか、なんだよぉ。 月:問題解決なんてものは、個人、ないしは社会そのものの手で為されるものだ。 私達は、それをちょっと考える切っ掛けとなるに過ぎない。 黄:この屁理屈大魔神めと思ったけれど、 本当に一部の学者はこんなもんだから始末に負えないんだよぉ。 【化学の礎になったのに】 月:アルケミスト、錬金術師とか最近の流行りらしい。 黄:だから、あんた、文系なんだよぉ。 月:ふっ、何も無い虚空から無限の理論を導ける我らが錬金術師でないと言うのなら何なのだ。 黄:何か一見、筋が通ってる様な気がしたこの感じ、 歴史上の錬金術師と同じく、詐欺師の才能があるのではなかろうか、なんだよぉ。 【それはそれでよくはない】 月:あー、賢者の石欲しい。 黄:何になる気なんだよぉ。 月:よくよく考えてみたら、不完全な存在を完全なものに昇華させる石など、私には必要ないな。 黄:言ってやがれなんだよぉ。 月:でも、最近、目のかすみが酷いし、治せるものなら治したい。 黄:それは完全にネトゲのやりすぎが原因だから、デスクワークに戻りやがれなんだよぉ。 【ツッコミ続けるのももう飽きた】 月:女子大の教授になりたい。 黄:清々しいまでの下心なんだよぉ。 月:いや、常に若い女の子に囲まれて給料も貰えるとか、どういうことだよと。 黄:こんな中学生みたいな発想をするのが教授でいいのか、 今更ながら根源的な疑問が湧いてきたんだよぉ。 【専門用語ということにしておいた】 黄:大体、うちの学部だって、四割くらいは女子なんだよぉ。 月:ハッ、男が六割もいるハーレムものなんか、誰が読む。 黄:鼻で笑いやがったんだよぉ。 月:漢が六割なら、むしろ女子が不純物扱いだがな! 黄:一体、何の話をしているのか、社会学というのは、本当に難しいものなんだよぉ。 【若者文化に迎合】 月:男女バランスを考えるのは、昨今ではどちらの層にも嫌われるどっちつかず扱い。 黄:学生の話じゃなかったのか、なんだよぉ。 月:少年漫画で見守るのが関の山だったヒロイン枠も、 昨今ではすっかり最前線に、というか、完全にエースになっている現実。 黄:何でそんなに少年漫画事情に詳しいのか、 そっちを聞いてしまいたい気分なんだよぉ。 【ただの喫茶室として】 月:この近辺で、一番早く週刊漫画誌を売り出すのがどこかを最も正確に把握してるのは私だ。 黄:何一つ自慢になってない自慢を聞いてしまったんだよぉ。 月:おかげで、うちの研究室には結構な数の学生がやってくるだろ? 黄:まあ、キッカケは何でもいいんだろうけど、 その客寄せがゼミ勧誘の原動力になっているかと言われると、全くもってダメダメなんだよぉ。 【査定委員会も同情】 月:閃いた。教授力を数値化すれば、若者に受ける。 黄:そういう、安直な発想が、むしろ若者から遠ざかってるんだよぉ。 月:ただでさえ最下層のこの大学で、更に最下層の私は一体どんな数字になるのか。 やべぇ、ワクワクを通り越して、涙が出そうだ。 黄:言っていて虚しくなるなら言うなと言いたいけれど、 そんな自制ができるなら、誰も苦労しないという話もあるんだよぉ。 【内訳は極秘事項】 月:能力値が異常に低いのは、特殊能力がすごいことが多いから。 黄:いい大人が、本気で涙目になってるんだよぉ。 月:私の場合さしずめ、採点が面倒になって、講義を受けた生徒、全てを通してしまうとかな。 黄:数えるくらいいるかも怪しい真面目に受けている生徒に、 たまにサイコロで可良優秀を決めてるだなんてバレないことを祈るばかりなんだよぉ。 【シラバスとかいう大学専用単語】 黄:大学の裏サイトで学生に何を書かれているのか知ったら、卒倒しそうなんだよぉ。 月:学生が教授を評価するとか、恐ろしい時代が来たものだ。 黄:ちなみに、『月読教授の話は深いようで中身は全くない』や、 『アレに嫌われる方がむしろ他の教授に受けがいい』などが確認されてるんだよぉ。 月:ただでさえ溶けかけのアイスの様に脆くなってる私の心を、本気で折りにきたな! 【単位にさえなれば不満はない】 月:頭きた。次の生徒は、全員六十点ギリギリの可にしてやる。 黄:不可にしない辺りが、小市民なんだよぉ。 月:生徒だけじゃなく、他の教授や事務にまで説明責任を果たさなければならんからな! 黄:自分でも問題行動だと思ってる辺り、 結局のところ、精神年齢が子供ということなんだよぉ。
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