邂逅輪廻



【三角形すら作れない】
月:帰ってきーたー、かえってきーたー、帰ってきーたーぞー。
黄:出張帰りくらいで、そんなにテンションを上げるのもどうなんだよぉ。
月:何しろ、自宅と大学以外の場所に赴くこと自体、久方振りなもので。
黄:何だか、それはインドアを通り越して準ヒッキーなのではないかと、
 不穏当な発想が頭をよぎったんだよぉ。


【敵の敵さえきっと敵】
月:しかしある意味に於いて、それが正しい文系学者像ではなかろうか。
黄:そうやって無闇やたらと敵を作るのは余りオススメしないとだけ言わせて貰うんだよぉ。


【蝮なのに尻尾切り】
月:しかし学会という奴は恐ろしい。
 よもやこの世に、あれだけの教授を始めとした学者が居ようとは。
黄:冗談に聞こえない辺りが恐ろしいんだよぉ。
月:むしろ無差別に一服盛ってしまえば相対的な地位が上がるとも思った。
黄:まあ、別に止めやしないけど、政治家やトカゲみたいに、
 身近な者に被害をもってくるのはマジ勘弁なんだよぉ。


【本来業務ってなんだろう】
月:あれは一つ、教授に依るバトルトーナメントを開きたいレベルだった。
黄:元来、学会や講演会を始めとした論文発表の場はそういうものであると、
 言ってしまうのは余りに酷なのかも知れないんだよぉ。


【残念度だけなら殿堂入り】
黄:大体、文系教授の癖に、何で理学系の学会に出向いたんだよぉ。
月:いや、ネトゲ仲間が教授だと知って、オフ会代わりに良いかな、と。
黄:かつてない、最低の理由なんだよぉ。
月:まあ、所属を聞いてみれば、何のことはない。
  同じ大学で、すぐそこの研究棟で日々実験をしているらしい。
黄:何と言うか、どうしようもなさが三回りくらいして、
 むしろ凄い話に聞こえてくる実例を見てしまった気がするんだよぉ。


【深く考えたら負け】
月:いや、奥さん、聞いてよ。学会で、面白いことがあったんだってば。
黄:自らハードルを上げるとはいい度胸なんだよぉ。
月:その件に関しては、始めからハードルを乗り越える気が無い私に死角など無い。
黄:いや、それはそれで話の構成方法に問題があるような気がすると、
 割と本気で悩んでしまったんだよぉ。


【ちょっとした冤罪気分】
月:化学系の学会で、フェニルアラニンがどうたらって内容だったんだけど、
 ふにるあらにん、ふにるあらにんって聞こえて、笑いを噛み殺すのに必死で――。
黄:何と言うか、前振りが無ければそれなりに面白かった気もするけど、
 こうも白けきった状態だと反応しようが無いんだよぉ。


【話がビッグに】
月:何を贅沢な。
黄:真の贅沢とは、もう少しだけでもまともな教授のもとで働けることだと思うんだよぉ。
月:はっ! その様な戯言を口にする暇があるなら、
 馬車馬の様に尽くすことを考えるべきだな!
黄:何故、教授職という奴は、事実上の終身雇用なのか、
 近頃は、大学経営そのものについてまで考えてしまうんだよぉ。


【奥様の視線が痛い】
月:お花見を、企画したい。
黄:何でこの散りきった時期になんだよぉ。
月:満開の頃に愛でるのは素人。
  真の花見マスターは、一仕事終えた後の桜こそ愛する。
黄:それは只の天邪鬼であると、真実を告げるのは、
 余りに酷な気がしないでもないんだよぉ。


【小二と中二の狭間で】
月:大体、花を見るのが花見なんだから、菖蒲だろうと鈴蘭だろうと良いではないか。
黄:そんな小学生みたいな論理を持ち出すとは、
 あんた一体、何処で精神年齢が止まってしまっているんだよぉ。


【口先だけは良く回る】
月:ああ、割とマジで酒が旨い。
黄:何で学生でもないのに、平日の昼間からこんなことをしてるんだよぉ。
月:逆に考えれば、日本人は働きすぎ。
  時たま、こんな風にゆるりと自然を味わうくらいでちょうどいい。
黄:その台詞は、普段頑張ってる人だけが言っていいもので、
 いつかきっと因果応報でバチが当たるに違いないんだよぉ。


【負担は大学だけで】
月:うひゃひゃひゃひゃ。どひゃひゃひゃ。
黄:凄い壊れ方なんだよぉ。
月:ミュンヒハウゼン症候群とは、周囲の興味を惹くために積極的に嘘をついてしまったり、
 自傷行為に走ったりする症状のこと。構ってちゃんと呼ばれることもある。
  幼少の折、弟や妹に愛情を奪われてイタズラをしてしまう心理と通じるところもあり、
 要は拗ねてるだけという説もある。
黄:むしろこの教授こそ何か心の病気なんじゃないかと思ってしまうけれど、
 国のお金で治療するのも何か心が痛む訳で、やっぱりこのままでもいいのかなと思うんだよぉ。


【日本経済にも貢献】
月:嗚呼……どうすれば質の高い学生がやってくるのか……。
黄:そもそもうちは、底辺大学であるという点が一つ、
 そしてその中でも、残りカスしかやってこないのが二つ目の理由なんだよぉ。
月:全く、最近の若者は。その頭脳一つで我が研究室を盛り上げようという気概は無いのか。
黄:いや、年齢とか関係なく、うちを一人前の研究室にするエネルギーがあるなら、
 ベンチャー企業でも立ち上げた方がよっぽど有意義というものなんだよぉ。


【消去法的漂流先】
月:何を失礼な。
黄:自覚してないと言い切る精神が凄いんだよぉ。
月:ケッ、どいつもこいつも金かねカネ。
  ああ、そんなにも金が欲しいなら、儲かる学部学科に行けば良いさ。
黄:いや、何が言いたいのかは今一つ分からないけど、まともな就職先さえあれば、
 こんなところで助手なんかしてないとだけは言わせて貰うんだよぉ。


【きっと論理的な反論】
月:研究への興味とか、就職に有利という観点で、勝ち目が無いことは否まない。
黄:一回りして、開き直りやがったんだよぉ。
月:ここは、フランクな人間性とアットホームな雰囲気で勝負しようではないか。
黄:いやいや、教授の人格こそが一番の障害であり、
 更には、そんなのんびりとした理由で選ぶ輩に当たりが居るとも思えないんだよぉ。


【人生修行として有効】
月:まあ、良いか。給料が下がってる訳でもないし。
黄:さんざん騒いで、その結論も酷いんだよぉ。
月:同時に、大幅増になる予定も無い訳だけど、それはそれでしょうがない。
黄:本当、生活するだけでカツカツのお給金しか貰っていないと、
 人生を悟りそうになるから恐ろしいんだよぉ。


【夜だから良いという訳でも】
月:ふんがふんがふがふっがっが〜♪
黄:えーと、お疲れになる程は働いていないのに、何でいきなり壊れてるんだよぉ。
月:いや、ちょっとカラオケに行ってきたんだけど、
 思ったより高得点が出たんで歌手デビューを考えてみようかな、と。
黄:よもや昼間っから一人カラオケじゃなかろうかと、
 切なくも寂しい仮説が頭をよぎってしまったんだよぉ。


【画家じゃあるまいし】
月:ほんげ〜ほげほげふっぐっぐ〜♪
黄:絶対に、採点機械が壊れているか、適当なだけなんだよぉ。
月:はっはっは。所詮、貴様の様な一般庶民に、この高尚な歌は理解できまいて。
黄:いや、一般人が理解できないなら、歌手にはほぼなりえないと、
 余りにも常識的な提言をさせて頂くんだよぉ。


【哀愁の八十年代ソウル】
月:こう、今から貴族とか華族になる手段はないであろうか。
黄:そういう旦那でも見付けてきやがれなんだよぉ。
月:私の女性的魅力は、上流階級より、むしろ大衆向けであることは黄龍も知っての通り。
黄:まあ、何が流行るか分からない時代だから全否定はしないけれど、
 エリマキトカゲが再ブームになるくらい気長な話だとだけ言っておくんだよぉ。


【零距離乱打戦状態】
月:或いは、長生きすれば何とかなるやも知れぬ。
黄:普通、女性の旬はある程度を越えれば下がる一方なんだよぉ。
月:しかし、一定年齢を越えた独身女性二人が結婚の話をするというのも、
 ある種、チキンレースに似たものを感じる訳で。
黄:一応言っておくと、この話題の発端はそちらであって、
 こっちとしてみれば色々と良い度胸してるなと思う訳なんだよぉ。


【涙無くして語れない】
月:ふと気付いたことがある。
黄:なんなんだよぉ。
月:もしや私は、女教師というものにカテゴライズされるのではなかろうか。
黄:たった今、全国の青少年達のおよそ八割が、
 夢も希望もない世の中に失望してしまったと推察される訳なんだよぉ。


【永遠のお子様体質】
月:物凄く、失敬な発言があった気がする。
黄:明確に、扱き下ろしてるんだよぉ。
月:何を言う。この色気溢れるスーツ姿を見てもそんなことが言えるのか。
黄:客観的に見て、中学生が背伸びして姉のスーツを着込んだといった解釈の方が、
 限りなく一般的というか自然なんだよぉ。


【典型的混線状態】
月:姉の話はするなぁぁぁ!!
黄:いきなり何なんだよぉ。
月:いや、一人っ子のはずなのに、何故か昔から姉に拒否反応が。
黄:そんな訳の分からない理由で怒鳴られても、
 殆ど動じなくなった辺り、嫌な方向に耐性がつきまくったものなんだよぉ。


【肩書きは実績より重し】
月:まあ、何にしても、次からは女教師・月読と呼ぶように。
黄:絶対に嫌なんだよぉ。
月:なにをぉ、上司命令が聞けないと言うのか。
黄:元来、教師というものは子弟に尊敬されて始めて教師として扱われる訳であって、
 名前から入るのは、下の下かなと思わざるを得ないんだよぉ。


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