【それでもクビにならないよ】 月:嗚呼、国立大教授が妬ましい。 黄:四流私立大教授が言うと、リアルな愚痴なんだよぉ。 月:でもまあ、結局、最後にものをいうのは、論文そのものの出来だから。 黄:ここ数年、真っ当な論文を書いてる姿を見てない気がするのは、 気のせいや、気の迷いとは言わせないんだよぉ。 【タイムカードが無いもので】 月:それは、大いなる誤解。 黄:どういう意味でなんだよぉ。 月:実は黄龍が帰った後、薄暗い教授室でこっそり大作を書いている訳で。 黄:尚、付け加えて言うならば、ここ数年、こっちが先に帰った記憶も、 ほぼ皆無と言って差し支えないんだよぉ。 【大不況時代に逆行】 月:嗚呼、もっと給料が欲しい。 黄:だったら、名を馳せて、厚遇で引き抜かれるのが、 一番、手っ取り早いんだよぉ。 月:ハッハッハ。そんな出来もしない発言をするとは、 貴君も血迷ったものよのぉ。 黄:いや、そこまではっきり言い切るなら、薄給でも、 雇用してくれることに感謝を覚えて然るべきかと思われるんだよぉ。 【高校デビュー的な話】 月:ところで、最もオーソドックスかと思われる、 この大学での給料アップを口にしなかったのは何故。 黄:そりゃもちろん、どんなに素晴らしい論文を書いたとしても、 人格補正で盗作を疑われるだけだから、なんだよぉ。 【世間的にはインテリ層】 月:うむ、今日のお昼は、肉が食いたい。 黄:碌な仕事もしてないくせに、燃費が悪いんだよぉ。 月:スキヤキ、ビフテキ、焼肉大会〜♪ 黄:それにしても果てしなく昭和の匂いしかしない選択肢で、 知性が微妙に感じられないんだよぉ。 【ちなみに九百グラム程】 月:フワハハハ、見よ、このツーパウンドステーキを。 黄:食べられるものなら、食べてみるんだよぉ。 月:例え残しても、分けてなんてあげない。 黄:正直、その巨大な肉塊を見ただけで胸が一杯で、 サラダとブレッドだけで、充分、満足なんだよぉ。 【大人だからこそサボりたい】 月:うっぷ。何という重量感。 黄:アホは学習しないんだよぉ。 月:このままでは、確実に午後の講義に差し支えるから、今日は休みに――。 黄:かつて、ここまでしょうもない理由で休んだ教授が居たかと思ったけれども、 案外、皆、適当な理由でばっくれてるから困りものなんだよぉ。 【所詮は世界のダメ教授】 月:えー、今日の講義は、予定を変更して、 『日本人の肉食文化の有りよう』について語りたい。 黄:今までに、これ程まで酷い講義内容があったであろうか、なんだよぉ。 月:とりあえず、日本人にアメリカ人並の肉食は無理、 という結論ありきで語るから、深くは考えないように。 黄:そして仮にも社会学者として、その姿勢は大問題だろうけど、 まあ、まともに聞いてる学生も居ないだろうから、事務仕事に戻るんだよぉ。 【どっともどっちで良い勝負】 月:今日の御仕事は、学生達のレポートチェック。 黄:立派な業務なんだよぉ。 月:ふと思う。私は、こんなことをする為に教授にまで上り詰めたのか。 黄:いや、自分でどう思ってるかは知らないけれど、世間というか学生の方は、 何でこんなのが教授なんてやってるのかと思ってるから大丈夫なんだよぉ。 【意外と深い気も】 月:今日の御仕事は、論文の為の資料集め。 黄:それは、むしろ文系教授の楽しみだと思うんだよぉ。 月:のんびりまったりとならともかく、 仕事で切れ目無く大量に読むのが楽しいとでも? 黄:今、プロとアマの明確な線引きというか、 さりげなく人生の真実というものを垣間見た気がしてならないんだよぉ。 【教授としてどうだろう】 月:今日の御仕事は、出版社での取材。 黄:珍しく、教授らしい仕事なんだよぉ。 月:まあ、某ゲーム大会で優勝したインタビューな訳だけど。 黄:一体、どの隙に出場したのかと思ったけれど、 考えてみれば日程表はスカスカで、 どうとでもなることに気付いてしまったんだよぉ。 【こちらがむしろ日常寄り】 月:今日は特にスケジュールが無いから、昼寝とネトゲを堪能。 黄:この状況に、むしろ安心感を覚えたなんて、 思ったとしても、認めてなんかはやらないんだよぉ。 【命懸けの師弟関係】 月:社会で活躍する、全ての成功者に死の裁きを。 黄:とてつもなく、酷い発言なんだよぉ。 月:まあ、考えてみれば、窓際教授とはいえ、 その助手よりはマシな訳で。 黄:そういうことを言っていられるのは今の内だけで、 せいぜい寝首を掻かれない様に気を付けておくんだよぉ。 【たまに学者か怪しくて】 月:しかし、一部のものだけが成功者になるのは、 明らかな人権侵害ではなかろうか。 黄:良い大人が、臆面もなく言い切ったことに感動したんだよぉ。 月:私はここに、全ての人民が成功者たる、 サクセスフル・ワールドの開設を、ここに宣言する。 黄:何だか、全盛期にこんな感じの思想が蔓延していた気もするけれど、 ブームとは一回りしてやってくるものだから、大したことじゃないんだよぉ。 【要は尊敬してません】 月:とはいえ、人とは所詮、相対でしか、ことを評価しない生き物。 黄:素晴らしい、掌返しなんだよぉ。 月:大多数に与えられる肩書きより、 隣の旦那の稼ぎが気になるのが庶民というもの。 黄:的は射ているのだけれど、この教授に言われると腹が立つのは、 人格が絶望的な証ということなんだよぉ。 【ソロバンあっての学び舎さ】 月:とりあえず、理事長と学長に、教授差別の是正をお願いしてきた。 黄:本当に行動する辺りが、恐ろしいんだよぉ。 月:まあ、開口一番、『はじめまして』と言われて名刺交換をしてきた訳だが。 黄:ある意味、名物教授として名が知れていると思っていたけど、 所詮、商品価値が無ければこんなものなのかも知れないんだよぉ。 【下手な役満よりレア】 月:MMOの合間に、ネット麻雀に浸ってみる。 黄:骨の髄まで腐ってるんだよぉ。 月:一度で良いから、三暗刻、三槓子の複合であがってみたい。 黄:いや、そんな麻雀を知らん人には何のことやらなことを言われても、 こっちとしても反応に困るんだよぉ。 【こちらもかなり稀少】 月:あと、中牌での三色同刻も――。 黄:だから、世の中の誰もが、 麻雀にそこそこ詳しいと思って喋りやがるんじゃないんだよぉ。 【生き様まで反映】 月:役満一点だけを目指して、打ってみる。 黄:迷惑な打ち筋なんだよぉ。 月:配牌で三元牌が五つも入っていたのに、 終わってみれば、白、中のみというのは、よくあること。 黄:何だか、何処かの教授の人生のような尻すぼみ加減、 色々と考えさせられてしまうんだよぉ。 【そういう物語だっけか】 月:よし、タンヤオドラ五でハネ満。 黄:山賊の様なあがり方なんだよぉ。 月:結果さえ残せば、山賊でも英雄になれるのは水滸伝で立証済み。 黄:かつて、これ程までに歴史を侮辱した教授が居たであろうかと、 真面目に考え込んでしまった自分が嫌なんだよぉ。 【きっと生涯不可能】 月:教授として、副業で金儲けをしたい。 黄:印税か、講演がベタなところなんだよぉ。 月:何ゆえ、真っ先にそう、無理なことばかり言うのか。 黄:振って来る話題に無理があるから、答の方も無理が出てくると、 一体、いつになったら気付いてくれるんだよぉ。 【自覚はあったらしい】 黄:表紙詐欺で中身の無い本を書いてるから、殆ど売れないんだよぉ。 月:黙れ、若造! 文才があれば、もう少し面白い本を作っておるわ! 黄:何だか、正しいことを言ったはずなのに、少し後ろめたい、 そんな不思議な感情が心を掠めたんだよぉ。 【何にしても犯罪だ】 月:こうなれば、講演一本勝負。 黄:知名度が、絶望的なんだよぉ。 月:……。 黄:何を考えてるんだよぉ。 月:三面記事とワイドショーを賑わせば、少しはアップするだろうか。 黄:それは、殺す方か、殺される方か、或いは捏造論文でも書くのか、 とりあえず、やめておけとだけ忠告しておくんだよぉ。 【ちょっと湯切りをしてみたい】 月:まあ、流石の私も、懲戒免職は怖い。 黄:何しろ、絶望的に潰しが利かないんだよぉ。 月:いざという時の為、屋台のラーメン屋の修行をしておこうと思う。 黄:数多ある職業の中から、どういった理由でそれをチョイスしたのか、 それを考えるだけで、頭がクラクラしてくるんだよぉ。
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