【五秒で論破】 月:トリッキー&フルーティ。 黄:今日もうちの教授は、頭がおかしいんだよぉ。 月:歴史に名を残す程の天才は、奇行が目立っていたというのは周知の事実。 黄:とは言え、その方々は大抵、 幼少時から才能の片鱗を見せているんだよぉ。 【一番弟子に内定】 月:幼子の折、成績が振るわなかったアインシュタインに謝りたまえ。 黄:それは単に、結果が高尚過ぎて、教師が理解出来なかったからなんだよぉ。 月:私の言葉も、いつの日か、幾万人もの学者に依って解釈が成されるであろう。 黄:そしてそんな宗教家みたいなことを言われても、 何をどうすれば良いかが分からないんだよぉ。 【蟻んこじゃあるまいし】 月:学生収集大作戦を、決行しようと思う。 黄:具体的に、何をするんだよぉ。 月:とりあえず、お菓子を置いておけば、 腹を空かせた子達が釣れるのではと――。 黄:昨今の学生は小金持ちだから、 そんなものでは無理だと思うんだよぉ。 【離島の小売店並】 月:ならば、某有名店スウィーツを。 黄:酷い偏見なんだよぉ。 月:これでダメなら、私に成す術は無い。 黄:そしてこれで打ち止めというのも、 何処まで引き出しが少ないんだという話なんだよぉ。 【流通と利潤の狭間で】 月:大学教授として、社会に何を還元すれば良いのか。 黄:自分のことしか考えて無いのに、良く言うんだよぉ。 月:とりあえず、やらなくなったゲームソフトは売り捌こうと思う。 黄:それは何処の素人さんでも陥る話で、 教授という肩書きが一切、関係無いんだよぉ。 【せめてマンガ辺りで】 月:とは言え、中古が増えると新品が売れず、製作会社にとっては不利益。 黄:話がややこしくなるんだよぉ。 月:やっぱり、買ったゲームは棺桶で一緒に燃やして貰うくらいが丁度良い。 黄:プラケースは中途半端な温度で焼くと有害ガスを発生するから、 死んでまで迷惑を掛けるなと言いたいんだよぉ。 【絶対防護領域】 月:但し、パソコンのハードディスクだけは、 物理的に破壊してから棺へ入れるように。 黄:一体、何が入ってるんだよぉ。 月:それは、こんな公の場所じゃとても言えない。 黄:こちらとしても、本能が瞬間的に危機を感じ、 詮索しないが益と判断した訳なんだよぉ。 【この時間泥棒め】 月:うーん、社会への還元……。 黄:いい加減、諦めるんだよぉ。 月:一研究者は、唯、研究道を邁進するだけで良いんじゃないかなって思う。 黄:散々、文句を垂れた挙句の結論がそれとは、 相変わらず、良い度胸をしているんだよぉ。 【職人芸の域】 月:はぁ……。 黄:その溜め息は何なんだよぉ。 月:私だって、センチメンタルな気分にくらいなる。 黄:ここは全力で笑い倒して良いところなのか、 空気を読みきれなくて困るんだよぉ。 【どれだけ薄給かと】 月:心の底から傷付いた。謝罪は良いから、賠償を要求する。 黄:酷い即物的発想なんだよぉ。 月:だったら、とりあえず今日の昼御飯だけでも良い。 黄:何で助手が教授に奢らなければいけないのか、 給料的に考えても、絶対に有り得ないんだよぉ。 【それはそれで難しい】 月:教授となったからには、百年後も読み続けられる大論文を書き上げたい。 黄:高望みはやめるんだよぉ。 月:うむ、把握した。論文の書き方を纏めた論文を書けば、 確実に落ち零れが読んでくれる。 黄:本当にそれで満足なら、敢えて進言することは無いんだよぉ。 【暇潰しにもならず】 月:序論、本論、結論を書け、以上。 黄:ざっくばらんというレベルじゃないんだよぉ。 月:後、英語の勉強だけは怠けないように、と。 黄:それは新入生向けのガイダンスであって、 良い大人は鼻で笑うだけなんだよぉ。 【理系だとネイチャー辺り】 月:何かこう、ポイントアップサービスみたいなものが欲しい。 黄:何を言いたいんだよぉ。 月:特定の月に論文発表すれば、無条件で評価が十倍みたいな。 黄:本来、権威ある学会や雑誌などがそれのはずなのだけれど、 出場資格を一切、持ってないのが大問題なんだよぉ。 【営業は大事よ】 月:それに参加する為に必要なものって現ナマ? それともコネ? 黄:何でそう、浅ましいことしか言えないんだよぉ。 月:もしも実力しか評価されない自由競争主義が浸透しているのだったら、 私が介入する余地は無い。 黄:そのさっぱりとした諦めっぷりは大したものだと思うけれど、 現実的には政治力が必要だから困るんだよぉ。 【年齢的にも若手】 月:やれやれ。名声や地位などに振り回されて嘆かわしい世の中だこと。 黄:何という情緒の不安定さなんだよぉ。 月:手の届かないところの葡萄が酸っぱいのは、世界の常識。 黄:何で現役教授が手の届かない葡萄と断定するのか、 そこのところの説明を求めてみたいものなんだよぉ。 【永遠の問題児】 月:私の研究結果は、死後百年程で評価されるものだから。 黄:そっちまで決め付けるんじゃないんだよぉ。 月:そういうことにしておかないと、現世を生きるのが辛いから。 黄:切ない様な話にしてみせても、 教授職以外では、充分に人生を謳歌してるんだよぉ。 【旦那子供が居ないし】 月:嗚呼……人徳と名声が欲しい。 黄:死に掛けの老人の発想なんだよぉ。 月:せめて通夜や葬式で、『惜しい人を亡くしたね』、 と言われる程度には思われたい。 黄:そもそも喪主は誰がやるのか、 そこからして、極めて曖昧すぎてどうにもなってないんだよぉ。 【したくもないけど】 月:その場合、段取りは宜しく。 黄:助手がやるなんて、聞いたことが無いんだよぉ。 月:参列者を感動の渦に巻き込む喪主挨拶だけは用意しておくから。 黄:自分の死さえ自作自演にしようというその発想、 一切、真似が出来そうも無いんだよぉ。 【言の葉マジシャン】 黄:『このバカヤロー。俺より先に死ぬとは何事だぁ』なんだよぉ。 月:うむ。葬式の場だけは過激な言葉が情熱的に聞こえるこの不思議。 黄:たしかに、淡々と形式文を読まれる方が、 何も思われて無いように感じてしまうんだよぉ。 【無駄遣いこそ極み】 黄:『えっく……えくえく……ちくしょー!』なんだよぉ。 月:意味のある台詞を、一切言わないパターン。 黄:こんなのに使う頭脳があるなら、 本当の人望を得る方法を考えた方が良いのでは無いかと思うんだよぉ。 【一種の最終兵器】 月:何となく、オチを作るべきだと思う。 黄:言いたいことが分からないんだよぉ。 月:まあ、ある意味に於いて、 この大学でオチ的な存在であることは否まないけど。 黄:ある意味以前に、貴女はれっきとした大オチなんだよぉ。 【尻尾の役目を全うせよ】 月:つまり、不祥事を起こした時に切り捨てられる、と。 黄:それ以外に、教授として飼っておく理由が無いんだよぉ。 月:やれやれ。才能に満ち溢れすぎていると、 派閥やらの嫉妬が辛い、辛い。 黄:この脳内転換はポジティブと言って良いのか、 検証に検証を重ねるべきかと思われるんだよぉ。 【買い叩きの真骨頂】 月:その場合、最終的な責任は助手に流れるこの不思議。 黄:嫌な話になってきたんだよぉ。 月:そうなっても、月二万円くらいの援助はしてあげるから安心して。 黄:このダメ教授の誠意と名誉の値段がそんなものだと、 知りたくも無い情報が蓄積されてしまったんだよぉ。 【砂上の楼閣ですら無い】 月:見えた。私は、この大学の出オチになる。 黄:尚、悪化してるんだよぉ。 月:インパクトを与える為なら、 ちょっとくらいの捏造は致し方ないと思う。 黄:そんな確信犯と言うか、必要悪みたいな言い回しをされても、 結局は自分のことしか考えてない辺りが底知れず恐ろしいんだよぉ。
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