邂逅輪廻



【難儀な気質】
朱:もうすぐ〜、夏休みですね〜。
黄:青春の大安売りなんだよぉ。
朱:今年こそ〜、25メートルを泳げるようになりたいです〜。
黄:水辺に近付く時は、救命胴衣を身に着ければ死ぬ心配は減るから、
 無駄な努力はやめるんだよぉ。
朱:い、いきなりやる気を削ぐこの姉は、如何ともし難いと思います〜。


【実に酷い姉】
黄:深海魚の様に、浮き袋で浮力を得れば良いんだよぉ。
朱:お、思いっきり、人類辞めてるじゃないですか〜。
黄:その位のことをしない限り、朱雀が泳げる様になる可能性が思い付かないんだよぉ。
朱:ふ、ふに〜……。


【自分ルールとも言う】
朱:私の実力を〜、見せてあげるんです〜。
黄:お手並拝見なんだよぉ。
朱:ところで〜、ビート板を使うのは、マイナールールで問題ありませんよね〜?
黄:この志の低さは、ある意味、潔いと見るべきかを悩むんだよぉ。


【助けろって】
朱:ふ、ふに、ふに〜!
黄:ビート板を使っても泳げない人を、初めて見たんだよぉ。
朱:す、水中では〜、重力と浮力がほぼ釣り合うなんて嘘っぱ……ぶくぶくっ。
黄:この光景を見たら、かのアルキメデス大先生も、
 自説を曲げたかも知れない訳なんだよぉ。


【威厳を保つ七つの方法】
朱:数学の問題を教えて欲しいんですけど〜。
黄:本当に分からないのかを問うておくんだよぉ。
朱:ふに?
黄:分からないと思って考えると、分かる問題も分からなくなる訳なんだよぉ。
朱:そ、それはたしかに、有り得る話ですね〜。
青:こうして、教えることをうやむやにするという訳ですね。


【いつも通りの日常】
青:ここをこうすれば解けますよ。
朱:お兄様は頼りになりますね〜。
黄:良い弟を持ったんだよぉ。
朱:お姉様とは、一味違うんです〜。
青:その失言さえ無ければ、満点だったんですけどね。


【半ば嫌がらせ】
朱:今度は〜、理科の問題なんですけど〜。
黄:やっぱり、自分で考えさせるべきなんだよぉ。
朱:量子物理学に於けるプランク定数の意味、意義をレポートするのは、
 中学生には無理だと思うんですよ〜。
黄:今から、そんな課題を提出した教師を、ぶん殴りに行ってやろうと思うんだよぉ。


【人格が歪むのか】
青:面白いじゃないですか。
黄:何かが、ポツリと聞こえたんだよぉ。
青:文句の付けようが無い、完璧な物を提出した時、
 どんな顔をするかが見物ですよね。
黄:この、無益なところに情熱を燃やす辺り、学生生活に飽いているのかも知れないんだよぉ。


【何という憲法違反】
月:夏休みの宿題は、八月三十一日だけで仕上げるのが常識。
黄:そこまで言い切るのは大したものなんだよぉ。
月:そもそも、どんな困難も、根性があれば乗り切れるというのが課題の目的。
朱:そ、そうだったんですね〜。
黄:こういう厄介な思考を、取り締まる法案は出来ないものかと思う訳なんだよぉ。


【家庭内手工業に分類】
月:暦の上ではとっくに秋なのに、汗水垂らして宿題に勤しむ様は、最早、風物詩。
黄:その労力を、初日に注ぎ込めば、後は清々しい夏休み生活なんだよぉ。
月:ギャンブルが廃れないように、スリルが無いと生きていけない人種は現存する。
黄:その為に家族を巻き込むのは、実に馬鹿馬鹿しい話だとは思うんだよぉ。


【しかし真実】
月:そもそも、初日にその緊張感が持続する訳が無い。
黄:逆ギレは勘弁なんだよぉ。
月:人類の常識。締め切り間際と、それ以外はほぼ別人。
黄:何でここで、漫画家や小説家の様な詭弁を聞かされなければならないんだよぉ。


【或いはアメリカ的】
朱:け、結論として〜、宿題はいつやるべきなんでしょうか〜?
月:気が向いた時、気が向いたまま、自由な発想で。
黄:今までの話はなんだったんだよぉ。
月:単純に、学校が始まる直前まで、気が向かないというだけのこと。
黄:この余りに酷い戯言は、まるで犯罪者の言い訳にも似て、頭が実に痛いんだよぉ。


【誤差範囲扱い】
朱:自由研究は〜、何をしたら良いかが分かりませんよね〜。
月:ふっふっふ。自由なことに掛けて、譲る気は無い。
白:おぉっと、私を忘れて貰っちゃ困るわね。
黄:これはあくまで、自由に研究をして良いのであって、
 自由な研究をしろというのでは無いと思われるんだよぉ。


【少しは違うはず】
月:先ずは、朝顔を用意する。
朱:ふに?
黄:観察日記は、定番なんだよぉ。
月:次に、色に依って味は違うのか、徹底的に検証する。
黄:パプリカじゃあるまいし、何処にも需要の無い研究であることだけは確実なんだよぉ。


【餌代が半端無い】
白:とりあえず、蝮を二十匹くらい探し出すのよ。
朱:ふに?
黄:何か、嫌な予感がするんだよぉ。
白:これを、五百年飼うと、本当に蛟になるのか実証――。
黄:何処と無く、デジャブの様なものを感じざるを得ない話だったんだよぉ。


【御利用は計画的に】
朱:分かりました〜。
黄:何が分かったと言うんだよぉ。
朱:私は〜、割り箸とペットボトルで工作をしようと思います〜。
黄:二人の意見は黙殺なんだよぉ。
朱:テーマは〜、『環境破壊を食い止めろ』なんです〜。
黄:最終的にはゴミとなる工作で、
 そんなことを言うのはおこがましいというものなんだよぉ。


【彼女は炎の子】
朱:扇風機無くして、夏は語れませんよね〜。
黄:その偏った発言もどうかと思うんだよぉ。
朱:こう、氷水を張った洗面器を差し出せば、クーラー要らずなんです〜。
黄:何故だか、色々な部分が間違ってる気がして、反応に困る訳なんだよぉ。


【黄龍ちゃんとの約束だよ】
月:という訳で、我慢比べ大会開催。
黄:文脈が無かったんだよぉ。
月:究極的に言えば、暑いという感覚を麻痺させてしまえば、
 クーラーなんて必要が無いということ。
黄:脱水症状や熱中症が怖いから、良い子は絶対に真似しないで欲しいんだよぉ。


【言い回しオンリー】
月:もちろん、地球環境を考慮して、暖房器具は一切、使わない。
朱:な、夏場に直射日光のビニールハウスは、命懸けだと思います〜。
月:命を賭さなければ、見えないものもある。
黄:幾ら格好を付けたところで、所詮は只の我慢比べなんだよぉ。


【同じ場所へ向かう】
朱:の、脳が何だか蕩けそうなんですけど〜。
月:人間の防衛機構を、信じるべき。
黄:何という無駄な信念なんだよぉ。
月:嗚呼、それにしても太陽の、何という憎きことか。
黄:何でかは分からないけど、ここにもやたらとデジャブを感じざるを得ないんだよぉ。


【世界は弱肉強食】
朱:昆虫採集に挑戦しようと思います〜。
黄:無駄な努力が好きなんだよぉ。
朱:蜂蜜を塗っておけば、色々な昆虫さんが来てくれますよね〜。
黄:むしろミツバチが、強奪された恨みを晴らしにやってくると見たんだよぉ。


【ブラフで命懸け】
朱:そ、その時は〜、説得を試みてみようかと思います〜。
黄:何て言うつもりなんだよぉ。
月:お前らの女王様は預かった。返して欲しければ蜂蜜は諦めろ。
黄:その場合、決死の特務部隊が結成されそうで、逆に怖さが増すんだよぉ。


【良く居るタイプだ】
朱:ミツバチさんの針は〜、一度使ったら、死んでしまうと聞いています〜。
月:使えばその肉体をも滅ぼしてしまう最後の奥義は、少年漫画の王道。
朱:その割に〜、スズメバチさんに比べると威力は弱いですよね〜。
月:まあ実際、虫ケラ共が頑張ったところで、その程度ということ。
黄:敢えて、この月読の態度こそが少年漫画の王道と言わせて貰うんだよぉ。


【体格の勝利】
朱:か、カブトムシさんを、樹木から引き剥がせないんですけど〜。
黄:何という非力なんだよぉ。
月:カブトムシが、体重の二十倍を動かせる超怪力であることは、世界の常識。
黄:それでも、人類で力負けするのは、極々一部にしか居ない訳なんだよぉ。


コント連載中



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