邂逅輪廻



【教育係だからって教育しなければいけないと誰が決めた】
朱:今日は、阿弥陀さんと一緒に、仏教のお勉強をしようと思うんですよ〜。
阿:うむ、よい心掛けだ。
黄:朱雀の場合、本業の五行すらあやふやなところがあるのに、
 よくそんなことが言えたものなんだよぉ。
朱:だって黄龍さん、面倒くさがって、あまり教えてくれないじゃないですか〜。
黄:当事者として関わってきた期間が長すぎるせいで逆によく分からなくなる、
 世の中なんて、割とそんな風に出来てるんだよぉ。


【本人が分かってるのかすら時たま怪しい】
朱:それで、仏教ってそもそもなんなんですかね〜?
黄:とりあえず根本的な質問をすればいいという、王道的発想なんだよぉ。
朱:これを抑えておけば、賢く見えますからね〜。
黄:お手軽テクニックみたいに言われても困るんだよぉ。
阿:よいではないか。智の根源は、虚実を解することだからな。
黄:そして朱雀でも解読に苦労しそうなこの言い回し、
 専属翻訳家である天照の降臨が待たれるんだよぉ。


【心の壁を暗喩したものだと思えば神話っぽい】
天:お呼びでしょうか。
黄:声はすれど、姿が見えないんだよぉ。
朱:この、不自然に置かれた巨大な亀の甲羅には、触れてはいけない感じですか〜?
天:世の中には、段ボール迷彩というものがあると聞きました。
  私はそれを更に発展させ、防御力をも手にしたのです。
黄:いや、どう引き籠もろうが自由といえば自由なんだけど、
 酸欠になりゃしないかと、変な方向に想像が広がってしまうんだよぉ。


【誰にだって一人になれる空間は必要】
天:その点は心配ありません。現代科学の粋を尽くし、空気を通す新素材で作りました。
朱:甲羅の形をしてる意味あるんですかね〜。
黄:そこら辺は、アートと言っておけば、優しい眼差しでスルーしてもらえるんだよぉ。
朱:それ、いわゆる腫れ物扱いじゃないですか〜。
黄:世の中、構ってもらえることが無条件で素晴らしいこととは限らないという、
 素晴らしい教訓を与えてくれる神様の鑑ということにしておくんだよぉ。


【ローカル言語の和訳って裏を取るのがほぼ不可能だよね】
朱:では改めまして、仏教とはなんなのか教えてください〜。
阿:端的に纏めると、叡智と摂理の終焉を探求することを目的としている。
朱:ふ、ふに?
天:もっと噛み砕くと、因果律を解析し、真理を獲得しようとしているのだとか。
朱:わ、訳が分からないんですけど〜。
黄:まあ、映画にしても洋書にしても、翻訳が酷いと本質から外れまくる訳だし、
 天照にそういう才能が無いと分かっただけでも、収穫としておくんだよぉ。


【家族の諍いにどれだけ尺を使ったのやら】
朱:全知の書みたいな存在があるとして、
 それを読み解く手段が無いみたいな感じですか〜?
黄:なんか、一気にファンタジー色が濃くなったんだよぉ。
天:私達、ザ・ファンタジーと言っても過言ではない存在なのですが。
黄:これほど生活臭が漂うファンタジーは、今時受けないんだよぉ。
天:日本神話の俗さ加減はギリシャ神話に匹敵すると言われていますから、
 そちらに回帰して欲しい部分もあるのですけどね。


【朱雀に掛かると霊験あらたかじゃなくなるな】
天:それはそれとしまして、更に分かりやすく仏教を解説するのであれば、
 世の中にはたくさんの理不尽がありますよね。
  それらを如何にして克服すべきかを考える学問という解釈もあるでしょうか。
朱:お勉強なんですか〜?
阿:開祖たる釈迦牟尼を神格化する向きから宗教とする者も多いが、
 二つの性質を持ち合わせているというのが適切だろうな。
朱:チョコとバニラの二種類が入ってる、
 二度美味しいアイスクリームみたいなものですかね〜。


【勇敢に戦死するといいとこ行ける宗教は多いしな】
朱:それがどうして、一部宗派では、極楽へ行くのが最終目標になってるんですか〜?
黄:ぶっちゃけて言えば、過程を省略して、結果だけを手にしようとしてるんだよぉ。
朱:猿蟹合戦の猿ですね〜。
天:そういう風に表現すると、仏教が浅ましい物に思えてしまうではないですか。
黄:まあ、そういった目の前の人参が無いと勧誘が大変だし、
 今ならレアカードが貰えるネットゲームみたいなものだと思えばいいんだよぉ。


【貴族の下取り品が庶民に流れるみたいなものか】
阿:既知の通り、仏教は現今でいう印度で生誕せしものだ。
  だが当節、さほど信仰の対象とはなっておらぬのが実情となる。
朱:それなのに、東南アジアや東アジアでは一大勢力なんですよね〜。
天:本場では廃れてしまったのに、他で隆盛を極めるというのはよくあることです。
朱:特定の地方でだけ流行ってる、一時代前のファッションみたいなものですかね〜。
黄:ああいったのは在庫処分という面があるのだろうけど、
 エコロジーという観点では実に素晴らしい気が、ちょっとだけしてるんだよぉ。


【宗教的な抗争が苛烈な地域だからね】
朱:それで、なんで今のインドでは受け入れられていないんですかね〜。
黄:そこら辺は、国民性とか、風土とか、ややこしい歴史とか、
 事情が複雑に絡み合ってて、一言では纏められないんだよぉ。
阿:うむ、人の因果は業によりて形成されるものだからな。
黄:この様に、張本人の一端すらよく分かってないと暴露してるんだから、
 難しく考えるだけ無益な領域と思って間違いないんだよぉ。


【由緒正しい家宝にすれば格好は付くぞ】
阿:中華を経由し、日ノ本へと伝来したのが六世紀頃と言われているな。
朱:お父さんのお下がりをお兄さんが着て、更に弟が、みたいなものですかね〜。
黄:一々、生活感に満ち溢れる例えなんだよぉ。
朱:こういう風に脳内変換すると、憶えやすくありませんか〜?
黄:その部分は否定しきれないけど、脳内にほのぼのファミリーの図が浮かんで、
 何の話をしてるのか分からなくなってくる弊害もあるんだよぉ。


【実社会で役に立つかどうかまでは責任持てないけど】
天:いえ、朱雀さんはこう言いたいのではないでしょうか。
  服装と宗教は、生きていくだけなら大して拘る必要はないけど、
 人生を豊かにするには、あって困るものでもない、と。
黄:これが、そんな深いこと考えてると思ってる辺りが、残念極まりないんだよぉ。
朱:そ、そこまで言わなくてもいいじゃないですか〜。
黄:逆に言えば、本能と直感だけで正解を叩き出すことが出来る天才肌とも言えるんだし、
 思考回路がトリッキーなことを恥じなくてもいいんだよぉ。


【時代の流れに対応する必要もあるしな】
朱:それにしても仏教って宗派が多いですよね〜。
黄:仏教圏に属してるからそう思うだけで、信者が多い宗教は、
 大体、異様な量の宗派が存在するんだよぉ。
朱:そうなんですか〜?
黄:絶対のカリスマが教祖となっても、何処かの代の後継争いで絶対に揉める訳で、
 進化の過程みたいなものだと思えば必然と言えるんだよぉ。


【これは売れると思って作ったアニメが爆死とか日常だしね】
朱:生存競争で淘汰されるのが自然の摂理なら、
 黄龍さんの信奉者が少ないのも頷ける話ですね〜。
黄:よぉし、そのケンカ、買ってやるんだよぉ。
天:待ってください。その話題に触れると、最初から信者が少ない月読が発狂します。
黄:偉大な存在である神族なのに崇め奉ってくれる人の数は後天性な辺り、
 やっぱ万能の存在なんて居やしないと思い知らされるんだよぉ。


【創作家がこれを言い出すと大体末期】
阿:信徒とは即ち、継承するものの器量が甚大なる作用を及ぼす。
朱:これは、何を言いたいんですか〜?
天:つまるところ、信者の数は開祖そのものより、
 それを宣伝する営業マンの方が重要であると。
黄:商業的に見れば、そういったことの方が多いんだよぉ。
朱:世にはびこるボンクラ共に物の価値を理解することなんてできないっていう、
 一つの真理をまたしても発見してしまったんですね〜。


【本能の行き場が他に無いんだろうね】
朱:質が高ければ無条件で売れると考えてる人は、商売に向いてないらしいですね〜。
天:家電の規格戦争、ゲームのハード争い、
 質アニメは何故売れない論にまで至る、永遠の対立構造です。
黄:営業部と技術部は、絶対に分かり合えない存在なんだよぉ。
阿:最果てまで煮詰めて言うのであれば、何を選んでも不正解など無いということだ。
黄:なんだか、やんわりと宗教戦争や宗派対立を否定しに掛かったように聞こえたけど、
 今日も今日とて、人類は元気に争い続けるんだよぉ。


【いつもより小鳥が賢そうに見える不具合が】
朱:折角ですので、仏教の奥義みたいなものがあれば教わりたいんですけど〜。
黄:秘伝の暗殺拳か何かと勘違いしてる節があるんだよぉ。
天:ですが、一子相伝の宗教があると考えたら、少し面白くありませんか。
黄:世間的にそれは、ちょっと変わった家訓扱いなんだよぉ。
朱:所詮、大衆に迎合することでしか権威は発生しないというお話ですかね〜。


【言葉が持つ力自体はそんなもんだよな】
阿:そうだな。一つ挙げるとすれば、何事にも因果が存在するということ辺りか。
朱:ふに?
天:要は、結果には、必ず原因があるということですね。
朱:なんだか、凄く当たり前のことを言ってませんか〜?
阿:真理とは、存外、そんなものだ。
朱:阿弥陀さんだからそれなりに説得力がありますけど、
 仮に月読さんだったら、何したり顔してんだで済まされる発言ですよね〜。


【どれだけ頑張っても自然や運命には勝てないし】
天:よく、碌でもないことが起こったら、前世で悪いことをしたせいだなんて言いますよね。
  これも、仏教的な因果と解釈されています。
朱:一種の現実逃避に聞こえるんですけど〜。
黄:小鳥のくせに、中々、宗教の本質を突いた意見なんだよぉ。
天:それで多少なりとも気が紛れるのであらば、役割を果たしていると言えるでしょう。
朱:原因を、今の自分以外の何かに求めるのは、人の業なのやも知れませんね〜。


【朱雀の脳は瞬発特化だから仕方ない】
天:全ての現象は何かしらの要因に依って引き起こされるという考え方は、
 科学的に解釈しても、本質的であると言えますよね。
黄:これがキリスト教だと、神の深い考えという、曖昧な物言いで逃げられるんだよぉ。
阿:仏教が、学問的な性質も備えているというのを理解して貰えただろうか。
朱:お勉強は苦手ですからよく分かりませんけど、分かったということにしておきます〜。


【悟りと諦観は似て非なるものなのだとか】
阿:他には、そうだな。世界に、絶対の存在など有り得ないということだろうか。
朱:阿弥陀さんほどの方でもですか〜。
黄:宇宙の広さが底知れないとバレた今、
 こんな小さな惑星の偉いさんなんて、たかが知れてるんだよぉ。
朱:結局のところ、自分の器で何が出来るかを考えるのが大切なんですね〜。
黄:実のところ、今の発言は仏教的な悟りに近いのだけど、
 朱雀が言うと、どうにも凄みを感じないのが、やっぱり困ったものなんだよぉ。


【青龍がどうやってモチベを維持してるのかが気になる】
天:こう言ってはなんですが、人があまりに誰が言ったかに依存する為、
 宗教関係者が不必要なまでの虚飾をするという側面もあります。
阿:もう幾ばくか、本質を踏まえて考えて欲しいものなのだがな。
黄:それが出来るなら、もうちょっとくらい人類史は進歩を感じられるんだよぉ。
朱:つまり、今後も現状維持が続くということですか〜?
黄:その現実を考えると働くのが馬鹿らしくなるから、
 深くは触れないでおくのが、聖獣界隈の暗黙の了解と化してるんだよぉ。


【いつだってダメな方向に全力疾走】
阿:どうだ。一端とはいえ、仏教というものが垣間見えただろうか。
朱:これで明日から、仏教博士を名乗れます〜。
黄:まあ、自称するのは、なんだって自由なんだよぉ。
天:真理の追求からは程遠い行為ですけどね。
朱:いざとなれば、『そんなことも分からぬのか、未熟者め』と言って、
 お茶を濁すから問題ありません〜。


【まるで男女の間柄の様とでも言っておけば詩的になる】
黄:とはいえ、たしかに理と知でことの全てを解き明かそうと思ったら、
 何十億年と掛かるのも、しょうがない気がしてくるんだよぉ。
朱:黄龍さんなら、挑戦権ありますよね〜。
黄:一万年以上生きてきて、分かったことといえば、
 御飯が美味しければ大体健康ってことくらいなんだよぉ。
天:それはそれで偏っている気がしないこともありませんが、
 知れば知るほど訳が分からなくなるというのも、一つの真理なのやも知れません。


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