邂逅輪廻



【元はと言えば四神が後釜みたいなものなのに】
朱:赤龍さん、黒龍さん、白龍さんの連名で、果たし状が届きました〜。
白:今更?
玄:と言いますか、数年越しで主張し続けているのに、
 私達が意に介していないというのが的確かと。
白:ま、相手してやるメリットないし、暇潰しくらいの存在だからねぇ。
黄:なんでこいつらがクビにならないかと言えば、
 代替品のあいつらが大した脅威になっていないという切ない現実があるんだよぉ。


【ぬるま湯に満足するのも自由だろうに】
朱:スポーツでも、控え選手が微妙だと、主力が怠けるみたいなことはありますよね〜。
黄:層の厚さは単純な戦力だけじゃなく、そういった効果も生み出すんだよぉ。
白:つまり、私達がイマイチ伸び悩んでるのも、致し方ないってことだよね。
玄:何事にも理由があると、安心感を得られます。
黄:結果としてそういった因果関係があるにせよ、
 当事者が言っていいかどうか、少しくらい考えて欲しいものなんだよぉ。


【影響力に関してはほぼ最下層だからね】
黒:ぐわははは、邪魔するぞ。
玄:こういった時は、『邪魔するんやったら帰りーや』と言えばいいと耳にしました。
白:『チッ、邪魔しやがって』なら、
 小物感を出しつつ、いつ死んでも問題無いキャラ設定にできるかな。
朱:お二方が、黒龍さんのことをどうでもいいと思っていることは、
 心の底からよく分かりました〜。


【個人の感想ですという何を言っても許される魔法の注釈】
セ:うーん、マンダム。お嬢様方、本日の御機嫌はどうでございましょうか。
黄:このエセ執事を、久々に見た気がするんだよぉ。
朱:セバスチャンのお名前で、今でも麒麟さんに仕えてるんですか〜?
セ:いえ、自身の未熟さを悟り、各地に飛んで日々勉強をさせて頂いています。
朱:つまり、いい年して自分探しの真っ最中なんですね〜。
セ:はっはっは、これは手厳しい。
黄:一見、小鳥の戯言を軽く受け流したように聞こえたけど、
 爬虫類らしい粘着質さで、恨み節リストに載ったに違いないんだよぉ。


【言葉が通じるのに孤立するのは別の意味で怖い】
赤:かかか。
朱:そうですか〜。最近は業界も景気が悪いんですね〜。
黄:いつものことながら、何であれで会話が成立するんだよぉ。
赤:けかか。
朱:ふにふに〜。
黄:そしてさらっと朱雀語に移行されると、話の方向性すら推定ができなくなって、
 海外の僻地に放り込まれたかのような恐怖感が募ってくるんだよぉ。


【歴史を変えるって案外そんなものだぞ】
白:宇宙ってさ、ちょっと前まで真空には何も無いって言われてたけど、
 実は色々な粒子が満ちてるって分かってきたじゃん。
黄:いきなり、なんなんだよぉ。
白:いや、知覚できる範囲のみが世界の全てだと考えれば、
 朱雀達のコミュニケーションも、その内、日常になるのかなって。
黄:たしかに電話や飛行機みたいに革新的な発明は価値観を一新させてきたけど、
 こいつらのそれが、どうにかなる気が全くしないんだよぉ。


【ぞんざいに扱っていいランキング上位に位置する男】
黒:それでは本題に移らせて貰おうか。
  見たところ、果たし状は読んだようだな。
朱:思ったんですけど、これで読んでないって主張したらどうなるんですか〜?
白:裁判所の通達みたいに、無視したら無条件で敗訴的な感じじゃないの。
玄:ですが果たし状って私信ですよね。
  大量に送りつけて一つでも対応できなかったら負けというのも理不尽な感はあります。
黄:そろそろ黒龍が不憫に思えてきた気がしたけど、
 錯覚だという確信を得たし、放っておくことにするんだよぉ。


【黄龍は御意見番だから許されてると主張】
黒:ええい。四の五の言わず、我らが勝ったら守護職を明け渡して貰うぞ。
白:こっちに受ける理由が無いって、言っちゃダメな流れ?
朱:肩書きは差し上げますから、収入はこっちに寄越せというのはどうでしょうか〜。
玄:成程、互いにいいことづくめの、まさにウィンウィンの提案ですね。
黄:幾らこのオッサン共が実質的に無職といっても、
 タダ働きで返り咲こうとかは、流石に思わないんだよぉ。


【動物だって大体のことは脳に収まってる】
黒:今回の勝負はグルメ対決だ。
玄:この、話の脈絡が全く繋がっていない感じは、問題ないのでしょうか。
黄:胸に手を当てて、自身の行動を思い起こしてみやがれなんだよぉ。
玄:申し訳ありませんが、私の記憶回路は非常時を想定して各所に分散してある為、
 胸部からのみでは必要な情報を取り出せないかと。
黄:ものの例えにここまで真面目な返答をされるとは思っていなかったから、
 どう転がしたものか悩みかけてしまったんだよぉ。


【結局は審査員の好みに合わせるという接待展開に】
黄:それにしても、なんつう卑怯なやつらなんだよぉ。
朱:どういうことですか〜?
黄:こっちは、味にうるさいようでいて、結局は量があれば満足するのと――。
白:うにゃ?
黄:食事というものに全く縁が無いのに加えて――。
玄:はぁ。
黄:筋金入りのお子様舌と、食道楽とは無縁なラインナップなんだよぉ。
朱:そもそも、御飯なんて本人が満足ならそれで充分なのに、
 勝負しようっていう発想が分かりませんよね〜。


【会社には更なる高みが居るんだよ】
セ:ち・な・み・に、このセバスチャン、家中を取り仕切る執事という立場ですが、
 調理は専門家に任せればいいと考え、ほとんど修めておりません。
黄:溜めた末に出てきた言葉がそれというのも、どうなんだよぉ。
朱:執事は何でもできるというのは、偏見ですよね〜。
セ:逆に、その様に万能の人材が居るとすれば、
 何故独立しないのかと問い質したいくらいです。
黄:そこはまあ、忠誠心の塊みたいな解釈もできない訳でも無いけど、
 本業の腹心として活用した方が、絶対に有用ではあるんだよぉ。


【女性陣の女子力はどうなってるんだというアンタッチャブル】
セ:家庭内の庶務など、数に任せればどうとでもこなせますからね。
  青龍殿に担当させるのが如何に国益を損ねているかを想像頂ければ分かりやすいかと。
朱:ですけど、お嫁さんにしたいランキング、ダントツのトップらしいですよ〜。
白:あの口うるささと、なんやかんや言って面倒見がいい部分は、
 良質のオカンになれる素質だし、しょうがないよね。
黄:全てに於いて間違ってると、敢えて修正する気が起きないから困ったものなんだよぉ。


【何事も報連相って大事だよね】
赤:けけか。
朱:み、見事な包丁さばきを披露してますよ〜。
黄:本当、コミュニケーション以外は、そつなくこなすんだよぉ。
赤:くかか。
黄:それはそれとして、あの十玉分のキャベツの千切りを何に使うのか、
 聞いたところで朱雀以外に理解できないのが恐ろしい話なんだよぉ。


【悪魔の証明の域に達している理不尽】
朱:勢いに任せてやっただけで、特に深い考えはないそうです〜。
赤:かかこ。
黄:ひっでー話もあったものなんだよぉ。
赤:くくか。
朱:『このキャベツに関しては、
 スタッフという名の黒龍が美味しく頂くから安心してくれ』だそうです〜。
黒:なんだと!?
黄:この場合、朱雀が発言を捻じ曲げてる可能性も考えられなくはないんだけど、
 仲間として責任を取るのは当然だから、しょうがないかなって感じなんだよぉ。


【なんだその最新鋭掃除機みたいな触れ込みは】
黒:うっぷ、戦う前から、腹が膨れてしまった。
白:これで大分、勝算上がってない?
黄:あまりのしょうもない展開に、無かったことにしたいんだよぉ。
玄:敵の弱みに付け込むのは、兵法の基本です。ここは一気呵成に畳み掛けましょう。
朱:つまり、対決内容を大食いものにすればいいんですね〜。
黄:龍族の消化力舐めんなと言いたくなったけど、
 一気に飲み込んでじっくり吸収するのが得意なだけで、
 吸引力が最後まで落ちない白虎を相手に勝てる気がしないんだよぉ。


【過食が道楽のローマ貴族にも言ってやれ】
赤:かくか。
朱:『飯を食べた量で競うとはなんという不道徳だ。
 美味しく頂ける範囲が適量だ』だそうです〜。
黄:こんなやつに、まともな意見を言われるとは思わなかったんだよぉ。
白:どんだけ食べても美味しさが変わらないうちの一家は、倫理観抜群ってことだね。
黄:それはそれで何かが間違ってる気がするけど、
 世の中に絶対的な正義がないことを鑑みれば、一つの正解なのやも知れないんだよぉ。


【金庫番の背信は雇った方の見る目の問題だという考え方】
朱:ところで、お料理対決はいいですけど、審査員は誰がするんですか〜?
白:ま、消去法的に黄龍しか居ないでしょ。
黒:バカを言え。俺らを嫌っているそいつが、正当な評価を下せるものか。
黄:自覚があるんなら、そもそもうちでケンカ売るのをやめればいいんだよぉ。
セ:アハハ。この子達の職場に赴いたら麒麟殿に会わなくてはいけないではないですか。
黄:そういやこいつ、麒麟に仕えてた頃に金をちょろまかした、
 しょうもない過去があったんだよぉ。


【自国領が荒らされないくらいしか思い付かないな】
則:そなたら、誰か忘れてはいないかえ。
黄:これはこれで、人選としてはどうなんだよぉ。
朱:公平な判断はしてくれそうですけど、どっちも論外とか言い出しそうですよね〜。
白:ま、そん時は引き分けで、チャンピオン側が防衛扱いになるからいいんじゃないの。
黒:なんだか、一方的に不利な戦場が構築されつつないか。
黄:敵地で戦うメリットなんてあんまし無いという、
 数千年以上に渡って実践された基本に今更気付くというのも、本格的にどうなんだよぉ。


【ノーガード殺法は世界最強だと人は言う】
玄:あのー。実は私、調理というものがあまり出来ないのですが。
朱:今の発言、『実は』の部分、必要でしたか〜?
黄:本人が隠してるつもりになっていることは、触れないであげるのが作法なんだよぉ。
白:思い出した!
  妹の真武は色んなソフト入ってて、雑務どころか、家事も万能なんだっけ。
黄:まあ、あそこまでいくと逆に心には突き刺さらないということにしておけば、
 見てるこっちも痛々しさを感じなくて済むんだよぉ。


【戦力外なりに役に立とうとしてるとも言えるけど】
玄:冷凍食品とか、食べさせたことありますか?
  昨今の技術って凄いですし、意外に騙せると思うんですよ。
黄:たしかに、残念主婦より美味しいのは間違いないけど、なんだよぉ。
朱:黄龍さんが味を知ってるってことはダメですね〜。
玄:でしたら、デリバリーサービスを活用してですね――。
黄:こうまでして妹を頼らないのは潔いのか、単に意地になってるだけなのか、
 いずれにしても自力で何とかしようという気概が無いのが残念過ぎるんだよぉ。


【ハンバーガーにハマるお嬢様状態だったのか】
則:ほむ。どちらも、ぱっとせん出来栄えじゃのぉ。
黒:なにを言う! この白龍が足を使って集めた食材の輝きが分からぬのか!
黄:この方は元皇帝様だから、そういうのはむしろ日常だったんだよぉ。
則:所詮、個人で収集できるものなど、たかが知れてるわいな。
黄:そして美食を極めすぎて、逆に庶民の食べ物が珍味になるという状態なんだから、
 あんま変に揺り動かさないで欲しい次第なんだよぉ。


【石器じゃ切り分けが限界だと思うんだ】
則:こちらも、素材の味を活かしていると言えば聞こえはよいが、
 技巧足らずの言い訳に過ぎんの。
白:それ以外の調理法を知らないからしょうがないよね。
黄:煮るとか焼くとかしてるだけで、随分な進歩なんだよぉ。
白:あ、逆にイノシシの活造りとか出したら珍しがってくれた?
黄:何か原始的料理の代表格みたいに言ってるけど、
 それだけ優秀な刃物はかなり高度で、少なくても丸焼きよりは後の時代のものなんだよぉ。


【常識人に見せかけてるけど狂人じゃないと務まらないよね】
青:これは一体、何の騒ぎですか。
玄:流石は青龍さんです。
  どう考えても収集が付きそうもないところに颯爽と現れてくれる素敵な方です。
朱:困った時は青龍さん、は既に故事の域ですよね〜。
白:いやー、こんな立派な上司を持って、私達は幸せだなー。
青:この手前勝手な部下達を抱えて明日も頑張らないといけない現実に、
 目眩を覚えることが無い訳でもないのですがね。


【温情人事で潰れた国は幾らでもあるから仕方ない】
青:美食対決で勝ったら職責返上?
  その様な話、認めると思っているのですか。
黄:まあそうだよねと、誰もが分かっていた結論を突き付けやがったんだよぉ。
黒:青龍、貴様! かつての同僚に、その様な仕打ちをして楽しいのか!
青:では伺いますが、貴方に五千年の空白を埋め、
 現代社会に対応できる程の才量があるのですか。
黒:ウヌヌ。
黄:流石、青龍さんは頼りになるなぁと感心してしまったけど、
 同時にこっちの再就職もドンドン難しくなってる現実を突き付けられたんだよぉ。


コント連載中



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