邂逅輪廻



【誰が少女やねんとツッコむとキリがなくなる】
月:てーへんだ、てーへんだ。
黄:この、どう考えても言いたいだけ感はどのようにして拭うべきなんだよぉ。
朱:言いたいことも言えない世の中よりはいいと、
 論点をズラして誤魔化せばいいんじゃないですかね〜。
黄:言論の自由と放言し放題は、似て非なるものなんだよぉ。
月:いくら私が日々適当なことばかり口にするオオカミ少女とはいえ、
 本当に切迫した何かが起こってたらどうする気なんだ、こいつら。


【そのくせ砂の城並に脆いという】
黄:で、何があったんだよぉ。
月:うちの愚姉が、またしても引き籠もりを始めるらしい。
黄:完全なる、日常の一コマなんだよぉ。
朱:どこらへんに、大変要素があるのか説明して貰いたいですよね〜。
月:そう言われるとそんな気もしてきた。とりあえず、茶でも飲んでくか。
黄:こういった地道な積み重ねが、個人的信用の度合いを決めてるのだと思うと、
 色々と、考えさせられるものがあるんだよぉ。


【溶けるような餡の舌触りが堪らない】
月:いや、今回はクラシカルな洞穴にすべきか、
 手軽な押し入れという選択肢もあるのではないかとか、
 ドラム缶というのも悪くないかもなんて言い出したもんだから、勢いで驚いてしまった。
黄:ヒッキー業界も、迷走を始めてるんだよぉ。
月:それにしても、この土産物の饅頭美味しいな。
黄:そしてそれは同レベルで片付けていい問題なのかと思ったけど、
 饅頭が旨いという事実は、たしかに重要なんだよぉ。


【ちょうど目の前にあったからしょうがない理論】
朱:ドラム缶って、引き籠もりさんにとって居住性はどうでもいいんですかね〜。
月:猫だって、段ボール箱にみっちり詰まって満足気な顔してるし。
猫:まーお。
黄:とはいえ、どういった経緯で植木鉢に収まろうと思ったのか、
 その思考回路は解明されて然るべきなんだよぉ。


【生意気な子供が愛らしく見えてきたら大人みたいな】
朱:それで、この巨大な氷の塊はなんなんですか〜?
月:姉さんが、新たな引き籠もりパターンを開発すべく作ったらしい。
  中に入って、ひんやり涼しげだとかなんとか。
黄:人んちの庭に置けばいいという考えを、そろそろ改めやがれなんだよぉ。
月:どうせロクに働いてないんだから、少しくらい世間様の役に立て。
黄:その言葉が自分に突き刺さらないのかが不思議でしょうがないんだけど、
 何か夜になって一人で落ち込みそうだから、哀れさが先行してきたんだよぉ。


【傍目にどうあれ仲良し姉妹ではあるからね】
天:という訳で、これより天照、氷の牢獄に住まわせて頂きます!
黄:こんなテンション高い引き籠もり、初めて見たんだよぉ。
月:我が姉ながら、大分、頭がやられてると思う。
黄:だから、それをよく月読が口に出来たものなんだよぉ。
月:本当に頭がイカれてる奴が、頭のおかしい奴を客観的に評せる訳なかろうに。
黄:そうやってパラドックスみたいな展開に持っていくのは自由だけど、
 真のシンパシーを得られるのは、結局は同類だけなんだよぉ。


【種も仕掛けもない只の墨汁なのに】
天:氷って、透過率が高いですよね。太陽が眩しくてしょうがありません。
朱:天照さんが籠もると太陽も隠れるはずなのに、
 氷が透明なせいでそう判定されないんですかね〜?
黄:こっちも、ややこしい話になってきたんだよぉ。
月:つまり、この墨汁をぶっ掛けることで、世界は闇に包まれる訳だな。
黄:何か神話の世界みたいに壮大な話が聞こえた気がしたけど、
 よくよく考えるまでもなく、こいつら神話の住人だったんだよぉ。


【防音壁に虚しく吸われそうだけど】
天:発泡スチロールで覆えば、断熱、遮光、共に完璧です。
黄:ついでに、声も大分、聞こえづらくなったんだよぉ。
月:日が陰ってきたけど、このまま何も無かったように家に帰るというのもありだな。
朱:それより、時間が経って氷が溶けたら溺れるんじゃないですかね〜?
黄:まあ空気穴は開いてるし、居住スペース分の空間が上に出来るはずだから、
 エスオーエスコールが発せられるまでは放っておいても平気ということにしておくんだよぉ。


【相対で見たら妥当極まりない査定】
天:氷の城は無いと気付きました。
黄:せめて、作る前に気付けなかったのか、なんだよぉ。
朱:とりあえずやってみるのは大事なことらしいですよ〜。
黄:発明家や商売人ならともかく、国のトップが軽々に動かれても困るんだよぉ。
月:逆に言うと、姉さんはその器では無いということだな。
黄:その件に関しては何とも言えない部分があるけれど、
 月読が相応しいかと問われれば、はっきりノーと言い切れてしまうんだよぉ。


【無駄だから燃えるんだろという定型文が返ってくる】
天:という訳で、次の居住空間を開発しました。
黄:こんなアグレッシブな引き籠もり、初めて見たんだよぉ。
月:まあアレだ。切羽詰まった時の部屋掃除みたいなものだと思え。
朱:追い込まれると、何をしでかすか分かりませんよね〜。
月:敗残兵には逃げ道を用意しておかないと、思わぬ底力を出す的なアレだな。
黄:喩えとしてどうなんだというのはともかくとして、
 この手の空費される情熱をもっと有効に使う術はないものか、なんだよぉ。


【スペアというのが定説だから致し方ない】
天:見てください。子供の永遠の憧れ、お菓子の家ならぬ、お菓子の蔵です。
黄:こいつ、何考えてやがんだよぉ。
月:私の姉だぞ。言わずもがなというものだ。
黄:とうとう、居直ったんだよぉ。
朱:血と言いますか、遺伝子の宿命からは生涯、逃れられませんものね〜。
黄:兄弟姉妹なんてのは似た感じになるか、正反対でバランスをとるものだけど、
 こいつらだけは増殖して欲しくなかったというのが本音なんだよぉ。


【絵面が茶色いので遠目にはログハウスっぽい】
朱:それにしても、この蔵、何で出来てるんですか〜?
天:煎餅を基礎建材とし、饅頭や羊羹といった和の要素をふんだんに盛り込みました。
月:まさか、さっきお茶請けに食べた饅頭が伏線だったとは。
黄:こじつけが過ぎるんだよぉ。
月:適当にそれっぽいことを並べ立てておけば、
 なんとなく雰囲気で繋がって消費者サイドが深読みしてくれる時代だからな。
黄:手法としてどうこう言う気はないけれど、
 それに対して疑問を持たないようになったら、割と本気で末期なんだよぉ。


【煎餅とは思えぬ鉄壁っぷりを誇る】
月:しかし、この蔵は夢に溢れているようで、
 飲み物無しで和菓子を食えとか、相当キツいよな。
黄:現実とは、いつだって巨大な壁となって立ち塞がるんだよぉ。
朱:蔵に閉じ籠もる話だけにですね〜。
黄:その発言に対して壁を作って聞かなかったことにしてやるのが思いやりなのか、
 誰かアドバイスして欲しいんだよぉ。


【大体の生き物はそうだろうという気もするけど】
天:皆さん、何を言っているんですか。
  建材を食べたら、いずれ穴が空いて引き籠もりにならなくなるじゃないですか。
黄:まさかの、真っ当な返答なんだよぉ。
月:夢を見せるのか、壊すのか、スタイルを決めてから行動すべき。
朱:どうして自動再生する機構を組み込まなかったんですかね〜。
黄:理屈としては間違ってない気がしないでもないけど、
 時間と共に修復するようなものを口にしたいかと言われると、首を傾げるんだよぉ。


【人生を深めるとは諦めを増やすということ】
天:という訳で、いただきもので恐縮ですが、どうぞ。
朱:この葛餅、普通に冷蔵庫から取り出しましたよ〜。
月:そりゃ、葛餅じゃ柔らかすぎて使う部分が無かったんだろう。
黄:論点は、そこじゃないんだよぉ。
朱:電気が通ってるって、形状こそ蔵ですが住む気満々ですよね〜。
黄:そっちでもない感はあるんだけど、何か考えるのも面倒になってきたし、
 それでいいかなと妥協しつつあるんだよぉ。


【そもそも作らないという発想は無かったのか】
天:洞穴に籠もった時に悟ったのです。
  温度と湿度には気を遣わないと、快適に暮らすことは出来ないと。
朱:最新型のエアコンが設置されてます〜。
黄:こうやって、国費は無駄に食い潰されるんだよぉ。
天:何を言いますか。近年の空調は旧型とは違い電気の消費を抑えられるので、
 長い目で見れば、むしろ安上がりなくらいなんですよ。
黄:こっちも、見事な論点ずらしを食らってる気がするけど、
 それで自分を騙せるなら、勝手にすればいいと思うんだよぉ。


【カレーはインド料理か論が再燃するぞ】
朱:このクッション、カステラで出来てるんですね〜。
月:カステラって、和菓子か?
黄:ここまで原型を留めてなければセーフじゃなかろうか、なんだよぉ。
月:つまり、明太納豆パスタは、和食だな。
黄:イタリア人も、それをイタリアンと言われたら困惑するだろうし、
 あっちの方から絶縁状を叩き付けられる気がしてならないんだよぉ。


【この宇宙はボケが多過ぎではなかろうか】
天:硬度が必要なものにつきましては、飴を採用しました。
朱:この湯呑みがそうみたいですね〜。
黄:確実に、溶けて甘くなるんだよぉ。
月:アホの子のすることですから。
天:何も入れないコーヒーなど、苦くて飲めないじゃないですか。
黄:どうして湯呑みにコーヒーを注ぐのかとか、角砂糖くらい用意しろとか、
 色々と言いたいことはあるけど、そろそろツッコミ自体を放棄したい気分なんだよぉ。


【人は堕落するよう出来てるからしょうがないよね】
朱:ということは、家電もお菓子製なんですかね〜。
天:いえ、それは普通に、ネット通販で購入しました。
黄:引き籠もりを加速させるシステムは、見直してみる頃合ではなかろうか、なんだよぉ。
月:その言葉は、ネット通販抜きで生活水準を維持できるものだけに許される。
黄:えー、先程、軽率な発言を口にしてしまったことを、
 ここに深く謝罪し、全面的に撤回する次第なんだよぉ。


【こんな悲しい啖呵は久々に聞いた】
天:利便性の否定は、文明そのものへの冒涜です。
  人とは、生活を向上させる為に試行錯誤を繰り返してきた生き物なのです。
黄:その言葉、質素倹約を旨とするキリスト教関係者に聞かせたいんだよぉ。
月:まあぶっちゃけ、欧州が中世に停滞どころか、
 全速力で後退したのは、宗教のせいに他ならない訳だしな。
朱:それを、神様である月読さんが言いますか〜?
月:私は日本国の宗教活動に、雀の涙程度の影響しか与えてないから問題無い!


【過程が大事なんだと言うは虚しく】
天:引き籠もりとは、一体、何なのでしょうか。
黄:何事も中級者になると、こういった根本的な疑問にぶち当たるらしいんだよぉ。
朱:上級者を突き抜けると、どうなるんですか〜?
黄:結局のところ何も分からないことに気付いて、ぶん投げるんだよぉ。
朱:つまり、考えるだけ無駄なんですね〜。
黄:こうして時たま真理に辿り着いてしまう辺り、
 朱雀は中々どうして、侮れない生き物だと思うんだよぉ。


【まるでベストセラーに嫉妬しているような物言い】
月:我々は引き籠もりが何者であるかを判断するには余りに無知だが、
 我々は引き籠もりというものを誰よりもよく知っている。
黄:何、名言っぽく適当なこと言ってるんだよぉ。
朱:一瞬、深い意味があるかもって考えちゃったじゃないですか〜。
月:世間の胸に染み入る言葉なんて、大体こんなもんだぞ。
黄:例え、どんなに薄っぺらく中身が無かろうとも、
 当人が感銘を受けたならいいじゃないかと言ってしまっていいものなのか、なんだよぉ。


【この中々死ねない方々が何か言ってる感】
天:何にしましても、私達の引き籠もりロードは、まだまだこれからです。
月:なんか、あれこれと足掻いてはみたけど、
 人気を得られなかった少年漫画みたいな発言が聞こえたのだが。
黄:彼女の人生を、ここいらで打ち切ってしまって欲しいという、
 魂の叫びなのではなかろうか、なんだよぉ。
朱:何があろうとも、自分の人生は自分で決着させるべきじゃないですかね〜。
黄:極めて正論風の言葉が聞こえた気もするけど、
 生誕と同じく、死滅もまた、抗い難き運命の一端なんだよぉ。


【この姉妹の面倒くささは世界屈指かも知れぬ】
朱:そもそも、来客を招いてる時点で引き籠もりと呼べるんですか〜?
月:そこいらへんは、引き籠もり学会でも定義が実に曖昧な部分だ。
黄:自分のテリトリーから出ないのが引き籠もりなのか、
 極力、他者との接触を拒むのが引き籠もりなのか、見解は分かれるんだよぉ。
天:こう、引き籠もり引き籠もりと言われると、意地でも出たくなくなりますよね。
黄:言わなかったら言わなかったで構いやがれオーラで満ち満ちるくせに、
 よくそんなことが言えたものなんだよぉ。


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