【両腕よりは物差しとして有用だな】 白:朱雀の髪質ってさ、ウェーブ掛かった天然パーマじゃん。 朱:いわゆるところの、ゆるふわ系ですよね〜。 黄:見事な、拡大解釈なんだよぉ。 白:これ、波状だから腰くらいの長さに見えるけど、 引っ張ると踵にピッタリ付くくらいってことに気付いたんだよね。 黄:両手を広げた長さは身長と大体一緒という人体上の特徴はあるけれど、 だからどうした感は拭えないんだよぉ。 【放っておいたら異次元漫才コース】 白:でさ、これってストレートパーマやったら、治るもんなの? 黄:一周して、斬新な発想なんだよぉ。 朱:私の個性を潰そうという、闇の組織の陰謀ですね〜。 黄:その解釈も大概なんだよぉ。 白:朱雀のオンリーワンさ加減って、直毛になったくらいで消えるものかな。 朱:言われてみれば、それもそうですね〜。 黄:この、何か捉えどころのないふわふわとした感じが、 朱雀の髪質に掛かっていると考えることにしたんだよぉ。 【女の命とは思えぬ粗雑さ加減】 白:えっと、たしか真っ直ぐにするのって、 熱を加えたり、薬品で変質させたらいいんだっけ? 黄:素人が安易にやると、取り返しの付かない痛め方をしかねないんだよぉ。 白:朱雀なら、何をどうしようと一晩寝たら元に戻る気しかしないんだけど。 黄:言われてみれば、そう思えてきたんだよぉ。 朱:だからといって、どう扱ってもいいというのは、違うんじゃないですかね〜。 【黄龍でもマシな部類という恐ろしさ】 白:大丈夫、大丈夫。 こう見えて、四神辞めて美容師で食べていこうって思ったことあるし。 黄:ストリートミュージシャンで家族を養うと言い出すくらいのノリなんだよぉ。 朱:思っただけで、特に何かの技能を身に付けた訳でもなさ気ですよね〜。 黄:それで、こんな軽い感じで玩具にされることに抵抗はないのか、なんだよぉ。 朱:白虎さんが、話の通じる方なら一考の余地もあったんですけどね〜。 黄:朱雀にこれを言われるとはと思ってしまったけど、 考えてみたら、周りの半分以上は、他人の話なんざ聞いちゃいなかったんだよぉ。 【ほとんど飾りだからこそ主張は激しい】 白:じゃあ、軽いとこから、市販の縮毛矯正剤を、と。 朱:ふに〜。 黄:髪量が相当なものだから、一本使いきりやがったんだよぉ。 白:それにしてもこの羽根が、作業する上で超邪魔! 朱:その件に関しましては、生まれつきのものですから、 コメントを差し控えさせて頂きます〜。 【質量が完全に熱量に変わる究極の資源】 白:あとはすすいで終わりっと。 朱:きちんとぬるま湯でお願いしますね〜。 熱いと際限なく膨れますし、冷水だと私の火属性とぶつかって、 とんでもないことになりますから〜。 黄:その、とんでもないこととやらに興味が湧いてきたんだよぉ。 白:毛先だけなら、被害も最小限に食い止められるよね? 朱:私のことですから、対消滅級のエネルギー放出が起こっても、 責任は負いきれませんけどね〜。 【月読と共に謝罪行脚の旅に出るべき】 白:どう? 朱:どうと言われましても〜。 黄:何だか、良家の子女に見えるんだよぉ。 白:この子って、私達が思ってるより、遥かに深窓の令嬢だけどね。 朱:そうらしいですね〜。 黄:何処まで行ってもこの他人事感が本物っぽくもあるけど、 やっぱり世間のお嬢様連盟に怒られそうだから、発言を控えておくんだよぉ。 【宇宙の全てが詰まってると言われてる位だからな】 白:んで、なんかさっきから、フラフラしてない? 朱:ちょ、ちょっと安定感に欠けるんですけど〜。 黄:朱雀の髪は、昆虫の触角や猫のヒゲのように、 センサーの役割を果たしている可能性が出てきたんだよぉ。 白:前もって言っておくけど、虎だからって、 そういう機構に詳しい訳じゃないから、見解を求められても困るからね。 黄:そこんところは、朱雀自身、朱雀というシステムに無知なことで慣れてるから、 特にどうこう言う気は無いんだよぉ。 【素晴らしきはこの躍動感】 白:ん? 黄:どうしたんだよぉ。 白:いや、今、なんか木から飛び降りたみたいな浮遊感が。 朱:立ちくらみですかね〜。 白:座ってるのに? 黄:あんだけ、普段から飛んだり跳ねたりの日常なら、 逆に静止してる方が不安定になる気もしたけど、 流石にそれはないかと、一人で納得したんだよぉ。 【何が起きても想定内と言っておけば通ぶれる】 白:んー? 黄:今度は、どうしたんだよぉ。 白:このちゃぶ台、ちょっと動かなかった? 朱:超能力ですかね〜。 白:酷いツッコミ待ちの発言があった気がするんだけど。 黄:もしも半世紀早く転生していたら実験材料になったか、見世物になったか、 いずれにしても超生命体たる朱雀が言うとは、いい根性してるんだよぉ。 【相手が理解しているか知る術が無いから仕方ない】 白:仮説を、言ってもいい? 黄:口にするだけなら、自由なんだよぉ。 朱:適当な相槌くらいしか打たない可能性もあるってことですね〜。 白:そんなのには慣れっこだから、特段、不都合はないかな。 黄:コミュニケーションには相互の理解が大事だと偉い人は言うけれど、 一方通行の積み重ねで成り立ってるのが現実というものなんだよぉ。 【清新な感動と言うより単に憶えてない】 白:んで、髪をストレートにして、朱雀のバランスが崩れたって思ったんだけどさ。 実際のところは、この近辺の重力がグラついてるんじゃないかなって。 黄:何をバカなことをと、一蹴できない信憑性があるんだよぉ。 朱:いくらなんでも、突拍子もなさすぎませんかね〜。 黄:十年そこそことはいえ、あの人生を積み重ねてきた上でその言葉を吐ける方が、 こっちとしてはびっくり仰天なんだよぉ。 【朱雀教とか作っても誰も入信しないな】 白:そういや朱雀が浮けるのって、この羽根が重力制御してるって説が濃厚だっけ。 その時に生じる歪みを、髪が吸収してたとしたら――。 黄:ここまでの超解釈が飛び出しても、朱雀ならありえるかなって思えるんだよぉ。 朱:全てを肯定するのは、一種の思考停止ですよ〜。 黄:されど大半の宗教はそれで成り立っている訳だから、 特に問題無いとしておくのが、大人の作法というものなんだよぉ。 【どうやって散髪とかしてきたんだろうか】 白:髪の付け根チェックしたら、生来のくせっ毛かどうか分かるかな。 黄:自称美容師志望の目利きをとくと御覧あれ、なんだよぉ。 白:てか、熱っ。 黄:そりゃ、体温七十五度だし、なんだよぉ。 白:もしかして、単にこの熱のせいで縮れてるとか言わないよね。 黄:案外、盲点のようでいて、朱雀に関してそんなことはあるまいと、 否定から入ってしまう自分に疑問を感じたんだよぉ。 【オンラインゲームの固定ジョブだと騒ぎの元】 白:まあ、仮にも鳳凰の血族の髪が、耐熱性じゃないなんてことないか。 朱:ハードルを上げられました〜。 黄:それにしても、歴代の朱雀はお湯を湧かせるくらいの熱量を持っていたのに、 どうして当代はこんな程度なんだよぉ。 朱:初期ステータスが低めだと、成長性が抜群というのが業界の常識ですよね〜。 黄:そう思わせておいて幾ら育てても使えない地雷キャラを埋め込んでおくのも、 そっちの世界では使い古された手法なんだよぉ。 【性能だけでユニットを語るなら将棋でもやってろ的な】 朱:そんな感じの無能キャラを使って愛を強調すれば、 マニアぶれるって月読さんが言ってました〜。 黄:壮大な負け惜しみに聞こえてきたんだよぉ。 白:何事も、プレイスタイルは自由だからね。 黄:撤退するのも勇気と言えば勇気なのだけど、 そんな簡単に割り切れるものでもないのが、生き物の業ではあるんだよぉ。 【宗教の本質を端的に表してるな】 白:そういや朱雀って、風邪引いて熱出したことあったっけ。 朱:健康には自信がありますから〜。 黄:朱雀ウィルスを撒き散らしてる事実を、隠蔽してるんだよぉ。 朱:それって、あくまでも仮説ですよね〜。 白:そりゃ、私達の中にウィルスを検出、解析する技術を持ったのなんて居ないし。 黄:だけど、そういうことにしておけば話が丸く収まるんだから、 この際、事実であるかどうかは大した問題では無いんだよぉ。 【熱殺菌が服を着て歩いてるみたいな】 黄:で、なんでそんなこと聞いたんだよぉ。 白:いや、普通、微熱で一度、高熱なら二、三度上昇するくらいだけど、 朱雀の場合はどうなるのかなぁって思ってさ。 黄:変温動物には、よく分からない世界なんだよぉ。 朱:気合を入れれば何度か上がるっぽいですから、 百度くらいは行くんじゃないですかね〜。 黄:そもそも、体調不良で体温が上がるのは菌やウィルスの活性が落ちるからで、 平熱がそれを遥かに上回る朱雀には必要ない機構の気がしてきたんだよぉ。 【どれかというと野次馬根性に近いけど】 白:そういや南極じゃ原因菌がまともに活動できないから、 風邪引くことって、ほとんど有り得ないんだっけ。 黄:究極の健康法ですね〜。 黄:変温動物未踏の地に、健康もへったくれもないんだよぉ。 白:逆に朱雀を南極に放り込んだら、相殺されて風邪引けるかも。 朱:な、なんでそこまでして私を倒れさせたいんですか〜。 黄:科学者の探究心を野放しにすると倫理観など儚いものという、 白虎なりの警鐘なのではなかろうか、なんだよぉ。 【野生生物は甘やかすとダメになるからな】 白:んー、でも抗生物質効かないウィルスも出てきたりしてるらしいし、 朱雀の中でオンリーワンの生態系が生まれてる可能性があるのかも。 黄:そんなものを食べようとか、白虎の挑戦精神にはほとほと感服するんだよぉ。 白:フグやキノコだって、数々の先人が居たからこそ、現代では安全に食べられる訳だし。 黄:そう言われると、そんなものなのかも知れないんだよぉ。 朱:す、少しは保護者として、保護を優先してくれてもいいんじゃないですかね〜。 【そういう意味で血液型診断は優秀だな】 白:で、早くも髪が元に戻りつつあるんだけど。 朱:ふに〜。 黄:数十分しか保たないとか、どんな修正力なんだよぉ。 朱:私のような真っ直ぐな人格の持ち主は、 これくらいの方がバランスとれるんですよ〜。 白:ストレートヘアーの私が批判されたみたいになってない? 黄:髪質に人間性が現れるというのは占い的には面白げだけど、 外見に直結するだけに、あんまし流行りそうもないんだよぉ。 【そもそも朱雀自体が異常発生みたいなものだし】 白:今まで朱雀の髪のこと、赤潮ワカメとか好き放題言ってきたけど、 これはこれで奥深い研究対象の気がしてきた。 朱:そ、その表現は初耳ですよ〜? 黄:常に新規開発されるということは、まだまだ需要があるということなんだよぉ。 朱:なるほど〜、常に最新鋭の宿命というやつですね〜。 黄:こんなんで納得されるというのも釈然としないものが残るけど、 それはそれでいいということにしておくんだよぉ。 【価値観シャッフルは人類の救済だから】 白:でもまあ、天パは天パで面白いんじゃないかな。 こう引っ張ってゴムパッチン的な遊び方出来そうだし。 朱:ふに〜。 黄:何、積極的に全世界のくせっ毛にケンカ売ってるんだよぉ。 白:一度、人類は国家や宗教の垣根を取り払って、 直毛派と縮毛派で争い合ってみるべきだと、ちょっと思ってみた。 黄:それ、肌の色と何が違うんだと思ったけど、 いがみ合う理由がない方が混沌とするから、ま、いっかで済ませてしまいそうなんだよぉ。 【平和の象徴になるのか悪魔の使者と化すのか】 朱:天然パーマと一言に言いましても〜、私みたいに伸ばせる方も居れば、 こんがらがって鳥の巣みたいになっちゃう方も居るみたいですけど〜。 白:どんな巨大な組織も、内部に派閥を作らせて潰し合わせれば脆いものだし。 黄:直毛派の陰謀が、しょうもないんだよぉ。 朱:髪が少ない方は、どちらに属したらいいんですかね〜。 黄:第三勢力として暗躍するか、どっちつかずのコウモリ野郎と罵られるか、 いずれにしても人間のやることなんて、どんな世界でも似たようなものなんだよぉ。
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