邂逅輪廻



【大体の国がやってることだから気にするな】
月:さて、それでは朱雀の借金を如何にして返済すべきか、
 会議を始めようではないか。
黄:努力してどうにかなる額なら、とっくに何とかしてるんだよぉ。
朱:私の代では無理でしょうから、子孫達に任せようと思うんですよ〜。
月:これを国債という名にすり替えると、どこかで聞いたような話になるな。
黄:それを名目上は日の本の重鎮である月読が言っていいのか、
 誰か解説して欲しいんだよぉ。


【優先順位が低かったってことにしておけ】
月:根本的な話になるが、貸主は誰になるんだ。
朱:そういえば、よく知りませんね〜。
月:本当にこれ、当事者なのかという疑問が湧いたのはともかくとして。
黄:大昔の道楽朱雀が多方面にしてたのを、国に一元化したんだよぉ。
朱:そうだったんですか〜。
黄:青龍の話だと、転生したての頃の講習に借金の説明も入ってたはずなんだけど、
 朱雀の鳥頭で保持できる訳無いという現実を直視することにしたんだよぉ。


【冷静に考えるとふざけた話だ】
月:というか、現代社会で借金は、財産とセットで相続を放棄できるはずだが。
黄:そこは、国際常識が通用しない中国だからというのは冗談として、なんだよぉ。
月:笑えない、笑えない。
黄:朱雀という肩書を受け継いでるんだから、借金も当然という見解になってるらしいんだよぉ。
朱:財産を相続すると税金をたっぷりとられるのに、借金の場合に減らないのは理不尽ですよね〜。
月:そこら辺は、触れてはいけない国家の闇だ!


【猪が居なければ熊を食べればよかったのに】
月:そういう視点で見ると、特権はロクに無いのに重荷だけは継承させられた白虎は大変だな。
朱:白虎さんって、時給分以上は絶対に働かないがモットーじゃなかったでしたっけ〜。
黄:ある意味、これ以上ないほどに対等な関係なんだよぉ。
朱:でも白虎さんは、いざとなれば山や森で狩りをして暮らせますし、
 借金とは無縁ですよね〜。
黄:そのはずなんだけど、百年前、行き倒れ寸前のところを青龍が拾ったらしいし、
 あれはあれで、謎が多い生き物なんだよぉ。


【分裂時に体重が半減している可能性】
月:それで借金返済の話なんだが、髪を売り払うというのはどうだろうか。
  朱雀なら、物の数分でまた伸びる気がする。
黄:毛根に優しくないんだよぉ。
朱:月読さんは、質量保存の法則をちゃんと理解した方がいいですよ〜。
月:朱雀にだけは物理がどうとか言われたくない、そんな気持ちで胸が一杯です。


【朱雀なら何でもありと協会も認めている】
黄:大体、こんな発火性の、うねうね動く髪を、誰が欲しがるんだよぉ。
月:なんでこれ、普段はどうってことないのに、切り落とすと蠢くんだ。
黄:通常状態では休眠してるけど、
 分離することで独立した生命体として覚醒するのではなかろうか、なんだよぉ。
月:ちょっとした恐怖映画か!
朱:細胞はみんな生きてるんですから、ありえない話じゃないですよね〜。
月:多細胞生物の細胞一つ一つに、単独で活動を維持する力はない!


【毛が少ないで毟るって中々よく出来てるな】
月:同じ理屈で、この羽を布団とかに入れてだな。
黄:だからこれ、燃えるんだよぉ。
月:毟りのスペシャリストも呼んだのに、なんという相性の悪さだ。
猫:うまーお。
黄:刈れば済むのに、なんでわざわざ毟ろうとするんだよぉ。
猫:まーお。
朱:『そこにふわふわしてるものがあれば爪を研ぐ。自然の摂理だろ』なら、
 致し方ないのかも知れません〜。


【閃き一点特化は活用しがたい】
月:真空パックに詰めて、非常用の発火剤として売れないだろうか。
黄:よくもまあ、色々と考えるんだよぉ。
朱:商売人タイプなんでしょうね〜。
月:ちなみに、面倒くさがりで飽きっぽいから、あんまし役には立っていない。
朱:どうして、こうも才能は無益に割り振られるんですかね〜。
黄:この世で屈指に極端な能力を持つ朱雀が言うと、なんともはやなんだよぉ。
朱:ふに?


【宇宙が収縮するのを待った方が早そう】
月:基本に立ち返って、何か副業でも始めるか。
朱:内職とかやってみたいですね〜。
黄:あの類の単価の安さを知ってるのかを知りたいんだよぉ。
朱:どんな遠い道のりも、最初の歩き出しが大事なんですよ〜。
黄:この場合、千里の道も一歩からと言うよりは、
 宇宙の果てに三輪車で向かうようなものの気がしてならないんだよぉ。


【善行としてカウントされるのか微妙】
月:では、この内職用のサンプルを試してみようではないか。
黄:なんでこんなに、たくさんの種類があるんだよぉ。
月:よくある内職詐欺の業者から冷やかしで分捕った。
黄:暇なことしてるんだよぉ。
月:金と労力など全く気にせず法廷闘争まで持ち込める私に、
 ありきたりな恫喝なんてしやがったから潰してやったけどな。
黄:義憤ではなく、私憤でそこまで出来ることを褒めるべきかどうなのか、
 天照辺りがちゃんと判断して欲しいんだよぉ。


【そして底辺大学の教授という結論に行き着いた訳だ】
朱:こういった、チマチマとした作業は意外と楽しいです〜。
月:私は、もう飽きた。
黄:向き不向きが出過ぎなんだよぉ。
朱:効率化させるにはどうすればいいかを考えるのがコツですよ〜。
月:ほらー、私ってクリエイティブな仕事じゃないと肌に合わないっていうか。
朱:こういうことを言う方って、大体、何も出来ないんですよね〜。
黄:たしかに月読の場合、人間に生まれてたら何をして食ってくのか、
 悪い意味で全く想像がつかない酷さがあるんだよぉ。


【それはそれでロクでもない話じゃなかろうか】
月:いいじゃん、この文明社会、全部機械化しちゃえば。
黄:その手の細かい作業は、まだまだコストが見合わないんだよぉ。
月:神が単純作業に従事させる為にと生み出した生物が、
 後に人間と呼ばれるようになったと、誰が思ったであろうか。
黄:神様が、こえー発想してるんだよぉ。
朱:実際のところは、適当に作ったら勝手に動き出す、
 プログラムのバグみたいなものなんですけどね〜。


【現実には更にテラ銭を取られる】
月:借金の返済といえば、博打での大穴狙いだな。
黄:限りなく最悪に近い選択なんだよぉ。
朱:ですけど、倍々ゲームで増やしていけば、
 意外と回数は少なくて済みそうですね〜。
黄:勝率五割で十連勝する確率は千分の一を切るという、
 悲しい現実を突きつけるかどうかが、話の分かれ目なんだよぉ。


【超低確率は成功フラグとかいう以前の問題】
月:勝つ可能性が僅かでもあれば、それに挑むことこそ肝要だ。
黄:少年漫画の主人公っぽく言っても、ダメ人間に変わりはないんだよぉ。
朱:ちなみに、私のお小遣いを元手に五割で倍返しの勝負をするとして、
 何連勝すれば借金はなくなりますかね〜?
黄:五十……いや、六十くらいなんだよぉ。
月:これは絶対に無理だと、確信した瞬間でありました、はい。


【バトル漫画のインフレが裸足で逃げ出す】
月:イカサマを仕込むしか無いなと思ったが、
 だったら何か詐欺をした方が早いと気付いた。
黄:どれだけ詐欺に執着があるんだよぉ。
朱:そもそも、私の借金に見合うだけの財産を持ってる方が居るんですか〜?
月:そういえば、居ないな。
黄:一時期、都市伝説的に流行った経済界を牛耳る財閥ですら届かない気がして、
 絶望感がドンドン増してくるんだよぉ。


【あくまでも営業トークで押し通す】
月:逆に言うと、朱雀がどれだけ商売で成功しようと、返済は不可能に近いな。
黄:気付いてはいけないことに、気付きやがったんだよぉ。
朱:それでも、減らすに越したことは無いですよね〜。
黄:砂漠に草を一本生やして緑化と言い張るくらい、無益な気がしてきたんだよぉ。
月:だけど肌色頭に産毛がチョボチョボ出たくらいで返金保証から外れるし、
 全くの無意味という訳でもない感はある。
黄:そういうどうしようもない詐欺的発想が月読を小悪党たらしめていると、
 またしてもどうでもいい確信が増えてしまったんだよぉ。


【思ったより前提条件が厳しすぎた】
月:というかだな、このくらいの額の借金となると、
 逆に返さなくてもいいんじゃなかろうか。
朱:たしかに、借金は大きくなりすぎると借りた方が強くなるって言いますよね〜。
黄:給料から天引きされてるのに、どういう対処法があるんだよぉ。
月:あ、無理だな。
朱:そ、そんな一瞬で、可能性を否定することはないじゃないですか〜。


【中国は水餃子が主流だろというツッコミは禁止】
月:いや、貸主と雇い主が一緒って、踏み倒しようがなくね?
黄:自分以外の全人類がゾンビ化したくらいの詰みっぷりなんだよぉ。
月:その場合は、自分からゾンビになれば、意外に幸せと結論が出てる。
朱:むしろ生き残った唯一の人間として、
 ゾンビさんの方がチヤホヤしてくれるかも知れませんよね〜。
黄:その大皿に残った最後の餃子を見合っての駆け引きみたいな理屈、
 正しいのかどうなのか、ちょっと考えさせて欲しいんだよぉ。


【このまま日陰者も気楽でいいかなと】
月:朱雀が麒麟を倒したら、チャラにならないだろうか。
黄:借金を、なんだと思ってるんだよぉ。
朱:そもそも、仮定に無理がありすぎませんかね〜。
月:ドン・キホーテだって、勝てると信じて風車に突撃したんだ。
  何事も、やる前から諦めてはいけない。
朱:ど、ドン・キホーテさんは、それで玉砕したじゃないですか〜。
黄:大体、天照に取って代わることをほぼ諦めてる月読が言っても、
 何の説得力も無いんだよぉ。


【上から目線って快感ではあるからね】
月:ギャンブル物の作品で、借金持ち同士を争い合わせるのはよくある展開だけど、
 朱雀を放り込んだらどうなるのだろうか。
黄:現場全員の借金を引き受けても誤差レベルだから、ある意味最強なんだよぉ。
朱:一種の、人助けですよね〜。
月:借金で首が回らない様な連中に、救いの手を差し伸べるのが本当に善行だろうか。
黄:どれかというと、飢えた獣達の檻に肉を放り込む悪趣味さに通じるものがあるけど、
 そういった下卑た感性も、世界の一部ではあるんだよぉ。


【その方が次世代は逞しく育つ】
月:そういや、もしも朱雀の転生が不調に終わって、
 そのまま息を引き取ったら借金はどうなるんだ。
黄:怖い想定をしてるんだよぉ。
朱:私が死んだ後のことなんてどうでもいいのが本音ですよね〜。
黄:嘘偽りなく言葉を発するのはいいことなんだろうけど、
 世間はそれを空気が読めないと評するのではなかろうかなんだよぉ。


【二人して自己弁護フルスロットル】
月:まあ普通に考えて保護者の黄龍が引き継げばいいのか。
黄:勘弁して欲しいんだよぉ。
朱:黄龍さんは働いてないから、私以上にどうしようもないと思いますよ〜。
月:じゃあ、朱雀はちゃんと働いてるのか問題が持ち上がるのだが。
朱:働いてるから偉いって考え方は、不健全ですよね〜。
黄:それ以前に、何を以って偉いとするかという、
 価値観そのものを咀嚼してもいいのではなかろうか、なんだよぉ。


【神々の戯れというにはかなり悪質】
朱:私の借金は経済という大きな輪の中に組み込まれてるんですから、
 急に消えたら大混乱が起こると思うんですよ〜。
月:完全に諦めてるぞ、こいつ。
黄:でも、正論ではあるんだよぉ。
月:昔、ふざけ半分に大量の金銀を市場に流そうとしたら、
 しこたま怒られたのと似たようなものか。
黄:その、何の意味もなくトリックスターっぷりを発揮できる辺りが、
 唯一の存在意義な気すらしてきたから困るんだよぉ。


【知ることが最大の罪業という考え方もある】
朱:生まれた時から安月給なので、借金を返してるという感覚が無いんですよね〜。
黄:本来の朱雀の高給が先祖代々の功績と考えると、トントンなのかも知れないんだよぉ。
月:無駄飯食いなのか、搾取されてるのか、よく分からんよな。
朱:お金は、そんなに多くなくても豊かに生きていけますから〜。
月:こういうことを口にする輩に、
 贅を尽くした生活を送らせたらどうなるかを試したくてしょうがない。
黄:だから、なんでそうも、ロクでもない方向に発想が全開になるんだよぉ。


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