【今ならネットで吐露できるだろうに】 玄:世間は、分かってくれないんです。 黄:いきなり、反抗期みたいなこと言い出したんだよぉ。 朱:流石は永遠の中学生メンタルである月読さんの一番弟子ですね〜。 黄:嫌な認識方法なんだよぉ。 玄:話を、聞いてくれますね。 黄:そして無視していこうとしてる空気を読みもせず、 とにかく構って欲しい辺りが、思春期っぽさを倍増させてるんだよぉ。 【早くも扱いが残念なことに】 黄:仕方ないから、聞き流してやるんだよぉ。 玄:今、聞き流すって言いませんでした? 黄:細かいことが気になるお年頃なんだよぉ。 朱:多分、黄龍さんは『話を耳に入れてやるだけ感謝しろ』って言いたいんですよ〜。 玄:曲解っぽく見せかけて、割と本気でそう思ってますよね。 黄:それにしても、馬耳東風とか馬の耳に念仏とか、 馬ってやつはどれだけ話を聞いてないのか、そっちの方が気になってきたんだよぉ。 【人生の長さとは関係無いよね】 玄:ともあれ、それはそれとしておきましょう。 黄:案外、打たれ強いんだよぉ。 玄:本題ですが、世の人々が玄武に興味が無いのを痛いほどに思い知らされたんです。 黄:そこに至るのに、一体、何年を費やしたことか、なんだよぉ。 玄:私の耐用年数は数千年あるそうですから、人間で換算すると一ヶ月にも満たないはずです。 黄:一瞬、割とまともなこと言ってるんじゃないかと思ったけど、 ちょびっと頭を動かしただけで詭弁と気付けてしまうほどの薄っぺらさだったんだよぉ。 【それが出来るなら黄龍はもうちょっと有名だ】 朱:お話は分かりましたが、具体的にどうしようって言うんですか〜? 玄:現代社会でイメージは、どのように宣伝するかで決まります。 つまり、様々なものをスポンサードすることで、玄武を押し出していけばいいのです。 黄:意外に、真っ当な論理展開だったんだよぉ。 朱:資金はどうしましょう〜。 玄:そこは、黄龍さんの多様な人脈で何とかなりませんかねと、お願いしに来た次第です。 黄:まあ、根幹部分に関してはスッカスカな辺りが、玄武っぽくはあったんだよぉ。 【よくもここまで揃ったと感心するレベル】 亜:はぁ、各方面に玄武を売り出していきたいから、私に相談、ね。 黄:確実に、人選を誤ってるんだよぉ。 朱:ですけど、先代で生みの親なんですから、真っ先に選ばれるべき方ですよね〜。 黄:とはいえ、玄武の名を高めることに興味がない、金があれば自分の研究資金にする、 技術バカで他者と交流する気があんまないと、見事なまでに前向きな材料が無いんだよぉ。 【大乗仏教にケンカを売っていくのか】 玄:何とかなりませんか。 亜:科学の力に、すがってみるってのはどうかな。 朱:な、なんだか怪しげな勧誘みたいになってますよ〜。 黄:宗教関係者としては、間違ってないんだよぉ。 亜:そう、科学は信じる人だけなんてチャチなことを言ったりしない、 究極の宗教と呼べる存在だからね。 黄:だけどこのプチマッドサイエンティストが口にすると、 やっぱりどうなんだって気にはなってしょうがないんだよぉ。 【せめてラインスレスレになりませんかね】 玄:具体的に、何か策があるのですか。 亜:よくぞ聞いてくれました。この装置を使えば、あら不思議。 公共の電波にちょこっとだけ割り込んで、一コマだけ玄武の文字を――。 朱:さ、サブリミナル効果じゃないですか〜。 黄:全方位で犯罪行為なんだよぉ。 亜:手段選んでられる立場じゃないでしょ。 玄:法を犯さなければ玄武の知名度を上げられないという事実は、 さりげなく、私の精神領域を侵してきました。 【そこまで行ければ大成功の感はある】 亜:他には、人間の耳じゃ知覚できない超高音波で――。 黄:なんでそう、こすっからい方法ばっかりなんだよぉ。 亜:まともな方法とか面白くないし、そもそも私じゃなくていいじゃん。 朱:アイデンティティは大切ですよね〜。 玄:個人的には、有名になれるのであれば個性など放り投げていい派なのですが。 黄:なんか芸能人とかマンガ家みたいなこと言い出してるけど、 その論法で辿り着けるのは、せいぜいが中堅くらいなんだよぉ。 【聖獣界の治安維持システムはどうなってるんだ】 玄:何かこう、一発でバーンと玄武の名を刻める道具はないんですか。 亜:私、どんな願いも叶える系の立ち位置じゃないんだけどなぁ。 どっちかと言うと、面白発明で周りを困らせるみたいな。 黄:自覚あるとか、ひでー話もあったものなんだよぉ。 亜:でも、自粛はしない! 玄武を辞めてでもやりたかったことがここにあるから! 黄:字面だけ見れば青春モノの最終回みたいな格好いい台詞があった気もするけど、 中身は、病院かムショにブチ込まれても文句は言えないものなんだよぉ。 【汎用性と応用性が桁外れ】 亜:あ、そだ。これとか使えないかな。 玄:なんですか。 亜:一種の催眠装置でね。 有効時間や範囲は大したことないけど、それなりには洗脳できるよ。 黄:言った傍から、ロクでもないものが飛び出してきたんだよぉ。 朱:悪用以外の使い道がありませんよね〜。 黄:世界平和の為には即座にぶっ壊して鉄くずにすべきなんだろうけど、 その瞬間にこっちが洗脳させられるオチしか見えないんだよぉ。 【チェックする人に問題は起きないのかという無限ループ】 亜:大丈夫、大丈夫。人を傷付けるのは包丁じゃなく人だって言うじゃん。 その理屈を応用すれば、どんな道具も、結局は使う人次第ってことだから。 黄:単なる、自己弁護だったんだよぉ。 朱:何一つとして大丈夫な要素が無かったですね〜。 亜:そもそも私、作り終えて放置した発明品のことなんて憶えてないから、 あとで責任追及されても、割と本気で何のこっちゃだし。 黄:もはや誰かが常時監視して、 危険そうなものが出来た時にはすぐ壊すべきな気がしてきたんだよぉ。 【素材型で将来性を買ってるんだ】 朱:青龍さんの仕事が、また増えますね〜。 黄:自分でやるとは絶対に言わないこの部下、大したものなんだよぉ。 亜:青龍ならともかく、朱雀なら騙くらかすのも簡単だしね。 朱:出来ないことを無理にすると、取り返しが付かないことになりますから〜。 黄:言ってることは概ね正しいのだろうけども、 じゃあ、何が出来るんだと問われると返答に窮するのではなかろうか、なんだよぉ。 【所詮は箱庭の中の自由に過ぎないけどな】 玄:ですけどこれ、多くの人に使えない上、すぐ解けるんですよね。 どう使ったらいいのでしょうか。 亜:そこまでは知ったこっちゃないなぁ。 黄:責任感のパラメータが、マイナスで振り切ってそうなんだよぉ。 亜:昨今の知育玩具よろしく、どう遊ぶかを決めるかは子供次第ってことだね。 黄:そしてこの無駄にキレのいい詭弁を、 もうちょっと世間様の為に使えないのかと思ってしまうんだよぉ。 【月読とタッグを組む日が来ないことを祈る】 黄:だけど先代がスポンサーを手のひらで転がしてないところを見るに、 自分の為にすら使いこなせてるという訳でもなさげなんだよぉ。 朱:予算を与えてはいけないランキングで上位に食い込みますからね〜。 亜:私に資金さえ回してくれれば、その百倍はリターンがあるのに見る目ないよねー。 黄:但し、更にそれを上回る形で被害を受けるリスクもあるという、 どんな山師でも躊躇いそうな投資先であることはたしかなんだよぉ。 【しかし手伝おうとは思わない】 玄:閃きました! 広告業界の方を幻惑して、宣伝を紛れ込ませます。 黄:母娘揃って、やり口がセコいんだよぉ。 亜:でもまあ、そんなとこが限界だよね。 玄:ところで、何処に行けばそういった人に会えるのでしょうか。 黄:それにしても、この企画力と実行力の残念っぷり、 普段の青龍の苦労が伝わってくるんだよぉ。 【だけどそれが宗教ですよねと言われると反論できない】 玄:困った時は、青龍さんにお願いすれば何とかなります。 黄:その内、倒れるのを通り越して人格が崩壊したりしないだろうか、なんだよぉ。 朱:青龍さんなら大丈夫ですよ〜。 黄:かつての日本では土地が値下がりするなんて有り得ないと言われ、 他にも共産主義が破綻することは無いなど、 思い込むことと現実は乖離すると、憶えておいた方がいいのやも知れないんだよぉ。 【亀って色のバリエーションが乏しいよね】 玄:第一歩として、サッカーチームの広告枠を抑えることに成功しました。 黄:国際的な人気を持つスポーツは、世界展開に有用なんだよぉ。 朱:ところで、玄武さんって海外進出する時、どんな名前になるんですか〜? 玄:黄龍さんがイエロードラゴン、ないしはゴールデンドラゴンなのですから、 素直にブラックタートルでいいかと。 黄:まあ分かりやすいっちゃ分かりやすいけど、 只の黒タートルネックに思われかねないという弊害もあるんだよぉ。 【この話題は一体何度目なのか】 亜:蛇要素が無いのが、凄い不満なんだけど。 黄:ブラックスネークタートルとか言われても、なんのこっちゃなんだよぉ。 朱:私達も、玄武がなんなのか今一つ分かってませんけどね〜。 黄:それは、朱雀だけなんだよぉ。 玄:安心してください、私もです。 黄:いや、そんなキメ顔で言うこっちゃないんだけど、 全ては先代の教育の賜物だということにしておこうと思うんだよぉ。 【憶えてもらえればやりようはある理論】 玄:見てください、あの立て看板。玄武の名がしっかりと映っています。 黄:結局、漢字で行くということでまとまったんだよぉ。 朱:あの形を憶えてもらうのが当面の目標でいいんじゃないですかね〜。 亜:題字として凝ってはいるんだけど、なーんか面白味が無いなぁ。 こう、七色に光るとか、デコってみるとか、もうちょっとやりようあったような。 黄:わざわざ玄武にアッパラパーのイメージを植え付けることは無いと思うけど、 玄武本人はそれでもいいと言いそうなのが厄介なんだよぉ。 【境界線が分からなくなってきた】 亜:しかし正規の手段であそこ使おうと思ったら幾ら掛かるんだろうねぇ。 黄:朱雀の年収は、間違いなく吹き飛ぶんだよぉ。 朱:なんという恐ろしさでしょうか〜。 亜:言い換えれば、あそこの権利を転売すれば研究費くらいはあっという間に稼げるね。 黄:それは流石に悪質すぎるだろうと言い掛けたけど、 只で間借りしてる時点で酷すぎるから、今更だったんだよぉ。 【ナチュラルネタ潰しは宜しくないと思うんだ】 玄:有名デザイナーを味方につけて、マスコットキャラを作ってもらいました。 黄:これは人気が出そうな可愛さなんだよぉ。 朱:完璧なデフォルメの中に遊び心の入ったフォルムは絶品ですね〜。 黄:今回は、もしや本当に成功してしまうのではなかろうか、なんだよぉ。 朱:いざという時は、全て機械が暴走した末の幻覚オチになりますから大丈夫ですよ〜。 黄:そうやって、先んじて予想される展開を潰されると、 色んな意味で疑心暗鬼になって不安感が増すんだよぉ。 【製作者はアクセントであると主張】 亜:このマスコット、亀に比べて蛇がやる気なくない? 黄:どこまで蛇推しなんだよぉ。 朱:玄武は亀がメインみたいな世の風潮に、異を唱えたいんですよね〜。 亜:いや、別にどうでもいいっちゃいいんだけど、粗は探しておきたいみたいな。 朱:ふ、ふに〜。 黄:この天才肌という名の皮を被った気分屋に信念とか主義主張なんてものは無いと、 朱雀もそろそろ気付いていい頃合なんだよぉ。 【中国史は大体それで網羅できる】 朱:青龍さんが玄武さんに、『その情熱を通常業務に向けてください』って言ってました〜。 黄:気持ちは、痛いほどに分かるんだよぉ。 玄:公務員たる私達が、本気を出す訳が無いじゃないですか。 ワーカーホリック気味な青龍さんがおかしいんです。 黄:酷い居直りを聞いたんだよぉ。 朱:こうやって国家は、腐敗と崩壊からの再生を繰り返すんですね〜。 【どうして負の方向でしかエネルギーを使えないのか】 玄:き、麒麟さんに、『やるんだったら麒麟の知名度を優先して上げろ』と言われました。 黄:事実上の、終了宣告なんだよぉ。 朱:利益が上がってる会社を国家が接収できるのは、中国ならではですね〜。 黄:流石に、ちょっと可哀想ではあるんだよぉ。 玄:いいえ、こうなったらコソコソ麒麟さんの悪評を流す方向で復讐します。 黄:正面切って対立する度胸がないのはどうなんだとは思うけど、 こっちにとって嬉しい展開ではあるし、黙認することに決めたんだよぉ。
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