【もはや師匠である意味が無い】 月:そういえば、最近、玄武を見ないな。 黄:不遇連合の師匠格のくせに、よくそんなことが言えたものなんだよぉ。 月:私は、弟子を信頼しているという意味では師匠界で三本の指に入るからな。 まあ、何かやらかしても、責任は取らんのだけど。 黄:それは信頼しているのではなく、限りなく他人扱いしてるのだと、 世間一般は評すると思うんだよぉ。 【推定だけど黙殺してる】 亜:……。 黄:遠い目をした、おかんの方が湧いたんだよぉ。 月:これは間違いなく面倒事のパターンだな。 黄:どの口が言いやがるんだよぉ。 月:面倒事を起こす方の奴が面倒事に巻き込まれる方が、 慣れてない分、イラつくという現実も分からぬとはな。 黄:この平然と最低な発言を出来る感性が、 既に面倒事の種だと気付いてるのかどうかが問題なんだよぉ。 【伊達に出番が無かった訳じゃない】 亜:科学ってさ、人が生み出した最後の宗教だけあって、 一筋縄ではいかない代物だよね。 黄:何が言いたいんだよぉ。 月:我らに、言葉の裏を読む能力などは無いからハッキリ言え。 亜:玄武と真武の性格直そうと再調整してたら、 とんでもないことになっちゃった、てへ。 黄:まあド直球で言われたからといって気分的にいいという訳でもないけど、 善後策を考えられる分、まだマシということにしておくんだよぉ。 【誰にだってウザく思える瞬間くらいあるさ】 月:母親って、愛情はあるけど、案外、大雑把な生き物だよな。 私のは、私が生まれる前に腐ってたからよく分からんけど。 黄:ひっでー言い回しなんだよぉ。 亜:私の場合、愛情とかあんのかなぁ。 定期的に改造しなくちゃって使命感は湧くけど、基本的にはどうでもいいような。 黄:それに関しては世間一般の母親も似たようなところがあって、 究極的に言えば濃度の問題ということにしておけば、言い訳はできるんだよぉ。 【本格的に出オチだった感はある】 朱:ところで、玄武さん達は、具体的に何がどうなったんですか〜? 亜:昔、鳳雛って居たじゃん。 黄:何で無かったことみたいに言ってるんだよぉ。 亜:そりゃまあ、ちょっとネタに走りすぎたせいで、 自分でもどうかなぁって評価になっちゃったから? 黄:世の中、出来の悪い子ほど可愛いとはよく言うけど、 やっぱりそんなものは人それぞれということなんだよぉ。 【生まれ持った性分は変えられないよね】 亜:だけど、一つのボディに二つの人格って発想だけは可能性を感じるじゃん? 黄:あ、なんだよぉ。 月:これだけでオチが見えるとは、素晴らしいトラブルメーカーっぷりだ。 朱:殿堂入りを検討すべきかも知れませんね〜。 亜:えー、そこまで言われるほどのことじゃないと思うんだけどなぁ。 黄:世の中、加害者側は罪の意識が低く、被害者側は多大な恨みを抱くものだけど、 典型的事案として経験則に追加されたんだよぉ。 【そして弟は忘れられる】 真:こんな年増の肉体になるだなんて、なんという屈辱ですぅ。 玄:二心同体、これはこれで分かり合う為の第一歩と言えるでしょう。 亜:ね? 黄:ね、じゃねーんだよぉ。 月:他人事だとすっげー面白いけどな。 黄:そういうこと言ってると、色々と秘術的なものを駆使して、 あんたの方も姉と一緒の肉体に押し込める方法を模索してやるんだよぉ。 【アルミですら比重は三近い】 亜:いや、大変だったんだよ。元々、記憶容量は無駄なく使ってたもんだから、 どうしても全体の体積が増えざるを得なかったって言うか。 玄:あぁ! 体重が、こんなにも増えてます! 黄:悲劇的展開というやつなんだよぉ。 月:元々、金属ベースなんだから相当重いだろというツッコミは野暮なんだろうか。 黄:そこんところは触れてやらないのが女性としての機微なのだけど、 月読に理解できる気がしないのが難儀なんだよぉ。 【この罪悪感のなさは何だろう】 亜:気を遣って、胸回りを増量した私は偉い! 黄:贖罪のつもりになってるのが、そもそもの誤りなんだよぉ。 月:母と娘の感性は、得てして合わないものだ。私の母親は――。 黄:大体、でっかければいいなんて時代は、二十世紀に終わったはずなんだよぉ。 月:二度目とはいえ、最後まで言わせろや! 【品行方正でも普通にキレるわな】 朱:ところで〜、玄武さんの身体に二人を押し込めたってことは、 真武さんの身体は空っぽってことですよね〜? 亜:うん、いっそそっちに、ホウかスウを入れてみようかなぁって思ったんだけど、 あんまし面白そうじゃないしやめておいた。 真:このクソババァ、人の身体を何だと思ってやがるですぅ。 月:いやー、母親に罵声を浴びせる若人を見ると、青春って感じがしますなぁ。 【詭弁で詭弁を塗り固めていくスタイル】 亜:でもさ、生き物は精神と肉体が不可分だからしょうがないけど、 あんた達はボディチェンジとか割と簡単なんだし、本体は記憶媒体なんじゃないの。 真:そういう問題じゃないですぅ。 月:この問答が、レベル高いのか低いのか、判断に困るんだが。 黄:物に執着せず精神を重視するのは高僧のようですらあると言えるけど、 娘の身体を雑に扱うのは人でなしというジレンマなんだよぉ。 【よくよく考えなくても酷いって次元じゃない】 亜:この無駄に若い肉体に、何を入れたら今後の展開的に盛り上がると思う? 月:そういう相談ならいくらでも乗るぞ。例えば、朱雀のコピー人格とかどうだ。 朱:私なら著作権的なものに触れないみたいな言い様はどうかと思うんですよ〜。 真:うがー! 何でお姉様の許可なしだと身体が動かせない仕様になってやがるですぅ! 黄:ここまで頭に血が昇ってる真武は初めて見る気がするけど、 これほど自由奔放にされちゃ、そりゃそうだとしか言えないんだよぉ。 【聞きたいようなそうでもないような】 朱:とりあえず、落ち着きましょう〜。 真:てめーら、全部敵ですぅ! 月:姉とは別の意味で若いな。 黄:世界の全てを敵に回して勝てると思ってる奴は、世界の広さを知らないんだよぉ。 月:天帝に負けた話なら、たまには語っても構いませんぜ。 黄:そこら辺に触れると、とんでもない量のアルコールが必要になる上、 一ヶ月ぶっ続け的な、まさに神話みたいな話になるからやめておいた方がいいんだよぉ。 【敵かどうかは微妙なところだけど】 玄:ですけど、結局、最後に頼れるのは己だけではないですか? 黄:だからって、中立不干渉でいられる相手にケンカ売るのは、エネルギーの無駄なんだよぉ。 月:そういうことをする国は大体滅びる。世界征服した国がないカラクリがここにある。 亜:日本じゃ、出世するのは敵を作らないタイプだしねー。 朱:とりあえず、皆さんが真武さんの味方でないことは理解しました〜。 【だから青龍が苦労するのか】 亜:私は母として、この状況をどうすべきだろうか。 黄:この顔は、絶対に面白くなる方の処理を考えてるんだよぉ。 朱:私人として、家庭人として、職業人としてどれを優先させるかって話ですね〜。 月:プライベートを優先させる奴が多すぎないか、この界隈。 黄:そりゃ基本的に長生きなんだから、楽しんで日々を送っておかないと、 ふっと我に返った時、反動でとんでもない落ち込み方をしてしまうんだよぉ。 【スケールが大きいようで小さい話】 亜:生きてく上で、すり減る量と回復する量を同じにしておかないと、 すっごい勢いで命が摩耗してくからねぇ。 月:そうだそうだ、その通りだ。 黄:なんて説得力が感じられないコンビなんだよぉ。 朱:ふに〜。 黄:そして朱雀に関しては、代々の積み重ねで削り節の如く小さくなってしまい、 当代は回復モードに専念する為、こんなにも脳天ヒマワリなのではなかろうか、なんだよぉ。 【トラフグとシマフグでは痺れ具合が違う】 亜:ところで、人工知能の権威として、一度やってみたいことがあるんだけど。 月:いつ権威になったんだ。 黄:こいつ以外、高度な思考ができるのを作れる奴が居ないんだから、 自動的に第一人者なんだよぉ。 月:あれか、利きフグ毒選手権優勝みたいに、対抗馬が居ない的な。 亜:誰もやれないと、誰もやらないを一緒にされるのは困るなぁ。 【種で見れば多様性の範疇だからね】 亜:いや、真武のデータを玄武に移したのって、 言うなればカットアンドペーストなんだけどさ。 今度はコピーして真武の身体にも人格入れたらどうなるのかなぁって。 朱:つまり、本人と御対面するってことですよね〜。 月:並の奴なら、自我が崩壊するな。 黄:世の中、碌でもない親から生まれることは不幸そのものだけど、 対処法が何一つ無いことが、あまりに残酷な話だと思うんだよぉ。 【中庸だと大爆発しそう】 玄;妹が実は双子だったというのも、ありやも知れませんね。 月:こいつ、状況を分かってないのか、とぼけてるのか、どっちだ。 亜:そういうこと言ってると、玄武もまとめてコピーしちゃうよ? 玄:ゴメンナサイ、自分自身に会うだなんて、 色々と思うことがありすぎてどうにかなってしまいそうなので勘弁願います。 黄:こういう視点で見ると、性格が前向きか後ろ向きかで、上昇スパイラルに乗るか、 負の螺旋階段を降りるか、くっきりと分かれそうな気がしてきたんだよぉ。 【まさかの自覚皆無説がやってきた】 朱:自分を客観的に見れるいい機会ですよね〜。 黄:普通に分裂した過去を持つ小鳥が、何か言い出したんだよぉ。 月:今にして思うと、朱雀でなかったら大惨事の恐れがあったな。 朱:そうですかね〜? 黄:これがクローンなら遺伝子的に同じというだけでどうということもないけど、 人格まで同じとなると、普通は何らかの影響があるんだよぉ。 朱:まるで普通じゃないみたいに言われた気分です〜。 【死こそ唯一の平等な結果だからな】 真:ここまで好き放題言われたらヤケッパチですぅ。 お姉様のセキュリティプログラムを突破して、もろとも自爆してやるですぅ。 月:究極の愛情表現が来ましたよ。 黄:よくも呑気に、そんなことが言えるんだよぉ。 月:とりあえず最後に愛する二人を殺しておけば、大体の不都合は揉み消せるからな。 黄:何で創作のマル秘テクニックっぽく語っちゃったのか分からないけど、 とりあえず皆殺しにしておけばいいやというのが透けて見える作品は嫌いなんだよぉ。 【所詮姉など踏み台という暴論】 玄:あのー、皆さん、お忘れかも知れませんが、私より真武の方が全てに於いて能力が高いので、 どう足掻いても防ぐ術が無いのですが。 黄:誰も、忘れちゃいないんだよぉ。 月:その全方位劣等感に苛まれてこそ、玄武が玄武であると言えるのだからな。 玄:いえ、そこまで言われるのは、流石の私も心外ではあるのですが。 【具体的にどれの話なんですかね】 月:オペレーションシステムとか、バージョンアップしたら、大体、何がしか劣化するのにな。 亜:我ながら、全部改善改良するとか、天才と言うほか無いよね。 黄:そこまで自画自賛されると、掛ける言葉がなくなるんだよぉ。 月:シリーズもののゲームなら、二作目が完成度最高ってことはよくある。 その場合、三作目のガッカリ感が半端なくなるけど。 黄:例えがそれでいいのかという疑問は残るけど、 先代玄武の感覚としては大して間違ってないのが一番の問題なんだよぉ。 【開けるなよ絶対に開けるなよの元祖】 亜:締めとしては何も面白くないけど、真武を元の身体に戻して一区切りにしたよ。 黄:今日も今日とて、ひっでー事案だったんだよぉ。 月:先代玄武が絡むと、碌なことが起こらないな。 朱:それを、月読さんが言っていいんですか〜? 月:私が言うからこそ、逆に説得力が出る。ここ、テストに出るぞ。 黄:世界に蔓延するこの手の無茶な連中を一つの箱に詰め込んで、 パンドラと名付けたい気分になってしょうがないんだよぉ。
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