邂逅輪廻



【ノーサインでフォークを投げるタイプ】
朱:キャッチボールをしましょう〜。
月:え、何、いわゆる会話的なアレか?
黄:そのキャッチボールなら、月読は暴投王、間違いなしなんだよぉ。
月:私の豪速球を捕球できないキャッチャーにも問題がある!
朱:普通のキャッチボールがしたいだけなのに、
 何でこう、話があっちこっちに飛ぶんですかね〜。


【トルネードとマサカリをミックスさせたみたいな】
月:まあ、やるのは構わんが、朱雀はちゃんとボールを投げられるのか。
朱:十メートルくらいはいけますよ〜。
黄:とんでもない弱肩であることに変わりはないんだよぉ。
朱:いきますよ〜。
黄:そしてその無駄にダイナミックなフォームは、
 キャッチボールに必要なのかと問いたいんだよぉ。
 

【ジェットコースター的にレーンが敷かれてる説】
朱:ふに〜。
黄:予想通りの、見事なふにふにボールなんだよぉ。
月:期待を裏切らないのは、大切なことだ。
朱:ふに!
黄:それにしても、左右に揺れたかと思ったら少し沈んで、
 更に浮き上がったように見えたけど、朱雀ならさもありなんなんだよぉ。


【月読には無理って最初から言ってるだろ】
月:あの超低速で十メートル飛んできたことの方が不思議だ。
黄:反重力が伝播したものと推察されるんだよぉ。
月:もはや魔球だな。実用性は皆無だが。
黄:二十メートル投げられるようになれば、草野球なら使えるかも知れないんだよぉ。
月:盗塁はされまくりという難点はあるがな。
朱:こ、考察より、ボールを返してこそのキャッチボールなんじゃないですかね〜。


【よく前に投げられたレベル】
月:分かった、セットポジションを憶えよう。
朱:ランナーが居る時に使う投げ方でいいんでしたっけ〜。
黄:胸元に利き手とグラブを持ってきて、
 モーションを小さくすることで走者を動きづらくするんだよぉ。
朱:ふに!
黄:何でちょっと手順を変えただけで上がる足が逆になるのか、
 誰にも分からない辺りが朱雀なんだよぉ。


【抜け穴だらけになりそう】
朱:セットポジションって、一度完全に止まらないといけないんですよね〜。
月:羽がピクピクしてるのはセーフなのだろうか。
黄:身体のどこかが、少しでも動いたらボークなんだよぉ。
朱:じ、自分の意志で動かしてる訳じゃない場合でもですか〜?
黄:野球のルール自体、朱雀を想定してる訳でもないし、
 聖獣界は聖獣界で、特例を考えるべきなのかも知れないんだよぉ。


【動作を速くしたからという曖昧理論】
月:盗塁対策に、クイックモーションを憶えよう。
黄:また難易度の高いことを、なんだよぉ。
朱:要するに、構えてからボールを手放すまでを速くすればいいんですよね〜。
月:球威とコントロールを、ほぼ落とさずにだぞ。
朱:ふに!
月:むしろ球速上がったぞ、おい。
黄:何が飛び出すか分からないという意味で、
 朱雀はもしや最強クラスの素質を秘めているのではなかろうか、なんだよぉ。


【勢いだけで生きてるからなぁ】
月:キャッチャーの方も、捕球や投げ方を工夫することで、送球時間を短縮できる。
黄:何でこんなにも真面目に盗塁を研究してるんだよぉ。
月:だって盗まれるんだぞ! 腹立つじゃないか!
黄:どういう理屈なんだよぉ。
月:まあ、ハートを盗むことに掛けては、私はプロフェッショナルですがね。
黄:別にうまいこと言えてもいないのに、その自慢げな顔はなんなのか、
 こっちの方を研究したい次第なんだよぉ。


【本当にできるなら凄いけど】
月:よぉし、次は牽制だな。三塁へ偽投するとボークになるから気を付けろよ。
黄:そろそろ、キャッチボールとは何かを考えだすんだよぉ。
朱:ランナーが居ない牽制に、意味はあるんですか〜?
月:無の存在を認識するのは、哲学的に考えても高等技術だから問題ない。
黄:何か深いことを言おうとしてるのは分かるけど、実際のところはそうでもない、
 通常営業とはまさにこのことなんだよぉ。


【ルールがゲシュタルト崩壊を起こす】
白:何だか分からないけど、付き合おうか?
黄:最速最悪のランナーが名乗りでたんだよぉ。
月:投球技術とか、キャッチャーの肩とか関係なく、刺せる気がしない。
黄:あくまで野球の塁間は人類を基準にして作られている訳で、
 下手すれば送球より速い輩は、出禁にして然るべきなんだよぉ。


【手頃なのが居なかった】
白:うにゃー。
黄:セカンドどころか、そのまま通り抜けてサードにまで行きかねない勢いなんだよぉ。
月:朱雀の球が遅いとか抜きに、絶対に無理。
則:のぉ、妾は一体、いつまでここに立っておればよいのかの。
黄:そして盗塁練習には最低五人が必要だとはいえ、
 あの棒立ちのファーストにも色々と責任を感じるんだよぉ。


【刺殺練習になってねーよ】
月:作戦を、変えよう。黄龍ファーストで、武則天がセカンドに入れ。
則:何やら分からぬが、よかろう。
白:何したって無理だと思うけどね。てか武則天じゃ、送球捕らないでしょ。
黄:タッチアウト、なんだよぉ。
白:うにゃ!?
月:正直、隠し球くらいしかアウトにできる気がしないけど、
 これで一勝一敗だから、痛み分けということにしておこうと思う。


【打撃の基本はセンター返し】
朱:ノッてきましたし、私の球を打ってみてもいいですよ〜。
黄:裏の広場はだだっ広いし、物を壊す心配は無いんだけど、なんだよぉ。
朱:ふに?
月:ピッチャーライナーが飛んだ時、
 せめて避けるだけの反射神経が無いと、惨劇がだな。
朱:ぴ、ピッチャーを守る、防護ネット的なものはありませんかね〜。


【当時の最先端塗料に違いない】
黄:昔、どっかで使われてた、矢を防ぐ為の盾があったんだよぉ。
月:この家の倉庫すげーな。
朱:な、なんだか赤黒いシミがついてませんか〜?
黄:赤なら、朱雀のイメージカラーだし、問題ないんだよぉ。
朱:そ、そういう話で、いいんでしたっけね〜。


【生来の裏方体質が滲み出る】
月:それで、誰が打つ。私は、捕手業で忙しい。
黄:何でキャッチャーに軽く生き甲斐を感じてるんだよぉ。
月:よくは分からんが、やたらとテンションが上がる。
黄:基本的にキャッチャーというのは花形である投手を支える役だけど、
 天照のサブとしての生まれが、こんなところにも影響している気がしてきたんだよぉ。


【ホームラン打つより難しそう】
黄:じゃあまあ、打ってみるんだよぉ。
朱:始球式の一番打者くらいの優しさでお願いします〜。
黄:接待させるつもりなら、最初から立たせるんじゃないんだよぉ。
月:ヘイヘイ、バッチ、ビビってるよー。
黄:そして、そうダイレクトに野次られると、
 うまいことファールチップで球をぶつけたくなるから控えた方がいいんだよぉ。


【人はそれを無茶振りと言う】
マ:せやったら、ウチが審判やったるでー。
月:悪魔が審判とか、正気だろうか。
黄:信じるということはどういうことか見詰め直せという、
 何がしかからの問い掛けではなかろうか、なんだよぉ。
マ:アンタら、ウチのこと、ちったぁ信用せーや。


【これ以上ないくらいの天職】
マ:知っとるかー。野球には、ささやき戦術っちゅうんがあるんやで。
黄:打者の集中を乱す為に挑発やしょうもないことを語り掛けることらしいけど、
 それをするのは、普通、捕手なんだよぉ。
月:何か、すごい私に向いてる気がする。
黄:悪魔のささやきに乗せられて、ささやき戦術を習得するとか、
 うまいんだかどうなんだか、誰か裁定して欲しいんだよぉ。


【打者とは常に孤独なものさ】
月:自然界では黄色って警告色だけどさ。
  黄龍からは、そういう怖さとか威厳とか全く感じないよね。
黄:野球は、振ったバットが捕手に当たった場合、打撃妨害で一塁に行けるんだよぉ。
マ:なんや殺伐としてきとんなー。
黄:どの口がほざきやがると言いたいところだけど、
 これもささやき戦術の一環だとすれば、怒ったら負けの気すらしてくるんだよぉ。


【遅延能力に一定の評価】
朱:そろそろ投げてもいいですかね〜?
月:おう、時間短縮の為、テンポよく投げるのが求められる時代だぞ。
黄:月読自身が、一番邪魔してる気がするんだよぉ。
マ:ピッチャーやったらグダグダ能書きが長くて、中々投げへんタイプやな。
黄:スポーツは、本当に性格がよく出るんだよぉ。
月:君達、いい加減にキャッチャーをやらせてはもらえないものかね。


【まだボールが届きません】
朱:ふに!
黄:この無軌道な球に合わせるのは、至難の業なんだよぉ。
月:どうせスイングブレブレなんだから、適当に振ったら運次第で当たるだろう。
黄:ナチュラルに挑発できるのが凄いんだよぉ。
月:しかし、野球漫画で投球中に解説が入る無茶なシーンはよくあるが、
 こうして実際に会話できるのは朱雀くらいのものだろうな。


【落ちる前に掴めばアウトだね】
黄:こんにゃろめ、なんだよぉ。
球:ふにっ!
月:今、バットに当たった瞬間、ボールから変な音がしたような。
黄:朱雀なら、驚くには値しないんだよぉ。
月:フルスイングに近かったのに、打球が投球同様、
 超低速でふにふに飛んでることもかね!


【当事者は超必死なのに】
朱:ほ、捕球しようと思っても、逃げるんですけど〜。
月:ルールに則ると、これ、いつまで経っても試合が進まないのか。
マ:なんちゅう欠陥競技や。
黄:誰が、ボールが宙に浮いたまま落ちてこないとか想定できるんだよぉ。
月:しかしあの朱雀は、野良猫がトンボを追い掛けているかの様に牧歌的な光景だな。
朱:ふ〜に〜!


【そこで別次元宇宙との邂逅ですよ】
月:朱雀体質は、どんどんその有効範囲を広げていくという可能性について。
黄:まーた新しい言葉が生まれてしまったんだよぉ。
月:思ったのだが、最終的に地球全体があのボールの様に自分勝手に動き出し、
 惑星軌道から外れる可能性は無いだろうか。
黄:何かおっとろしいことを言い出したけど、
 最終的の話なら、宇宙自体がフラフラ動き出さないか心配なんだよぉ。
月:想像が追いつかなさ過ぎて、逆に全然怖くないな!


コント連載中



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