【空気を読む訓練的な】 朱:初代玄武さんって〜、どんな方だったんですか〜? 玄:はい? 朱:今の玄武さんが三代目で、その開発者が二代目だっていうのは知ってるんですけど〜、 その前については聞いたことが無いんですよ〜。 亜:いい質問ね。そう、あれはまだ天動説で世界が回っていた頃、 地球を支える象を支える亀が実は初代で――。 黄:とまあ、この戯言はサラリと流すのが吉ということを感じ取って欲しいところなんだよぉ。 【辻褄は合うな】 黄:一言でまとめると、人格者だったんだよぉ。 白:長いこと、聞いたことがない言葉だね。 黄:六百年くらい前に天寿を全うして、これが二代目になったんだよぉ。 朱:黒龍さんが眠りに就いたのが五千年は前ですから〜、 四千年以上も守護されていたんですか〜。 白:黄龍が麒麟に追い出されたのが千二百年前くらいだっけ。 黄:五龍時代から唯一、休みもせず働き続けてる青龍は、 実は三交代制なんじゃないかと、ちょっと疑ってるんだよぉ。 【さりげに自分は除外】 青:あの頃は、少なくても一人は堅実な方がいるというだけで、随分と楽でした。 黄:こっち視点だと、青龍と合わせて二人は当てになるという、最高に近い環境だったんだよぉ。 白:何だか、微妙にトゲがあるような? 朱:気のせいですよ〜。 玄:龍のウロコが毛羽立っているのは、極普通のことですよね。 黄:これらの発言が狙ってるのか、素なのか、 誰にも判断しきれない時点で青龍の悩みは尽きないんだよぉ。 【否定しようがない事実】 白:安定してるっていいことのように見えるけどね。 革新は常に、常識の殻を破ったところから出てくるんだよ。 青:平時の内政に、革命的転換は必要ありません。 黄:バッサリなんだよぉ。 玄:ですが私が知る限り、中国史の大半は乱世のようなものなのですが。 青:……。 黄:青龍が反論もせず目を逸らすとは、意外と珍しいものを見た気がするんだよぉ。 【完全に黄龍の現状】 白:んで、初代が死んで、何で前の玄武採用したの? 青:あなた達と同じく、最低限の条件を満たす方は、意外と少ないんです。 白:逆に、今の玄武って、条件満たしてる? 生き物ですら無いんだけど。 玄:い、今更ですか? 青:先代の指名ですし、いざとなれば切りやすいという意味では問題ありませんね。 玄:元四神って、再就職に使える肩書きだと思いますか。 黄:中途半端に格が高いせいで敬遠される、そんな未来が見えなくもないんだよぉ。 【とにかく世の中謎ばかり】 朱:ものすごく基本的な質問なんですけど〜、玄武って、なんなんですかね〜? 玄:そちらも、今更ですよね。 黄:たしかに、青い龍族、純白の虎、鳳凰の血族と比べて、 蛇と亀とか、分かりづらいものがあるんだよぉ。 白:そもそも、名前に動物が入ってない気がしてきた。 黄:一応、武の部分が戈を止めるということで、亀の甲羅を表してるらしいけど、 そんな小鳥遊みたいなトンチが本当に必要だったかは怪しいんだよぉ。 【本当一体なんなんだ】 亜:私も大昔は亀だった気がするんだけど、いつからか蛇も混じってたみたいな。 黄:なんだその適当さ、なんだよぉ。 亜:猫だって、長生きしたら尻尾が割れるんだし、そういうことでいいじゃない。 猫:まーお。 黄:この理屈に納得したら負けなのか、納得しなかったら負けなのか、 まずはそこから、ちょっと審議させて欲しいんだよぉ。 【三世紀は先取りしてる】 玄:結局、玄武の定義とは一体、なんなのでしょうか。 朱:魂が玄武ってれば、きっと玄武さんになれるんですよ〜。 黄:何を言おうとしてるのかすら分からないんだよぉ。 白:まあ、いつものこと。 朱:玄武る、玄武れば、玄武る時ってことですよ〜。 黄:もしや理解できない自分の感性が古いのではないかと、 一種危険な思考に陥りそうなんだよぉ。 【九年も放置してたくせに】 朱:そういえば、玄武さんって先代の甲羅で発見されたんでしたよね〜? 黄:そんなこともあった気がするんだよぉ。 玄:今でも住んでますよ。家賃もかかりませんし。 黄:なんてせこい四神なんだよぉ。 朱;つまり地下通路や公園に住む方と同じってことですよね〜。 青:色々と外聞もあるので、宿舎を用意することを検討しますね。 【玄武最強説は自作自演】 亜:人間モードになる時、何故か甲羅だけが残る。 だけど亀に戻るつもりがないなら、住処として活用できるという逆転の発想。 黄:この、バカ時々天才め、なんだよぉ。 亜:なぜ亀の甲羅があれだけ頑強で堅牢なのか知ってるか? 亀の尋常ならざる力の暴走を抑える拘束具になっているからさ。 黄:たしかに、この頭の沸きっぷりは少しばかり安全弁をかけないと、 とても世間様にお見せできるものではない気もするんだよぉ。 【仲間と勝利のためならしょうがない】 亜:亀は普段、スローリィに動いているように見えるが、 あれは本気を出してしまうと寿命が縮まってしまうからなのだ。 黄:何か、一回りして普通の生物学なんだよぉ。 青:一般の亀は、余命を対価に素早く動ける訳ではありませんけどね。 玄:閃きました。私も、耐用年数を引き換えとするブーストモードの搭載を求めます。 亜;別にそんなことしなくてもここのボタン押せば強くなるよ。 原子炉の密閉性能がちょっと甘くなる欠点あるけど。 黄:おいコラ、犠牲にするのは周りの寿命とか、しょうもないオチつけてんじゃないんだよぉ。 【そして全世界に配信】 玄:押してはいけないボタンって、どうしてこうも魅力的なんでしょうか。 朱:押すなよ、絶対に押すなよって言えばいいんでしたっけ〜? 黄:基本を怠らない子達なんだよぉ。 青:仕事の基本は、外しまくっているのにですね。 黄:青龍がこういった真っ当な冗談を言うとか、映像化して保存しておくべきだったんだよぉ。 青:勘弁して下さい。 【きっとまだまだ頑張れる】 亜:ともあれ、私の甲羅は久々に見てみたいね。 出奔する時に適当に色々積んだけど、何を作ったんだかよく憶えてないし。 玄:私も、何の為に使う機械なのか、半分も理解してません。 黄:なんだこの母娘、なんだよぉ。 青:代替わりして、気苦労が増えたのか減ったのかが、未だに分かりません。 黄:まあ朱雀がアレなだけで大幅なマイナスなことはたしかだから、 誤差の範囲ということで目を背けておくんだよぉ。 朱:ふに? 【そんなものを娘に預けたという事実】 亜:おぉ。これは昔作ったはずの時空転送装置。あ、こっちは全元素無尽錬成機ではないか。 黄:なんだか、聞こえてはいけない言葉が聞こえてきてる気がするんだよぉ。 青:今すぐ、全力でもって破壊した方が国の為やも知れませんね。 亜:おおっと、忘れてるかも知れないけど、私が作ったものだよ。 所定の手順を踏まずに解体なんかしようものなら、 半径数百キロがぺんぺん草も残らないくらいの大爆発が起こるように仕込まれてるからね。 黄:八百年しか生きてないくせに、どうやってそんなオーバーテクノロジーを手に入れたのか、 割と本気で掘り下げてみるべきではなかろうか、なんだよぉ。 【少年マンガを読み飛ばす心持ち】 亜:お、その話聞いちゃう? 黄:選択肢を、間違えた気もするんだよぉ。 青:ここまで来たら、毒を食らわば皿までの精神です。 亜:そう、あれは宇宙開発が全盛を迎えていた数十年前、 かつてない宇宙の意志が私の中に降り注いできて――。 黄:その与太話、長くなるようなら話の核心に近付くまで昼寝させてもらうから、 いいところで起こして欲しいんだよぉ。 【滑れるという偉大さ】 亜:いや、昔からカラクリ仕掛けとか興味あったんだけど、ここ百年の技術発展が凄くて、 妄想を実現するにはいい機会かなって。 玄:機械だけに、ですね。 黄:もう少し、吟味してから喋った方がいいんだよぉ。 亜:思考の精査パターンを、もうちょっと厳しめにした方がいいかなぁ。 黄:そういや玄武って人工知能だったと、いつも素で忘れるんだよぉ。 【神って一体なんなのさ】 亜:よし、朱雀。折角だからここにあるの、一つあげるよ。 朱:い、いいんですかね〜? 黄:何を選ぶかで、朱雀が何に愛されているかが分かるんだよぉ。 白:疫病神か、幸運の女神か、はたまた笑いの神か。 青:あなた達は仮にも、自分達が四神と称される存在である自覚があるのですかね。 【変な方に神経図太い】 朱:で、では、これをいただきます〜。 亜:ふぅむ、本当に、それでいいの? 朱:そ、そういう心理戦はやめましょうよ〜。 亜:メンテはしてあげるけど、返品や投棄は認めてないからね? 黄:なんか夜な夜な手足が生えて置き場所が変わるみたいな、 ちょっとした怖い話になりそうなんだよぉ。 朱:実害がなさそうなので、その程度なら問題ありません〜。 【朱雀らしいとは言える】 亜:それは、電磁波を発生させて、全身の血行をよくする健康機材だね。 朱:わ、割と普通でした〜。 白:これは美味しいの? 滑ったの? 朱:そんな判断基準はやめておきましょうよ〜。 黄:個人的には、朱雀の電波に勝てるのかとか、火の聖獣に血の巡りとか、 釈然としない部分はあるんだよぉ。 【微調整は難しいのよ】 白:電波と電波が干渉しあって、想定外の事態が引き起こされる流れかな。 黄:なんでちょっとワクワクしてるんだよぉ。 白:今までに起こったことがないことが起こるって、面白そうじゃん。 黄:これが傍観者の、言い換えるなら野次馬の意見なんだよぉ。 玄:虎なのに、ですね。 黄:おい、むしろクリアライン緩くなってねーかと、 開発責任者をちょっと睨みたくなってきたんだよぉ。 【黄龍にも無理そうだ】 黄:ある意味において、先代玄武が最強の気がしてきたんだよぉ。 亜:否定はしないよ。私は、最強で最凶の科学者だからね。 黄:居直りやがったんだよぉ。 青:頼んだ仕事は大体片付けてくれる。定期的にそれに匹敵する面倒事を引き起こしてくれる。 部下として優秀だったのかは、今でも判断に困っています。 亜:そういう問題児を使いこなすのが大将の器ってもんでしょ。麒麟には無理だと思うけど。 黄:なんだか難しい話っぽいけど、麒麟の悪口なら、とことんまでに付き合うんだよぉ。 【朱雀なら保護者代わりだけど】 玄:バリバリ働き、同じくらい迷惑をかける。それが私の目指す道なんですね。 黄:確実に間違った方向に進もうとしてるんだよぉ。 青:少し、育成方針について三者面談をした方がよさそうですね。 黄:中学生じゃないんだから、なんだよぉ。 亜:いやー、娘がやりたいようにやるのが一番だと思うっていうか。 黄:それは放任主義という名の投げっぱなしだと言いたいけれど、 他人の家庭の事情に首を突っ込んでいいのかが問題なんだよぉ。 【仏の顔より分厚いな】 青:亀を数百匹放し飼いにして、有能な次代玄武を生み出すというのは現実的ですかね。 黄:まーた少し壊れてきたんだよぉ。 白:優秀だからって、仕事ばっかしてちゃダメだよね。 朱:趣味を持たないと、お年寄りになった時に苦労するらしいですよ〜。 黄:こいつらを相手にして、殴りかかりもせず、 この程度の精神汚染で済む青龍は、どれほどの悟りを開いてるというんだよぉ。 【婚活みたいな意見だな】 亜:なんなら、副官青龍の更にサポートロボ作ろうか? 可愛い女の子タイプの。 青:この際、容姿は関係あるのですか。 亜:男の子タイプだと、余計な噂が立ちそうじゃん。それはそれで面白そうだけど。 黄:よく働き、時には苦言を呈してくれ、それでも組織のことを考えてくれる、 そんな理想の部下はどこにも居ないにしても、 どこまでなら許容できるというのは、これはこれで永遠の命題なんだよぉ。
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