邂逅輪廻



【一種の万世一系】
白:格闘技のチャンピオンとかって、実力が伴わなくなったり、次のステップに進む時、
 王座を返上することがあるらしいね。
朱:何の話ですか〜?
白:いや、朱雀も、そろそろ最強鳥類の座を返上してもいいんじゃないかって。
朱:お、お母さんや御先祖様が築いてきたものですので、
 私の一存という訳にはいかないと思うんですよ〜。


【虎だって二虎競食】
月:そもそも、一般的な鳥で最強はどいつになるのか。
白:大型のワシとダチョウだったら、どっちが勝つかなぁ。
朱:戦闘フィールドによって、結果が大きく左右されそうですね〜。
白:ま、死闘で消耗しきったところをついて、どっちも美味しく頂いちゃうんだけどね。
月:酷い外道を見た気がしてならない。


【ブラックホール並の吸引力】
月:検索してみたら、ヒクイドリってのがヤバいらしい。軍隊も逃げるレベル。
朱:ふ、ふに?
白:火を喰うとか、名前からして完全に朱雀の天敵だよね〜。
朱:な、何でそう、無駄な奇跡が起こるんですか〜。
月:そういう星の下に生まれてるんだ、諦めろ。


【ヒグマまでならオードブル】
月:絶滅種アリなら、恐竜モドキがゴロゴロしてる。
朱:鳥類は、種として恐竜さんと近いですから〜。
白:あいつら、案外、淡泊な味わいで鳥に近いらしいね。食べてみたかったなぁ。
朱:い、いくら白虎さんの一家でも、大型恐竜は食べきれないんじゃないですか〜?
白:お母さんナメてたら、世界が終わるよ?


【優雅に流れる大河のように】
月:現存鳥類は、大体、一万種くらいらしい。
白:生きてる間に、全種制覇してみたいなぁ、もちろん朱雀も含めて。
月:感覚が、ファミレスのメニュー挑戦並でヤバい。
朱:ぜ、絶滅危惧種はやめておきましょうよ〜。
白:環境破壊とかで追い込まれるならともかく、
 私達肉食獣が食べる分には、生存競争の一環じゃないかって思うんだけど。
月:意外と筋が通ってる気もするが、どうなんだこれ。


【釣り人の嗜み】
月:アクション映画やアニメ風に言うと、
 『たかが四匹の獣に、種が滅ぼせるものか』みたいになると思うのだが。
白:ゴメン、本気出せば割と余裕。
朱:お、恐ろしい話です〜。
白:むしろお母さんが根こそぎ食べ尽くさないように、
 若いのは見逃してあげたり、数を制限させたり考えるくらいだし。
朱:わ、私がかろうじて見逃されてるのは、年齢のおかげの気がしてきました〜。
 

【感覚が麻痺してきた】
白:ってか、朱雀って一匹しか知らないけど、扱いとしては絶滅危惧種なの?
月:分裂は別にして、五千年前から増えも減りもしていない訳で。
白:そもそも、本当に鳥類なのかというのがあったっけ。
月:地球外生命体どころか、宇宙の意志が凝縮したものと言われても信じられる。
朱:ここまで言いたい放題ですと、自分のことじゃないみたいでむしろ気楽です〜。


【素晴らしい今更感】
月:で、この一万種くらいの鳥類業界で、朱雀はどこらへんに収まっているのか。
白:名目上は結構上位なんじゃないの?
月:いや待て、有志によるランキングサイトを見付けた。
白:殿堂名誉王者、順位対象外……って、いいの? 悪いの?
月:扱いに困って投げた感がヒシヒシと伝わってくる。
朱:せ、世間の評価を、こんな形で知ることになるとは思いませんでした〜。


【その道のプロフェッショナル】
月:しかし仮にも王者なら、どんな挑戦も受けなくてはいけないと思わないか。
朱:さ、最近のチャンピオンは、いかに強敵との対戦を回避するかに尽力するそうですよ〜。
白:ダメだこりゃ。
月:ええい、その程度のことで玉座を守れるか。
  期待の若手は伸びる前に潰し、育ってしまった場合は精神的に追い詰めていけ!
白:こっちはこっちで、何か変なスイッチ入っちゃったし。


【稀代のブーメラン使い】
月:世の中、奪うことより、保持し続けることの方が難しいのさ。
朱:月読さんって、タイトルホルダーでしたっけ〜?
白:びみょーなところ。
月:親のコネとか、数合わせで四神に収まってる奴にこの気持ちは分かるまい。
白:月読だけには、言われたくないなぁ。


【ゆったり歩いて三キロくらい】
月:とりあえず、手頃な鳥を呼んでみよう。ハヤブサ辺りなどどうか。
朱:そ、それって、かなり強い部類じゃないですかね〜。
月:なぁに、たかだか降下時のスピードが三百キロ出るというだけ。
  新幹線と勝負できる程度の小物よ。
白:朱雀は、一キロちょいくらいだっけ?
月:三輪車を必死に漕いだら、そんなものだろう。
朱:ふ、ふに〜。


【フラグが立ったならしょうがない】
月:ちなみに、物体が持つ運動エネルギーは、速度の二乗と重さに比例する。
朱:ふに?
月:ハヤブサの体重を一キログラム、朱雀を三十キログラムとしたら、
 持ち合わせるエネルギーは三百の二乗を三十で割って、およそ六千倍。
朱:な、何ですか、その絶望的な数字は〜。
月:なぁに、ハヤブサの奴も、そんなスピードで体当たりをしてきたら只では済むまい。
朱:それはこちらだけ被害を受ける流れです〜。


【火の聖獣にはちと辛い】
月:なら、ペンギン辺りでどうだ。
朱:そのくらいでしたら何とか〜。
白:最大種の皇帝ペンギンなら、体長一メートルちょっと、体重も三十キロくらいだから釣り合うね。
月:無論、こちらはお願いする立場だから、バトルフィールドは南極だ。
朱:ふ、普通、タイトルマッチはチャンピオンの地元でやるものじゃないですかね〜。


【せっかくの余韻が】
月:王より、皇帝の方が上だろ?
朱:すっごくうまいこと言ってやったって顔をしています〜。
月:ちなみにあいつら、敢えて真冬の南極で子育てをするド根性の持ち主でもある。
白:皇帝とは、最も過酷な生き方を選んだ者って感じがするよね〜。
則:呼んだかの?
月:うまいこと絡め返された!


【只の食事風景なのに】
月:そういえば、軍鶏が居たな。鳥類界の戦闘民族。
朱:全くもって勝てる気がしません〜。
月:動物愛護の観点から闘鶏が衰退して久しいが、
 朱雀とならハブ対マングース的に許されるのではなかろうか。
朱:い、今はそちらも、規模を縮小気味だと伺ってます〜。


【乱れ飛ぶブーメラン】
月:そういえば、闘鶏のことをチキンファイトというらしい。
朱:チキンレースみたいですね〜。
月:粋がる奴ほど、心根は臆病。つまりは、そういうことか。
朱:月読さんが言うと、不思議な説得力があります〜。


【一瞬では無理だった】
月:朱雀は、カラスやオウムと知恵比べをして、勝てるだろうか。
朱:私、一応、聖獣ですよ〜?
白:いや、あいつらマジで賢いからね〜。罠とか二度目は通用しないし。
月:一方朱雀は、今朝食べた御飯が言えるかすら怪しい。
朱:そ、そんなことはありませんよ、多分〜。


【森の賢者フクロウならもしや】
月:では、質量と重力とは何か、最先端物理学の見地から述べよ。
朱:カラスさんとオウムさんも答えられない問題はやめて下さい〜。
月:つーか、私も知らん。
白:酷い設問だった。
月:奴らなら、奴らならきっと真理を知っている。
白:その謎の信頼感は、一体、どこから来るのかなぁ。


【歳の数よりは穏便】
月:七面鳥! 十姉妹! 四十雀! 百舌鳥!
朱:なんで数字シリーズなんですか〜。
月:とりあえず思いついたのを並べてみたら、全部入っていた。
白:つまり、この数だけ食べてもいいってことだよね!
朱:せ、節分の豆みたいに言うのもどうですかね〜?


【むしろ主食だよ】
月:しっかし朱雀も贅沢を言う。
  ここまで相手を選り好みするなら、ヒクイドリ連れてくるぞ、オラ。
朱:む、無茶苦茶を言われてます〜。
白:そろそろ考えるのも面倒だし、片っ端から呼んでみたらいいんじゃないかなぁ。
月:こっちは、夕御飯のおかずにする気だな!


【これはこれで凄いから】
月:王者たることとは一体どういうことなのか、私にはまだ分からない。
朱:いい話にして、締めようとしてますね〜。
白:飽きたんだろうね。
月:有史以来、人が描き続けていた天空への渇望。
  己が肉体のみでそれを成し遂げる鳥類は、既に王の器なのではなかろうか。
白:朱雀の場合、地上一メートルが限界だけどね。
朱:ふにふに〜。


【こんな時代だからワンチャン】
月:ザ・バードキングって演劇をやったら、受けないだろうか。
白:すごいバッタモン臭がするんだけど。
月:内容としては、大空は支配するんだけど、
 地上で羽を休めてる時はサバンナの王者にヘコヘコする悲哀を描いた社会風刺コメディみたいな。
白:絶対に、売れないね。


【かろうじて皆勤達成】
黄:よく寝たんだよぉ。
朱:おはようございます〜。
月:むしろ、もう夕方な件。
黄:昼寝くらい、好きにさせるんだよぉ。
月:幾らでも寝ていい特権! それは生物界では、王者にのみ許されるもの!
黄:一体、何の話なんだよぉ。


【孤独なんて耐えられない】
黄:王なんてものは、徳で認めさせるものなんだよぉ。
月:皆さん、どうですか。この、深いようでいて、全く心に響かない言葉。
黄:盛大なブーメランなんだよぉ。
朱:本日は景気よく投げますね〜。
月:話題が鳥なだけに、な!
黄:……。
朱:……。
月:ゴメン、今のやっぱ、なしで。
黄:この空気を受け入れられないようでは、王の資質は無いみたいなんだよぉ。


コント連載中



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