邂逅輪廻



【建前無縁の日本神】
月:仮にも国家の中枢たる四神である白虎が時給制というのは、
 対外的面目を考えても問題があるのではなかろうか。
白:うにゃ?
黄:いつものことだけど、唐突になんなんだよぉ。
月:義憤とは、赤の他人で、責任を取らなくていい立場だからこそ湧き出てくるものだというのは、
 長く生きている黄龍ならば知っていることだろう?
黄:いや、まあ、たしかにそうかも知れないけれど、
 話題を振って一分も経たない内にその本音をバラすというのも、
 一応は立場ある神様としてどうなのかなと思わなくも無いんだよぉ。


【プロ労組今昔物語】
青:実際問題として、時給いくらの仕事しかしていない白虎にも問題があると思うのですが。
白:言われちゃったね〜。
黄:筋金入りの腰掛け根性が垣間見えたんだよぉ。
月:否。労働者の権利は、どういった状況であろうとも守られるべき。
  徹底抗戦の準備も、既に済ませてある。
黄:経営者と労働者の対立は構造上のものとはいえ、
 働かない為だけに労力を注ぎ込む人種を労働者と呼んでいいのか、
 これはこれで、奥が深い話なのではなかろうか、なんだよぉ。


【要約すると通常営業】
青:一応、今は試用期間の様なもので、働き次第で正社員の道も用意しています。
白:私、もう百年くらいこの国に居るような?
黄:よくある詐欺的な口上なんだよぉ。
月:これをつきつめた結果が、派遣社員や契約社員の常態雇用であり、
 軽々に見逃すわけにはいかない。
  我々労働者は、憤懣やるかたないのである。
黄:めっちゃいいところのお嬢さんがそれを言っても道楽にしか聞こえないと言うか、
 そもそも憤懣やるかたないって言いたいだけの気もして、
 ツッコミどころが飽和してきた気がしないでもないんだよぉ。


【名誉職という名の無職】
月:聞いてください、こちらのお嬢さんなど、
 報酬が雀の涙ゆえに鰹節しか食べられない生活を強いられているのです。
窮:うにゃー。
黄:いや、そのお嬢さんについては、流石に労働形態以前の問題なんだよぉ。
窮:その分、窮奇としての仕事も鰹節分しかしてないからフィフティフィフティだよね!
黄:何かこう、給料を下げる、社員の意欲が落ちる、収益が上がらないから給料を下げる、
 という典型的な悪循環を究極的に煮詰めた結果がこの野良猫なのではないかと思わされる訳で、
 社会の縮図とは、本当、何処にでも転がってるものなんだよぉ。


【半ニートに言われても】
月:そろそろ、飽きてきた。
黄:早っ、なんだよぉ。
月:白虎の待遇が改善されたら、
 差分の五割をマージンとして頂くことをモチベーションとしてきたのだけれど、
 どうにもこうにも、見込みがなさすぎる。
白:初耳な訳だけど。
黄:正直、義憤がどうとか、正義がどうとか言われるより、
 こういう分かり易い欲望で動いている方がまだ信用できる辺り、
 社会の垢にまみれてるなって思っちゃうんだよぉ。


【言い方は面白い】
月:ここは、発想を変えていこう。
黄:と言いますと、なんだよぉ。
月:白虎達の給料が安いのではない。他の面々が高すぎるのだ、と。
黄:つい先刻、対外的体面とか言ってたのと同一人物とは思えないんだよぉ。
月:軽薄に時流に乗って、庶民派をアッピィールするのもいいんじゃね?
黄:庶民派でも愚民派でもいいけれど、
 立ち位置や主張をコロッコロ変える奴は信用ならないというのは、
 万国共通の真理かと思われるんだよぉ。


【無駄な努力も努力の内】
月:このカメレオン野郎めと罵られるのが、私の三千二百七十五ある目標の一つ。
黄:その程度のハードルでいいなら、二週間も頑張れば全部達成できそうなんだよぉ。
月:この中には、ダメ神様ブームに乗って一財産築くというのもあるが、本当に可能か?
黄:人生のハードルは高ければ高いほど良いなんて言うけれど、
 一般常識内では起こり得ないことを目標にされても困る訳で、
 でも過去の偉人達は不可能へと挑戦してきた気もして、もう何が何やらなんだよぉ。


【設定上は千二百年】
玄:給料よりも、人気を増やすプロデュースをして頂けないでしょうか。
月:ぶっちゃけ、もう無理じゃね?
黄:ついに投げっぱなしたんだよぉ。
月:五千年の時を掛けて培われたヒエラルヒーを覆すには、倍の一万年は掛かるとみるのが妥当。
  三貴子に関してはまだ二千年だから、今からでも取り返せるな。
黄:どっちにしろ相当な期間であることに変わりはないけれど、
 真っ先に麒麟に中央を簒奪されてから何年だったかな〜、とか考えた自分が嫌なんだよぉ。


【元マムシが言うてます】
月:むしろ玄武の肩書きを捨てて、無名の村人として再起した方が可能性があるレベル。
玄:げ、玄武って、そこまでスタートラインにハンデがあったのですか?
黄:否定しきれないのが辛いんだよぉ。
玄:防御型なのが……防御型のイメージが定着したのがいけないんですね!
黄:まあ、ヘビ成分はともかく、亀に関して言えば何をどうしてもディフェンス一辺倒な訳で、
 その辺に関しては今更どうしようもないかなと思う次第なんだよぉ。


【ウサギとカメより絶望的】
玄:ガラパゴスの亀です。
月:はい?
玄:ダーウィンは、ガラパゴス諸島で各島々の亀の形状が微妙に違うことから進化論の着想を得ました。
  ここは一つ、攻撃的な亀を生み出すことで、亀そのものの概念を変えることから始めましょう。
黄:何だかこう、これ以上ないくらいの本末転倒っぷりが清々しいというか、
 そもそも大半の亀が攻撃型になったところで、
 既についた遅れは取り戻せないと言って然るべきかが問題なんだよぉ。


【妄想力の勝負だな】
朱:ふに〜。
玄:朱雀さんも、決して攻撃的とは言えない立ち位置なのに、ああ、この羽でのキャラ立てが憎い!
朱:む、毟るのはやめてください〜。
黄:どうせモノの数分で生えてくるんだよぉ。
月:ふむ、つまりはオプションを付けて影の薄さを補っていく方向だな?
玄:羽で行くのでしたら、漆黒の六翼でお願いします。
黄:その病気、まだ治ってなかったのかと言いたいけれど、
 宗教なんて、如何にぶっ飛んだ設定を加味するかが勝負のところもあって、
 否定しきれないのが難儀なところなんだよぉ。


【意外と世の中そんなもの】
フ:世界を丸呑みにしてしまう狼だなんて、恐ろしい輩が居たものですね。
黄:初代のあんたなんだよぉ。
フ:そうでしたっけ?
黄:記憶力が限界水域なんだよぉ。
朱:年はとりたくないものですよね〜。
黄:この、朱雀に何を言われても釈然としない伝統芸能的なものも、
 更に年月を重ねれば神話になるのであろうかと思うと、色々と考えさせられるものがあるんだよぉ。
朱:ふに〜?


【立場なんかに縛られない】
月:そういう話なら、我が日本神話も負けていない。
  女としての母さんが男である父さんに声を掛けて子供を作ったら奇形のヒルコが産まれただなんて話、
 現代なら下手すれば発禁もの。
黄:一番上の兄さんに、良く言えたものなんだよぉ。
月:神話だから許されるという風潮に、私は異議を唱えたい。
黄:どんなに長く続いて権威があろうと、始まった頃は新興宗教であったのは事実であろうけど、
 それを神様である月読が言っていいかどうかについては、又、別の話なんだよぉ。


【龍族に於ける構造的限界】
月:とゆーか、寿命無限で、長生きしただけ強くなるってのも大概な設定じゃね?
黄:設定とか言わないで欲しいんだよぉ。
月:今はたかだか一万年だからこの程度だが、星の寿命ほどに齢を重ねれば、
 恒星とも渡り合える力を持てるのではなかろうか。
黄:地球上にあるエネルギーの大半は太陽由来で、
 こちとらその地球内の摂食で力を得てる身なんだからそれは無理だろうと、
 本気で返したら負けの気がするんだよぉ。


【鉛如きで防げるのか】
月:ふっ、太陽のエネルギーなど、所詮は水素の核融合によるものが主体。
  原子そのものをエネルギーに代える機構を搭載すれば余裕でいける。
黄:現代物理学を、理解してるようで理解してない発言なんだよぉ。
月:今こそ、放出エネルギーが明らかに摂食カロリーを超えている朱雀の秘密を解明すべき。
朱:ふに?
黄:たしかにこのシステムを解明することが出来ればエネルギー問題は解決したも同然だけれど、
 大量の電波も撒き散らしているという事実は、重く受け止めるべきなんだよぉ。


【当然ながら褒めてはいない】
月:で、何の話だったっけ?
黄:いつにも増して酷いとっ散らかり方だったんだよぉ。
白:たしか給料が低すぎる話から始まって。
玄:私の知名度を改善する展開でしたよね?
朱:記憶の糸を辿りますと〜、とんでもない神様とかの話だったと思うんですけど〜。
黄:僅か十分やそこらでどうしてここまで話題を散逸させることが出来るのか、
 ここまで来ると一種の才能ではなかろうかと考えてしまうのが恐ろしいんだよぉ。


【適材適所でいいのだろうか】
月:いや、待て。この三つを組み合わせることで、全ての問題が解決出来る気がしてならない。
黄:一応、話だけは聞いてやるんだよぉ。
月:こう、とんでもねー特殊能力を身につければ、白虎の給料も上昇、
 玄武の人気も上がってウハウハじゃね?
黄:しかしこの神様、しょーもないことは凄い発想力なのに、
 建設的なこととなるとこう陳腐な辺り、
 閑職に配置した伊邪那岐は正しかったのかも知れないんだよぉ。


【意訳すれば大差なし】
月:限られた脳容量を、生産的なことなどに使って溜まるものか!
黄:酷い居直りなんだよぉ。
朱:月読さんはきっと〜、
 遊び心から生まれる創造性もあるということを述べたいんだと思うんですよ〜。
月:うむ、全くもって、その通り。
黄:本当、筋金入りの適当屋の本性を垣間見たというか、
 言い換えれば、『こいつ、本当にどうしようもねぇなぁ』という言葉しか漏れてこないんだよぉ。


【誰も彼もが酷すぎる】
玄:人気が出る必殺技……ですか。
月:ないしは特殊技能、或いは特性、属性的なもの。
黄:これが、ゲーム脳なんだよぉ。
白:何だか、凄い突っ込みどころがあったような?
朱:黄龍さんがネトゲ廃人だったのはかつての話で〜、
 今では色々なゲームを広く薄くやってるだけですよ〜。
黄:深くやりこんでサービス停止した時の落胆を味わいたくないのは業なのか、
 ちょっと誰か教えて欲しいものなんだよぉ。


【無駄な仕事はしない主義】
玄:玄武ウェーブレインボー。
黄:いやいや、玄武のイメージカラーの黒が、欠片も関係ないんだよぉ。
月:色は全部混ぜれば黒になるではないか。
黄:それは絵の具の三原色なんだよぉ。
朱:光は〜、波と粒子の性質を併せ持つという、
 科学キャラの玄武さんらしい必殺技で良いと思います〜。
黄:ああもう、こうもツッコミどころが飽和してくると、
 青龍に全部任せてしまいたい気分になるけど、
 アレはこういう時には何処かに消えてるんだよぉ。


【無駄な仕事が大好きさ】
白:白虎うにゃうにゃうにゃー。
黄:最早、何が何だか分からないと、お嘆きの方も多いんだよぉ。
月:もういっそ、うにゃっこと改名してみては如何だろうか。
黄:もっと意味が分からないんだよぉ。
白:弾ける、元気! うにゃっこ、一番!
黄:しっかし、こいつら何で酒も飲まずにこんなにテンション高いのか、
 体内でアルコールを製造してるのか、脳内麻薬の量が多いのか、
 いずれにしても検体に回すべきではなかろうか、なんだよぉ。


【あくまで程々に】
月:月読ドラゴンフェニックスタイガー。
黄:せめて、生き物は一つにするべきだと思うんだよぉ。
月:九つの聖獣を身に宿らせた神様という設定ならいけるはず。
黄:まあ、何をどうするかは勝手と言えば勝手なのだけれど、
 その設定だと重用するのは二、三匹の聖獣で、
 他は顔見せの一回だけしか出番がない匂いしかしないんだよぉ。


【大人になるのは大変さ】
月:生まれた瞬間が人生のピークとか、誰のことを言っとんのじゃい!
黄:こんなしょーもないところに地雷があろうとは、
 発言というものは、いつでも難解なものだと思わされるんだよぉ。


【無駄な仕事のプロフェッショナル】
朱:朱雀という立場上〜、私も何か開発すべきなんでしょうか〜。
黄:朱雀の場合、ちょっとやそっとのオプションじゃ、電波に勝てないんだよぉ。
月:業界用語で、テコ入れ不発という。
  具体的に言うと、話に何の関係性もなく、
 お色気担当キャラが登場してきたというのに、尚も人気が右肩下がり的な。
黄:無駄に生々しい上に、微妙に的を外した意見だけれど、
 まあ月読ならしょうがないなと思う辺り、
 飼い慣らされつつあるんじゃないかと思う自分が居て困るんだよぉ。


【現実はいつだって残酷】
黄:という訳で、当方としては、『各々、頑張れ』という言葉で締めさせてもらいたいんだよぉ。
朱:そ、そんな簡潔でいいんですか〜?
黄:むしろ目一杯の激励ですらあると思ってるんだよぉ。
月:要約すると黄龍は我々に全幅の信頼を寄せており、細かい指示は必要ないとしている。
  上に立つものに必要なのは、この器量ではないかねと思う次第だ。
黄:美味しい部分は分捕り、責任は押し付ける、そんな理想の上司に憧れたけれど、
 この面子では不可能なことを悟って今に至った現実は、
 素晴らしいことなのか遣る瀬無いことなのか、少し考えさせて欲しいんだよぉ。


コント連載中



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