【ざっと百年ばかり】 月:過ぎゆく秋を偲んで、白虎を愛でてみようと思う。 白:うにゃ? 黄:いつも通り、えらく迷惑なことを言い出すものなんだよぉ。 月:はっはっは。それこそが唯一の存在意義であると、忘れてもらっては困るな。 黄:ある意味、凄まじいまでの潔さだけれど、それが正しいかどうかについては、 少し考えさせて欲しいんだよぉ。 【職人ですから】 月:とりあえず、どう弄ってくれようか。 白:うにゃにゃ? 黄:要するに、暇なんだよぉ。 白:まあ、私もプロの虎だし、鰹節さえ貰えるなら付き合ってあげてもいいけど。 黄:もしや、飼い猫も寝床と食事の対価として、あの自由奔放っぷりを演じてるのではなかろうかと、 一瞬、空恐ろしい仮説が頭の中に浮かんできたんだよぉ。 【むしろ被害者の方向で】 月:まあ、そろそろ寒くなってきたし、毛糸玉でも用意して、と。 白:うにゃにゃにゃー。 黄:明らかに、素の反応なんだよぉ。 天:あ、あのー。ここら辺に、冬に備えて作っていた編み掛けのセーターがありませんでしたか? 黄:何だか、前にもこんなことがあった様な気もするけれど、 あくまでも姉妹の問題として処理をして、 家主は知らぬ存ぜぬ記憶に無いで通そうかなって思うんだよぉ。 【馬鹿な子なりには可愛いか】 白:ネコ科の本能揺さぶるとか、ズルくない? 月:ノーノー。アイテのジャクテン攻めるの、ヒョーホーの基本デース。 黄:胡散臭い口調なんだよぉ。 白:外歩いてると、猫じゃらしやススキと格闘しちゃうし、本当、困った時期だよね。 黄:やっぱり、ネコ科は只の馬鹿みたいで、ホッとした様な、ムズ痒い様な、 そんな微妙な心持ちになってしまうんだよぉ。 【消化液至上主義者は眠らない】 月:しかしまー、秋はやっぱり実りの季節。 黄:果物や魚なんかが美味しい季節なんだよぉ。 白:昔は、海で鯨みたいに口を開けてガバガバ食べるのを、 入れ食いって言うって勘違いしてたもんだよねー。 黄:今、何だか絶対に共感できない発言があった気もするけれど、 元が丸飲み基本のマムシだっただけに、否定しきれないのが厄介なんだよぉ。 【大味ってレベルじゃない】 白:たしかにこの時期、動物達は冬に備えて肥えてるんだけどさ。 私としちゃ、キュッと引き締まってる方が好みなのよ。 黄:へー、それはそれは、なんだよぉ。 朱:つ、ついこの間、原因不明の巨大化をしたからって、 こちらを見るのはやめて下さい〜。 【時には哲学者の様に】 白:でもさ。満足度百パーセントの食べ物を一口と、 六十パーセントくらいのをお腹いっぱいとを比べるとなると悩むよね。 黄:子供の葛藤なんだよぉ。 月:うむ、これを肉密度満足感反比例の法則と名付けよう。 黄:食とは、元来、命を繋ぐ為のものであり、 味覚とはそれを選別する為のもののはずなのだけれど、 はてさて、生き物とは一体、何処に向かっているのであろうか、なんだよぉ。 【死後のアインシュタインの様に】 白:でもまあ、肉は肉って説もあるし、どれも美味しく頂くのが筋かもしんないかな。 朱:で、ですからチラリとこちらを見るのはやめて下さい〜。 月:成程。朱雀は流し目に弱い、と。 黄:一体、どういった頭の構造をしていればそんな結論に至るのか、 せめてその脳を提供することで、少しくらいは世の役に立ってみては如何か、なんだよぉ。 【日時計で何とか】 月:よくよく考えてみたんだけど。 白:んあ? 月:時給制とは、それなりの精度を持った時計を庶民が持ってこそ成り立つ制度。 百年前から働いてる白虎が、契約できるはずがない。 白:あれ? 黄:いやはや。どうしてこの様にどうでも良いことに気付いてしまうのか、 暇人とは、本当に恐ろしい生き物なんだよぉ。 【とプロニートが言ってます】 青:当初は、日給制でしたよ。 白:そーだっけ? 黄:記憶力が、危険水域なんだよぉ。 青:一日の勤務時間が余りに不規則で不平等だから、時給制にしろと自ら言い出しまして。 白:あー、私なら、そういうこと言い出しそうな気もする。 黄:生活基盤の根幹である労働形態を気分で変えられるとは、 ある種、大物なのかも知れないんだよぉ。 【中国なら楽勝だ】 白:ま、残業や休日出勤したからって、割増手当なんてもんは無いんだけどね! 青:中国で、真っ当な労働が保証されるとお思いですか。 黄:凄い逆ギレを見たんだよぉ。 青:何でしたら、年俸制度にして、仕事量が無制限に増える道もありますが。 黄:一般の先進国では、それをホワイトカラー・エグゼンプションとか何とか言って、 労働者に対する搾取として忌み嫌ってた気がするんだよぉ。 【その頃から胃薬必携】 月:ハハハ。白虎だけにホワイトカラーとは、中々に豪気。 黄:変なところに食いついてきたんだよぉ。 青:私も一度くらい、ブルーカラーとして、働いてみたいものなんですけどね。 黄:そしてこっちはこっちで、初っ端から五龍の中枢に居たことを、 軽く鼻に掛けてる様な気がしないでもないんだよぉ。 【口先だけは無双級】 朱:私は詰まるところ〜、レッドカラーなんですね〜。 黄:キーワードを、全く理解してない子が居るんだよぉ。 白:ほら、光って三原色全部混ぜると白になるでしょ。 そこから、部分部分の仕事はブルーカラー、レッドカラー、グリーンカラーって呼んで、 総合的に面倒みなきゃいけない上の方はホワイトカラーって言うみたい。 朱:そ、そうだったんですか〜。 黄:しかし、この適当ではあるけれど、無駄に逞しい発想力を活かせる上司が、 この世界の何処かに居たら良いなと思う訳ではあるんだよぉ。 【世間的にも同程度】 月:実際のところは、工場員は青い作業服、事務職は白いワイシャツを着てることが多いかららしい。 朱:ど、どっちが本当なんですか〜? 黄:たった今、朱雀の白虎と月読に対する信頼度は、 どっこいどっこいで大差がないことが判明したんだよぉ。 【気付いてしまうこともある】 黄:色々な意味で不本意ではあるけれど、月読の言ってる方が本当のはずなんだよぉ。 朱:ふに〜。そうなんですか〜。 青:ええ、そうらしいです。 朱:青龍さんが言うなら、そうなんでしょうね〜。 黄:そして今、朱雀に対する自分の信頼度が、白虎、月読よりは上だけれど、 青龍を下回っていることを知ってしまった訳なんだよぉ。 【いつも通りのこの扱い】 玄:ブラックカラーの、私の出番ですね。 黄:そろそろかなって、思ってはいたんだよぉ。 白:そういや戦隊モノって、白があんま居ない気がするんだけど、なんでだろうね。 黄:そりゃ、白は何色にでも染まれるんだから、 悪の方にも平気で堕ちるからではなかろうか、なんだよぉ。 玄:そして、完全に出鼻を挫かれた私の立場を返して下さい。 【かぶれ肌荒れ関係なし】 黄:前々から疑問ではあったんだよぉ。 白:うにゃ? 黄:キジトラみたいな保護色全開な模様はともかくとして、 あんたら何を目的として全身白色なんだよぉ。 白:いやー、生まれついたものをそんな風に言われても。 黄:やっぱり、産まれたばかりの頃に漂白剤で色を抜いているという儀式の噂は、 本当だったのかと聞いておくんだよぉ。 白:何がどうして、そうなったかなぁ。 【ネトゲ会社も潰れたし】 黄:雪山や雪原、氷山の極地でも無い限り、何の役にも立たないんだよぉ。 白:たしかに、赤道に割と近くて、緑も多いところで産まれたけどさ。 黄:そんな目立つ格好で生き延びてきたのには、淘汰論的に理由があって然るべきなんだよぉ。 白:いや、何でそんなに、本気な訳? 月:そりゃまー、他にやることがない黄龍宅にありがちなこと。 白:ああ、何か納得。 【こうはなりたくない】 白:んー、でもまあ、言っても大型肉食獣だしねぇ。 目立とうが何しようが、大抵の獣なら返り討ちっていうか。 黄:蝮からコツコツのし上がってきた者に謝れなんだよぉ。 白:つまりは、生まれ持った王者の特権、みたいな感じ? 黄:しかしそれが全く羨ましいと思えない辺りが、 良きにつけ悪しきにつけ、白虎を象徴してる気もするんだよぉ。 白:うにゃ? 【レポートの締めとして】 白:それに、自分より強い相手が居たら、何か嫌な予感がして――。 黄:いきなり止まって、どうしたんだよぉ。 へ:おい、馬鹿娘。居るなら返事をしろ! 白:うにゃ!? 黄:成程、この危機感知能力こそが、体毛の矛盾を抱えながらも、 今日まで生き延びてきた要因なのかも知れないんだよぉ。 【世界最強との噂あり】 白:うにゃー。 猫:まーお。 白:うにゃうにゃー。 猫:ままーお。 黄:白いの同士が、何かやってるんだよぉ。 白:やっぱり、国際会議は大国のエゴが浮き彫りになって、確執が深まるばかりだよね。 猫:うまーお。 黄:絶対に、そんな大層な話題では喋ってないだろうと突っ込みたいけれど、 あの白猫なら有り得ないことじゃないと思えるのが恐ろしいんだよぉ。 【森羅万象に精通する】 白:ん? 晩飯にカリカリは飽きた? たまには缶詰と煮干を寄越せ? 猫:なーご。 朱:しょ、承知致しました〜。 黄:そんな落差のある話題でも何の違和感もない辺り、器量人、もとい器量猫は一味違うんだよぉ。 【近くに居たのが悪いのさ】 白:ってか、これが次代の白虎とか、私は認めてないんだけど。 猫:ふみゃー。 黄:この業界、案外、将来性を買ってみたりもしてるんだよぉ。 猫:なーみゃ。 月:あー、今日も今日とて、センベイが旨い。 黄:この様に、スペックが高い者に要職を与えることが、必ずしも正しいとは言えない実例もあるんだよぉ。 月:何で当て付けにされたのか、さっぱり分からない自分が居る件について。 【結局割かし似たもの同士】 黄:契約更新したかったら、何か実績を残せということなんだよぉ。 白:ってか、黄龍にそんな権限あったっけ? 月:ここまで没落すると、妄想することが唯一の希望だというのを忘れないで欲しい。 黄:それは月読にだけは言われたくないと、一体、何度言えば分かって頂けますかね、なんだよぉ。
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