【今のままの君でいて】 黄:何だか、朱雀が少し大きくなった気がするんだよぉ。 朱:ついに私も、成長期ですかね〜? 黄:不老生命体が、何か言ってるんだよぉ。 月:ちょっと待て。朱雀は二百年後に転生するまで、この姿のままということか? 黄:まー、朱雀のことだからいきなり八頭身美人になっても驚きやしないけど、 それを朱雀と認めるかは、又、別の話なんだよぉ。 【精神的には幼年期】 黄:ちょっと身長を計ってみるんだよぉ。 月:何故、保健室でも無いのに身長計があるのか。 黄:細かいことは気にしないのが、長生きの秘訣なんだよぉ。 月:今のはひょっとして笑うべきところなのか、若輩の私には分からないのであった。 【あくまで服飾研究者として】 黄:記憶違いで無ければ、五センチは伸びてるんだよぉ。 朱:やっぱり、成長期ですよ〜。 黄:認めたく無いんだよぉ。 月:スリーサイズは、スリーサイズは如何程か。 黄:いや、あんたそもそも、元の数値は知っているのかと、 どうでも良い部分が気になった自分が嫌なんだよぉ。 【信頼と実績のニンジャ調べ】 月:何を言う。朱雀の靴のサイズが二十.〇ということまで知っているぞ。 黄:殆どストーカーなんだよぉ。 朱:私の足は〜、十九.五ですよ〜? 月:……。 黄:まあ、得てしてファンの知識なんぞ、伝聞に伝聞を重ねて劣化をしているから、 大体、合ってるだけでも、大したものかなとも思うんだよぉ。 【マスコット化に拍車】 黄:体重は、さほど変わって無いんだよぉ。 朱:痩せたんですかね〜? 黄:放出熱量が摂食熱量を上回ってるのに、維持できる方が不可解なんだよぉ。 月:と言うか、数値を鵜呑みにするのであれば、 ビニョーンとゴムの様に伸びてることになるのだが。 黄:いずれ伸びきったゴムが元に戻るあの勢いで、 夢の二頭身朱雀が誕生するのやも知れないんだよぉ。 【座布団一枚パクられる】 朱:私には〜、まだまだ伸び代があるってことなんですよ〜。 黄:うまいこと言ってやったぜ病が蔓延してるんだよぉ。 月:成程。朱雀の柔軟な発想力は、ゴムだからこそ、か。 黄:だからその勝ち誇った顔はやめろと、何度言えば分かるんだよぉ。 【ビッグなピッグがのし上がる】 黄:おかしいんだよぉ。 月:今度はどうした。 黄:念の為にもう一度計ってみたら、更に一センチ伸びてるんだよぉ。 月:と言うか、私とほぼ同じ目線に。 朱:これってつまり〜、月読さんを呼び捨てにして良いってことですかね〜? 黄:体格がそのまま上下関係に直結するとか、 今時、野良猫業界ですら、流行らないものだと思うんだよぉ。 【正しい朱雀の捻り方】 黄:しかし、雨後の筍じゃあるまいし、伸びすぎなんだよぉ。 月:水を与えれば、加速するやも知れぬ。 朱:わ、私の属性は火なんですよ〜。 黄:じゃあ、燃やしてみるんだよぉ。 朱:な、何だか日に日に、扱いがぞんざいになってる気がしてなりません〜。 【船頭多くしてふに山に登る】 玄:水と聞いて、飛んできました。 黄:ワンテンポ遅いんだよぉ。 月:ふわははは。この空気の読めなさ、流石は不人気道、目録といったところ。 黄:一体、いつから階級制になったのかと言うべきか、 むしろスルーした方が教育的なのか、いつだって、難しい判断を迫られてるんだよぉ。 【月読不要論勃発】 玄:皆さん、水を甘く見過ぎです。この地球に生命が生まれたのは、母なる海があってこそですよ。 黄:そんなこと言い出したら、土が無ければ大樹は育たないし、 火は文明の祖なんだよぉ。 月:詰まるところ、全てのものには存在意義があり、 何一つ欠かすことが出来ないということなのさ。 黄:とは言え、無くて良いものも、結構、ある気がするし、 それはそれ、これはこれの気がしないでもないんだよぉ。 【家主だけが本気出す】 朱:ふに〜。 黄:何て言ってる内に、更に大きくなってるんだよぉ。 月:もはやこれは、我々の手に負える事態では無いのではなかろうか。 黄:そんな達観した意見はさておき、とりあえず外に出さないと家が壊されるんだよぉ。 月:幾ら何でもそこまでは大きくならないだろうと言いたいけれど、 朱雀だけに有り得ないとは言い切れ無いのが恐ろしいと思うであった。 【みんな欲しいぞ夏休み】 月:仮説を、立ててみた。 黄:一体、何なんだよぉ。 月:もしや朱雀は、世の小中学生の『早く大人になりたい』ソウルを吸い込んで、 大きくなったのではなかろうか。 黄:大人になったらなったで、『子供の頃は良かった』エナジーを放出する訳で、 相殺して然るべきかなと、言わざるを得ないんだよぉ。 【ボディブローに目覚めろ】 黄:ついに身長が、二メートルを越えたんだよぉ。 月:もはや一般の身長計では計れず、目測ではあるのだが。 朱:私が〜、普通の枠には収まらない大物だってことですね〜。 黄:こんなふざけたこと言う奴の顔面なんざ殴打してやりたいところだけど、 生憎と目標が高すぎて、力が完全に殺されるんだよぉ。 【人それを捨て鉢という】 黄:このままだと、宇宙を飲み込む勢いで膨らんでいくんだよぉ。 月:流石にそれは、飛躍しすぎではなかろうか。 黄:でも、それはそれで神話っぽい気がしないでもないんだよぉ。 月:何ゆえ、こんなにもテンションが高いのか、 むしろそっちが気になってしょうがないのであった。 【風船幼女降臨】 月:そういえば、体重が変わってない事実から、ふと思ったことがある。 朱:ふに? 月:このまま、比重が落ち続けていけば、空気の軽さを下回って、 大空高く飛んでいってしまうのではなかろうか。 朱:そ、その時は、大黒柱に縛り付けておいてください〜。 黄:家の根幹を引き抜かれて舞い上がられることを考えれば、 朱雀単体で飛び立って貰うのが筋ではなかろうか、なんだよぉ。 【いつものことじゃないか】 白:うわっ。こりゃ大きくなったもんだね。 黄:既に、全長三メートルなんだよぉ。 朱:か、完全に怪獣扱いです〜。 白:これだけあれば、お腹一杯になりそうだよね。 黄:体重は変わってないから、多分、スカスカの味なんだよぉ。 朱:そ、そして本人の目の前で、好き放題言っています〜。 【実際には数時間程】 黄:さて、五メートルを越えると、流石に洒落にならないんだよぉ。 月:普段の身長の四倍として――体積はお値打ちの六十四倍。 黄:こう、針で突っついたら割れそうな儚さに、風情を感じるんだよぉ。 朱:す、少しは、真面目に対策を考えてください〜。 黄:成長期とか言っていたのはいつのことなのか、 遠い昔の様な、極最近の様な、実に曖昧な気分なんだよぉ。 【何という今更】 黄:いっそ、近所の公園で寝そべって、子供達のアスレチックになれば良いんだよぉ。 月:ああ、ちょっと面白そう。歩く度にふにふに言いそうで。 朱:た、体力が低下しつつある現代っ子の対策として、ピッタリですよね〜。 黄:もう、本人も何が何やら分かっていないようで、 おちょくってきたことに、若干の罪悪感さえ覚えてきたんだよぉ。 【焼け石にふに】 黄:しかし、対策と言っても、どうしろと言うんだよぉ。 月:高身長にコンプレックスを抱く人は、膝を曲げ、猫背となり、 少しでも小さく見える努力をするという。 黄:じゃあそれで、なんだよぉ。 朱:こ、この大きさで、そんなことしても無駄なのは、 火を見るより明らかじゃないですか〜。 【あの爺では無いと思う】 黄:とりあえず、長江の川幅を超えたら、橋となってお国の役に立つんだよぉ。 朱:な、何キロあると思ってるんですか〜。 黄:三途の川と、いい勝負かなって思うんだよぉ。 月:ところで、どういった理由でさっきから朱雀は伏せっているのか。 朱:座ってるだけで〜、その高さに目眩がするからです〜。 黄:高所恐怖症が巨大化……詰まるところ、朱雀を創造した存在は、 朱雀が嫌いなのではないかということで、とりあえずの決着を図りたい気分なんだよぉ。 【猫だからしょうがない】 猫:フルァ。 黄:飼い主様の変貌に、さすがの大物も動揺してるんだよぉ。 月:ん? 朱雀がこの猫に飼い慣らされてるのでは? 黄:じゃあ、下僕の様変わりと、言い換えておくんだよぉ。 朱:ど、どうでも良いですけど、服の中に入るのはやめて下さい〜。 【精神の潰し合いに定評】 朱:ふにっ! ふにっ! ふにっ! 黄:うまい具合に這い回ってるみたいなんだよぉ。 月:しかしこの展開で、全くエロくない辺りが朱雀だと思う。 黄:何を期待してるんだよぉ。 月:まあ、我々の近場で、お色気を担当出来るのが何人居るのかという話にもなるのだが。 黄:そういう割と本気で悲しくなることを言い出す子は、軽くたしなめても良いかなって、 思わなくも無いんだよぉ。 【あくまでも朱雀のせい】 朱:ふに〜。お陰様で〜、七メートルをピークに、徐々に縮み始めてるみたいです〜。 黄:相変わらず、理不尽生命体なんだよぉ。 月:それよりも、何故、服が破れず、一緒に伸長したのかが分からないのだが。 黄:朱雀に触れているだけで汚染され、同等の奇怪さが発現するのは、 もはや学会的にも、常識の範疇というものなんだよぉ。 【武照収縮編参照】 朱:ふ、ふにっ。何だか、前より小さくなった気がするんですけど〜。 黄:何と言うか、見事なまでの想定内なんだよぉ。 則:ええい、そなた、妾の真似をするとは、一体、どういう心づもりじゃ。 朱:そ、そして私は、何で怒られてるんですかね〜? 黄:人は、他者との差異に優越感を覚える生き物であると、 どっかの偉い学者先生が言ってた様な気がしないでもないんだよぉ。
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