邂逅輪廻



【色々絶滅するな】
朱:さ、最近、随分と暑くないですか〜?
黄:太陽が、本気を出しすぎなんだよぉ。
朱:こ、このままだと気温が体温を超えそうで心配です〜。
黄:以前の診断で、朱雀の体温は七十五度であると、
 一つの結論が出ていた記憶があるんだよぉ。


【存在するのかしないのか】
月:えー、かち割りー。かち割りは要らんかねー。
黄:太陽嫌いの子が、何で便乗商売をしてるんだよぉ。
月:商人として好き嫌いを絡めるのは下の下という祖母の教えを守ってるだけ。
黄:だから、一代前が始祖の分際で何をたわけたことを抜かしやがるんだよぉ。


【薄く見えるから】
天:――ゴゴゴ。
黄:天照、何をいきり立ってるんだよぉ。
天:怒っているのですから、当然です。
月:姉さん、氷菓売りの妹を気遣ってくれてありがとー。
天:え? え? そ、そうですか?
黄:この程度のことで表情を緩ませる様では、
 怒ってるなんて口にしない方が良いと思われるんだよぉ。


【ある意味風物詩】
黄:何にしてもこの暑さ、天照のせいならとっとと元に戻すんだよぉ。
天:北風と太陽の童話を参考にして、
 ストを起こすよりはこちらの方が訴えかけるものが大きいと判断しました。
黄:だけど一部男性が、薄着の増量で嬉しがってる現実が無いこともないんだよぉ。


【予定調和は嫌いじゃない】
黄:それで、何に怒ってるんだよぉ。
天:もちろん、月読のことです。
 姉である私を差し置いてイチャイチャして――。
黄:これが勝手に住み着いてるだけなんだよぉ。
月:まあまあ。私を巡ってそんなに争わないで。
黄:言うとは思ったけれど、実際、口にされると、
 何とも言えない脱力感が残るんだよぉ。


【あくまで黄龍の見解】
朱:お二人共、仲良くすれば良いと思うんですけどね〜。
黄:近頃思うのは、あれは多分、一種のプレイなんだよぉ。
朱:ふに?
黄:姉が近付き、妹が逃げる。その悲壮感を味わうのが目的の、
 ダメカップルみたいな真似の気がしてならないんだよぉ。


【だって月読だもん】
天:何にしても、月読は連れて帰ります。
黄:どうぞどうぞ、なんだよぉ。
月:あーれー。ごむたいなー。
黄:これは絶対に状況を楽しんでいると、
 誰もが感じてしょうがないと思われるんだよぉ。


【隠居した親父の出番だ】
天:えっくえっく。私が一番、月読を好きなんです。絶対です。
黄:泣き落としに掛かったんだよぉ。
月:あー、何だか、自分の中でテンションが上がってきた。
黄:この外道な妹を、本当、誰か窘めてくれないものかと思うんだよぉ。


【囚われのヒロイン気取りか】
天:とにかく! 月読を返して頂けないなら、火力を上げ続けます。
黄:酷い職権濫用なんだよぉ。
天:嗚呼……私の為にこんな悲劇が続くだなんて。
黄:そしてこっちのバカ妹も、状況に浸って悦に入るんじゃないんだよぉ。


【正常からして異端】
朱:こ、ここは発想を変えてですね〜。
 プール業を運営してみては如何でしょうか〜。
黄:脳が茹だってる子が居るんだよぉ。
月:うむ、たしかに、いつもと比べるとキレが乏しい。
黄:とは言え、普段の状態がキレているというのも、
 認めたくないのが本音なんだよぉ。


【何よりも感情を優先】
?:『お昼のニュースです。本日もうだる様な暑さが続き、
 各地で四十度を超えようかと……って、やってられっかぁ!』
朱:す、少し洒落にならなくなってきました〜。
黄:こうなったら、月読の負の力で何とかするんだよぉ。
月:負などと言われて、やる気が出る者など居るものか。
黄:こんなところで拗ねるとは、いつものことながら、
 相当の困ったちゃんなんだよぉ。


【配線がズレたか】
黄:へ、変温動物にとって、半端無い危険さなんだよぉ。
朱:こ、これは井戸を掘って、涼をとるしかありません〜。
黄:やっぱり、いつもの朱雀と何処か違う様な、
 そんな気がしてならないんだよぉ。


【涼は何処行った】
朱:い、井戸を掘ろうとしたら、温泉が湧いてきました〜。
黄:何を、運の無駄遣いをしているんだよぉ。
朱:こ、これが石油だったら、大富豪になれたんですけどね〜。
黄:既に目的が何処にあるのか、さっぱり分からなくなってきたんだよぉ。


【設定矛盾に乾杯】
月:ところで。
黄:何なんだよぉ。
月:前に白虎がこの庭を掘った時は、何も出なかった件について。
黄:きっと、地盤がズレたんだよぉ。
月:更に、朱雀にあれだけの穴を掘れる体力があることに吃驚。
黄:炎の血族なんだから、火事場の馬鹿力の一つや二つ、
 使いこなして然るべきなんだよぉ。


【妹は心の半身】
天:……ぜぇぜぇ。
黄:疲れてどうするんだよぉ。
天:あ……如何ともしがたい立ち眩みと眩暈が……。
黄:何を求めてそこまで身体を張っているのか、
 ちょっと見えなくなってきたんだよぉ。


【プロアスリート的なものか】
天:うう……身体に力が入りません……。
黄:姉も立派な、アホの子なんだよぉ。
天:こ、これで倒れた場合、労災は適用されますよね?
黄:残念ながら天照大神は一種の自営業であり、
 そちらの保険に加入していないなら無理かと思われるんだよぉ。


【コタツとか朱雀とか】
?:『午後のニュースです。お昼までの暑さは何処へやら。
 各地の気温が急激に下がり始め、一部専門家は氷河期の到来を――
 ふざけるなぁ! 折角買った夏物の服、どないしてくれんねん!』
黄:自由なアナウンサーなんだよぉ。
朱:つ、突っ込みどころはそこで良いんですか〜?
黄:とりあえず寒くなる分には、
 変温動物として幾つもの対策を用意してあるから何とかなるんだよぉ。


【比喩でも何でもなく】
朱:な、何だか吹雪いてきましたよ〜。
黄:太陽神は、安定感が一番ということなんだよぉ。
月:おー、よしよし。
黄:月読が天照の看病をするなんて、明日は豪雪に違いないんだよぉ。
朱:あ、余りにそのまま過ぎて、何とも言えません〜。


【神話って残酷】
月:氷嚢を、十個くらい乗せてみる。
黄:ひゃ、ひゃっこいです。
黄:確実に、遊んでるんだよぉ。
月:ところで、姉さんを冷やしたから気温が下がったかも知れない件について。
黄:もしそれが本当なら、月読の名は、
 日本国屈指の悪神として残るリスクがあるんだよぉ。


【いつだって身内は大変】
月:まー、無名なくらいなら悪名もありかなって思う。
黄:切実な話になってきたんだよぉ。
月:唯、やるなら当然、小悪党な話じゃなくて、
 世界を騒然とさせる大悪事を試みる訳だけど。
黄:本当にそんなことをしたら、姉が二度と立ち上がれないから、
 控えて欲しいものなんだよぉ。


【提灯とも言い難く】
天:何とか、体調も持ち直しました。
黄:健康が一番なんだよぉ。
?:『夕方のニュースです。本日昼頃、突然に発生した気温の乱高下は一段落した模様です。
 酒屋の御主人も、『ビールが売れそうで何より』とのコメントを残しています』
黄:この情報、本当に求めている者が居るのか、果てさて疑問符で一杯なんだよぉ。


【大気があるからね】
月:ところで、現実問題として、例え本当に太陽が無くなっても、
 そこまで急激な冷却化は起こらない件について。
黄:そういう細かい話は、気にし始めたらキリが無いから、
 聞かなかったことにするのが基本なんだよぉ。


【脳天お気楽モード】
天:という訳で、月読は連れて帰ります。
黄:当初の目的を、すっかり失念していたんだよぉ。
天:これでようやく、世界で一番仲の良い姉妹としての第一歩を踏み出せそうです。
黄:連れ戻すことと仲が修復されることにさしたる関連性がないと、
 誰か分かり易く説いてあげるんだよぉ。


【そもそも愛してない】
月:それで、何で朱雀は姉さんを止めないのか。
朱:ふ、ふに?
月:愛する私が消えようとしているというのに、なんという情の無さ。
朱:単に実家へ里帰りするくらいで騒いでいたら、
 この世界、生きていけやしないんだよぉ。


コント連載中



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