邂逅輪廻



【己を知り過ぎ】
朱:聖獣が出世しようと思ったら〜、何をどうすれば良いんですかね〜?
白:何。朱雀、そーいうの、したいの?
朱:全く興味が無いかと言われると〜、嘘になってしまいます〜。
黄:最も確実なのは、地道に実績を上げ続けることなんだよぉ。
朱:それは恐らく無理ですので〜、一発逆転の方法はありませんかね〜。
黄:こうもあっさり開き直られると、
 こちらとしては二の句が継げなくなってしまうんだよぉ。


【適材適所で考えると】
黄:そもそも、下っ端は気楽で良いとか言ってた気がするんだよぉ。
朱:出世できる能力を持ちながら〜、敢えて現場に拘るのが格好良いんです〜。
黄:根本的に、上へ行く資格が無い典型の気がしてならない訳なんだよぉ。


【一種の先読み術】
黄:そんなに実績を上げたかったら、聖獣王決定戦にでも出れば良いんだよぉ。
朱:ふに?
黄:五十年に一度、全土から集まった聖獣達が、
 我こそは最強であると戦い合う大会なんだよぉ。
朱:初代王者は〜、黄龍さんっていうお約束の展開ですね〜。
黄:大オチを先に言う子は嫌いなんだよぉ。


【目に見えぬ力】
朱:ですけど〜、その間隔だと、開催は随分と先の話ですよね〜。
黄:幸い、明日この近所でやって、当日の申し込みもオーケーなんだよぉ。
朱:な、何だか都合の良い話ですね〜。
黄:世の中、案外、そういう風に出来てるものなんだよぉ。


【折角付き添ったのに】
朱:たくさんの方が集まってますね〜。
黄:最近は、聖獣も減ってきたから、これでも寂しいくらいなんだよぉ。
朱:どちらにしても〜、これだけの方々から勝ち抜くのは不可能なので、
 辞退する決心が付きました〜。
黄:それで本当に良いのか、何でこっちがやきもきしなければならないんだよぉ。


【ある種のダメ聖獣連合】
亀:れでーす、えんど、ぜんとるまん。儂が審判長で司会の亀じゃ。
 元祖長生き聖獣として、命を賭けて頑張らせて貰うぞ。
?:ウオオオォォォ!!
朱:ど、何処に、盛り上がるところがあったんでしょうか〜?
黄:長生きしすぎると、誰も彼もが生きることに飽きるということなんだよぉ。


【何という白い虎さん】
亀:では初戦じゃ。今回は太平洋からあの大王イカ殿が三百年振りにやってきてくれたぞ。
 前にも増して肉体が大成長。陸上での時間制限はあるものの、優勝候補の一角じゃ。
?:し、審判長。それが何者かによって、水槽には皮の一枚も残らぬ無残な姿に――。
亀:なんじゃと!?
黄:犯人が半ば身内だと分かってしまうと、実にいたたまれない気分になってしまうんだよぉ。


【逃がしゃしないよ】
亀:まあ、長生きしていれば良くあることじゃ。
黄:凄い処理の仕方なんだよぉ。
亀:代替選手には、たまたま会場に居られる四神の一角、朱雀殿にお願いするとしよう。
朱:ふ、ふにっ!?
黄:これも運命だと思って、素直に諦めるが吉なんだよぉ。


【科学最強時代到来】
亀:ここにおわす御方をどなたと心得る! 紅蓮の炎の申し子。灼熱の使徒。
 南極の万年雪を一瞬で溶かせるのは、四神、朱雀殿以外に居られまい!
?:グオオオォォォ。
朱:な、何だか、物凄い持ち上げられ方です〜。
黄:それが商売なんだよぉ。
朱:ですけど〜、実際には冷凍食品の解凍辺りで小一時間は頂きたいんですけど〜。
黄:電子レンジにも勝てない。それが朱雀の本質なんだよぉ。


【誰が数えるんだ】
亀:対するは、節足動物屈指の猛者、無数の手足を自在に操り、敵を討つ。
 ムカデ聖獣のムカデン氏じゃ。
百:ムカムカ。
黄:どういうキャラ立てなんだよぉ。
亀:尚、百足でムカデと読むが、実際は三十足から三百四十六足まで、色々とおる。
黄:そりゃ、八百万の神様だって、ぴったりその数である訳が無いんだよぉ。


【それは想定外】
朱:この勝負、頂きました〜。
黄:何で自信満々なんだよぉ。
朱:ルールを相撲準拠に持ち込めば〜、どう考えても歩けません〜。
黄:逆に、一番上の一対以外、全てが足であると認められる可能性を考えない辺りが、
 何処までも朱雀なんだよぉ。


【悪運なら負けないよ】
亀:何を言っておる。初戦は、リリアンの早編みと決まっておる。
黄:相変わらず、意味が分からないんだよぉ。
朱:あ、あんなたくさんの手を持っている相手に、勝ち目がある訳――。
百:ムカムカ〜!
黄:その無数の手が仇となって、良い感じで絡まったんだよぉ。
亀:この勝負、朱雀殿の不戦勝じゃな。


【線は引かないと】
玄:えっくえっく……。
黄:何で、こんなところで泣いてるんだよぉ。
玄:私がガイノイドで無生物だからって参戦権が無いだなんて、これは差別です。
黄:だけど、これを認めたら止め処無く機械の参入を許容しなければいけない訳で、
 妥当な判断とも言えるんだよぉ。


【一瞬で拘束】
玄:こうなったら、こんな大会はぶっ壊してやります。
 権威に媚を売るだけの豚共に、目にものを見せてやりますわ!
黄:まあ、せいぜい頑張るんだよぉ。
玄:ところで、気が付いたら身柄が檻の中だったんですが、
 これは一体、どういうことなのでしょうか。
黄:ここの実行委員の実力を、余り侮らない方が良いということなんだよぉ。


【遊んでるのかな】
白:うにゃー!
亀:うぉっと。白虎殿、毛玉にジャレついて勝負にならんぞい。
黄:こっちも、何をしてるんだよぉ。
亀:しかし対するジャガー聖獣も、良い感じで弄ばれとるわい。
黄:一体、誰が猫科同士でカードを組んだのか、ちょっと問い詰めたい気分なんだよぉ。


【聖獣制度存続の危機】
白:とりあえず、面白かったからオーケー。
黄:年々、この大会のレベルが落ちてる気がするんだよぉ。
朱:千年後には〜、猫又さんが優勝するくらいまで落ち込みますかね〜?
黄:そこまで行ったら、流石に開催しないと、信じてはみたいんだよぉ。


【虎と兎じゃね】
フ:グルルァ! 敵は、敵は何処じゃぁ!
?:ひ、ひぃ!
亀:またしてもフェンリル殿に凄まれた対戦者が脱兎の如く逃げ出しましたぞ。
黄:何という力押しなんだよぉ。
亀:相手が兎聖獣だという辺りが、皮肉な話ですぞい。
黄:そして巧いこと言った様で、実は至極当然過ぎる話だったりするんだよぉ。


【枕を解さず】
月:どーでも良いけど。
黄:だったら、触れないで良いんだよぉ。
月:虎に兎というと、うちの国のプロ野球にそんなのがあったりする。
黄:喋るなと言っても喋るなら、始めから本題を語って欲しいものなんだよぉ。


【女の子同士だからか】
麒:ふん。流石は私が認めた男だな。今日こそ、雌雄を決してくれる。
黄:だから、フェンリルが雄で、麒麟が雌だという事実は永遠に揺るがないんだよぉ。
麒:拳と拳を交えた者の友情は、性別さえ超越するということだ。
黄:こちとら、麒麟との間に、そんな面倒臭いものが芽生えた記憶が無い訳なんだよぉ。


【とても心ウキウキ】
フ:グォルァ! まだだ。まだ暴れたりんぞぉ!
亀:ええい! 観客に迷惑を掛ける様な奴は失格じゃ!
黄:流石は、麒麟が認めた男なんだよぉ。
麒:ニヤニヤ笑って、こっちを見るな!


【何という大風呂敷】
亀:これより、決勝ラウンドを開始する。
黄:良くここまで進行したものなんだよぉ。
亀:最終決戦となるこの戦いは、この地域を借り切ってのバトルロイヤルじゃ。
 出会った時が即勝負。血で血を洗う大決戦に加え、運と知略もまた勝敗を大きく左右――。
黄:何だか、設定負けしてつまらなさそうだから、帰り支度を始めるとするんだよぉ。


【至極正論】
亀:そんなことを言いなさるな、黄龍殿。
黄:茶番にも飽きてきたんだよぉ。
亀:じゃったら、参加していきなされ。
 ここだけの話、どうにも小粒ばかりで、今一つ箔が――。
黄:そんなアバウトなルールが適用されてる時点で、
 もう箔なんてものは存在しないと思うんだよぉ。


【亀爺終了のお知らせ】
亀:すったもんだの末、優勝は麒麟殿に決まり申したぞ。
?:ウオオォォ!
黄:酷い出来レースだったんだよぉ。
亀:じゃが、人望や人徳については必ずしも比例しない辺りが、
 人生の奥深さというものじゃ。
黄:この後、リングの上で起こる惨劇を、誰もが簡単に予想出来る訳なんだよぉ。


【平均化の極みか】
朱:ふに〜。特別奨励賞を頂きました〜。
黄:半ば、参加賞なんだよぉ。
朱:小学校の卒業文集でありがちな〜、
 クラスの何でもナンバーワンみたいなものだと思えば良いんですよ〜。
黄:普通な人ナンバーワンになる切なさを、知らぬ者は気楽で良いんだよぉ。


コント連載中



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