【猫と変わらず】 白:春はぬくぬくで良いよね〜。 窮:本当だよね、お姉ちゃん。 黄:いい加減、仕事をするんだよぉ。 白:そーいや、何か手紙が来てたっぽいけど、麒麟辺りだろうから、後で良いやー。 黄:ここまで幸せそうな顔で寝られると、何も言えなく辺りが実に甘いんだよぉ。 【どっちを向いても自由人】 ?:御免。家主殿は御在宅か。 白:黄龍、お客さんだよ〜。 黄:半分居候なら、玄関先で応対くらいするんだよぉ。 月:まことに残念なのですが、一月ほど前、黄龍は肌荒れが原因で――。 黄:そっちはそっちで、喪服まで着て不謹慎な笑いを取るんじゃないんだよぉ。 【生きてたのか】 ?:そなたが黄龍殿か。 黄:一体、どちら様なんだよぉ。 ?:こちらで娘達が世話になっていると聞き、御挨拶に伺った次第であります。 朱:ふに? 白:お、お父さん!? 黄:何やら、不穏当な展開に突入する気配なんだよぉ。 【野暮なこと言うな】 黄:粗茶をどうぞなんだよぉ。 ?:いや、失礼。どうぞお構いなく。 黄:娘達と違って、随分と礼儀正しいんだよぉ。 朱:ところで〜、今は何をなさっているんですか〜? ?:ええ。北欧の方で、フェンリルの職を得ております。 黄:あれはたしか、狼だった気がしてならないんだよぉ。 【厳密には後継】 黄:お父さんは、傭兵稼業だと聞いたんだよぉ。 フ:その関係で、北欧に行きましてね。 弾みでブチ殺してしまったので、後釜に納まりました。 月:何だか、何処かで聞いた話。 黄:命があるだけ、こっちの方が大分マシなんだよぉ。 【漁夫の利作戦遂行】 フ:いえ、私もこう見えて、頭に血が上ると歯止めが利かなくなりましてね。 妻が止めてくれなければ、何処まで焦土にしたやらです。 黄:何処か、焼け野原にしても問題のない土地を探すんだよぉ。 月:麒麟と潰し合わせる気、満々。 【微妙な出来映え】 朱:お二人共、久し振りの対面なんですから、 もう少し甘えたらどうですか〜? 白:い、いや〜、もうそんな年でも無いし、ねぇ。 窮:う、うん。そうそう。 黄:まるで、借りてきた猫の様なんだよぉ。 月:きっと、それが言いたかっただけ。 【放浪時代を返せ】 フ:それにしても、娘達が家出をしてから、もう二百年ですか。 長かったような、短かったような感じですね。 朱:ふに? 黄:こっちでは、『世界を見て来い』の一言で追い出されたと聞いてるんだよぉ。 フ:そうでしたか? 何しろ、作戦任務以外は、 三日以上記憶しないことにしているので、どうにも曖昧で。 黄:どうやら、三日後に帰っても、さして問題無い事態だった様なんだよぉ。 【天下無双舐めんな】 フ:ですがまあ、これも良い人生経験ですよ、はっはっは。 黄:豪快というより、何も考えてないだけの様にも見えるんだよぉ。 朱:ということは〜、私と大差無いということですね〜。 黄:今、確実に最大級の侮蔑が入ったんだよぉ。 朱:ふ、ふに〜。 【ほぼ本能】 黄:何にしても、御飯でも食べていくんだよぉ。 フ:これはこれは。どうぞお構いなく。 黄:今晩は、若鶏の水炊きなんだよぉ。 フ:……。 朱:い、今、確実にこちらを見詰めました〜。 黄:言っても、所詮は父娘ということなんだよぉ。 【冷静な分析】 黄:肉を捌く時は、少しだけ血が騒ぐんだよぉ。 フ:……。 朱:ど、どうかされましたか〜? フ:ブルァ! 敵は、敵は何処じゃい!? 黄:血の匂いだけで豹変するとは、実に虎らしくもあるんだよぉ。 【単騎の限界】 朱:だ、黙って見ていて良いんですか〜? 黄:たしかに、家を壊されるのは拙いんだよぉ。 朱:ろ、論点はそこなんですか〜? 黄:とりあえず、肉を外に放って誘き出すとするんだよぉ。 フ:グヌァ!? 敵はこっちかぁ! 朱:ほ、本当に出ていっちゃいました〜。 黄:獣を操るには、その習性を利用するのが一番ということなんだよぉ。 【野次馬百選】 麒:何だ、ここはいつ来ても騒がしいな。 フ:グルァ!? 黄:敵はあいつなんだよぉ。 フ:グヌ? 月:本当に、実践した。 朱:プライドの欠片もありませんね〜。 黄:外野がうるさいのは、覇者たる者の宿命というものなんだよぉ。 【心ウキウキ】 麒:猪突だけが取り得の獣に、私が一太刀でも浴びせられると――。 朱:か、格好を付けて片手で止めようとしたら、庭の外まで吹き飛ばされました〜。 黄:ざまぁみろとは、まさにこのことなんだよぉ。 月:ここまで私怨を全開にする者が覇者とは、底が知れる。 黄:そんな批判も届かないくらい気分が良いから、全てを許すんだよぉ。 【たまには一句】 麒:ちぃ、油断した。 黄:いつから、油断出来る程、偉くなったんだよぉ。 月:風上に立つと、この威勢。 フ:ブルァァ。まだだ。まだ足りんぞぉ! 黄:かの駿馬の極みを屠ることは、血の滾りに彩りを添えるんだよぉ。 月:口先を、操る王者は、魔獣かな。 【同族の匂いが】 麒:亜細亜最強聖獣の暴を、その身に刻んでいけっ! フ:グヌァ! 朱:な、何か不穏当な発言がありましたよ〜? 黄:ここで潰し合ってしまえば、そんな戯言は灰燼と化すんだよぉ。 月:こういう自分大好きな人、割と好き。 【結果論万歳】 麒:ふっ、良い拳だったぞ。 フ:ヌウゥ。お前もな。 朱:あ、熱い友情が芽生えちゃいましたけど〜。 黄:これは計算違いだったんだよぉ。 月:策練れど、所詮獣の、浅知恵か。 【プライドボロボロ】 白:これがあるから、あんま近付きたくないんだよね〜。 黄:そういうことは、先に言うんだよぉ。 白:いや、一度くらい、傍からお父さんの所業を分析するのもありかなって。 黄:さりげに、研究材料にされるとは不覚なんだよぉ。 【豆知識終了】 フ:はっ。私は、何故外に居るのでしょうか。 黄:正気に戻ったんだよぉ。 麒:こいつ、本当に同一人物か? 黄:麒麟だって、眼鏡を外せば別人の様な面立ちなんだから、 気にすることは無いんだよぉ。 麒:貴様は、余計なことを抜かすな! 【別人扱いで】 フ:ふぅむ。この大地に残る窪みは、相当の負荷が掛かった証拠ですね。 麒:本気で言ってるのか? 黄:これは、天然という枠には収まらないんだよぉ。 朱:ふに? 黄:単純に、ジキルとハイドと評するのが良い感じではあるんだよぉ。 【またも操縦系か】 黄:これの奥さんになるなんて、どんな人だと言うんだよぉ。 白:うーん、一言で言うと――軍師? 窮:あ、ぴったりかも。 黄:何となく、理解した気がしないでも無いんだよぉ。 【見事なオウンゴール】 櫛:世の中には、アンバランスな夫婦が存外、多いものですわね。 黄:ギャグにしか聞こえないんだよぉ。 朱:類は友を呼ぶんですね〜。 黄:成程、朱雀が全てを引き寄せているとすれば、全ての辻褄が合うんだよぉ。 朱:ふ、ふに〜。 【検疫対象外につき】 フ:そういえば、妻には声を掛けずに出てきたのですが、どうしましょう。 黄:どうしましょうとは、どういうことなんだよぉ。 フ:怒ると私以上に手が付けられませんのでね。 しばらく、この国に留まってほとぼりを冷まそうかとも思います。 黄:人外の夫婦喧嘩を、国境を越えて持ち込まないで欲しいんだよぉ。 【何故か客観思考】 フ:いやぁ、この国の眺めは何処も雄大ですね。 黄:本当に棲み付いたんだよぉ。 白:まあ、自由人っぷりは、血筋ってことで。 黄:自分の口から言われると、腹が立つのはきっと仕様なんだよぉ。
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