【安楽椅子探偵並】 朱:お、黄龍さん〜。さ、最近、近所の洞窟から夜な夜な、 女の人のすすり泣く声が聞こえてくるらしいんですけど〜。 黄:ふーん、なんだよぉ。 朱:な、何でそんなに冷静なんですか〜。 黄:話を聞いただけで、犯人は一人に絞られたんだよぉ。 【超スピード時代】 月:この度は、姉が御迷惑をお掛け致しまして、真に申し訳ありませんでした。 黄:あっちでは、犯人確保の前に謝罪会見が開かれているんだよぉ。 朱:ざ、斬新な展開です〜。 【何年生きようとも】 黄:原因が分かったなら、別に検証をする必要は無いんだよぉ。 朱:ほ、放置プレイですか〜? 黄:大きな悪戯っ子をわざわざ構ってあげる程、人間は出来ていないんだよぉ。 【踊りは割愛】 月:そう言わず、行くことを提案する。 黄:随分と甘いんだよぉ。 月:入り口まで行って引き返すことを繰り返せば、堪らず出てくること受けあい。 黄:無意味な形で歴史を繰り返そうとしているんだよぉ。 【敬意無し】 黄:とりあえず現場に着いたんだよぉ。 朱:ここまで来て、とんぼ返りですか〜? 月:それも面倒になったから、燻り出そうと思う。 黄:野ウサギかムジナ辺りの扱い方なんだよぉ。 【火の粉は嫌い】 ?:俺の魂を、聞きやがれぇ!! 黄:このやかましいのは何なんだよぉ。 月:売出し中のロックバンド、宇留瀬井のボーカル、山田さん。 朱:み、耳が潰れそうです〜。 月:中は反響が加味されて、もっと凄いことになってる予感。 黄:何があろうと、この姉妹ゲンカの仲裁には入らないと誓ったんだよぉ。 【有能なのに】 朱:出てきませんね〜。 黄:気絶してるのかも知れないんだよぉ。 月:だったら、起こしてあげれば良い。 朱:何をするんですか〜? 月:百匹のドブネズミを、洞窟の奥に向けて放つ。 黄:その情熱の半分で良いから、国の繁栄に使って欲しいものなんだよぉ。 【燻製かよ】 朱:悲鳴さえ聞こえませんね〜。 黄:きっと、一度目を覚まして、又、気を失ったんだよぉ。 月:それなら今度は、桜の木を燃やして、本格的に燻す。 黄:神族は簡単に死なないと思って、やりたい放題なんだよぉ。 【シンデレラとも言う】 天:ゲホッ……ケフヘフ……な、何をするんですか!? 月:やっほー、姉さん。 天:つ、月読っ!? 月:これは又、煤も毀れる良い女。 黄:灰被りもびっくりなんだよぉ。 【平和の象徴ですよね】 月:そう言えば、あの御伽噺、最後は妹の鳩が姉の目を潰した気がする。 黄:改訂に改訂が繰り返されて、どれが本当か今一つ分からないんだよぉ。 【こじ付けに近い】 月:ついでを言えば、三匹の子豚も仲が悪い。 黄:記憶が曖昧なんだよぉ。 月:本当に仲良しなら、別々に家を建てようなんて結論には至らない。 黄:言われてみればそうなんだよぉ。 月:つまり作者は、兄弟姉妹が仲良くするのは不可能だと説いている。 黄:それは確実に解釈の相違だと思うんだよぉ。 【むしろ人間寄り】 朱:でも〜、ヘンゼルさんとグレーテルさんは仲が良いですよ〜? 月:本当のところあれは血が繋がっていなくて、 言うなれば義理の妹萌えの元祖だから例外になる。 黄:持論成立の為に必死になる様は、実に人間的で興味深いんだよぉ。 【柔軟が一番】 天:けほっ……シャ、シャワーを浴びたいです。 黄:日本神話の神様なら、禊と言うべきだと思うんだよぉ。 天:だって便利じゃないですか。蛇口を捻ればお湯が出てくるなんて。 黄:案外、伝統をやたらと固持しているのは、 極一部の人間だけなのかも知れないんだよぉ。 【経費で落ちるか】 黄:それじゃ、帰るとするんだよぉ。 月:記者会見の費用は姉さん持ちだから宜しく。 天:は、はい? 黄:自業自得である以上、弁護も擁護もしないんだよぉ。 【良い子は真似するな】 天:キャーッ!? 朱:お、お風呂場から、絹を裂くような女の人の悲鳴が聞こえました〜。 月:まあ、外に待機してガス栓を閉めるのはお約束ということで。 黄:心臓麻痺の恐れを孕んだ荒業なんだよぉ。 【バスタオルでブルブル】 天:ザ、ザ、ザ――。 朱:ザザムシって〜、一部地方で佃煮にして食べるらしいですね〜。 黄:単に、寒いと言いたいけど、噛みまくってるだけだと思うんだよぉ。 【千年以上も何してた】 黄:それで、あの洞窟で何をしていたんだよぉ。 天:私、気付いてしまったんです。 朱:ふに? 天:もしかすると日本で、私は必要とされていないのでは無いか、と。 黄:むしろ、今頃気付いた方に感動すら覚えるんだよぉ。 【訴訟も辞さない】 天:見て下さい。日本全国、私を祀る神社の多さを。 黄:良いことに聞こえるんだよぉ。 天:逆です。幾ら私が優秀でも、これだけの神社全てを、 事細かに管理することが可能だと思いますか? 黄:たしかに、難しい気がするんだよぉ。 天:これはれっきとした、名義の無断使用です。 黄:現代的に言われても、どう反応したものか分からないんだよぉ。 【それさえ微妙】 天:更に言えば、必要なのは私の名前と神体で、私自身はどうでも良いということです。 朱:む、難しい話になってきました〜。 黄:名前だけでも利用価値があるなら、まだ良いんだよぉ。 朱:ほ、本格的に落ち込まないで下さい〜。 【同意したくない】 朱:何はともあれ〜、これで天照さんも黄龍さんと同じくニート道に入門ですね〜。 天:あ、いえ。別にそういう訳では……。 黄:人に意見する時は、ちゃんと目を見るべきなんだよぉ。 【五十歩百歩とか】 黄:だからと言って、洞窟ですすり泣いているのは建設的じゃないんだよぉ。 天:黄龍さんにだけは言われたくありません。 朱:ふに。こういうの何て言いましたっけ〜? 月:ドングリの背比べ。 【しかし真実】 朱:でもその諺って〜、平凡な中での争いを言うんじゃなかったでしたっけ〜? 月:能力はともかく、人格は平均以下だから。 黄:随分と言いたい放題なんだよぉ。 【日課なので】 黄:何はともあれ、うちの近所でやるのはやめて欲しいんだよぉ。 天:はぁ……では何処で行えば良いのでしょうか。 黄:やめるという発想が無いのが凄いんだよぉ。 【崇拝分が足りない】 黄:いっそのこと、天照神社を全国行脚して行けば良いんだよぉ。 天:そんなこと、とっくの昔にやっています。 朱:ふに? 天:あろうことか、何度と無く巫女さんにスカウトされる始末です。 黄:信心も地に落ちたとは、正にこのことなんだよぉ。
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