【懐かしいやら呆れるやら】 玄:先代から、皆さん宛てにお手紙が届きました。 青:考えてみれば、生きたまま代替わりしたのは始めてのことなんですよね。 玄:『みんな元気してる〜? 私は日本の高校に編入して 第二の人生をエンジョイしてるから心配しないでね〜』 黄:それにしても、文章だけなのに相変わらずなんだよぉ。 【言うてやるな】 玄:でも楽しそうで宜しいではありませんか。毎日の様に写真を転送して来られるんですよ。 黄:何でプリクラに一人で写ってるんだよぉ。 玄:そういうものだと仰られてましたが。 青:恐らく、友達が居ないんでしょうね。 【波はもう過ぎた】 青:大体、高校はたかだか三年で卒業だというのに、その後はどうする気なのでしょう。 玄:何でも、IT企業を立ち上げて一儲けしたいそうです。 黄:何も考えてないのが透けて見えるんだよぉ。 【超絶刹那主義者】 玄:或いは、飽きるまで全国の高校を転々とするのも悪くないと。 青:やはり、何も考えていないようですね。 【きっとバグとは関係ない】 玄:『追伸。玄武のプログラムに致命的なバグを発見しちゃったから、 止まったら連絡してね〜』だそうです。 青:だそうですとは、随分と冷静ですね。 玄:はぁ? 青:もしや、薄々勘付いておられたのですか? 玄:って、大事じゃないですか!? 黄:反応が遅すぎるんだよぉ。 【他はともかく】 玄:という訳で、事の真相を確かめる為、はるばる日本までやってまいりました。 黄:何で私まで付き合わなきゃならないんだよぉ。 玄:良いではありませんか。物語の主人公になったことが極めて稀有な者同士、仲良く致しましょう。 黄:物凄く屈辱的な括りなんだよぉ。 【失われゆく伝統】 青:全く。御二方、何をのんびりしておられるのですか。 黄:あれ、青龍。どうしてここに居るんだよぉ。 青:一昔前ならいざ知らず、今は飛行機という便利なものがあります。 亀に乗ってのんびりやってくるなんて時代感覚に疎すぎますよ。 玄:ですがこれは過去の四神も用いた輸送手段で――。 青:何千年前の話ですか。 【チケットを見た】 黄:あぁ〜。青龍、ファーストクラスに乗って来てるんだよぉ。 玄:やはり、前方に座席がある分、早く到着するのでしょうか。 青:古典的な掛け合いは時間の無駄ですよ。 【あながち間違いでもないけど】 玄:さて、高校への潜入に成功致しました。 黄:台詞が説明調なんだよぉ。 玄:それに致しましても何故、皆さん同じ服を着ておられるのでしょう。 黄:制服ってそういうものなんだよぉ。 玄:日本では画一的な人間を輩出すると聞き及んでいましたが、ここまでとは思いませんでした。 黄:そして若干、勘違いしてるんだよぉ。 【たまには足も引っ張る】 青:急ぎましょう。勘付かれると厄介ですので、目立たない様に先代を――。 ?:きゃー、この子かわい〜。 ?:ねぇ、君、転校生? 名前、なんて言うの? 玄:美少年と言うのは大変ですね。 黄:前途は恐ろしく多難なんだよぉ。 【そりゃそうだ】 玄:発見しました。どうやら一年二組の様です。 黄:長生きしてる癖に、一年生なんて生意気なんだよぉ。 青:あなたにだけは言われたくないかと。 【むしろ確定】 黄:玄武、ちょっと話があるんだよぉ。 ?:へ、ほ、ら。はにゃひにゃ!? ?:何々。この人達、亜沙の知り合い? ?:何のことで御座いましょう。あっしは無頼の旅烏。玄武などとは縁も縁も御座いません。 黄:その喋り方は確実に玄武なんだよぉ。 【一人プリクラの怪】 亜:全く。私、ここでは片瀬亜沙なんだから、気を付けてよ。 青:出奔しておいてその言い草もありませんが、とりあえず一言。 亜:何? 青:それなりに友達は居られるようで安心しました。 亜:何処を心配してるのよ!? 【風水ならまだしも】 亜:ちなみに、タロット使いで通ってたりするんだけど、ついでだから占ってあげようか。 青:元とは言え、四神としてその姿勢は如何なものかと。 【言葉の綾】 玄:そんなことよりです! 私のバグとは一体何なんですか!? 亜:ふえ? ひょっとしてわざわざそれを聞きに来た訳? 玄:このままでは、気になって夜も眠れません。 黄:昼間からぐーすか寝てたんだよぉ。 【日本文化にどっぷり】 亜:あー、まあメールで知らせても良かったんだけどね。 急ごしらえで作っただけに、どうしてもミスも出るって言うか――。 玄:ですから、結局何なのですか。 亜:恋が出来無いのよ。 玄:――は? 亜:ちなみに、鯉でも、故意でも無いから。 青:口頭では分かりづらいかと。 【カラカラ黄龍】 黄:それにしても、ちょっと大袈裟なんだよぉ。 亜:黄龍は枯れてるからそう思うだけで、一大事だってば。 黄:さりげなく酷いことを言われたんだよぉ。 【核動力だったのかよ】 玄:それで私が止まると言うのは? 青:たしかに、恋が出来無いことと、機能停止には因果関係を認められませんが。 亜:何言ってるの。恋の出来無い女の子なんて、活力の九割を封じられてるみたいなものじゃない。 玄:私としてはウラン235があれば、それで充分なのですが。 【私的黒歴史】 亜:ま、とにかくそういう訳だから。 青:わざわざ渡航して、この結末は頂けないのですけど。 玄:ですがこれで今晩から良く眠れそうです。 黄:だからさっきの昼寝はなんなんだよぉ。 【むしろ本家】 玄:ところでこの国って、思ったより私の仲間が多いみたいだね。 黄:どういうことなんだよぉ。 玄:うん、ニュースでたまに見るんだけど、天下りがどうとか。 青:それはきちんと見直した方が宜しいかと。
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