【現代メイドの原点】 芽:嗚呼……暑い。 ?:夏って言うのは、そういうものよ。 芽:クーラープリーズ。 ?:十九世紀のイギリスに、そんなもの無かったから、死にゃしないわ。 芽:余りの無茶苦茶な理屈に、一瞬、思考が停止してしまった。 【物凄い荒療治】 ?:大変です! 熱中病と思しき症状で、一人、倒れました! 芽:ほーら、見ろ。ほーら、見ろ。 ?:嬉しそうに言わないの。 ?:それでメイド長。どう対処すれば良いんでしょうか? ?:そうね。とりあえずプールに放り込んで、体温が下がるのを待ちなさい。 芽:別の意味で冷たくなりそうで、とても怖い話だった。 【権力との抗争】 芽:それにしても、プールの存在を忘れていた。 ?:入るのは勝手だけど、御主人様が激写してるわよ。 芽:それはそれで、モデル気分を味わえ――。 ?:やぁ。僕の方の準備は、いつだってオールオーケーだよ。 芽:やっぱ、ムカつく。 ?:実に正しい感情だと思うわね。 【大人の団体交渉】 ?:何だ。入ってくれないのか。 ?:一応、今は勤務時間なんですけどね。 ?:何を言っているんだっ! 僕の心に癒しを与えてくれるんだから、これは立派に職務の内なんだよっ! ?:キチンと特別手当を頂けるんでしたら、皆と相談しないこともありませんけどね。 【アドリブで崩壊】 芽:メイドが天下を獲ったら、色々な人が驚くと思う。 ?:まー、殆ど出落ちだけどね。 芽:むむむ。こげんばしおったら、ワイが立たなきゃ、いかんけんのぉ。 ?:とりあえず、キャラを固定してから始めなさいね。 【だけど真実】 芽:メイドが宰相になると、三つのメリットが。 ?:はぁ? 芽:一に、献身の心を持って人に臨み。 二に、細かい気配りを忘れない。 ?:どっちもあんたには無い訳だけど。 芽:話の腰を折る人は嫌い。 【宰相と関係無い】 ?:それで、三つ目は? 芽:……マスコミが食い付いてくれる、とか。 ?:とか? 芽:綺麗なオチや締めが、思い付かなかった。 ?:突っ張りきれないなら、最初から言うべきじゃ無かったわね。 【言の葉遊び】 芽:天下獲り……。 ?:案外、固執するわね。 芽:恋歌鳥……。 ?:ん? 芽:演歌揉み……。 ?:何処まで行っても、面白い言葉には転化しないと思うわよ。 【人間視点の話】 芽:夏場の俄か雨は、打ち水代わりで実にありがたい。 ?:まだまだ、若いわね。 芽:……この、スチーム風呂にでも入ったかの様な蒸し暑さは反則。 ?:中途半端な雨は、むしろ邪魔ってことなのよ。 【打算と食欲】 芽:しかし、打ち震える木々にとっては、これ以上無い至福。 ?:あんたに、自然を愛する心なんてあったの? 芽:嗚呼。強い日差しに晒されて、何とも可哀想。 ?:物凄く嘘臭いんだけど。 芽:秋になったら、美味しい木の実を食べさせて。 ?:やっぱり、そっちの方があんたらしいわ。 【徳とは偉大だ】 芽:ふむふむ。 ?:経済新聞は、スポーツの扱い小さいわよ? 芽:ちゃんと、株価の数値をチェックしてる。 ?:乱数表代わりに使うとか? 芽:どうにも、信頼というものが欠如している気がしてならない。 【基本的に外道】 ?:あんた、個人投資家だったの? 芽:薄給の身で、そんなチャレンジャーな真似は出来ない。 ?:じゃあ、何の為に? 芽:暴落する株価を見て、泣いている人を想像するのが楽しみ。 ?:それはちょっと、楽しいかも知れないわね。 【いきなり大失敗】 芽:メガネを掛けようかと思案中。 ?:はい? あんた、視力に難があったの? 芽:度の合っていないものを掛ければ、多少のドジもお茶目で済ませ――。 ?:それを事前に聞かせて、どうしようって言うのよ。 【語呂が酷いよ】 芽:男子永遠の憧れ。ドジッ娘メガネメイド。 ?:うんうん。何という甘美な響きだ。 ?:御主人様は黙ってて下さい。 芽:うちの場合、制服のカチューシャがこれだから、 ネコミミドジッ娘メガネメイド。 ?:ここまで来ると、ごった煮過ぎて、何が何やらね。 【発言権没収】 ?:ですけど〜、ちょっとやってみたい気もしますよね〜。 ?:そう? 芽:ネコミミでゴスロリでツインテールなドジッ娘メガネメイドなんて、 狙い過ぎで、むしろ攻められる範囲が狭い。 ?:増えてるって。 ?:いや。僕は敢えてそれを受け入れるよ。 ?:御主人様は、とりあえず寝てて下さい。 【喜ばせたら負けかな】 ?:嗚呼……それにしても、何という麗しい響き。 ?:何となく、セクハラで賠償金取れそうな勢いよね。 芽:今、ここに、主従の契りを越えた骨肉の争いが。 ?:それはそれで、僕の中では守備範囲だよ。 ?:一気に、どーでも良くなったわね。 【悪戯仔猫ちゃん】 芽:そうだ。メイド教を起こそう。 ?:信者になると、どんなメリットが? 芽:男女問わず、メイド服を着て、『お掃除お掃除』と唱えるだけで、心と没後の安寧が。 ?:へー、それは凄そうね。 芽:……ちゃんと窘めてくれないと、悲しい。 ?:あんた、攻撃型なのか、受動型なのか、時たま分からなくなるわよね。 【勢いの申し子】 芽:でも実際、教祖になればゴロゴロしてるだけで酒池肉林。 ?:若干、本来の趣旨からは外れてる気もするんだけど。 芽:まあ、肉も酒も苦手だから、別に欲しくは無いんだけど。 ?:だったら、初めから言わなければ良いと思うのは私だけ? 【そっと嘆息】 ?:別に、出てくって言うなら止めやしないけど。 芽:もちろん、ここの職を維持したまま、開業予定。 ?:良くもそんな、虫の良い発想が出来るわね。 芽:その図太さだけで、生き抜いてきたと自負してる。 ?:自覚がある人って、無い人よりよっぽとタチが悪いのよねぇ。 【予言は的中】 ?:お掃除お掃除〜♪ ?:お掃除お掃除です〜♪ ?:流行りだした!? 芽:ふっふっふ。全ては私のカリスマの成せる技。 ?:皆、目新しい物が好きなだけだから、三日後には沈静してるでしょうけどね。 【勤続一年程で】 芽:メイド道を究めたところで、台風には勝てない。 ?:あら。存外、そうでも無いわよ。 芽:またまた。御冗談を。 ?:そりゃ、表向きは気圧のせいってことで処理してあるけど、 軌道を逸らすくらいなら何とかなるわよ。 芽:今、初めて、メイドという職業に興味を持った。 【白河法皇的解説】 ?:メイドにどうしようも無いことと言えば、賽の目くらいね。 芽:流石に、それは無理。 ?:そりゃ、技巧で好きな数字を出すことは出来るにしても、 純粋に確率の世界はどうしようもないって例えね。 芽:益々奥深い、メイドの世界。 【糸屑程度の絆】 ?:御主人様がマグロを食べたいと言えば、漁船に乗り込み――。 芽:……。 ?:またある時は、冬にスイカ割りがしたいと言えば、寒風の中、水着にだってなる。 それが、ザ・メイド道。 芽:何とも、パワフルな話。 ?:ま、今の御主人様相手じゃ、そこまでする気にはならないけどね。 【絶望の巫女】 芽:メイド道の何たるかを、少し分かった。 ?:本当に? 芽:幾ら忠義を尽くそうと、薄給の身に代わりは無い。 ?:事実にしても、そう身も蓋も無いと遣る瀬無い訳で。
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