邂逅輪廻



【ズバッと正論】
芽:嗚呼……低血圧に朝は辛い。
?:あんたは、年中しんどそうな顔してるでしょうが。
?:そもそも〜、低血圧と朝の立ち上がりは関係無いですよ〜。
芽:訂正。慢性倦怠症候群に、仕事は辛い。
?:あんたのそれは、只の怠け癖って言うのよ。


【家庭医兼任中】
芽:診断もしないで、何で、そう言い切れる。
?:生憎だけど、私は正規の医師免許を持ってるし、
 そっち系統の仕事に従事したこともあるのよ。
芽:むしろ、過去に何があって今があるのかが気になって仕方無い。


【生理的に無理】
芽:ここまで科学が発達したんだから、実用化すべき技術がたくさんあるはず。
?:どういうこと?
芽:例えば、バイオテクノロジーで妖怪、垢舐めを生み出して、風呂掃除を委託――。
?:オッサンが舐めた風呂桶に、今時入りたい人が居るとも思えないけどねー。


【もっと根源的な問題】
芽:妖怪、小豆洗いを生み出して、米研ぎを依頼。
?:無洗米って、実に便利よね。
芽:お岩さんを何とかして、皿洗いを――。
?:食器洗い機を買えば、電気代だけで良い仕事するわよ。
芽:やれやれ。妖怪が住み難い時代になったもの。
?:多分、そういう理由で減った訳じゃないと思うけどね。


【新時代のネゴシエーター】
芽:発想の転換をしてみようと思う。
?:何の話?
芽:こう、害虫の類やカビ辺りと団体交渉して、
 庭の片隅に住む場所を与える代わりに家の中での行動を禁止――。
?:先ず、言語を解する者の調達から始めて頂戴ね。


【とてつもなく類似】
芽:良いアイディアだと思ったのに。
?:ちなみにあんた、蟲毒って知ってる?
芽:毒を持った生物を、狭い密閉空間に閉じ込めて殺し合わせることで、
 最後の一匹を怨念の力で妖怪にする呪術のこと。
?:それを知っていて、何でそんな発想を出来るのかが不思議だわ。


【そちらは見て見ぬ振り】
?:『御覧の通り、与党議席数が野党のそれを大きく下回り、大惨敗の様相を――』
芽:うーむ。これは政局になる。
?:あんた、何やってんのよ。
芽:この国に生きる者として、選挙の行末を見守るのは当然のこと。
?:あんたには、もっと他に見るべきものが幾らでもあるでしょうが。


【政治家並の聞き流し】
?:メイドに、政治は関係無い。
芽:それは、偏見というもの。
?:じゃあ言い直すわ。政治は、今日を一生懸命に生きた人だけの味方であるべきなのよ。
芽:あー、あー。何も聞こえない。


【愛が時々重い】
芽:料理の基本は、愛情と愛憎。
?:若干、聞き流しちゃいけないものが混じった気がするんだけど。
芽:さて。このシュークリームには、一つだけ和辛子がたっぷりと――。
?:世間はそれを、罰ゲームって言うんだけどね。


【時間差に泣いた】
芽:ぐが。よもやの自爆。
?:因果応報って、まさにこのことね。
芽:だけど、この辛味とシュー皮のバランスは中々――。
?:意外と、B級グルメだったり?
芽:水、水。今すぐ、水。
?:やっぱり、気のせいだったみたいね。


【知られざる裏事情】
?:う〜ん。マンダム。
芽:御主人様は、いつ見ても変な人。
?:それは皆、思ってることだから。
?:ハハハ。面と向かって、そういうことが言える君達が大好きだよ。
?:ええ。こんな御主人様に仕えるのは私達だけですから、首の心配も要りませんし。
芽:何とも、駄目過ぎる相互依存にビックリ。


【むしろ胃が痛く】
芽:とりあえず、職の心配をしないで良いみたいで安心。
?:あんたは、いつだって戦力外ギリギリに居ることを忘れないで。
?:おいおい。もう少し人手が必要だって言ったのは君だよ。
?:こんなのが来ると分かってたら、そんなお願いしてません。
芽:うにゃー。


【究極のプロフェッショナル】
?:ふぅ。夏は洗濯物が乾いて良いわよね。
芽:これだけの家で、今時、乾燥機が無いのも不思議。
?:御主人様が日干し派だから仕方無いでしょ。
芽:正しくは、下着の山がたなびく姿が好きってことらしい。
?:私の分だけは、部屋で干してるから問題無いわ。
芽:この狡猾さに関しては、唯々、感心せざるを得ない。


【いきなり青春編】
芽:とりあえず、私の分を返して欲しい。
?:あんた、胸に着ける必要なんてあったの?
芽:何という侮辱。
?:あー、この、限りなく立体構造に欠けるコレね。
芽:今が夕日だったら、泣きながら、全力疾走してるところ。


【動物愛護に酷似】
芽:今日も皿洗い。明日も皿洗い。
?:まあ、メイドなんだから当然よね。
芽:時たま思う。皿の方は、洗われることに、本当に満足しているのか、と。
?:妙ちくりんな人道論を持ち出して、サボる口実を作らないでね。


【単にサボりたい】
芽:皿に、洗われることを選択する権利は無いと言うの。
?:少なくても、生きていないものには無いと言わざるを得ないわね。
芽:この大地。この空気。そして、この母なる地球が育んだものに貴賎を付ける行為を、
 私は、絶対に見逃す訳にはいかない。
?:何があんたをそこまで熱血させてるのか、ちょっと気になって来たわね。


【やはり政治家並】
芽:気だるい午後は、木陰で一休み。
?:だから、あんたに気だるくない時間帯は無いでしょ。
芽:きっと、私の半身が、妖精の世界でのんびりしてるからなんだと思う。
?:そして、人の話を聞き流す能力は、尊敬せざるを得ない領域ね。


【回路に偏りが】
芽:嗚呼……このままでは、残った半分も妖精界へ行ってしまいそう。
?:いっそ、帰って来なければ、頭痛の種が無くなるんだけど。
芽:ところで、妖精界と言うと、微妙にゲームっぽい。
?:そういう思考力は、思いっきり元気なのは不思議でしょうがないのよね。


【それは永遠の謎】
芽:さて、ここで問題です。
?:生憎、クイズはそんなに好きじゃないの。
芽:そんなこと言わないで、聞いて、お願い、プリーズ。
?:そこまでプライドをさっくり捨て切れるあんたは、一体、何なのよ。


【むしろ憐れみが】
?:んで。問題って?
芽:三平方の定理は、別名、ピタゴラスの定理とも言う。
?:はぁ?
芽:これがブタゴラスという名前であったら、
 本当にこの名で呼ばれたのかが、気になって夜も眠れない。
?:余りにどうしようもなさ過ぎて、掛ける言葉も見当たらないわよ。


【非日常最強説】
芽:パンを焼く為に、かまどを製作してみた。
?:何でこういう労力だけは惜しまないのかと、常々、疑問に思うのよね。
芽:学生時代、学園祭になると燃える人が居たのに似てると思う。
?:自分で言ってれば、実に世話無いと思う訳よ。


【口がカサカサに】
?:そんで、パンは焼けたの?
芽:そのことに関しまして、一つ御報告が。
?:はぁ?
芽:イースト菌の存在を忘れていた為、
 大量の擬似クラッカーが生産されて悲惨なことに――。
?:食べ物を無駄にしないよう、自分で消化なさいね。


【譲れない拘り】
芽:この前、レンタル店でカードを作った。
?:はい?
芽:職業欄に、『メード』と書いたら、小一時間、
 『メイド』であると説教されたんだけど、どうすれば。
?:その店に、二度と行かなければ良いんじゃない?


【殆ど最下層】
?:たしかに、英語の発音的にはメイドの方が近いけどね。
芽:そんなもの、分かれば問題無い。
?:あれじゃない。単に、リアルメイドと語りあいたかっただけとか。
芽:やれやれ。この国のコミュニケーション能力は、低下の一途を辿っている。
?:あんただけは、それを発言する権利が無いけどね。




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