邂逅輪廻



【適性皆無】
?:芽依! あんたまた掃除サボったでしょ!
芽:掃除しようとしまいと、また汚れるんだから同じこと。
?:あんたって子は――メイドの意味、ちゃんと分かってる訳!?
芽:メイド(名)。1.家政婦。家事代行を生業とする女性。
 2.特定の人が過度に反応する属性――。
?:ああ、もう良いから! 晩御飯の用意でも手伝ってきなさい!!
芽:人間、その気になれば冷麦だけで生きていける。
?:んな訳無いでしょ!


【詭弁全開】
芽:益虫と害虫を区分するのはエゴだと思う。
?:はぁ。
芽:所詮は、人の偏った視点で一方的に押し付けたもの。
 生態系の中では、一つが増え、やがて疎まれ、また数を減らすのを繰り返すだけ。
?:いーから、蜂の駆除を手伝いなさい。


【世渡り上手】
?:す、すいません。隠れて猫に餌なんてあげて。
?:まあ、気持ちは分からなくないけどね。でも、無駄に餌をあげると殖えるし、
 私達はここに住まわせて貰ってるってことを忘れちゃダメよ。
  とりあえずこの子については、今度時間を見て、里親を探しましょうね。
?:だけど思ったんですけどー。私達って大きな猫を飼ってるみたいなものですよねー。
芽:にゃー。
?:言わないで。極力、思い出さないようにしてるんだから。


【むしろ家政婦の役目】
芽:メイドという職業に就いた以上、経験してみたいことがある。
?:ふう。この朝方の忙しい時間帯に、下らないこと言い出したら只じゃおかないわよ。
芽:例えば、大物議員の収賄とか、おしどり夫婦の不倫現場とか覗き見たい。
?:仕事しなさい、この三流メイド!!


【堕落の女帝】
芽:お風呂に入らなくても死にはしない。
?:ふーん。
芽:剪定するのは、木が可哀相。
?:へー。
芽:綺麗な花より、雑草が好き。
?:そうなのー。
芽:今日もたくさん働いた。
?:本気で言ってるなら、燃し殺すわよ。


【ネズミ駆除もしない】
芽:動物は、相対でしかモノを知覚出来無い。
?:ふむふむ。
芽:冷水に浸かった後の外気は暖かいし、お湯の後なら涼しい。
?:ほうほう。
芽:だから、私が怠惰なんじゃなくて、実はみんなが勤勉なだけ。
?:言いたいことはそれだけ? この癒し無し猫モドキ。


【家主登場】
芽:ご主人様。
?:この言葉に心動かされるものがある僕は、もう人としてダメなんだろうか。


【背景苛め】
芽:十把一絡げという言葉がある。
?:何だか、早くもオチが読めた気がするんだけど。
芽:意味合い的には、有象無象とほぼ同義。その他大勢と置き換えても良い。
?:それで、詰まるところ何が言いたい訳?
芽:働き者の名無しメイドより、私の方が、価値がある。
?:悔しいけど、言い返せない自分が憎い。


【遊びが必要】
芽:働きアリの三割は仕事をサボり、又、働く七割を集めても、その内の三割は結局サボる。
?:働かない三割を集めても、七割は働くっていうのも聞いたことあるわね。
芽:だから私が怠惰なのも、必要悪。
?:自己弁明もそのくらいにしないと、殴るわよ。


【もちろんわざと】
芽:メイドの基本は、奉仕の精神。
?:あんたが言うと、底が無いくらいムカつくんだけど。
芽:その為に、実践してることが幾つかある。
?:はぁ?
芽:例えば、紙切れに備えて、トイレの前に立ち尽くしたり。
?:……。
芽:御主人様好みのゲームを先に予約しておいてあげたり。
?:完全無欠なまでに、嫌がらせな訳だけど。


【安いプライド】
芽:つまみ食いはメイドの特権。
?:さりげなく言ってるつもりだろうけど、もちろんダメだから。
芽:だったら、せめて残り物だけでも。
?:あーもう、はしたない。あんたには人間としてのプライドは無い訳!?
芽:にゃー。


【頭の体操】
芽:砂糖と塩を間違えた。
?:何と古典的なミステイク――じゃなくて、あんた、なんばしょっとね。
芽:でも、特に問題は起こりませんでした。何故でしょう。
?:なんでこんな知能テストみたいなこと――そうね。ラベルも貼り間違えて相殺されたから。
芽:はずれ。正解は、砂糖と塩、同量を使う料理だったから。
?:あー、成程。って、そんな綺麗なオチで良い訳?


【結局、醒めるまで小一時間】
芽:またたびを食べてしまった。
?:何が一体、どういう経緯でそうなったのか、物凄く興味あるんだけど。
芽:酔っ払って、仕事にならない。
?:あんたは、普段でも役に立たないでしょ。ま、良いわ。
 今はそんな忙しくないし、適当な場所で寝てなさい。
芽:ところが、困ったことに。
?:ん?
芽:昂揚して、自制が効かない。
?:って、私にジャレつかないの!
?:……(ドキドキ)。
?:はい、そこ。顔を赤らめてこっちを見ないこと。


【心底、悔しそう】
芽:御主人様と、誰か適当なメイドがくっついたら面白いと思う。
?:そりゃ、今は身分違いの恋なんて時代じゃないからありと言えばありだけど。
芽:そして、愛を育む二人。その光景を覗き込んだ姑が一言。
?:『この、泥棒猫』。
芽:私の台詞。




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