【政党の復習とプラスアルファー】 岬:さて先輩。ここで政党とは何か、もう一度説明してみて下さい。 公:うっ、忘れた頃に出題するとは……貴様、名うての家庭教師か! 岬:御託はさておき、どうぞ。 公:え、えーと、元来は思想信条が同じ政治家同士の連合だけど、 現実的には数を集める集団になっている、と。 岬:そうですね。メモリが二十世紀のパソコン並と言われる先輩にしては、 上等な回答です。 公:凄い侮蔑を受けた気がしないでもない。 岬:では、そもそも法的に政党とは何なんでしょうか。 公:ん? 法的だと? 岬:後で詳しく解説をしますが、政党は国庫から助成金を受け取ったり、 数々の優遇措置を受けることが出来ます。 仮に私達が適当な大人を何人か集めて新政党を宣言すれば、 それだけでお金が貰えたりするんでしょうか? 公:いや、そんなこと認めてたら、キリが無いだろ。 岬:ですから、正式な政党を法律で定める必要がある訳です。 日本ですと、公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法に依って、 『衆議院、又は参議院に五人以上の国会議員を有するか、 或いは近い国政選挙で2%以上の得票を得た団体』と定義されています。 ちなみに2%の方は、選挙区、比例、どちらでもオーケーです。 公:うぅむ。つまりこれに当て嵌まらない連中は虚仮…… みんな、みーんな似非ということだな! 岬:そこまで言うのも底意地が悪いですけど、そう解釈も出来ますね。 ちなみに、2008年12月時点で、日本には8つの政党が認められています。 自由民主党、公明党、民主党、日本共産党、社会民主党、国民新党、 改革クラブ、新党日本ですね。 新党日本は議席が足りませんけど、比例で2%以上の票を獲得しているので、 政党としてギリギリ機能しています。 公:大丈夫! 世の中にはこれ以下の自称政党が幾らでも――うぉ! 岬:危険な発言をし掛けた先輩は、拳で口を封じるとしまして。 あと、今更と言えば今更なんですが、考えてみれば触れてない話があります。 与党と、野党についてです。 公:ふぎょるほほ、はべらちおんでたんだ? 岬:既に日本の言語体系からは掛け離れた先輩は捨て置きましょう。 まあ、大した話ではなく、行政を担当する多数派の政党、或いは連合政党を、 政府に与する党という意味で与党と呼ぶ訳です。ちなみに「よとう」と読みます。 対して、その他の在野政党を、纏めて野党と呼びます。 読み方は、「やとう」です。 尚、民主党の岡田元代表は、 「政権準備党」という名称を考案したらしいんですけど、余り定着しませんでしたね。 公:分かりやすいけど、ちょっと説明的過ぎるからかね。 野党で充分、格好良いと思うが。 野に潜み、虎視眈々と天下を伺う伊達政宗っぽくて。 岬:その辺りについては主観に任せるとしまして、 この項目では政党について学んでいきますね。 今項目の纏め:政党とは、法律上は五つ以上の議席を持つか、2%以上の票を得た団体のこと。政権に携わる政党を与党、その他を野党と呼ぶ。 【地味に謎だよ幹事長】 公:さて、岬ちゃん。 岬:何でしょうか、公康ちゃん。 公:いやいや、何でいきなり、ちゃん付けなのよさ。 岬:面白いかなと思いまして。 公:せめて……せめて、さん付けで。旦那気分を味わいたい……! 岬:それは、先輩しか得しないので却下します。 公:ところで、話としては全く関係無いんだが――。 岬:いつもの流れなので、何の問題もありません。 公:いやさ、すげー基本的なことなのかも知れないんだが、幹事長って何なんだ? 岬:では、先ず政党の基本体系について考えてみましょう。 各党で、一番偉い方はどなたでしょうか。 公:えっと、総裁とか、代表とか呼ばれてる奴らかな。 岬:そうですね。党に依って名称が変わりますが、纏めると党首と称されます。 ですが当然、党首は多忙です。何と言っても党の顔ですし、露出が多いです。 更に、与党第一党党首である場合、ほぼ内閣総理大臣に選出されます。 そこで党内の実務部分を補佐するのが、幹事長という役割です。 絶対ではありませんけど、事実上のナンバーツーであることが多いです。 公:内閣の官房長官に似てるな。 岬:ポジション的には、近いかも知れません。 向いてる方向は、政党内に各省庁と、大分違いますけど。 公:しかし党内調整って……具体的には何をするんだ? 岬:最大の役割は、選挙対策です。 公:今、目がキラリンってしなかった? 岬:選挙参謀には、良くあることです。 公:認めた! 今、この人、認めたぞ! 岬:それはさて置きまして、幹事長には各選挙区の候補を選定する、 公認権が認められていることが多く、選挙の最高責任者であることが多いです。 その為、大きな選挙で大敗すると、引責という形で辞任することもあります。 公:権限を持つ者は、責任も大きいという、極々自然な話だなぁ。 岬:ですが、考えてみて下さい。公認権を持つということがどれだけ大きなことか。 基本的に、政党所属議員は、大半が政党の支援無しには当選出来ないんです。 更に幹事長は財政管理も担っている方が多いです。 その気になれば宥めすかして、手玉に取るのもチョロいもんなんですよ……。 公:黒い、黒い! 軌道修正をしなさい! 岬:又、ナンバーツーのポストの訳ですから、マスコミへの露出も自然と多くなります。 余りに悪人顔だと、党のイメージが悪くなるかも知れませんね。 公:それに関しては、敢えてノーコメントで。 岬:兎にも角にも、幹事の長の名は伊達ではなく、 政党内でかなりの実力者であるという認識をしておいて下さいね。 今項目の纏め:幹事長とは、基本的には、党首に次ぐ二番手の実力の持ち主。その最大の仕事は、選挙対策である。 【汚職防止に銭寄越せ】 岬:ところで先輩は、政治家と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。 公:ひょひょひょ、儂はこの黄金色の菓子に目が無くてのぉ。 岬:幼少の頃、汚職事件と御食事券を勘違いするのは御約束ですよね。 公:何の話だっけか。 岬:現実的な問題として、政治家には権限が多分に認められています。 そして、それに付いてくる旨味を吸おうと、 けしからん輩が蟻の様に群がってくるのも事実という話です。 公:清廉潔白は、夢物語……! 岬:何故、この様なことになるかと言えば、 一因として日本の政治はお金が掛かりすぎるというのがあります。 事務所を借りるのはもちろん、秘書の給与もあります。 選挙ともなれば、それこそ羽が生えたように飛んでいきます。 厳密には違法なんですが、ボランティアに仕出し弁当くらいは出すのが通例ですし、 更に突っ込んだ方となりますと、票を現金で買う方も居ます。 衆議院小選挙区に立候補しようと思ったら少なく見積もって数千万円が必要で、 当然、国会議員の正規給与、歳費だけでは賄えません。 公:やはり、貧乏人は政治をするな、と? 岬:何だかんだ言って、お金が無いよりはあった方が有利です。 公:そこは否定しておこうよ、大望ある若者として。 岬:自分の懐が厳しければ、他人に出させるというのも手です。 公:何という寄生虫精神。 岬:一般に、政治献金と呼ばれるものです。 政治家個人への献金は違法行為になるので、 政党、或いは関連する政治資金団体へ渡すのが基本です。 法人が出す場合は企業献金、一個人が出す場合は個人献金と呼びます。 建前上、個人の政治団体への企業献金は法整備に影響するとの理由で禁止されており、 又、上限が定められているなどの規制も多くあります。 公:だけど、何の見返りも無くて金をくれる奴なんてそうそう居ないよな。 岬:企業の方も、格安経費で行われるパーティ券を買い取るなどの抜け道もありますしね。 結局、政治に掛かるお金を減らす方が合理的なんですが、 そちらは改善される気配すらありません。 公:所詮、世の中、金塗れ……! 岬:そんな不正な金の流れを緩和する目的で制定されたのが政党助成法です。 年間に国民一人当たり250円を枠として、 国庫、つまり税金から政党へお金が渡されます。 公:ん? 岬:これは国勢調査での人口準拠ですので、現在は2005年のデータが基になっています。 その総額は、おおよそ320億円です。 公:……税金泥棒? 岬:そういう解釈も一部でなされています。 参政権の無い外国人や私達未成年も助成金を負担していることになりますし、 そもそも支持していない政党へお金が流れるのは理不尽という解釈もあります。 現在、日本共産党が唯一、政党交付金は違憲であるとして受取りを拒否しています。 公:随分と気骨のある話で。俺なら、貰えるもんは何でも貰うが。 岬:唯、共産党のケースですと、割り当て分が他政党に流れる為、 結局、交付金の総額は変わって無いんですけどね。 公:ダメじゃん! 岬:この、全く融通が利かないところが、良くも悪くも日本共産党の特徴なんですよ。 今項目の纏め:政治はとにかく金が掛かる。それに纏わる汚職を防ぐという建前で、政党には政党交付金が税金から支払われている。 【金さえ貰えば何でもありよ】 岬:思ったよりボリュームがあって、一回では終わらなかった為、 今回も政党交付金についてです。 公:流石は、無計画に定評がある執筆者。 岬:さて、この政党助成法が適用され、交付金を受け取ることが出来る条件は、 先に述べた政党の定義に当て嵌まる通り、五議席以上を持っているか、 近い国政選挙で2%以上の得票を得ていることです。 但し2%があったとしても、 一人も国会議員が居ない政党は受け取ることが出来ません。 公:理屈は、分からんでもない。 ってか、最初から気にはなってたんだが、何で2%なんだ? 何か根拠があるのか? 岬:これはこの法律が制定された当時、民社党と統一会派を形成していたスポーツ平和党が、 議席は少ないものの2%の票を獲得していましてですね――。 公:オーケー、皆まで言うな。概ね、把握した。 岬:良くある話です。 公:ああ、良くある話だ。 岬:では、この政党交付金。どの様に分配されるかと言うと、 大きい政党ほどたくさん貰えると思って構いません。 公:まあ、無難な話だよな。 岬:ところが過去には、『議席数で貰える交付金が違うのは不平等だ』と主張した、 新党護憲リベラルという政党があってですね――。 公:何だ、その、徒競走で順位を付けるのは不平等とか言い出す、 昨今のPTAみたいな論理。 岬:五議席ギリギリのところと、三百議席を持つ大きな政党が同額貰えるなら、 先ず間違いなく、貰える時期だけ六十政党に分割しますよね。 公:それはそれでアホらしい話だが。 岬:実際、政党助成金が貰える五人の議員というのが、 新党立ち上げの一つのラインとなっています。 最近では、民主党並びに無所属の議員で改革クラブを発足しようと五人を集めましたが、 直前で姫井由美子議員が参加を取り止め、四人だけの政治団体としてスタートしました。 その一月後、衆議院無所属の西村眞悟議員が加わり、 今は正式な政党として認められています。近々、交付金も支給されるはずです。 公:そいつら、本当に政策信条、近いんだろうな。 岬:その件に関しましては、ノーコメントで。 ちなみに元民主党の二名が比例選出で、民主党以外で議員をやっているのは、 筋違いだという批判が出ている件もテーマから逸れるので敢えてコメントしません。 公:何だかもう、訳分からん。 岬:ちょっと前になりますが、2005年、いわゆる郵政選挙の際、 国民新党は六人の国会議員を有していました。 そして、郵政民営化反対という立場では近い方向性を持つ日本新党は四人しか居なく、 政党として認められませんでした。 そこで国民新党は長谷川憲正参議院議員を日本新党に期間限定で貸し出し、 五人のラインをクリアしました。 公:それは流石に酷いと思います。 岬:そもそも、五人という枠があるから、こういうことも起こり得る訳です。 究極的には、政党助成金の存在意義そのものから議論して、 どの様な形態が一番かを国民が考えるべきでしょうね。 今項目の纏め:政党交付金は、国会議員が五人以上所属しているか、近い選挙で2%以上の票を得ていれば貰うことが出来る。その為、器の小さい切り貼りも密やかに行われていたりもする。 【一匹狼!? 無所属議員の苦悩とは】 岬:さて、政党の話ばかりしてきましたが、世間には特定の政党に所属せず、 単独に近い形で政治活動を行う議員も少なからず居ます。 いわゆる、無所属議員です。 公:何て言うか、男の理想形だよな。誰にも媚びず、一人で政治の道を突き進む。 浪漫は溢れ、星は煌くかの様だよ。 岬:まあ、要は野党の一議員で、法案の提出も出来なければ、 政党助成金を受け取ることも出来ません。 比例区での出馬も出来なければ、資金や団体の援助も少なく、 現実的に厳しい壁が厳然と立ち塞がります。 公:この、サディスティックガールめ! 岬:そんな何かと苦労することの多い無所属議員ですが、 逆に党則に縛られることが無いので、国会議員の権限を存分に使って、 一議員としては最大限の活動をすることが出来るという解釈も出来ます。 公:そう、そういう話を聞きたかったんだよ。 岬:ですがその為には、現在の小選挙区を勝ち抜き、 与野党の公認候補を打ち破るだけの人気を持ち合わせていないといけません。 公:上げて落とすのは基本だね! 岬:この無所属議員ですが、成り立ちを幾つか考えると、最初から無所属の方や、 巨大政党、要は自民党や民主党から公認を受けられなかったり、 或いは除名されたりされて、やむを得ず無所属で立候補するパターンがあります。 この後、数ヶ月から数年のスパンを空けて復党する方も少なからず居ます。 他にも、政党を移動する間繋ぎとして、禊的な意味で無所属になる方も居れば、 単に選挙戦術として無所属を選択する方も居ます。 公:プッシュした俺がバカみたいじゃないか。 岬:真面目な話をしますと、政党政治が主体の国会に於いて、 無所属議員そのものはさしたる意味を持ちません。 公:ぶっちゃけましたね、岬さん。 岬:とはいえ、そこは国会議員です。 マスコミを通すなり、直接地元なりで政策アピールをすることは出来ますし、 委員会や本会議場で発言権を認められています。 特定の政策に関して、超党派で連合を組んだりも出来ますから、 全く存在意義が無いかと言われると、そこまででもありません。 公:そのフォロー自体が虚しく聞こえるんだが。 岬:私も大変なんですよ。 中立の立場で考えて、調べれば調べるほど、 無所属の一国会議員が出来ることなんてタカが知れてましてね――。 公:何か居酒屋の愚痴みたいになってるぞ。行ったこと無いけど。 岬:まあ、あなたの選挙区に無所属議員が立候補していて、 既存の政党に信頼が置けない場合、票を入れるのもありかも知れませんね。 公:酷い、ヤケッパチの様な締めでした。 今項目の纏め:無所属議員とは、基本的には特別な政党や団体に所属していない議員のこと。自由度は高いが、権限は弱く、吼える声だけは威勢が良いといったレベルとも言える。 【いつでも大事!? 派閥泥沼抗争編!】 岬:政治の世界で派閥と言いますと、 概ね、同一政党内で近い政策を持つグループのことを指し、 ○○派や、××グループといった呼称で呼ばれる存在です。 公:はい、ちょっと待った。 岬:何でしょうか。 公:いや、俺も大体は分かってるんだが、敢えて言わせろ。 政党ってのは、元々、政策が近い奴らが集まってるはずなのに、 何で更に細かくする必要があるんだ。 岬:何だか、ヤラセの様に御約束の質問ですが、 問われたからにはお答えしましょう。 先ず一因として、如何に政策が近いと言っても、他人である以上、 微妙に目指す方向が違います。 百人単位の政党であれば、多少、近かろうが、 端と端ではかなりの隔たりが出てしまうのも当然のことで、 細分化も一つの手という解釈になります。 そして最大の要因ですが――先輩も気が付いている通り、 只の数集め集団なんですから、元々、考えが纏まる訳が無いということです。 公:ああ、やっぱそういうことか……。 岬:考えように依っては、大きい政党は元々、 連立政党であるという解釈をした方が手っ取り早いかも知れませんね。 前項目で触れた通り、無所属議員には力はありません。 同様に、例え衆議院で30議席を持っている政党でも、 それだけでは予算無しの法案提出能力しか持たず、可決させる力がありません。 過半数を得る為に必死に寄せ集まる群体の様な一面があるとも言えます。 童話で言うと、スイミーが目になる物語みたいな感じです。 公:その例えが的確なのかどうかはさておくとして。 岬:戦後、日本政府を主として担ってきたのは自民党ですが、 当然、幾つかの派閥で成り立っています。 この制度は、自民党という単一の組織に様々な価値観を持たせ、 幅広い政策を実行出来るというメリットがあります。 同時に、政党内での数の論理で方向性が決まり、 国民の方向を見ずに閣僚や政策を決定してしまいがちなデメリットもあります。 自民党の場合、これまで総裁がほぼ総理になれた訳ですから、 派閥同士が対立すると、しこりが残ってギクシャクしたりもします。 党を追われた敗残兵の一部が、民主党や国民新党に居たりする訳ですけど。 公:せめて雌伏しながら機を伺う家康タイプって言ってあげて! 岬:それは今後の活躍次第なので敢えて触れません。 何にしましても、『派閥』という単語だけ聞くと、 旧態依然の古臭い政治をイメージしてしまいがちです。 ですが元来は、政党内政党とでも言うべき、政策グループの分類に過ぎないんです。 公:言葉だけでイメージを決めて、その奥にある意味を見極めない、 昨今の風潮へのやんわりとした皮肉も含めている訳だな! 岬:尤も、現実にこんな奇麗事で政治が動けば、誰も苦労はしないんですけどね。 公:だから、何でわざわざ俺の言うことに噛み付くんだ! 今項目の纏め:派閥とは、政党内に存在する小〜中人数の政策グループ。純粋に政策のみを論議するなら良いのだが、現実はやっぱり、数の論理での切り貼りが横行している。
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