邂逅輪廻



【選挙選挙と言いますが】
岬:では、今日から選挙について学んでいこうと思います。
公:何か、テンション上がってないか?
岬:そんなことは無いですよ?
公:選挙参謀の血だ。絶対にそうだ。
岬:その件に関しましては保留するということで。
  それでは先輩、そもそも選挙って何ですか?
公:またえらく根源的な質問を……えー、何かの代表を選び出すこと?
岬:そうですね。起源は定かではありませんが、
 主に投票に依って代表を選出することが選挙の定義と言って良いでしょう。
公:下は学級委員長から、上はアメリカ大統領までか。
岬:ちなみに、学級委員とアメリカ大統領では、
 規模が違うだけの様で、一つ違う点があります。何か分かりますか?
公:いや、全然。
岬:学級委員は、クラス全員が有権者で、自薦他薦で揃った候補者に投票し、
 その数が一票でも多い人を当選者とします。
  この類の選挙を、直接選挙と呼びます。
公:大統領選は違うのか?
岬:アメリカ大統領選では、各州毎に選挙を行い、一票でも多く獲得した候補が、
 人口に応じた選挙人を全員得ることが出来ます。
公:ん? ちょっと分かりづらいぞ。
岬:現在、アメリカには二億人程の有権者がいます。
  その方達が立候補者に投票するまでは一緒なんですけど、
 単純にその数だけを争う訳ではありません。
  州毎に集計して、一位となった候補がその州に割り当てられた選挙人を得るんです。
  例えば、人口の多いカリフォルニア州では55人(2008年大統領選)、
 少ないハワイ州では4人といった感じです。
  最終的には50州で得た選挙人のトータルが一番多い人を大統領として任命します。
  陣取り合戦と言われる由縁ですね。
  ちなみにこの様に、ワンクッション入れて代表を選ぶものを、間接選挙と呼びます。
公:でっかいところで負けると悲惨そうだな。
岬:特に接戦で負けると痛いです。仮に51%と49%の得票率だったとすると、
 その49%は丸々死票になりますからね。
  酷い時には、トータルでの得票は勝っていても、
 選挙人の数で負けて大統領になれなかった例もありますから。
公:何か、本末転倒の様な。
岬:とは言え、前に述べた小選挙区や大選挙区、比例代表の様に、
 選挙制度はどれもが一長一短の側面を持ち合わせています。
  一応、必要に応じて適切な制度を選んでいることになっています。
  もちろん、選挙のルールを作るのは議員なので、
 その方々が有利な様に制定する傾向が多分にありますけどね。
公:具体的には、どんなのだ?
岬:良く言われるのは供託金ですかね。
  日本では、殆どの選挙に立候補する為に、
 幾らかのお金を供託所に預けないといけないんです。
  例として衆議院小選挙区だと、その額は三百万円になります。
公:何……?
岬:一応、建前としては『冷やかしお断り』ということになっているんですけど、
 一方で水準以上の資金力が無いと立候補すら出来ず、
 既存の権力者が有利な制度とも言えます。
公:でも、預けるって言ってたから返ってくるんじゃないのか?
  だったら借金でも何とか――。
岬:ちなみに、ある程度の票を得られないと没収になります。
  衆議院小選挙区だと有効票の10%を獲得しないと、国のお金になっちゃいます。
公:庶民には、被選挙権すら無いと言うのか……!
岬:実際、この様に高額な供託金は、日本国憲法に書かれている、議員の資格は、
 財産、収入に依って差別されることはないという項目に引っ掛かるという解釈もあります。
  ある程度の署名を事前に集めることを立候補条件にする案が出されるなど、
 模索は続いています。
公:選挙ってのは、何処もやっぱり大変だなぁ。
岬:という訳でこのカテゴリでは、選挙にまつわるお話を色々と述べていきますね。

今項目の纏め:選挙とは、主として投票に依って代表などを選出する手段のこと。様々な手法があり、それぞれが一長一短の為、絶対の選挙方法は存在しない。


【普通選挙と一票の格差】
岬:日本に於いては、日本国籍を有し、
 尚且つ二十歳以上になりますと参政権を得ることが出来ます。
  要するに、地方議員や市長、県知事、
 或いは国会議員といった先生方に投票する権利です。
公:何だか、基本的過ぎることを言われた様な?
岬:それは、先輩が現代の日本人だからです。
  日本では、1925年に男子普通選挙が実施されるまで、
 納税額が一定以下だと選挙権は与えられませんでした。
  要は、貧乏人に政治を語る資格は無いということです。
公:何という酷い……『男子』普通選挙?
岬:その通りです。1945年12月に始めて男女平等普通選挙が行われるまで、
 家柄とか納税額とかそんなことは全く関係なく、
 女性であるというだけで政治へ参加する権利は無かった訳です。
公:ちょっと怒ってない?
岬:ソンナコトハナイデスヨ? ソウイウ時代ダッタンデスカラ。
公:ま、まー、時代背景って大事だよな。
岬:この様に、年齢、性別以外の理由で選挙権を与える対象が狭まる選挙を、
 制限選挙と言います。
  逆に狭まらないものを普通選挙といい、これは男性だけの男子普通選挙を含む場合と、
 男女平等選挙だけを意味する場合があるので、気をつけて下さい。
公:はー、でもまあ、今は男女平等選挙しかないんだろ?
  外国は知らんけど、少なくても日本では――。
岬:ところが、必ずしもそうとは言い切れません。
公:ん?
岬:たしかに、基本的に日本人で二十歳以上なら誰でも一票を投じる権利を持っています。
  ですけどこの一票、本当に公平なものなんでしょうか。
公:岬ちゃんの言ってることが分からないのですが。一票は、一票だろ?
岬:では先輩。東京都知事と鳥取県知事、同じ知事ですけど、格は一緒と言えますか?
公:ナヌ? いや、同じ知事は知事だけど、格はやっぱ東京都知事の方が上だろ。
  そもそも担当地域の人口が違いすぎるし。
岬:そうですよね。同じ知事でも、都道府県に依って、
 人口や当選に必要な票数、予算が全く違います。
  なので、発言力や影響力は、知事に依って違うというのが当然でしょう。
  ですけどこれが、国会議員になるとどうですか?
公:――ナンデスト?
岬:仮に東京のA区で有権者は50万人だったとします。
 ですが鳥取のB区では10万人でした。
  小選挙区を想定すると、それぞれの区から一人ずつ当選する訳ですが、
 法律上、この二人の権利は同じになります。
  言い換えると、有権者一人が選挙に与える影響が、
 単純計算で五倍も違うことになるんです。
公:イヤイヤイヤ、それはおかしいだろ。つうか何で地区ごとに有権者数が違うんだよ。
  きっちり頭割りは無理でも、ある程度は揃えろよ。
岬:これがいわゆる、『一票の格差問題』です。
  実際、昔から選挙区ごとに有権者の数に開きがあったんです。
  そして、選挙区に依って票の重みが違うのは法の下の平等に反するとして、
 裁判で争われてきました。
  一応、最大格差が、衆議院で三倍以上、
 参議院で六倍以上となると違憲であるという最高裁の判例があり、
 現在(2008年時点)ではこの枠に大体、収まるようになっています。
公:それでも、参議院だと五倍とかあんのか……。
岬:何しろ話が政治家の地盤に直結しますからね。
  理屈の上では違憲だと解釈されても、徹底的にゴネるところです。
  一応、衆議院選挙では格差が二倍以下になることを目標にしているんですけど、
 達成はいつになるやらです。
公:ま、政治家先生も命懸けなんだから、気持ちは分からんでもないけどなぁ……。

今項目の纏め:年齢・性別以外の理由で選挙権が制限される選挙を制限選挙と呼ぶ。逆に制限されない選挙を普通選挙と呼ぶ。選挙区の有権者数が違えば、一票の価値が変わる。これを『一票の格差』と呼ぶ。


【マニフェストは行間を読もう】
岬:マニフェストとは、本来は宣言、声明書と言った意味の言葉ですが、
 現代日本では主として、政党や政治家が掲げる具体的選挙公約書のことを指します。
  これは2003年に公職選挙法が改正され、
 選挙期間中に公約書の配布が可能になったことに端を発しています。
  先駆けは民主党で『私達が政権を獲得したら●●を××する』という体で書かれており、
 与党を含めた他党も追随する形で配布を開始しています。
公:公約は、守らぬ為に、あるんだね。
岬:微妙な風流が入ってしまった先輩はさておいて、
 書かれていることを守らないこと自体には何の罰則もありません。
  もちろん、人気があってナンボの政治家稼業ですから、
 公約違反を繰り返し続けると、次の選挙で痛い目を見ますけどね。
公:スポーツみたいに、公約達成率とかを明記すれば分かり易いんじゃないか?
岬:ですけど、これはあくまで政権中枢に入り込んでこそ実行できる約束ですからね。
 一度も政権を獲ったことが無い政党、或いは連立を組んだ経験があっても、
 少数政党の場合、説得力に欠ける部分があるのは事実です。
  要するに妄想の域は出ません。
公:『俺、本気出せばテストで学年十位くらい入れるから』みたいなものか。
岬:先輩が定期考査の度に言う常套句ですね。
公:しまった、わざわざ自分で傷口を広げてしまったぜ。
岬:とは言え、政党の政策目標を明文化するという意味で、
 それなりの価値があるものではあります。
  『有権者が政策で政治家を選ぶことが出来る』という、
 政党政治本来の目的に回帰出来る訳です。
  もちろん、各政党が誇大に並べ立てる美辞麗句や、裏に隠された真の目的、
 始めから守るつもりのない一文などを見極め、
 自分の望むこの国の在り方に一票を投じる必要がありますけどね。
 選挙後にどれだけ達成できたか評価するのも重要な部分です。
公:ダイエットブーム一つでスーパーから食品が消える日本国民に、
 そんなこと出来るんだろうか……。
岬:逆に言えば、そういう流され易い国民性こそ、私達選挙参謀の飯の種な訳ですけど。
公:うむ、実に黒くて悪い、良い笑顔だ、岬ちゃん。
岬:選挙が近付いてきましたら、駅前なんかで演説をしている政治家が居ると思いますが、
 近付けば大抵、マニフェストは貰えます。
  それこそ、気持ち悪いくらいの笑顔でくれます。
公:岬ちゃんの主観はさて置くとしようじゃないか。
岬:わざわざ紙で配布するのは資源の無駄だと思われる方は、
 政党公式サイトを御覧になるのも良いでしょう。
  唯、こちらは場合に依ってはこっそり削除される可能性もあるので、
 スクリーンショットを保存するなど、こちらも対策を講じないといけないと思われますけど。
公:それはむしろ、政治家として減点要素が大き過ぎると思うんだが。
岬:私も、流石にそこまでアホなことはしないと思うんですけどね。
  ですけど、こちらの予想を超えるアホさ加減を発揮するのが、
 政治家という生き物ですから。
公:チラチラと、こっちを見ながら言うなぁ!

今項目の纏め:マニフェストはあくまで政策の努力目標。目標は、100%達成されるとは限らない。当然、最初から守る気が無いこともあるので、実績と将来性を加味した上で判断材料にしよう。


【公選法に触れちゃうネット演説】
岬:公職選挙法とは、国会議員、地方議員、各地方団体首長の選挙で、
 守らなくてはいけないルールが書かれた法律です。
  未成年の選挙活動禁止や、贈与の禁止、個別訪問禁止など、
 べからず法と言われる程、『〜〜してはいけません』、
 と延々、書き連ねられています。
  当然、当選後であっても、これに抵触したことが発覚し告発されると、
 相応の罰則を受けることになります。
  最悪、当選自体が取り消しになることさえあります。
公:何か、すげーうるさいらしいな。プリントした年賀状もアウトだとか。
岬:その昔、金融商品取引法(旧証券取引法)は、
 私にとっての憲法だと言ったファンドマネージャーが居ました。
  同様に、選挙参謀にとっての公職選挙法も、それに比肩するくらいの重みがあるんです。
公:ほっほぅ、そういうものなのか。
岬:バレなければ特に問題が無いという点も、似てると言えば似てますよね。
公:ちょっと待て、参謀界のサラブレッドさん。
岬:実際、抜け道の多いザル法であるという指摘も成されています。
  例えば、選挙期間中、ホームページやブログの更新は禁止されていますが、
 匿名性の強いネット上では、公式ではない部分を関係者の工作とするか、
 支持層の応援ととるか、判断に困る部分です。
  一応、支持者の応援であってもアウトはアウトなのですけど、
  正直、一つ一つを吟味して裁く人的余裕も無いので、
 相当に露骨な部分以外は手を出せないのが実情です。
公:いっそ、公式ルールを決めて、
 選管が管理する形でネットでの選挙展開を認めた方が早そうだけどな。
  よっぽどの暇人以外、非公式まで目を通さないだろ。
岬:それも一理ありますね。例えば、政見放送を見ようと思ったら、
 テレビの都合に有権者が合わせなくてはなりません。
  これだけネットが発達した時代にナンセンスとも言えます。
  実際、選挙期間以外に限って言えば、
 各党の党首クラスが動画共有サイトに顔を出していますしね。
  尤も、その様な専門技術があるか疑わしい選挙管理委員会に、
 サーバーのメンテナンス等、運営を任せられるかは怪しいものですが。
  結局、民間委託になって、新たなる利権を産むだけやも知れません。
公:何か、微妙に重い話になった気がしないでもない。
岬:もう一つ、重い話があるんですが。
公:はぁ。
岬:それは連座制です。仮に、先輩が立候補した際、私が参謀に付いていたとします。
 先輩は見事当選を果たしましたが、私が選挙違反をしていたとして逮捕されました。
  この場合、例え先輩が関与していなくても、連帯責任として罪に問われるんです。
公:何だと……?
岬:とはいえこれも、あくまで法の上での理想論ではあるんですけどね。
  先輩と私の関係性を立証出来なかったらそれまでですし、
 例えば先輩が大物代議士とかでしたら、司法当局も軽々には動けません。
  そもそも、公選法を作ったのは国会議員という事実があって、
 与党に有利なものの訳ですしね。
公:世の中は、綺麗事では、動かぬよ。
岬:御粗末様でした。

今項目の纏め:公職選挙法は、立候補する者にとっては憲法に等しい侵さざるべきモノ。しかし現実的に全てを取り締まるのは、果てしなく難しいものである。


【投票率と組織票の密接な関係】
岬:投票率の変動は、主として無党派層と言われる方々の動向で決まるとされており、
 支援組織が強固な政党である程、低投票率であることを望みます、以上。
公:すいません、桜井さん。もう少し分かり易く解説して頂けませんか。
岬:先輩に分かるレベルとなりますと――ぱーぷ君はライオン村の村長さん。
 みんなにえらばれたエラい人。
  きょうもみんなのためにがんばるぞー。
公:そこまで下げられると、むしろ分かりづらいわ!
岬:と、漫才はこれくらいにして、そもそも投票率とは、
 投票者の有権者に対する割合で、有権者全員が投票した場合、100%となります。
  これを超えることは理論上有り得ません。
  余談ですが、朝鮮民主主義人民共和国で限りなく100%に近い数字が記録され、
 ギネスブックに載ったこともあります。
  又、イラクの故フセイン元大統領が国民の信任投票で、
 100%の支持率を得たことがあります。
公:――ま、そこんところは敢えて触れるのはやめておこう。
岬:一方、組織票とは、特定の団体が特定の政治家、
 ないしは政党に関連する人脈全ての票を集中させることで、
 政治家サイドとしては、生命線とも言える票です。
公:それは……良いのか?
岬:一部では投票の為の券を盗んだり、金銭で買い取ったりしてますので、
 それらは完全にアウトです。
  けれど結局、組織に属している人も最終的には自分の意思で書き込む訳ですから、
 組織票自体はそれ程とも言えないでしょう。
  まさか上司なりが選挙当日、
 後ろにくっついて誰に入れたかを覗き込むという訳にはいかないんですから。
公:そんな会社、嫌すぎる。
岬:ではここでモデル地区を作ってみましょう。10万人の有権者が居る地区でです。
  組織票2万人を持つ団体が支持している場合、
 とりあえず望める得票率は何パーセントでしょうか。
公:20じゃないのか? 小学生でも出せる計算だと思うが。
岬:その計算は、あくまで投票率が100%であることを前提に成り立っています。
 日本の投票率は国政でも60〜70%程度。
  地方ともなると40%を切ることも珍しくありません。
公:つまり……どうなる?
岬:分かり易く、投票率が50%で考えてみましょう。
  投票に行った人は、何人になりますか?
公:5万人、だよな。
岬:つまり組織票の2万票は、5万分の2万、40%程度を占めることになります。
  投票率の変動だけで、二倍もの効果を得ることが出来る美味しさです。
  組織票に携わる人は、かなりの確率で選挙に行くので、
 政治家から見れば投票率の変動はヤキモキせざるを得ないものなんです。
公:ん? 昔、何かを言った人が居た様な?
岬:多分、森元総理でしょうね。
  『無党派層は寝ててくれれば良い』と言って顰蹙を買ったんです。
  自公連立政権は支持組織が大きいところですから、無党派層が行かず、
 投票率が下がるのは望ましい展開なんです。
  選挙に携わる者として気持ちは分かりますけど、
 総理の立場なのに公の場で口に出してしまうセンスは同情出来ません。
公:伝説の多い人だなぁ。
岬:結局、何でこんなことになるかと言うと、日本は有権者の40〜50%が無党派層、
 つまりは特定政党を支持していない人達で構成されているからです。
  この人達を巧く乗せる、或いは嫌われるかするだけで、
 選挙での勝ち負けが大幅にグラつくことになります。
公:選挙怖い、本気で怖い。
岬:それでは、次項ではその投票率が何に依って変動するのかと、
 投票率が与える結果について述べていきましょう。

今項目の纏め:投票率の浮沈は無党派層が握っている。下がれば下がる程、支持基盤を持つ政党が有利になる。


【投票率に関わる要因とその余波】
岬:投票率増減に於ける最大の要因と言えば、やっぱり関心、でしょうね。
  単純に、盛り上がる選挙程、投票率は上がります。
公:そりゃそうだろうな。
岬:他には、選挙当日に雨が降ったりしますと、投票率が微減したりします。
  これもまた一喜一憂の要因です。
  台風なんか来た日にはガッツポーズしたいくらい喜んだりする方も居るでしょう。
  もちろん、表には出しませんが。
公:うーむ、気持ちは分からんでもないな。
岬:更には、三連休の中日というのもありますね。
  土日月が休みなら、日曜日は旅行やレジャーに出かけて、
 選挙に行かない可能性もあるという目算です。
  と言っても、最近は期日前投票が一般的になったので、
 どれ程の効果があるか分かりませんけど。
公:セコッ!
岬:せせこましくても何でも、選挙は勝たないと意味が無いんです。
  何の為に議員等になるかは人それぞれにしても、落ちたら一般人です。
  相当の大物で無い限り、影響力を残せません。
公:それは分からんでもない。だけど、あんま露骨過ぎると、
 却って反感買うんじゃないか。
岬:そうですね。だから日取りを決めるのは、バランス感覚が難しいところです。
公:結婚式よりも大変そうだな。
岬:大型選挙の当日は、殆どのテレビ局で特番を組むので、
 業界人にとってもヤキモキせざるを得ないものの様です。
  この講座の作者も、前倒しされた日取り報道のせいで、
 ブログ連載にするか、書き下ろしにするか悩んでですね――。
公:んな裏話は良いから。
岬:ところで世間的には、投票率が低いことが罪悪であるかの様に言われますが、
 投票権は名前の通り、権利であって義務ではありません。
  義務の国もありますけど、少なくても日本は放棄しても罰則はありません。
公:じゃあ、何でそんな論調になるんだ。
岬:投票率が低いことに依る最大の問題は、
 組織票を出した団体への政策等の利益供与が露骨になる点でしょう。
  票の見返りは、税金か、優遇政策に依る特権階級化――分かり易い関係ですね。
公:何という生々しさ。
岬:という訳で、『俺の税金がドブに捨てられようと興味ねーよ』とか、
 『徴兵復活で明日から軍隊入りすることになったけど、まいっか』
 と思うくらい政治に対して無関心の方以外は選挙に行くことをオススメします。
  私見ですが、白紙での投票や、立候補していない有名人を書くというのも、
 結局は只の無効票ですから、組織票をのさばらせるだけです。
  十年ほど前、政治不信から『白紙での投票も政治への意見』、
 だという論調が流行りましたが、私は組織団体の流布だと思っています。
  そもそも、政治家を選ぶ選挙というのは、消去法から成る現実主義の極みなんです。
  例え人材に乏しくても、誰かは国政、地方行政を動かさないといけないんです。
  選挙権のある方は、物理的に不可能な方を除いて参加すべきです。
  一回や二回の選挙の結果で、政治が劇的な変化を望める状況にはありません。
  それでも、投票率が低いままよりは十分にマシです。
  十年、二十年単位で政治を監視し続けること、
 それが民主主義の本質であり、選挙の基本です。
  という訳で、選挙権のある方は投票に行って下さい。桜井岬からのお願いでした。
公:な、何か鬼気迫るもんが……。
岬:あ、でも私の担当弁士の組織力が高い場合は、棄権しても良いかなとは思いますけどね。
公:良い話だったのに、腰をボキッと折るなぁ!

今項目の纏め:残念ながら、投票率は僅かな要因でコロコロ変わる。そして一票は限りなく無力な面もある。それでも、ドラマがあったからといって木村拓哉と書くよりは幾ばくか牽制力があるのも事実である。





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