【アームレスリング大会出場中】 ?:レディース・セット、ファイト! ?:うぎゃ!? ?;ウィナー、リィ=シイナ。クォーターファイナル、進出決定! 莉:ふう。 公:お前は一体、何をしとるんだ。 【実況依頼がありまして】 岬:さあ、大会もいよいよ大詰め。八強が出揃いました。女の子だと思って甘く見てはいけません。 彼女達は学園内千人を越える中から勝ち残った、言わば猛者達。文字通り一騎当千クラスといっても、 過言ではないでしょう。彼女達がその腕一本を頼りに切り開くのは、茨の道か、修羅の道か。 両の眼を開いて、じっくり見守りたいものです。 公:君も一体、何をしてるんだ。 【済し崩しとは正にこのこと】 岬:尚、解説は『ボケツッコミの両輪マスター』こと、七原公康さんです。どうぞ宜しく。 公:さりげに人様を巻き込むな! 【岬ちゃんもね】 岬:さあ、八強が残った訳ですが、顔ぶれを見てどう思われますか? 公:そうですね〜。本大会は体重別の大会という訳ではないので、一見しただけでも、 体格にバラ付きが見てとれます。幾らアームレスリングが、腕力よりも技術が物を言う競技と 言っても、このハンデが致命的になる恐れもあります。私的な意見で恐縮ですが、 逆に小さい選手が大きい選手をやり込めると言うのも、痛快で見てみたいとは思いますがね。 岬:メチャクチャ順応性高いじゃないですか。 【機密情報扱いで】 岬:さあ、それでは第一試合、赤コーナーから参りますは、『雷獣の落とし子』、 椎名莉以選手〜。身長百六十二センチ、体重は――。 莉:何でそんなこと公開されなきゃなんないのよ! 【微妙に頑丈だぞ】 公:俺としては、意味不明なリングネームを付けられる方が問題だと思うんだが。 岬:女心はグラスファイバーの様に繊細なんです。 【マニアなファンとか】 岬:対しまして青コーナー、『猛き暴君』、北島涼選手〜。身長百八十一センチ、 体重百五キロ。女子プロレスからスカウトも来ている逸材です。 涼:ふお〜!! 公:こんな奴が居たのか……。 岬:ちなみに趣味は編み物と、結構、繊細です。 公:その情報を欲している奴が居るのかを、俺は問いたい。 【そこまで言うか】 岬:それでは運命の一戦、スタートで――。 (カーン) 岬:おぉっと、椎名選手、瞬殺、滅殺、大圧殺〜!! 正しく、鬼神が如き所業。 何が彼女をここまでさせるのか。そして実況泣かせの試合時間。もう少し観客を 喜ばせる配慮は無いのかと、思ってしまうほどであります! 莉:岬ちゃん、後で校舎裏に来てね。 【誰か止めろよ】 岬:さあ、順調に試合を消化して、四強が出揃いました。それでは早速参りましょう。 準決勝第一試合。赤コーナー、椎名莉以選手! 莉:はいはい。 岬:対しますは、『小さき智将』、一柳綾女選手〜! 尚、一柳選手はこれまで、全戦不戦勝で勝ち上がっております。 公:あからさまを通り越して、確実に裏があるだろ、そりゃ。 【立場上は中立】 岬:ですが何をしようと、バレなければイカサマではありません。 公:実況が公然とそんな台詞を吐くな。 【腕折られたくないし】 綾:ほーほっほっほ。この場にやってきた勇気はお褒め致しますけど、 そろそろ立っているのも辛いのではありませんこと。 莉:どういうこと? 綾:主催者が用意した飲み物に睡眠薬を混ぜましたの。 と言っても御安心あそばせ。即効性ではありますが、ほとんど無害ですので。 莉:飲み物なら、持参したハチミツドリンクを飲んだけど。 どうもスポーツドリンクって、苦手で。 綾:――棄権致しますわ。 【むしろ病みつきに】 岬:おぉっと! 準々決勝に続き、何という幕切れだぁ! これは彼女の威圧感が成せる技か、人外の魔力か! いずれにせよ、幾多もの屍を乗り越えて、椎名選手、決勝進出! 公:今回は止めないのか? 莉:いや、自分のことじゃないって思えば、案外、面白いかも。 【ゲリラ戦では流石に】 岬:準決勝第二試合、開始五秒で勝利を決めたのは、『外連味無き不沈艦』、浅見遊那選手です! 公:むー、予想通りと言えばそれまでなんだが、何か対策はあるのか? 莉:銃を使わない戦いなら、勝機はあるかも。 公:第一声がそれかい。 【さりげなく告白】 莉:だけど私にあって、彼女に無いものならあるけど。 公:何だよ? 莉:私には、公康が居てくれる。 公:あー、俺、曲がりなりにも解説だから誰かを応援は出来無いんだ。 莉:……いけず。 【一瞬信じた】 遊:ふふ、椎名。お前と決勝とは、運命を感じるな。 莉:運命って? 遊:前世で夫を殺された恨み、ここで晴らさせてもらうぞ! 莉:はひ? 遊:言ってみただけだ。 【根性皆無】 岬:それでは、規程の休憩時間が過ぎましたので、選手の二名はステージにお上がり下さい! ?:椎名! 頑張れよぉ! ?:浅見ぃ! 負けたら承知しねえからな! 遊:今、私の名を呼んだ奴、声を憶えさせて貰った。 ?:ごめんなさい、少し調子に乗りました。 【オッズは十倍くらい】 公:それにしても、この盛り上がりは異様だな。 岬:そりゃ、賞品制でトトカルチョ運営もしてますからね。食券や文房具が貰えるんです。 公:うわ、抜け目ね〜。 岬:私は、遊那ちゃんと椎名先輩、両方に賭けてますので、どっちが来てもホクホクです。 公:もっと抜け目ね〜。 【知らぬ間に賞品化】 岬:さぁ! 今、二人の手がしっかと握られました。 後はレフリーの一声で、最終決戦が始まるのです! 遊:椎名。唯、一番を決めると言うのも面白みが無い。別の物を賭けないか? 莉:ん? 遊:私が勝ったらそうだな。七原を頂く。 莉:な!? 公:へくちゅ。 【恋する乙女は最強無敵】 ?:レディース、セット、ファイト! 莉:うりゃ! 岬:何と! 長期戦になるとの下馬評を覆し、椎名選手、またしても圧勝! 殿堂入りを申請すべき、最強のチャンピオンがここに誕生だ〜!! 遊:お、お前……少しは動揺しろ。 莉:賭けた物が悪すぎたのよ。 【ラスボス向きの人】 岬:さて、椎名選手。優勝者には前チャンピオンへの 挑戦権が認められていますが、如何致しますか? 莉:そんなのがあったの? 岬:ええ、この方です。どうぞ! 茜:うふ。 公:姿が見えないから変だとは思ってたんだよな〜。 【姉妹共々抜け目無し】 茜:ん〜。でも莉以ちゃん、右腕は流石に疲れてると思うから、左で戦わない? 莉:はぁ。まあ良いですけど。 公:ちなみに茜さんって――。 岬:もちろん、左利きです。 【共感するなよ】 茜:あ〜れ〜。 公:って、あっさり負けたぞ!? 岬:前回の優勝は、色々と策を巡らせた結果の様ですから。 綾:流石はお姉様ですわね。
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