？？？ 「――、――、――」 ？？？ 「――、――、――」 ？？？ 「――、――、――」 ドルチェッタ 「……数値の振り分けは、こんなものですかね」 ドルチェッタ 「ようやく、ようやく私が完成したのです！ 早速、テストプレイなのですよーッ!!」
VSマナ マナ 「……おや？」 マナ 「コルプスが見付からない代わりに、面白いものを見付けたな」 ドルチェッタ 「マナさん……」 マナ 「うん、やっぱり自分の外形を創るのが目的だったか」 マナ 「あめでとう、ドルチェッタ。祝ってあげたいけど、今はちょっと忙し――」 ドルチェッタ 「……勝負なのです、貧乏神」 マナ 「は？ え……何で？」 ドルチェッタ 「自分でも良く分からないのですが、私は貴方が嫌いなのです。私の中には貴方の要素もあるので、それによる同属嫌悪かも知れません」 マナ 「……同属嫌悪？ でも、この嫌われ方は――ははあ、そういう訳ね」 マナ 「いいよ、おいでドルチェッタ。緋姫がいなくなって退屈してたし、その喧嘩に乗ってあげる」 VS渡辺麗衣 ドルチェッタ 「……私、おかしいのです……」 ドルチェッタ 「まさか、バグが残っているのですか？ いや、そんなはずは――」 麗衣 「――何が、おかしいんですの？」 麗衣 「ある男性の事が頭から離れない。その人に関わる女性を、武力を使ってでも排除したくなる――そんな所ですか？」 ドルチェッタ 「……何、で？ 貴方――」 麗衣 「そうなるのも当然ですわ。貴方が集めた外形は、月見さんを好いている者ばかりだったではありませんか」 麗衣 「マナさんは例外かも知れませんが、別段嫌っている訳でもなし。素材が全て赤ければ、出来上がる貴方も当然赤くなるのです」 ドルチェッタ 「――ッ、そんな事は、在り得ないのです。サンプルは、ランダムに選んだのですから」 麗衣 「ランダムでそれなら、もうどうしようもありませんわね。その偶然にも、何か意味があると信じましょう」 麗衣 「……でもまぁ、今夜は大人しくしていなさい。私がコルプスを退治して、月見さんに褒められる日なのですから」 ドルチェッタ 「ぐ……ッ!!?」 ドルチェッタ 「認めない、認められないのです……でも、貴方は邪魔なのですよ――ッッ!!!!」 VS春獄晴良 ドルチェッタ 「うぅあ……」 ドルチェッタ 「会いたい、のです――でも、それは……」 晴良 「――苦しそうだね、ドルチェッタ」 晴良 「生物の辛苦を癒す特効薬は、『死』に他ならない。僕が君に、それを処方してあげよう」 ドルチェッタ 「……っ!!?」 ドルチェッタ 「私を、殺す？ 何のために――」 晴良 「君が、コーパス・ウィズ・キャッツアイズ――猫眼のコルプスを、引き寄せているからさ」 ドルチェッタ 「……え？」 晴良 「魂を失って以来、コルプスは己の中身を探している」 晴良 「そして君は、ハイスペックな『中身』だ。外形を破壊された君が理力体に戻ると、奴はそれを察知して接近するのさ」 ドルチェッタ 「……！ 貴方はそれを防ぐために、私を護っていたのですか……!?」 晴良 「うん。今の僕じゃ、上手くいかなかったけどね」 晴良 「まぁとにかく、原因は君な訳だ。大国主の配下として、この国に呪徒を呼ぶ者は看過出来ない」 ドルチェッタ 「で、でもそれなら……理力体に、戻らなければいいのですよ！」 ドルチェッタ 「私はこうして、肉体を完成させたのです！ 今更、この形を捨てる理由はありませんッ！」 晴良 「もう遅い。コルプスは街に辿り着いているんだから、後は時間の問題でしかない」 ドルチェッタ 「そん、な――……」 晴良 「奴が君を取り込めば、神族や血色の満月に匹敵する程の、超越者へと生まれ変わる」 晴良 「ほら、いくら何でもそれはダメだろう？」 ドルチェッタ 「――……」 晴良 「さて。その外形を破壊した後、アロケーション・テーブルのアドレスを変更させて貰うよ」 ドルチェッタ 「……私を、削除するつもりなのですか」 晴良 「そうすれば、コルプスは君を諦めるしかないからね」 晴良 「それで、万事解決する。君には何の価値もないのだし、削除しても問題ない」 ドルチェッタ 「……？ それは、どういう意味なのです？」 晴良 「ジョーカーは、万能だからこそ切り札となる。でも役目が固定されてしまったら、それはただの厄介者だ」 晴良 「今の君は、君でしかない。ほら、何の価値もないじゃないか」 ドルチェッタ 「……ッ、違うッッ!!!!」 ドルチェッタ 「この私は、ようやく手に入れた私なのですッッ!!!! 侮辱は絶対に赦しませんッッ!!!!」 VS月見匠哉 ドルチェッタ 「――……」 ドルチェッタ 「……このままでは、私はコルプスに取り込まれる」 ドルチェッタ 「それは、最悪の事態。変生したコルプスが何をしでかすかは、まったく分からない――」 ドルチェッタ 「……私は一体、どうすれば」 ドルチェッタ 「この星に来たのが、この星で生きたいと思ったのが、そもそも間違いだったのでしょうか……？」 ドルチェッタ 「――……」 ドルチェッタ 「……そうだ。簡単な、事なのです」 ドルチェッタ 「この星から、去ればいいのですよ。私がいなくなれば、それでいいのです――」 ドルチェッタ 「……宇宙は、暗くて寂しくて。もう、あんな世界を旅したくはなかったのですけど……」 ドルチェッタ 「う、ぅ、ああああ……っ、ひっく……それでも……彼を、危険な目に遭わせるよりは――！」 ？？？ 「じゃっじゃじゃーんッッ!!!!」 ドルチェッタ 「……ほえ？」 ？？？ 「はーい、そこまでッ!! 俺は湿っぽい話が嫌いなので、そういうダークでネガティヴな展開は死んでも御免ですッ!!!」 ドルチェッタ 「つ……月見匠哉、さん？」 匠哉 「よう、数日振りだなドルチェッタ。ああ、状況は何となく分かってるぞ」 ドルチェッタ 「……分かっているのなら、邪魔をしないで欲しいのです。貴方に出来る事なんて、何もありはしないのですよ」 匠哉 「ああ、俺に出来る事なんてない。お前が始まりなんだから、キッチリ終わらせられるのもお前だけだろうさ」 ドルチェッタ 「だったら――！」 匠哉 「だから、ちゃんと終わらせろ。お前が呼んだコルプス、責任持って片付けやがれ」 ドルチェッタ 「……え？」 匠哉 「ったく……いつも通りの、1番簡単で手っ取り早い方法だろうが」 匠哉 「お前が集めた外形は、例外なく使い手にして美少女だ。その集合体なんだから、それに相応しいガッツを見せて貰わんと」 ドルチェッタ 「あ……」 ドルチェッタ 「……でも、それは無理なのです。私の性能では、コルプスには届きません」 匠哉 「街に撒いた情報子、そのままなんだろ？」 匠哉 「それを使えば、何とかなる――といった感じの話を真から聞き出したんだが、どうだ？」 ドルチェッタ 「街に散布した、情報子……」 ドルチェッタ 「…………」 ドルチェッタ 「……私が、勝ったら。匠哉さんは、私を褒めてくれるのですか？」 匠哉 「へ……？ あ、ああ、俺で良ければな」 ドルチェッタ 「それなら、やる気も出るのです」 ドルチェッタ 「コルプスに、私の力を見せてやるのですよ――っ！」 匠哉 「うん、その意気だ」 匠哉 「口だけじゃ情けないし、準備運動に付き合ってやる。さぁ、俺の屍を越えて往きな！」 VS猫眼のコルプス ドルチェッタ 「……そろそろ、日付が変わるのですか」 コルプス 「ジ――」 コルプス 「ジ、ジ――」 コルプス 「ジジジジジジジジジジィィィィイイイイイイ――ッッ!!!!」 ドルチェッタ 「――……」 コルプス 「……やっと、会えました」 コルプス 「なかなか見付からないので、街ごと呑んでしまおうかと……ああ、本当に良かった」 コルプス 「何しろそれでは、不純物が混ざり過ぎますから」 ドルチェッタ 「貴方……」 コルプス 「初めまして、猫眼のコルプスといいます。名前と言うより、単なる呼び名ですけどね」 コルプス 「親に付けて貰った名前もありますが、今のボクはソレとは別人でしょうから」 ドルチェッタ 「……良く喋るのですね。魂なき抜け殻には、とても見えないのですよ」 コルプス 「見えないだけですよ。今のボクは、元のボクを再現しているに過ぎません」 コルプス 「喜怒哀楽を表す事はあっても、内面は何も感じてはいないのです。哲学的ゾンビ、というものですかね」 コルプス 「――さて。この身を抜け殻と言うのなら、当然ボクの目的も知っている訳ですか」 ドルチェッタ 「私で、自らの欠損を補いたいのでしょう」 コルプス 「はい――」 コルプス 「ボクは、ハートを奪われたブリキの樵。何か、代わりになるモノをくれませんか」 ドルチェッタ 「そういうのは私ではなく、魔法使いにでも頼めばいいのです」 コルプス 「貴方も同じでしょう。魔法使いオズのように、自在に姿を変えられるのですから」 ドルチェッタ 「ならば貴方の前にいるのは、魔法使いではなくペテン師なのですよ」 ドルチェッタ 「何の価値もない偽物で良ければ、いくらでもプレゼントしてあげるのですが」 コルプス 「それではダメですよ。ボクは――」 ドルチェッタ 「ハッキリ言うのです。私は、絶対に私を譲りません」 ドルチェッタ 「貴方がそれを侵害すると言うのなら、全力を以って打倒するまでなのです」 コルプス 「どうやってですか。貴方の能力では、ボクには到底――」 ドルチェッタ 「こう、やってですよ――ッッ!!!!」 コルプス 「――……」 コルプス 「……これは……」 ドルチェッタ 「街の外形を、散布した情報子で変更したのです」 ドルチェッタ 「私と貴方、ふたりだけの世界。これで、誰かを巻き込む事もないのですよ」 ドルチェッタ 「そして、何より――」 ドルチェッタ 「――この中でなら、私のレヴェルは貴方に届くのですッッ!!!!」 コルプス 「ジ、ジジ、ジ――」 コルプス 「ジジジジジジッッ!!!! 回路のF56からN74、過負荷により発狂――ッッ!!!!」 コルプス 「――あ、あ。曲解され嗤ふ経文、降り積もる悪辣の功徳――」 コルプス 「猫の眼を持つ獣人菩薩が、迷へる衆生を救ひ喰らひ無間地獄へ引導せんッッ!!!!」 ドルチェッタ 「ふん……所詮は欠陥品、何かあるとすぐボロが出るのですね」 コルプス 「ジジジジジジジジジジィィィィイイイイイイ――ッッ!!!!」 ドルチェッタ 「終わりなのですッッ!!!! 集めた力と得た経験、全てで貴方を葬り去る――ッッ!!!!」 匠哉 「よ、ドルチェッタ」 ドルチェッタ 「匠哉……さん」 匠哉 「大丈夫か？ 片手と両足がもげてるし、腹が半分くらいなくなってるんだけど」 ドルチェッタ 「数時間あれば、治せるのですよ」 ドルチェッタ 「自分の身体を、1から創る事に比べれば……チョロイもんなのです」 匠哉 「はは、それもそうか」 匠哉 「で、コルプスはどうした？ 姿が見えんが」 ドルチェッタ 「……あれは、本当に埒外なのですよ」 ドルチェッタ 「とても、斃し切れはしなかったのです。ですから――皆さんの外形を保存した要領で、私の世界に閉じ込めました」 ドルチェッタ 「情報の1つとして、永久に飼い殺してやるのですよ」 匠哉 「へえ……やっぱり器用だな、お前」 匠哉 「ともあれ、これで事件も終わりか。うん、良く頑張ったな」 匠哉 「不謹慎だが――皆で街に出て騒ぐのは、なかなか楽しかった。ありがとう、ドルチェッタ」 ドルチェッタ 「…………」 ドルチェッタ 「……もしかして、ご褒美は今ので終了なのですか？」 匠哉 「え？ えっと……」 匠哉 「ご、ご不満でしょうか？ 他に、どんな褒め方をお望みで？」 ドルチェッタ 「接触刺激が足りないのです。もっとこう、抱き締めたりするべきなのですよ！」 匠哉 「だ、抱き締め？」 匠哉 「うーん……でもそういうのは、身体が元に戻ってからの方がいいんじゃないか？」 ドルチェッタ 「む――確かに、一理あるのです」 ドルチェッタ 「……じゃあ、匠哉さん。私が私の修復を終えるまで、そこで待っていて欲しいのです――」
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