幽子 「……太陽を覆わんとする、巨きな兇星」 幽子 「やはり、この国に踏み込んだわね。ならば、私の手で征討してあげるわ――」
VS土御門明雅 明雅 「お待ちください、陛下!」 幽子 「おや、明雅。何か用かしら――?」 明雅 「差し出がましいようですが、こんな時間に何処へ行幸なされるのですか?」 明雅 「今は夜間です。陛下の御力も、この刻限では発揮出来ないはず――」 幽子 「くすくす。心配ないわ、明雅」 幽子 「ほら、月が出てる。太陽の光は、ちゃんと地上に届いているもの」 幽子 「くすくす、くすくす――」 明雅 「――……」 幽子 「……あら? 何やら、不穏な空気ね――」 明雅 「街で起こっている怪事は、陛下の手を煩わせる程のものでは御座いません」 明雅 「それでも往かれるというのなら、こちらも断腸の思いで阻ませて頂きます」 VS鳳仙院瑞枝 瑞枝 「なっ、仮面っぽい人がいる!?」 瑞枝 「何でしょう、ガンダムのライヴァルキャラでしょうか……?」 幽子 「……失敬ね、鳳仙院瑞枝」 幽子 「本国の天皇に対して、それはあんまりだと思わない――?」 瑞枝 「……天皇?」 幽子 「ええ。信じられないでしょうけど、これでも私は――」 瑞枝 「……確かフェアバーンは、天皇に柔術を教えたという男から技を授かったはず」 瑞枝 「つまり天皇家は、代々古流柔術を修めているって事ですよねっっ!!!!」 幽子 「……え? え?」 瑞枝 「見たい見たい、凄く見てみたいですっ!!!」 幽子 「――何この子ッ!? 新感覚過ぎて付いて行けない……ッ!!!」 瑞枝 「鳳仙院流空手、鳳仙院瑞枝――いざ参りますッッ!!!!」 幽子 「え、ちょ、ちょっと待って――」 幽子 「確かに教わった覚えはあるけど、ええと、どうするんだったかしら――?」 VS月見迦具夜 幽子 「あら、迦具夜比売じゃない――」 迦具夜 「……うわ、幽子」 幽子 「くすくす。どうしたのかしら、何やら急いでいたみたいだけど――?」 迦具夜 「……美空ちゃんから、逃げて来たんだよ」 迦具夜 「好いてくれるのは嬉しいんだけど、もう少し何とかならないかなぁ……」 幽子 「くすくす、それは無理ね――」 幽子 「貴方自身が、周りの人間を狂わせているんだもの。ほら、前世もそうだったでしょう――?」 迦具夜 「……そっか。なら、しょうがないね」 迦具夜 「いずれはお兄ちゃんも、私への愛で狂っちゃうんだ。うんうん、それはしょうがないよ」 幽子 「――……」 幽子 「……貴方に求婚するには、貢ぎ物が必要だったわよね。貧しい匠哉から、何を取り上げるつもりなの――?」 迦具夜 「お兄ちゃんはぁ、私に愛を貢いでくれればそれでいいんだよ?」 幽子 「…………」 幽子 「こういうの、現代語では何と言うんだったかしら。ああ、確か『キモい』――」 迦具夜 「う、うっさいなぁッ!!!」 迦具夜 「ええい、ここで遭ったが百年目ッッ!!! 今度こそ、三種の神器を貰い受けるッッ!!!!」 幽子 「くすくす、子供は元気ね。勝てない闘いを挑むその蛮勇、若さの賜物だわ」 幽子 「でも安心なさい、迦具夜比売。貴方の死体は火葬して、ちゃんと月に送ってあげるから――」 VS月見匠哉 匠哉 「――そこまでだ、幽子っ!」 匠哉 「うちの妹を苛めるのは、そろそろ止めにして貰おうかっ!!」 幽子 「……匠哉。貴方、結構シスコンよね――」 匠哉 「はっはー。それにしても、まさかお前まで出て来るとは」 匠哉 「狙いはドルチェッタ……な訳ないよな。あいつは有害だけど危険じゃない、お前が出陣する程の相手でもない」 匠哉 「となるとやっぱり、猫眼のコルプスとかいう野郎かね」 幽子 「あら、知っていたの――」 幽子 「……いえ、待って。この夜が危険だと理解しているのなら、どうして貴方は出歩いているのかしら――?」 匠哉 「んー、何と言うか。2回も会ったらそれは縁かな、とか思ったり思わなかったり」 幽子 「――……」 幽子 「前言撤回、貴方は理解出来ていないわ。コルプスがどれ程恐ろしいか、まったく分かっていない」 匠哉 「『カラバの悪魔』って呼ばれてた殺し屋だろ? ホント悪魔が多いな、フランスは」 幽子 「それは、コルプスの元となった男の事。今はまったくの別物よ」 幽子 「カラバの悪魔は、異端審問部の上位4人――黙示録四騎士が総掛かりでも、魂だけを引き剥がして、封じ込めるのが精一杯だった魔人」 幽子 「しかも、魂を失い肉塊となったソレは――己の中身を探し求めるだけの、さらに手の付けられない怪物と化した」 幽子 「分かっているの、匠哉?」 匠哉 「うむ。IEOのサイトにも、そんな事が書いてあったな」 幽子 「なら、家で大人しくしていなさい。貴方なんて、一息で殺されてしまうわ――」 匠哉 「――……」 匠哉 「……お前の様子で確信した。やはり猫眼のコルプスは、この街にいる」 匠哉 「ついでに、コルプスの目的も読めた。俺に出来る事なんてなかろうが、気付いた以上は放っておけない」 幽子 「――……」 幽子 「まったく、救いようがない人。そもそも貴方は、他者からの救いなど必要としていないのね」 幽子 「……けれど、それでも、だからこそ、私は――!」 VS玉兎 迦具夜 「ダメだよ幽子、お兄ちゃんを苛めちゃ」 幽子 「……迦具夜比売? 匠哉に逃がして貰ったくせに、私の元に戻って来るなんて――」 幽子 「いえ。貴方は、迦具夜比売じゃないわね――?」 迦具夜 「そう、私はドルチェッタ。貴方は私に用がないみたいだけど、こっちは用があるから遭いに来たの」 幽子 「……やれやれ」 幽子 「まぁ、良いわ。出遭った以上は、相手をしてあげましょうか――」 迦具夜 「ふふ、話が早くて助かる」 迦具夜 「じゃあ往くよッッ!!!! 来い、玉兎――ッッ!!!!」 幽子 「――ッ!?」 幽子 「驚いた……そんな事まで真似出来るのね、貴方――」 迦具夜 『どう、凄いでしょ?』 迦具夜 『まぁこの玉兎は私と同じく、本物には遠く及ばない贋作だけどね』 迦具夜 『――それでも、貴方を踏み潰すくらいなら容易いよ?』 幽子 「…………」 幽子 「……まったく。何が、『有害だけど危険じゃない』よ」 幽子 「これは本気で闘わないと、殺され兼ねない相手だわ――」 迦具夜 『そう、本気で来てね』 迦具夜 『本気を出せば出す程に――私は、高い数値を得る事が出来るんだから』 迦具夜 『さぁ、覚悟――ッッ!!!!』 幽子 「……でもあの子、知らないのかしら?」 幽子 「ならば、教えてあげましょうか。太陽は月よりも、遥かに高く巨きいとね――」 幽子 「……手加減されたか」 幽子 「成程。『有害だけど危険じゃない』というのは、どうやら本当みたいね――」 幽子 「……でも匠哉は、どうしてあの子をそこまで理解しているの――?」 幽子 「――……」 明雅 「見付けましたよ、陛下っ!」 明雅 「さぁ、陣にお戻りになって頂き――……あ、あの、何かありましたか?」 幽子 「……いえ、何もなかったわ。コルプスも、見付からなかった」 明雅 「陛下……?」 幽子 「帰りましょうか、明雅」 幽子 「どうやら私は、脇役でしかないみたい。後の事は、主役とヒロインに任せるわ――」
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