飛鳥 「……風が、気持ち悪いわね」 飛鳥 「件の、ドルチェッタとかいう奴のせいかしら? でも、今までこんな事はなかったはず――」 飛鳥 「少し、気になるわね。柄じゃないけど、調べに行ってみましょうか」
VS月見匠哉 匠哉 「……エンジン音がすると思えば、やっぱりお前のバイクか」 飛鳥 「あら、月見匠哉。青森で会った時以来ね」 匠哉 「あー……俺、お前に用があるんだ。青森では、寝不足のせいですっかり忘れていたが」 飛鳥 「――? 何かしら?」 匠哉 「その、前に約束したろ? 俺が、緋姫ちゃんを護るって」 匠哉 「なのに、緋姫ちゃんはあんな事に――」 飛鳥 「……ぷ」 匠哉 「ぷ?」 飛鳥 「あははっ、そんな事気にしてたの? 存外繊細なのね、貴方!」 匠哉 「…………」 飛鳥 「晴良を相手にして、生きて帰っただけでも充分よ。出来る限りの事はしたんでしょう?」 匠哉 「……まぁ、したけどさー」 飛鳥 「なら、問題ないじゃない。それにしても……ぷ、くくっ、はははははっ!」 匠哉 「ええい、こっちは真剣に悩んでいたというのに!」 匠哉 「勝負だ、白酉飛鳥ッ!! 今宵、どちらが星丘市最速か決めてやるッ!!!」 飛鳥 「ははは……え、何? レース?」 飛鳥 「別にいいけど――いくら貴方でも、エンジン付きには敵わないんじゃない?」 VS灰島泉 泉 「む、この音はヤマハ・トリッカー?」 泉 「オンロードからオフロードまで、何でも御座れのヤツだったか。その名の通り、技に適したモーターバイク」 泉 「……で、だ。こんな夜に、そんなもんを乗り回してる奴は――」 飛鳥 「今晩は、泉」 泉 「ぎゃああああ、やっぱりぃぃぃぃッッ!!!!」 飛鳥 「……何で、私と対面しただけで悲鳴を上げるのよ」 飛鳥 「と言うか、どうして街に出てるの? 伯爵を倒して、一段落したんじゃなかったっけ?」 泉 「……フフフ、俺は迅徒を甘く見ていました。伯爵と闘ってボロボロの俺に、何の遠慮もなく仕事を与えるとは」 泉 「さすがは、次期黒き騎士と噂される美榊迅徒。人格面の黒さが、マジハンパねぇぜ!」 飛鳥 「……ふぅん。つまり、この街にはまだ何かいるって事か」 泉 「え!? あ、いや……ほら、例のドルチェッタって奴だよ!」 飛鳥 「ほう、ドルチェッタでもないと」 飛鳥 「気になるわね。手荒な方法を使ってでも、聞き出してみましょうか」 VSヘレン・サイクス 飛鳥 「あ、ヘレン」 ヘレン 「おや。誰かと思えば、飛鳥ですか」 飛鳥 「貴方、この辺で泉を見なかった? 追い詰めたんだけど、逃げられちゃって」 ヘレン 「泉って、あの異端審問官ですの? それなら、さっき向こうに走り去って行きましたけど」 飛鳥 「そう。助かったわ、ありがとう」 ヘレン 「こちらからも聞きますが、迦具夜を見ませんでしたか? ボコボコにしてやりたいんですけど、なかなか見付からなくて」 飛鳥 「月見迦具夜? 見てないわね……兄ならいたけど」 ヘレン 「そうですか……」 ヘレン 「ああああ、イライラして来ましたわッッ!!!!」 飛鳥 「――!?」 ヘレン 「もう誰でも良いッッ!!!! まずは飛鳥、貴方からズタズタになりなさい――ッッ!!!!」 VS春獄晴良 晴良 「おやおや、いきなり襲い掛かるとは。相変わらず、ヘレンは短気だね」 飛鳥 「晴良……」 晴良 「灰島泉を捜してるんだったかな? でも悪いね、ここは通行止めだ」 飛鳥 「……この先、何かあるの?」 晴良 「…………」 晴良 「ま、隠しても仕方ないか。この先にはね、ドルチェッタがいるんだよ」 晴良 「――アレを倒されると困る。うん、とてもとても困るのさ」 飛鳥 「――……」 飛鳥 「……貴方の都合なんて、私は知らないわ」 飛鳥 「ドルチェッタも関係ない。泉が先にいるから、進ませて貰うだけよ」 VS倉元緋姫 飛鳥 「……不可解だわ」 飛鳥 「私はここを通りたいだけなのに、どうして喧嘩を売って来るの?」 緋姫 「その理由は明白です。私には、闘いが必要なんですよ」 緋姫 「外形は、充分に揃いました。しかし私が未熟では、何の役にも立ちませんから」 飛鳥 「……まったく、ゲームじゃあるまいし」 飛鳥 「と言うか貴方、以前もプリンセスの姿で現れたらしいわね。好きなの、それ?」 緋姫 「まさか。倉元緋姫以外の私も言っていましたが、単なる資料に好き嫌いなんてありませんよ」 緋姫 「まぁこの外形は、人間にしてはスペックが高い。扱い易いという意味では、好きではありますね」 飛鳥 「ああ、やっぱり強いのね」 緋姫 「ですが、思い入れはありません。この姿で、貴方の前に現れたのは――ほら、空気を読んだんですよ」 飛鳥 「……成程。確かに、気は利いている」 飛鳥 「ならば、それに報いないとね。全力で、貴方を破壊させて貰うわ」 飛鳥 「――捕まえたわよ、泉!」 泉 「うおぉ……ッ!?」 飛鳥 「さぁ、観念なさい。この街には、今何がいるの?」 泉 「……別に、街にいる訳じゃねえよ。日本に来てるから、一応警戒してるだけだ」 泉 「猫眼のコルプス、っていう呪徒でな。元は、フランスで殺し屋をやってた男だよ」 飛鳥 「ふむ」 泉 「そいつは仕事熱心でね。不死者の血肉を喰らって、人外に転化したり」 泉 「夜目が効くように、猫の眼球を自分に移植したりした――筋金入りのバケモンさ」 飛鳥 「ああ、猫の眼って人の眼と同じくらいの大きさらしいわね」 泉 「うむ。で、飛鳥よ」 泉 「お前、この話を聞いてどうするつもりだ?」 飛鳥 「え? 別に、どうする気もないけど」 飛鳥 「知らない流れが気に入らなかったから、問い質してみただけよ」 泉 「――ですよねッッ!!!! 畜生、ホント何のために話したんだ俺ッッ!!!!」 飛鳥 「お礼はするわよ。貴方、新しく出来たラーメン屋を知ってる?」 泉 「へ? うん、知ってるけど」 飛鳥 「なら、話は早い」 飛鳥 「清貧の神父サマに、奢ってあげてもいいわ。行くなら、後ろに乗りなさい」
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