月見マナ 「……月に落ちる、暗い影」 月見マナ 「この私にすら感じ取れるとは……ドルチェッタめ、調子良く力を溜め込んでいるようですね」 月見マナ 「折角ですし、御屋敷を抜け出して見に行ってみましょうか。敵対するか否かは、その時の気分次第という事で――」
VS渡辺麗衣 麗衣 「待ちなさい、月見さんっ!」 月見マナ 「おや、御嬢様」 月見マナ 「どうなされたのですか? てっきり、もうお休みかと思っていましたが……」 麗衣 「今日は珍しく、貴方が泊り込みの日ですもの。夜更かしもやぶさかではありません」 麗衣 「……って、そうではなく! こんな夜中に、どこへ行くつもりですのっ!?」 月見マナ 「少しばかり、夜風を浴びに」 麗衣 「……いい加減に学びなさい、月見さん。貴方は散歩気分なのかも知れませんが、そうやって踏み込むのはいつだって死地ではありませんか」 月見マナ 「それも重畳です。何しろ――幼い私の孤独を癒してくれたのは、忍び寄る死神だけでしたから」 麗衣 「……っ! でもそれは、今の貴方には必要ないでしょう」 麗衣 「孤独を癒して欲しいのなら、私が一晩掛けて癒してあげますわ」 月見マナ 「……やれやれ、困った御嬢様ですね」 月見マナ 「さぁ、お休みの時間です。眠れないのでしたら、優しく寝かし付けて差し上げましょう」 VS月見迦具夜 迦具夜 「お、お兄ちゃん?」 月見マナ 「いけませんね、こんな夜中に出歩いては。悪い人に襲われてしまいますよ?」 迦具夜 「あ、そっか……今日は、渡辺家に泊まりなんだっけ」 月見マナ 「ええ。しかし御嬢様は、今頃は素敵な夢の中。仕事がある訳でもないので、こうして出歩かせて貰っています」 迦具夜 「……夢の中? お兄ちゃんがいるのに、寝ちゃってるの?」 迦具夜 「お兄ちゃん……麗衣さんに、何かあった?」 月見マナ 「御嬢様は、私とちょっとした運動を。3ラウンド制でね」 月見マナ 「その結果、疲れ果ててお休みになられたのです。……ああ、格闘ゲームの話ですよ?」 迦具夜 「そ、そう……」 迦具夜 「えっと……い、言われた通り私は帰るよ。じゃあね、お兄ちゃ――」 月見マナ 「駄目ですよ、迦具夜さん」 月見マナ 「警告したでしょう? 悪い人に襲われてしまいますよ、と」 月見マナ 「さて――どんな風に貴方を襲えば、愉しい夜になるでしょうかね?」 VS鳳仙院瑞枝 瑞枝 「――匠哉さんッッ!!!!」 月見マナ 「瑞枝、さん? 何故ここに――確か、北海道に行かれたはずでは?」 瑞枝 「そんな事はどうでもいいんですッ! 貴方、こんな所で――」 瑞枝 「またそんな女装をして、女の子を誑かしているんですかッ!!」 月見マナ 「ああ、お気になさらず。これは、兄妹のちょっとしたスキンシップですよ」 月見マナ 「んはっ――美味しい」 瑞枝 「い、妹にまで……」 瑞枝 「何て不埒なッッ!!! ここは1発、キツい制裁をお見舞いしてあげましょうッッ!!!!」 月見マナ 「…………」 月見マナ 「……どうやら、闘うしかないようですね」 月見マナ 「しかし、酷い言われようです。ふふふ――いっそ、本当に誑かしてしまいましょうか?」 VS谷川花音 花音 「……相変わらずだな、其方は。旅館で押し倒された時から変わっておらん」 月見マナ 「花音さん――いえ、貴方は」 月見マナ 「……こうして会うのは2度目ですね、ドルチェッタ」 花音 「ああ、2度目だな。其方も某も、姿は大分違うが」 月見マナ 「今度は、花音さんに化身しましたか……」 花音 「谷川花音には、優れた能力が備わっている。しかも、神器使いだ」 花音 「その上――神族程には逸脱しておらず、なかなか扱い易い。極めて優れた外形と言えるだろう」 月見マナ 「…………」 花音 「どうした、何か言ったらどうだ? もしや怖気付いたか?」 花音 「まぁ、無理もないか。其方は、谷川花音の力を良く知ってい――」 月見マナ 「何という――僥倖」 花音 「……は?」 月見マナ 「花音さんを御嬢様に独占され、寂しい思いをしていましたが……こちらの花音さんを私用にすれば、全て解決という訳ですか」 花音 「ちょ、ちょっと待て、月見――」 月見マナ 「ああ――こちらを御嬢様に渡して、本物を返して貰うという手もありますね」 月見マナ 「まぁどちらにしろ、この花音さんは捕獲しなければ。ついでに、少し味見もしておきましょうか」 花音 「く――この色情狂め! もう少し、真剣に愛してくれれば良かろうに……ッ!」 VS伯爵 月見マナ 「所詮は幻……外形を棄てて逃げましたか、ドルチェッタ」 月見マナ 「やれやれ、たっぷりと可愛がってあげたかったのですが――」 ??? 「――なかなか興味深い話をしているな、少年」 ??? 「ああ、いや……今の君を少年と呼ぶのは無粋か? しかし、少女と呼ぶのもな……」 月見マナ 「…………」 月見マナ 「……貴方も幻ですか、伯爵?」 伯爵 「無論、幻であろうよ。私は500年以上前に死んだ人間だ、幻でないはずがなかろう?」 月見マナ 「……貴方は確かに、この手で滅ぼしたはずですが……?」 伯爵 「ふむ、当然の疑問だ」 伯爵 「君は、『不思議の国のアリス』を知っているかね? キャロルのアリスだ」 月見マナ 「ええ、勿論」 伯爵 「宜しい。さて――主人公のアリスは『永遠の少女』として有名な訳だが、何故だか分かるかな? 実在のアリス・リデルは皆と同じく歳を取り、当たり前のように棺桶に入ったというのに」 月見マナ 「…………」 月見マナ 「……物語は劣化しません。実在のアリスがどうなろうと、物語の中のアリスは変化しない」 伯爵 「そう、その通りだ。物分かりが良いな、君は」 伯爵 「まぁ――そういう事だよ。君も知っているだろう、私の『物語』を」 伯爵 「実在のヴラド・ツェペシュがどうなろうと――今ここにいる私がどうなろうと、数多きドラキュラの物語に変化はない」 伯爵 「変化がないのだから、当然のように私も『いる』のだ。何度滅ぼそうが、『永遠の吸血鬼』を消す事など出来ぬ」 伯爵 「……いやはや。この世界は、まだ私を苦しめたいらしい」 月見マナ 「――……」 伯爵 「しかしそれでも、神器の傷は深いようだ。外形再生にこれ程までに時間が掛かった上、しかも万全ではない」 伯爵 「私としては、栄養の補給がしたいのだよ。そこの、少女2人――彼女達を、晩餐として頂きたいのだがね」 月見マナ 「ああ、駄目ですよ。彼女達を美味しく頂いて良いのは、この世で私だけです」 伯爵 「ふむ、そう言うだろうとは思っていた」 伯爵 「良かろう――我等は、女性を食す同類だ。順位を決めるのも、無意味ではあるまいよ」 月見マナ 「邪魔者の御掃除は、これにて完了」 月見マナ 「しかし……相手がこの御二人だけというのも、少々物足りませんね」 月見マナ 「…………」 月見マナ 「ドルチェッタは逃げたのであって、倒されたのではない……街の歪みはそのまま」 月見マナ 「なら、心配は要りませんか。未だ多くの方々が、街を彷徨しておられるはず」 月見マナ 「ここを通り掛かった幸運な方を、1人残らず引き擦り込むとしましょう。ああ、何て素敵な夜」 月見マナ 「さて――それまでは、御二人に楽しんで頂きましょうか。奉仕はメイドの勤めですからね、ええ」 月見マナ 「ふふ、たまには良いものです。性格を、完全に月見マナへ切り替えるのも――」
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