〜プロローグ〜

 緋姫
「何だか、空気がピリピリしてて眠れませんね……」
 緋姫
「少し、出掛けてみましょうか。病室ここで呆っとしていても、得るものはないですし」
 緋姫
「でも、気を付けないと――見付かって、看護師さんに怒られるのは嫌ですからね」


貧家格芸・アーケイドエイジ4
〜緋姫ルート〜

大根メロン


 VS霧神瀬利花

 ???
「……緋姫っ!? お前、また病院から抜け出したのかっ!!?」
 緋姫
「あっ、霧神さん……もう、大袈裟なんですよ。私は記憶を失っているだけで、他は元気なんですし」
 瀬利花
「お前が記憶を失った原因は頭部へのダメージだ、楽観出来るものではない!」
 瀬利花
「とにかく、病院に戻るんだ。何かあったらどうするつもりなのだ?」
 緋姫
「その言葉に、『はい分かりました』と頷けるような人間なら、そもそも抜け出したりはしないんでしょうね」
 瀬利花
「……なら、力尽くで送り返す。少し痛いだろうが、我慢してくれ」
 緋姫
「怪我人相手に、酷い事を言う人ですねえ」
 緋姫
「でも知っているでしょう、私は喧嘩が強いんですよ。まぁ、私自身は良く知りませんが」

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- 2 -

- 1 -

- FIGHT -






 VS鳳仙院瑞枝

 ???
「……あれ、撫子さん?」
 緋姫
「はい? 私ですか?」
 ???
「あ……御免なさい、人違いでした。しかし、本当に良く似て――って、どうかしました?」
 緋姫
「あ、いえ……足が、悪いんですね。あ、変な事を訊いて済みません」
 ???
「いえいえ、お気になさらずに。脊椎の方に、ちょっと問題がありましてね。けれども、貴方も――」
 緋姫
「はい。頭に大怪我したらしくて、記憶がなくなっちゃったんです」
 ???
「それはそれは……大変でしたね」
 ???
「でもまぁ、多少身体が悪くとも何とかなるものですよ。私も、この車椅子で空手を続けていますし」
 緋姫
「空手、ですか」
 ???
「ええ。ですから、強い人は見逃せないんです。武人の血が騒ぐんですよ」
 ???
「――闘えますよね? 多少身体が悪くとも、何とかなりますからね」
 緋姫
「え、あの……?」
 瑞枝
「鳳仙院流空手、鳳仙院瑞枝――いざ、参りますッ!」

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- 2 -

- 1 -

- FIGHT -






 VS春獄晴良

 ???
「――夜更かしは良くないよ。それが怪我人なら尚更だ」
 緋姫
「貴方は……春獄晴良、さん」
 晴良
「おや? 1度見舞いに行っただけなのに、名前を覚えててくれたとは嬉しいね」
 緋姫
「……他の人からも、貴方の名前は聞きますから」
 晴良
「へえ、それはちょっと気になるな。君は僕に関して、どんな話を聞いている?」
 緋姫
「……では、単刀直入に尋ねます」
 緋姫
「私が記憶を失ったのは、貴方のせいだという話――それは、本当ですか?」
 晴良
「ああ、全然違うよ。僕のせいじゃない」
 晴良
「あれは、君のせいだ。君が僕より弱かった事が、何よりの原因さ。僕に勝っていれば、大事な記憶を失う事もなかっただろうに」
 緋姫
「――……」
 晴良
「そんなに睨んでも、意味はないよ。僕をどうしたって、君の記憶が戻る訳ではないしね。八つ当たり以外の何物でもない」
 晴良
「でもまあ……今ならそれも正解かな。僕を倒して進めば、もしかしたら望むモノに出会えるかも知れないよ?」

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- 2 -

- 1 -

- FIGHT -






 VS倉元緋姫

 緋姫
「え……っ!?」
 緋姫
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか。いつも見ている、貴方自身の顔ですよ?」
 緋姫
「…………」
 緋姫
「……私には、一卵性双生児の姉妹がいるとか? 別に、いても不思議ではありませんけど」
 緋姫
「いえ、そういう事ではありません。私は、貴方の外形を被っているだけです」
 緋姫
「……偽者、ですか?」
 緋姫
「まぁ、簡単に言えばそうですね。けれど私に取っては、貴方の方が偽者ですが」
 緋姫
「……? 何を――」
 緋姫
「私は、今の貴方を転写している訳ではありません。記録レコードから引き出した、倉元緋姫の情報を纏っているんです」
 緋姫
「つまり――この倉元緋姫わたしには、過去の記憶メモリィがあるんですよ」
 緋姫
「……ッ!!?」
 緋姫
「だから、私は貴方が赦せない。あれ程までに身を焦がした情熱を忘れ、ただ生きているだけの貴方が」
 緋姫
「消え去りなさい、この偽者めッッ!!!! 彼への想いを知らない貴方に、倉元緋姫を名乗る資格はありません――ッッ!!!!」

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- 2 -

- 1 -

- FIGHT -






 VS月見匠哉

 緋姫
「……彼への想いを知らない私、か」
 緋姫
「その彼っていうのは、何処の誰なんでしょう……?」
 ???
「げっ、緋姫ちゃんっ!!?」
 緋姫
「――? 何ですか貴方は、人の顔を見るなり嫌そうにして……」
 ???
「ああいや、嫌ではないんだが……会いたくなかったと言うか、合わせる顔がなかったと言うか」
 緋姫
「……貴方も、過去の私を知っている人ですか?」
 ???
「えっと……うん、そう」
 緋姫
「なら、訊きたい事があるんです。見舞いに来てくれる方々は、何故か私の過去に関しては口を噤むんですよ。一体、どうしてですか?」
 ???
「あー……それに関しては、俺も口を噤むしかないと思う」
 緋姫
「……そうですか。まぁ、まともな人間じゃないだろうとは思っていますけどね。普通の人間が、こんなに『殺し方』を知っているはずがありませんし」
 ???
「いや。緋姫ちゃん、それは――」
 緋姫
「では、最後にもう1つ。私には想い人がいたらしいんですが、それが誰か知っていますか?」
 ???
「ほぇ、想い人? 何と、緋姫ちゃんには好きな人がいたのか」
 ???
「……うーん、誰だろう? 泉、は在り得ないし……真? 迅徒? んん、しっくり来ないなぁ」
 ???
「ゴメン緋姫ちゃん、分かんない」
 緋姫
「……そうですか。別に、期待はしていませんでしたけど」
 ???
「役に立てなくて済まなかった、じゃあ俺はこの辺で――」
 緋姫
「――待ちなさい」
 ???
「え? な、何でございましょう?」
 緋姫
「……何だか、貴方を見ていると胸がモヤモヤするんですよ。せっかく不眠の原因を消して来たのに、こんなものを抱えたままでは眠れません」
 緋姫
「きっと、貴方がいるから悪いんです。抹消してから、病院に戻るとしましょう」

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- 1 -

- FIGHT -






〜エピローグ〜

 緋姫
「何だったんでしょう、さっきの人……勝ったと思った途端に、もの凄いスピードで逃げちゃいましたけど」
 緋姫
「でも、あれは酷いです。『げっ』はないでしょう、『げっ』は」
 緋姫
「私だって女の子なんですから、そんな事を言われれば傷付いてしまうのに」
 緋姫
「そう言えば名も名乗りませんでしたね、あの人。いや別に、名前を知った所でどうだという訳ではないんですが」
 緋姫
「もう2度と、会う事もないでしょうし。もう、2度と――」
 緋姫
「…………」
 緋姫
「……ま、まぁ、それも悲しい話ですね。どんな縁かは知りませんが、あの人と私は知り合いなんですから」
 緋姫
「でも……知り合いなら、見舞いに来てくれてもいいじゃないですかっ。合わせる顔がないとか言ってましたけど、そんなの――」
 緋姫
「……って、あれ?」
 緋姫
「今夜は色々あったのに、何であの人の事ばかり考えてるんでしょう……?」






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