匠哉 「……草木も眠る丑三つ時、か」 匠哉 「しっかし真の奴、本当なんだろうな? こんな時間から、『安川屋』で安売りが始まるって話――とっくに、閉店時間など過ぎてるというのに」 匠哉 「ま、騙されたと思って行ってみよう。本当に騙されてるんだとしても、明日真をブン殴ればそれで済む事だしな――」
VS美榊迅徒 迅徒 「おや、匠哉さん? こんな時間に一体どちらへ?」 匠哉 「……ん? ああいや、別に大した用事じゃないんだが――そっちは?」 迅徒 「僕はいつもの尊い御勤めですよ。何やら人ならざる気配を感じるので、害なす前に神罰を下そうかと」 匠哉 「ふむ、成程。――そういう建前で、ライヴァルを事前に排除しているのか」 迅徒 「……は?」 匠哉 「馬鹿め、この俺が騙されると思ったら大間違いだッ!! どうせお前も、安川屋の安売りが目当てなんだろう……ッ!!」 迅徒 「――何を言っているのですか匠哉さん!? 皆のスーパー、安川屋の閉店時間はもう6時間も前ですよッ!?」 匠哉 「黙れッ! 今夜の俺は凶暴だぜ、邪魔する奴は轢き潰して罷り通る……ッッ!!!」 VS霧神瀬利花 ??? 「――――」 匠哉 (お? あれは……瀬利花?) 匠哉 (あいつも安売りが目当てか……? 1人暮らしだもんなぁ、むむむ) 匠哉 (仕方あるまい。月見家の生活のために、心を鬼にして蹴落とすべし) 匠哉 (――と言う訳でッ! 奇襲ッッ!! 強襲ッッ!! 御臨終ッッ!!!!) 瀬利花 (街に満ちるこの気……正体は知れんが、只者でないのは確かだ。速やかに調伏しなければ――) 匠哉 「うらァァァァァあああああああ――ッッ!!!!」 瀬利花 「――ッッ!!!? な、何だぁ――ッッ!!!?」 VS月見迦具夜 匠哉 「さて。邪魔者は退けたし、後は安川屋に急ぐだけ――」 ??? 「――奇襲ッッ!! 強襲ッッ!! 御臨終ッッ!!!!」 匠哉 「ぬわ、危ねえっ!!? って、この武器掃射は――」 ??? 「くっ、外しちゃったか……!」 匠哉 「――やっぱり迦具夜かッ!! 一体どういうつもりだッ!!?」 迦具夜 「ごめんね、お兄ちゃん……私が安川屋の安売りに行くためには、どうしてもお兄ちゃんを倒さないといけないんだ――」 匠哉 「な……っ!?」 迦具夜 「競争相手は、予め全て倒しておくっ!」 迦具夜 「だから覚悟してね、お兄ちゃん……っ!!」 匠哉 「くッ――何と言う事だ。現代社会の生存競争の中では、例え兄妹であっても骨肉相食まねばならないのか……ッ!!!」 VS霧神匠哉 匠哉 「つ、辛く厳しい兄妹対決だった。けれどどうにか――」 ??? 「……兄妹、か」 匠哉 「――!?」 ??? 「同じ親から産まれたという意味では、俺と貴様も兄弟のようなものだが――」 匠哉 「……お前」 匠哉 「霧神、匠哉。性懲りもなく、また俺を殺しに来たのか」 霧神匠哉 「ああ、いい機会だからな。最近は何やら、不可解な化生が街をうろついている。ならばお前が死んでも、その化生のせいという事になるであろうよ」 匠哉 「不可解な化生……? そう言えば、迅徒がそんな感じの事を言っていたような」 霧神匠哉 「気になるか? 何、すぐに会えるさ。お前を殺した後、そのバケモノも送ってやるからな」 匠哉 「…………」 霧神匠哉 「――雁首揃えて閻魔の裁きを受けるがいいッッ!!!! 輪廻の先は地獄の道と覚悟せよ……ッッ!!!!」 VS犬塚麻弥 匠哉 「――な」 麻弥 「久し振り、匠哉君――と言いたい所だけど、初めましてだね」 匠哉 「お前、は……」 麻弥 「あ〜、うん。何て説明すればいいのかな。私は、犬塚麻弥本人ではない――んだけど」 麻弥 「えっと……要するに、私は犬塚麻弥を演じてるんだよ。麻弥ごっこだね」 匠哉 「……何のために?」 麻弥 「うん。唐突ですが実は私、地球の人間よりも高度な生命体なのです。けれど、過ぎたるは及ばざるが如し――私は高度過ぎるせいで、地球人とのコミュニケーションが取れないのよ」 麻弥 「だから私は地球人の外形で己を鎧い、自身のレヴェルを地球人のレヴェルに合わせたの。犬塚麻弥を選んだのは、ただ単に匠哉君の記憶の中で1番鮮烈だったからなんだけど――」 匠哉 「――……」 麻弥 「……うん、失敗した。私は、この外形で貴方の前に現れてはいけなかった」 麻弥 「大目に見てくれないかなぁ……悪気があった訳じゃないんだよ。地球人の事は、地球人にならないと理解出来ない。私は犬塚麻弥になって、初めて貴方達の間にあった複雑な感情を理解したの」 匠哉 「お前の言ってる事は、良く分からんのだが……まぁ、悪気がなかったのは何となく感じる」 麻弥 「匠哉君――」 匠哉 「――けれどダメだ、運がなかったな。他の姿なら、見逃してやる事も出来たのに」 麻弥 「……そっか。なら、仕方ないね」 麻弥 「じゃあ、あの夜の続きを始めようか。頑張って逃げないと喰べちゃうからね、匠哉君……っ!」 匠哉 「ただいまー……いやまさか、ホントに安売りしてるとは。どういうイヴェントなんだか」 マナ 「あ、お帰りー」 匠哉 「ん? 起きてたのか」 マナ 「うん。匠哉は買い物帰りみたいだけど……ねえ、外で何かあった?」 匠哉 「おん? 何かって何だ?」 マナ 「さっきまで、街の方から変な気配がしてたんだけど……今は、すっかり萎んじゃってる。匠哉が弱らせたのかな、と思って」 匠哉 「どうして俺が弱らせたと思うんだよ、お前は」 匠哉 「……んー、何かあったっけ? そういや、道中で変なのと会ったような。安売り商品を取り合ったオバチャンが強烈過ぎて、あんまし覚えてないんだよなぁ」 マナ 「えぇー?」 匠哉 「つーかどうでもいいだろ、そんな事は。ほら、さっさと寝るぞ」
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