『晴から、陰陽および影につぐ。 想定外のことが起こった。 よって、ただいまからしばらくの間、全員単独行動を行ってもらう。 操が校内からいなくなった後に、再び戻る。 それまでは、なんとしても見つかるな。』 とある休み時間。 ある二人が廊下を歩いていた。 その二人は片方はいつもの様に追われていたが、今日はまだ追われていない。 そのためか―少しだけだが―、緊張感が漂っていない。 だからなのか。それとも、気付けなかったのだろうか。 廊下を歩く二人の近くの影に、ひっそりと何者かが潜んでいた事を・・・ ◇ 『単独行動を行ってもらう』 その言葉を聞かされたときは、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。 「・・・・・・・・・・」 始めは、とても怖かったものの、今は授業中らしきものらしい。 そのお陰で廊下には、誰一人いない。 「・・・・・・・・・・」 それでも、いきなり戸が開いて、人が出てくるのが怖くて、いつものように、影へと隠れてしまった。 そのまま移動していたら、チャイムが鳴り響き、部屋から人がたくさん出てきた。 自分は恐怖に追われ、人気がない廊下へと逃げ込んだ。 そのときだった。 右のほうから男と女の二人の生徒らしき人が歩いてきた。 気付かれないように、息を潜めていると、段々と近づいてきた。 顔が分かる位置まで来ると、姿を確認できた。 一人は、関係者であり、月に深い関係がある、月見匠哉。自分は月と呼んでいる。 もう一人は、昔から生きている神の一柱であり、現在は貧乏神である、月見マナ。自分は日陰と呼んでいる。 「・・・・・・・・・・」 こちらに気づく事もなく、そのまま通り過ぎようとしていたときだった。 突然、意識が飛んでしまった。 「!」 「な!」 「・・・・・・・」 意識を取り戻すと、自分は、影から飛び出しており、目の前には、驚いている二人。 いつもなら、ここで煙幕を張ったりして逃げるが、単独行動を言い渡されたときのショックと、過去のトラウマによりなってしまった、対人恐怖症によって、体が言うことを聞かない。 「!」 「きぃぃぃぃえあぁぁぁぁぁあああぁあ!」 「!・・・」 自覚をしていたが、予想以上に相当耐えていたのだろうか、相手が行動する前に、月に向かって高速移動し、空気が歪むほどの速度で、ボディーブローを放っていた。 よほど早かったのだろうか、月は一瞬で、廊下の隅にへと吹っ飛んでいった。 もう一人のほうは、突然なのか、動きが止まっていた。 「せい!」 「!」 この隙にと、自分は影へと飛び込み、逃げた。 その後の事は話す機会とやらがあったら、話すとします。 ◇ 『単独行動を行ってもらう』 突然言い渡された言葉に、陰は首を傾げ、陽はへぇーといってた。 陰陽。詳しくは『陰』と『陽』である。 二人は姉妹であり、人外である。 「ねえ、どーする?」 「とうって、単独行動だから、一人で行動するしかないようね」 陰は、陽に尋ねるが、陽は、単独行動に少々嫌がっている。 「ねえねえ」 「何?」 陽が考えていると、陰は陽の袖を引っ張った。 「あのさ、ふたりでがったいしていんようになればいいでしょ?」 「・・・そうね」 「そうだよ!それがいいとおもうよ!」 陰が言葉に漢字が入っていないような喋り方をしながら、陽を説得していたのだろう。 やがて、陽は、2、3回頷いて、 「わかった。では、行うために隠れましょう」 「はーい」 ここで、どうでもいい解説。 陰と陽の服装は揃って純白の着物。体のラインがしっかりと出ている。 顔は、布を被っており、全く分からない。 見た目は完全に同じだが、違うところがある。 それは、顔にかかっている布で、それぞれ大きく、陰と陽と書かれている。 それだけ。終了。 ここは、とある教室。資料室だ。 二人は、そこに入り、いきなり手を合わせると、体全体が輝き始めた。 光は二つだったが、お互いがくっつきあい、やがて、一つの光になった。 輝くが収まると、そこには女性がいた。 着物を着ており、後ろに長い髪を束ねていた。 そして、明後日のほうに向いている目の焦点。 そう、京に一番最初に話し掛けた謎の女性である。 話を進めやすくするため、彼女の事を陰陽と呼ぶ。 陰陽は、しばらく、ぺたぺたと体を触っていたが、息を吐いて、 「ふぅ、コレでようやく単独行動が出来るわね」 そのまま、陰陽は廊下へと飛び出た。 NEXT→白夜編弐
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