「ふう〜」 ようやく開放された。何であんなに言われるのかな?敵か味方かと聞かれてもね。俺だって、まだそこら辺の区別なんてついていないんだから。一応、味方として考えてるけどね。 「京ぽ〜ん」 手足をパタパタさせながらやって来たのは、布都である。どうした? 「ふう。あのね、京ぽんね、呼び出される前にね、懐にね、手紙隠してたの」 う、誰にも気付かれてなかったと思っていたが、見つかってたか。 「あの手紙な〜に〜?」 「あ、ああ。そういやまだ見てなかったや」 「じゃあ、見よ!」 何詰め寄って来るんだ?なんで手をワキワキさせながら寄って来るんだ?って、そこはちがーう! ◇ 拙僧は学校には通った事は無いが、この街唯一の星丘高校がどんな所かは一応知っている。まあ、そんなことはどうでもいいが。 「いてて」 畜生。あやつめ、遠慮無く投げ飛ばしおって。 ともかくここは、街にある高校。何かと物騒だとか聞いたが、なんにも無いな。 「待て待て待て待てーい♪」 遠くから楽しそうな声がする。もう来たのか、ちっこいくせに。 「ちびっていうなー!」 奴に聞えないように呟いたはずだが、あと70mほどは離れているはずだが・・・地獄耳か? 「捕まえたー!」 一瞬で、目の前まで来たこいつ…リリ―童顔の軍人らしき姿をしている小僧―は、捕まえる事に確信したのか、子供みたく笑顔をぱっと咲かせて飛び込んできた。飛び方といえば、まあ、ルパンダイブみたいなものか。 だが、そう簡単に捕まる拙僧でもないので、力を込め、 「閃!」 「げふぅ」 左足で蹴り上げ、 「光!」 「がふっ」 右足のキックで追加攻撃。 「烈脚!」 「ぐはぁ!」 最後に左足で急降下しながら蹴る。 蹴られたリリは、先ほどの速さと同じぐらいに来た道を飛んでいく。…そんなに強くは無いはずだが…まあ、いいか。 「さて」 問題は、この高校だ。京が此処にいるし、なおかつ、今は授業中らしい。 入るのが躊躇われる。 「あっちだよー!」 「よっしゃ、待てい!陳念!」 リリが誰かと話していたが…って!なぜ、此処にいる! 「まちやがれい!」 「待てといって待つ者は此処にはいない!」 拙僧は、周りで隠れられる場所…高校へと逃げこんだ。 ◇ 「………」 「ごめんね?ね?」 酷い目に合った。なんで、あんなテクニックを持っているのだろうか。 「ね?ごめんね?」 天然か、どこかで学んだのか、分からないが、天然ならば大変な事になるだろう。 「ごめんね?ごめんねぇ〜?」 あんな激し…いや、異常な動きは人が成せる業には見えなかった。 「うう…ごめんね?ごめんね?ぐす…」 「…!あ、いや、怒っちゃいない」 「え?本当?」 気がつくと、布都は泣き声で謝っており、慌てて否定すると、少し涙ぐみながら、喜びを顔一杯に出していた。 「ああ、別に怒っちゃいない。ただ、」 「ただ?」 「お前のあのテクが天然か、練習してたのか考えてただけだ」 「へえー?でもなんで?」 分かって言っているのか、素で言っているのか分からないな。 「今後の対策のためだ」 「えー、駄目だよー」 何故? 「対策をされちゃったら、今まで頑張ってきた意味がなくなっちゃうじゃん。あ、言っちゃった」 「なんの?」 「えーとね、京ぽんに元気になって欲しいから!」 えーっと、何をしたいのかな、元気にして。 そう聞くと、布都はいきなり顔を真っ赤にして、ぱたぱたと呟き始めた。 「そ、それは……を…にして……を……たいから」 「ん?よく聞えなかったぞ」 「だーめー!!一度だけだもん!」 布都はそう言い切ると、そっぽを向いた。 あーあ。こうなると駄目だ。機嫌が戻るまで、見向きもしないな。 とりあえず、コーヒーでも飲もうかと、懐に手を入れると、なにやら紙の感触が。 取り出すと、達筆な文字で「京へ」とかかれた手紙が。やべえ、忘れてた。 「これを忘れてたぜ」 「?」 元を言えば、こんな目に合ったのはこの手紙なのだが。兎に角見るか。 ◇ ともかく、拙僧は学校へと逃げ込み、捕まるのを防いだ。 「だが、ここはどこだ?」 周囲を見渡しても、あるのは資材ばかり。資料室だ。 奴の気配はなくなったが、神が放つような気配はする。偵察をしてもらうか、このまま出るか。 深く考えなくても、考えはついていた。 「式」 懐から、呪符を取り出し、名を呼ぶ。 すると、目の前の空間が小さく歪み、歪みが戻ると同時に、小さい子供がそこにいた。 子供は、一礼すると、 「お呼びで?」 と聞いた。 「ああ、近くに、白夜とは違う気配がしたものでな、それについて調べて欲しいのだ」 「分かりました」 「では、すぐに行ってくれ」 「はい」 小さな子供・・式は、そのまま外に出てしまった。 陳念は息を吐き出すと、一言。 「なんで、こんなときに来るのかね?」 ◇ 『京へ この手紙には、私が、貴方によった理由。そして、貴方の『血族』としての力について書いてあります。 ですが、この手紙を読むにあたって、注意しておきます。 内容を見ることによって、普通に生きる道に戻る扉が完全に閉ざされてしまうかもしれません。 閉ざされてしまえば、只の人間としては生きては行けないでしょう。 見たくなければ、そのまま元に戻し、「滅」と小さく唱えてください。 ですが、それでも見たいのならば、もう一つの紙を見なさい。』 一枚目の紙にはそう書かれていた。文自体には何の問題もない。だが、只の人間の『只』と言うのが気になる。 「ねー、どうするのー?」 「何をだ」 「なにって、次の紙を見るかだよ?」 「……」 次の紙を見るにはなんてことはない。だが、見たところで自分が殺されはしないかと内心怯えていた。 だが、晴夜さんらに逢ってからは、人生の中では十分すぎるほど、驚く事はあった。 だから、答えは決まった。 「見るぞ」 「…うん」 俺から出ていると思われる雰囲気で、布都も真剣な顔になっていた。 そのまま手紙の中に入っている、もう一枚の紙を取り出し読み始めた。 ◇ とある休み時間。 ほうほうのていで逃げ出した俺は、準購買でアシッドパンとかりもふぱん(超高速津軽三味線ハウス風味)を買うため、競歩みたく歩いていた。 しばらくして… 目的のものを買えたため、しっかりと歩いていると、人ごみの中に、小さな子供が一人。 「どうした?」 「……(ガシッ)」 「え?ちょっ、まっ」 気まぐれで話し掛けてみると、いきなり袖を掴み、引きずりながら人がいない影に連れ込まれた。 「なんだい?」 「見える?」 「はあ?」 連れ込まれて、聞いた第一声が「見える?」だよ。なんか変だな。 「ああ、見えるよ」 「そう」 「う、うん」 子供は小さく頷いた。 「マナって知ってる?」 「?」 突然、聞かれたこと。いきなりだったので呆然としてたが、何とか理解できた。 「ああ、うちのクラスにいるよ」 「何組?」 「…組だ」 「そう」 「うん」 短いやり取りの後、少しの沈黙が流れ、そして、 「ありがとう」 その言葉と共に、突然、目の前から消えた。 まるで、存在しなかったように。 NEXT→陰陽と影編 どーでもいい解説。 『戒』晴夜の式神さん。普段は森の中で、巫女をしている。 『式』陳念の式神さん。生まれて半年の鬼。ロリショタ。 『リリ』童顔の元軍人。実年齢は二十歳だが、一部の行動はどうみても中学生以下。 『俺』本名。後の、八岐家最強の天然である。 『アシッドパン』生地をこねる際、水ではなく百足の酸を使っているのが特徴。準購買での人気商品。 『かりもふぱん(超高速津軽三味線ハウス風味)』外はかりかり中はもふもふな独特の風味をもっているぱん。賀沢教員の好物。 『美綾流奥義ふにふに』布都が多町に迫った際に使ったテク。ある時に使用すると・・・ 『謎の女性』何処を見ているか分からない目をしている。次回と関係があるようだ。 『バーナー』学校のどこかに置いてある、見た目火炎放射器、実質バーナー。見つけたら、赤蟻相手に使ってみよう。 ぶっちゃけ、すみません、美綾さん。伝言板を見ていたら、手が勝手に。 次回には、俺は出ません。あしからず。 その代わり、たいzうわなにするやr・・・
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