邂逅輪廻



 私は走っていた。ただひたすらに。
 迫り来る悪しきものから。
 私は逃げた。あの、存在から。
 ただひたすらに走った。


 なんてね。





 朝起きるのがしんどくなって来た今日この頃。
 そんな気持ちで、担任の授業を受けていた。知ったら108つぐらいにばらされるのかね。
 そんな事を思いながら、横にある開いている窓から覗く景色を見ていた。
 直射日光が容赦なく照りつけ、秋風が容赦なく吹きつける。
 そんなときだった。
「ん?」
 一瞬だけ目の前が暗くなった気がする。
 まあ、気のせいだろうと、眠りに入ろうとしたとき、
「おい、誰だよ?」
「さあ、陰陽師?」
「でも、女だよな」
 そんな会話が聞えてくる。
 気になって、教室を見渡すと、
 後ろの開いているスペースに陰陽師が立っていた。うん、どう見ても晴夜さんだ。
「おや、授業中でしたか。失礼」
 先生、突然だからか呆然としてる。
「ふむ、おや?」
 げ、こっちに気づいてしまった。なんですか、その『いかにも納得』みたいな顔は。
「くっ」
 ようやく回復したのか、早速攻撃態勢に入った先生。だけど、晴夜さんは、
「おやおや。こんなところで逝ってしまうのもいやですしね」
 そういうと懐から、お札を取り出し、先生に向かって投げた。
 先生は撃ち落とそうと折り紙を投げる。
「『閃光』!」
 晴夜さんがそう言うと同時に、お札が光り輝き、何も見えなくなった。
 しばらくして、視界が戻ると、晴夜さんはおらず、替わりに晴夜さんの後ろにあった黒板に折り紙が刺さっていた。
 なぜか、先生は悔しがっている。ん?
 懐に何かが入っている。誰にも気付かれないように、そっと見ると、「京へ」と書かれた封筒があった。後で読んでおこう。
「多町、後で職員室に来るように」
 はい、フラグ確定!マイナスのほうの。



 う〜ん、授業中だったか。でも、京があそこにいたのは、偶然に近いものだろう。
 手紙も渡せたし。うん。
「はあ」
 どうやって隠れよう。急いできたから、服がこのままだし。…そうだ。
「戒〜」
 呪符を取り出し、名前を呼ぶ。
 すると、呪符が光り、少しの間輝く。輝きが収まると、袴の色が紺色の巫女服を着た女性が現れた。
 女性は晴夜に一礼すると、
「どうしましたか?」
「うむ、すまないが、レインに見つからないように、あの服を取ってきてもらいたい」
「承知いたしました」
 戒は窓から出ようとし、一旦降り、晴夜に向き直り、
「晴夜様、やはり、アレをするのですか?」
「うむ、仕方が無い。レインを避けるためにはそれしかないから。だから、戒」
「わかっております」
 今度はしっかりと、窓から降りた。



 こちらはどこぞの商店街。活気溢れるその中で、変な格好をした人が一人。
「嬢ちゃん嬢ちゃん」
 今では珍しい八百屋のおっちゃんが、その人に声をかけた。
「ん?僕?」
 声をかけられた、僕っ子(仮)は八百屋のおっちゃんに返事をした。
「そうだ。今ここらにいる嬢ちゃんはあんさんしかいないよ?」
「ん〜そうだね。で、何の用?」
 僕っ子はおっちゃんにツインテールをぴょこぴょこさせながら聞いた。
「そうだよ、嬢ちゃん。これ、買ってくれないかねえ?」
 そう言って差し出したのは、紙切れ…いや、呪符である。
「?これなに?」
「ああ、すまんねぇ。説明するよ」
 おっちゃんは、苦笑いしながら説明をした。
「これはね、"式神"だよ」
「え?これが式神?どんなの?」
「それは、出してからのお楽しみ」
「う〜ん、どうしようかなぁ〜」
「嬢ちゃん。是非買ってくれ。でないと…」
 おっちゃんがそこまで言うと、僕っ子は何かわかったようで。
「はっはーん。分かった買うよ。いくら?」
「おお!買ってくれるのか!ありがとう。(えっと、これはまだ新しすぎるから…)…7万でいいよ」
 おっちゃんがそう言うと、僕っ子は意外そうな顔をして、
「ふーん式神にしちゃ安いね」
「なんだ。知っているのか」
「うん。知り合いに、そっちの方の人がいるから」
「そうかい」
 僕っ子は、アサルトバックから無造作に七万円を取り出し、おっちゃんに投げ渡した。
「はい、毎度」
「うん。どうもー」
 僕っ子は、笑顔で答えた。
 去り際に、僕っ子はこんな事を言っていきました。
「でもね、おっちゃん。僕は女の子じゃなくて男の子だよ?」
 と、


 僕っ子の変な服装は、傍から見れば、童顔の軍人みたいな人という、印象を受ける。
 藍色のTシャツの上にアーマーを着ており、下はカーゴパンツにブーツを履いている。
 腰にはアサルトバックをつけており、右大腿部には銃を収納するホルスターがある。
 そんな格好をしているこの子は、八岐一族である。



 しばらく隠れていると、戒がちゃっかり戻ってきた。手にはしっかりとあの服が抱えられている。
「お持ちしました」
「うん、ありがと。少し遊んでていいよ」
「いえ、そんな事は出来ません」
 戒はそう言うと、呪符に戻った。律儀な事なこと。まあいいや。
 拙者は、早速きがえた。うん、動きやすいね。
「さて、と」
 拙者は、心の奥に力を入れるように力を込めると、姿が変わり始めた。

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