貧家偽典・グッドナイトムーン
第二話『かつての最悪と災厄その再来』

七桃りお 原作・大根メロン


 夜闇を照らす赤色があった。
 紅蓮の炎だ。
 何らかの爆撃によって破裂した占いの店は瓦礫の山と化し、俺達はその瓦礫の上に立っている。炎で囲まれているためか酷く息苦しい。
 そして辺り一帯を包む赤色の向こうに――隣に立つ顔と同じ顔が幾つも並んでいた。
 武装した緋姫ちゃん、刀を構える瀬利花、魔法冥土の級長が無表情に突っ立っている。いや、無表情というよりは顔が暗い――カオが見えない。もちろんのっぺらぼうなどではないのだが、どうも顔から表情が読み取れないような、そんなのっぺりとした顔だった。
「……完全複製したドッペルゲンガーの軍隊か」
 夜の街にドッペルゲンガーが現れる――その噂が今、現実と化した。
 現実化する噂。
 つまりそれは――あの噂も本当だということか。
「……輝くトラペゾヘドロンでも神を複製するには少し役不足でね」
 マスケラの言う通り、影の軍隊の中にはマナの姿はない。
「が、しかし。これで十分だろう。さて、仲間を殺すというのはどんな気分なのか――」

 ぱん、と。
 炎の向こうにいた級長の顔が吹き飛んだ。

「――――」
 肉塊を撒き散らしながら倒れるはずのそれは――しかし弾丸を受けた瞬間に黒の霧となって溶ける。正直言って級長の、というか誰の頭部破裂も見たくはなかったので助かった。
 見れば緋姫ちゃんはFN P90を突き出した姿勢のまま恍惚とした表情で、
「快っ感……」
「少しは躊躇いなさいよこの変態っ!!」
 級長が緋姫ちゃんを横合いから蹴り飛ばす。吹っ飛ぶ緋姫ちゃん。
「きゃうっ! くっ、こうなったらあなたも影と一緒に吹き飛ばしてやりましょうか!?」
「やれるものならやってみなさい……!!」
 バチバチと火花を産む二人。あーちょっとちょっと、今はそんな状況じゃないぞ。
「……わ、私に緋姫は斬れない。しかし影もまた輪廻から外れた異形……」
 何か一人ものすごく葛藤してるし。
 俺は三人を無視して比較的まともなマナと共に影の軍隊を睨みつける。
「で、マスケラ。何が十分だっていうの?」
「……いやはや。君達には恐れ入るよ。毎度毎度私の予想の右斜め上を言ってくれる。だがこの影の軍隊とて劣化とはいえ数で補える。時間稼ぎぐらいにはなるだろう」
 マスケラの声とともに影の軍隊が音を立てて武器を構える。
「さあ――前哨戦といこうか!!」
 同時。
 黒き津波の如く、影の軍隊が動き出した。



「匠哉、隠れてて!」
「わかった」
 としか答えられない自分に多少の歯痒さを感じつつ、俺は瓦礫に身を潜める。魔法冥土になれなければ草薙も使用できないし、天羽々斬もそう威力は発さないだろう。
 倒壊したビルを背に、緋姫ちゃんから渡されたベレッタM92を強く握りしめる。鉄の感触が妙に心地よい。
 マナの八雷神が軍隊の第一陣をなぎ払い、生まれた空間に突入した緋姫ちゃんと瀬利花が次々と影を撃破していく。級長は突っ込むようなことはせず、距離をもって各個撃破していっていた。
 俺がここからベレッタM92を撃っても恐らく避けられる。たとえ劣化複製であったとしても、彼女らの身体能力は人のソレを超えているからだ。その点、俺が周りより上だと胸を貼れることは――逃げることしかない。
 俺は無力だ。
 いつだってそうだった。俺は何かが始まってしまった後でしか動けない、気づけない。
 誰かを助けたいだなんて思っているくせに――いや、だからなのか?
 助けたいと思うからこそ始まった後でしか動けないのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 正義の味方は悪の敵がいなければ成り立たない。
 なんて――醜悪。
 自分を満たしたいがために周りを糧とする、最低最悪の害悪存在。
 その周りに居るものは全て俺に捕食されその命を落とす。
「なんて、な」
 それがどうした・・・・・・・
 醜くて結構。そもそも醜悪こそが人間の姿だ。
 俺に関わると命を落とすだって?
「そんなヤワな友人を持ったつもりは――ない」
 振り返れば。
 影の兵士は一人残らず無に帰っていた。
「……あの乱戦で、もし本物に攻撃したらどうするつもりだったんだ?」
 マナは俺の問いかけに、本当に不思議そうに首を傾げて、
「んー、あの程度で死ぬタマじゃないでしょ、ウチの部員はね」
 ……なんか微妙な信頼だな。
 ともあれ、俺には頼りになる味方が居るわけだ。
 それは純粋に、嬉しい。



 俺達は一時、星丘高校へと避難した。
 あの後マスケラは姿を現さなかった。アクションが無ければ俺達は動くことが出来ない。しかし、結果はともかくマスケラはあれだけのことをしでかしたのだ。その口ぶりから、ただ俺達にドッペルをぶつけるだけが目的だとは思えない。相手の出方がはっきりしない以上戦力を分散させるのも面倒だ、ということで夜間の高校に潜入することになったのだ。
 夜に学校へ侵入。漫画なんかでよくあるイヴェントだが、実践してみるとなかなかスリルがある。ま、たとえ幽霊が現れようともこのメンツでは軽く撃退できそうな気もするが。専門家もいるし。
 俺達は自分のクラス――数時間前までは崩壊していたのに、いつの間にか綺麗に修復されている不思議教室へと足を運び、今後を話すことになった。各々適当に腰を落とす。といっても分散するメリットはないので、俺の席を中心に座ることになった。
「……さて。黒幕がマスケラだってことは匠哉が看破したんだけど、イマイチ行動が意味不明だよね」
 マナが言う。それに答えるように瀬利花は、
「うむ、そうだな……ヤツの行動には脈絡がない。ヤツが何かを企んでいているのはわかる。そしてさっきヤツは私達を足止めしようとした。だがそれは何故だ?」
「何故って……そりゃあ企みがまだ完全じゃないから、じゃないですか?」
 緋姫ちゃんの声に、級長がため息をつきながら、
「あのね、その企みとやらが不完全なら、そもそも私達の前に姿を現さなければいいじゃない」
 あ、と気づいたような緋姫ちゃん。
 たしかにおかしい。企みが不完全なら完全になるまで待てばいいのだから。
「うーん、じゃあマスケラは私達に噂の調査をさせたくなかった、ってのは?」
「それはないと思うぞ」
 マナの言葉に、次は俺が口を挟んだ。
「調査はどうせあそこで途切れてたさ。なのに黒幕が動いたら、噂が真実だと伝えたいみたいじゃないか」
 むむむ、と唸るマナ。
 マスケラはドッペル軍団で俺達を攻撃した。緋姫ちゃんの知り合いの情報屋が本当にドッペルに殺されたのだとしたら、『夜の街にドッペルゲンガーが現れる』という噂が真実だったということになる。かつてのドッペル騒動が噂になるはずはないのだから、そういうことなのだろう。
「ということは、他の噂も本物だっということでしょうか」
 緋姫ちゃんが当然の疑問を投げかける。
 だが、
「…………」
 瀬利花と級長、そして俺の動きを固めるには十分な言葉だった。動きを止めた俺達を緋姫ちゃんが不思議そうに見つめてくる。マナと緋姫ちゃんは、この噂にあまり関係ないのか。
 どの噂も俺が過去出会ったことのある怪異なのだが、中でも『願いを叶えてくれる女の子が現れる』というものと『財宝を守る空飛ぶ竜が現れる』というものはそれぞれ瀬利花、級長も因縁がある。メロ――じゃなかった、マノン・ディアブルとファフナー。
 そして、俺は。
「もし全ての噂が真実で、それらがマスケラの手駒になってるんだったら……随分と厄介だよ」
「そうなんですか? 少なくともさっきの影人間は大したことありませんでしたが――」
「私は怖いわ」
 ぴしゃり、と。
 級長の告白が場を硬直させた。
 温度が数度下がったような錯覚が身を包む。しかし級長はそれでも構わず、
「私は怖いわよ。かつてあいつを斃した時は、何がなんだか分からなくて、がむしゃらにやってたらいつの間にか勝っていた。だから私は怖い。またあの巨竜を相手にするのは嫌よ」
 級長は自らの身体を包むように両腕を組む。そんな彼女を「ハッ」と緋姫ちゃんが笑った。
「何ですか、つまりビビってるんですか?」
「そうよ」
 はっきりと、級長は告げた。食ってかかると思っていたらしい緋姫ちゃんは眼を丸くしている。
 ……当然だ。これは緋姫ちゃんには一生分からない。生粋の狂戦士ベルセルクである緋姫ちゃんに、級長の想いは絶対に理解できない。
「私はね、あんたみたいに生きることと殺すことがイコールな人間じゃないし、瀬利花さんみたいに昔から鍛錬とかやってきたわけでも、ましてや神ですらないわ」
 力を与えられただけの女の子は、吐き出すように言った。
「今あの竜と戦って、私は勿論勝つ自信があるわ。それはゆるぎない自信よ。だけどね、私が恐怖しているのは――この中で、私が一番弱いんじゃないかってこと」
 それは。
 あまりにも、どうしようもない想い。
 誰も答えない。答えられなかった。
 だが、俺はその苦悩を少しだけ理解できる。
 誰かを救いたいと願う俺は――ただ一度だけ、自分しか救えなかった。
 あいつを、救えなかった。
 俺に力があれば救えたのかもしれない。どう足掻いても救えなかったかもしれない。
 だが、俺があいつを救えなかったということだけは、取り消せない。
 ……ああ、なんだ。そういうことか。
 俺は、たぶん。
 あいつと再会することが、たまらなく怖いのか。

「それだ。大いなる災より出でる悪夢――それこそが、私の求めていたモノだ」

 マスケラ。
「…………!!」
 声の方向、廊下へと眼を向ける。そこには走り去る何かが一瞬だけ見えた。
 マナが勢いよく飛び出し、それに瀬利花に緋姫ちゃん級長と続いてゆく。俺はワンテンポ遅れて皆を追いかけた。先頭のマナは階段を上り、屋上へと向かっている。俺は緋姫ちゃん達を追い抜きながらそれに続く。最後にはマナも追い越し、古ぼけた扉を蹴り飛ばして屋上へと到達した。
 途端、めいっぱいに広がる夜天と輝く月。今日は満月だったのか。
 冷たい風が頬を撫で、自分が今高い位置にいることを実感させられる。両脇には星丘市が広がっていた。明かりがぽつぽつと思っている、何の変哲も無い夜だ。
 しかし、そこにあまりにも可笑しなモノがいた。
序幕プロローグはこの辺りでいいだろう。さあ、今こそ物語を進める時だ」
 宙に浮かぶ仮面マスケラ
 仮面から伸びた襤褸切れが一度孕み、闇が零れだすように形を成してゆく。真っ黒な四肢が形成され、産み出た右手が仮面を外す。そこには、形容しがたい顔があった。
 男性とも女性とも思えるソレは口を三日月に曲げ、
「――私は狂気と混乱をもたらすために暗躍しているわけだが、その理由を教えてあげようじゃないか。私は恐怖を喰らい糧とする――といっても本当に恐怖という概念そのものを腹の満たしにしているわけじゃないぞ? 私の力――そう、私の活力源となる対象こそが恐怖、そして恐怖する者達なのだ。私は恐怖する君達を見て、心を満たしているんだよ。まぁ、私に心というものが存在すればの話だがね……おっと話が脱線してしまった。つまり私は、ヒトを恐怖に貶めないと生きてはいけないのだ。例えるならそう――寂しいと死んでしまう兎かな? はははははははははははは!!!」
 哂った。



「……つまりはだね、私はこの街を恐怖の渦に、混沌の渦に飲み込ませたいのだよ」
 誰が訊いたわけもないのに、マスケラはそう言った。
「だから私は噂を流し街全体を恐怖に煽ってみせた。時には人も殺したよ。そうしてこの街を少しずつ恐怖へ貶めてゆく。あの噂を流したのは私だけどね、そもそも噂は人の心から漏れ出したものだ。私はただ、その恐怖を狂える詩人――アブドゥル・アルハザードの秘術によって具現化させただけだ」
 恐怖の具現化。
 本物の噂。
「まず私は、この街で発生した怪異を目の当たりにした者に接触し恐怖を高めて噂を流した。いくら情報操作が行われていたとしても、心の奥底まで操ることは出来ないさ。そうして正体不明の噂を流し感染させてゆく。噂に感染した者の心は恐怖の苗床となり、無意識の内に恐怖と噂を広める。そうして一週間。それだけでこの街のの者――普通の感性の者は感染者となったよ。噂は拡大し、やがて怪異の当事者に辿り着いた。つまり君達だ。そうして君達は噂を調べ、私と邂逅した。そして私が君達に具現化した噂の一部をぶつける」
 マスケラは一度言葉を切り、ありもしない肺で必要としない空気をたんまり吸って、言った。

「かくして――噂だったモノは現実となり、混沌の手足として生れ落ちた」

 つまり。
 俺達が調査し噂が真実だと認識したことで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、全てが、始まった、のか。
「――――」
 皆絶句している。もちろん俺も。
 しかし沈黙を、緋姫ちゃんが破った。
「ちょ……じゃあ私の知ってる情報屋は……!?」
「ああ、あれは私が殺したよ。というか噂を流す為に何人かには死んでもらった。なーむー」
「……ッ!!」
 緋姫ちゃんが射撃する。
 仮面に黒衣にと穴が開くが、マスケラは気にしていない様子で、
「ああ、君達が罪の意識に苛まれる必要はないよ。私はただ、誰にでもある恐怖というものを利用させてもらったにすぎないからね。その点、色々な体験をしている君達の恐怖は面白かったよ」
「……何が目的? それに、そんなにベラベラ喋っていいの?」
 マナが冷え切った声で問う。
「だから言ってるだろう? 全ては遊びだ。このゲームにはトリックもロジックもありはしない。それに、ただ私の大好きな街を大好きな恐怖で塗り固めて心の中に仕舞っておきたいんだよ。なんだか乙女ちっくだろう? ほら、そのために――こんなものも用意した」
 パチン、と。
 あるはずもないマスケラの指が、鳴った。



 同刻。
 イースト・エリアの中心部で異変が起こっていた。
 スラムの中央区画辺りの建造物が――勝手に動き始めたのだ。
 それはあまりにも異様な光景だった。
 何故なら建造物達は、地震のような揺れを起こしながら、天を突くが如く伸びていったのだから。
 コンクリートがゴムの様に伸び、時には人を喰らいながら伸びる。歪曲し、貫通し、合一しながら巨大なカタチを成した。
 ぐにゃりと螺旋を描くようにねじれたソレを見て、スラムの若者が震えながら言った。
「……塔だ」
 螺旋塔。
 澄み渡った夜天でもその頂上を捉えることができないほどの高さの塔だった。
 人はそれを見て――恐怖する。
 その恐怖という名の信仰を浴びながら、異形の塔が完成した。



 突然現れた巨大な塔を、俺は呆然と眺めている。
 ……なんだ、あれ。スケールが違いすぎるだろ。
「どうだい、それなりに神秘的で魅力的な塔だと思うんだ。それとも派手すぎたかな?」
 マナは塔を睨みつけながら、
「……フザケてる。あんなものを発生させるなんて、ヴァチカンやIEOだけじゃなく、この街に潜んでいるモノ達も敵に回すつもり?」
「んー、ヴァチカンは私のモノだし、IEOも取るに足らない。三千世界管理局も同じくね。『血色』は他のコ達の相手で手一杯らしいし……ほぅら、私を阻むモノは何も無い。君達以外は、ね」
「世界を本のように扱う組織よりも上位だなんて、ボラクラも買いかぶられちゃってるね」
「いや、この具現恐怖の源は君達にある。ぶっちゃけ、消滅できるのは君達しかいないんだよ」
 んなことさらりとバラしていいのか。ま、いいや。どうせ乗り込むつもりだし。
 と、何故かマナ達が俺を見ていた。四人とも俺を凝視した後、あさっての方向へ向いてため息を一つ。
「……やっぱり、行くことになるんだね」
 こくこくと頷く緋姫ちゃん達。俺は、ちょっと疎外感を感じた。
「ふむ。匠哉は行く気満々だが、他の者は微妙といったところか。ならば目的を与えようじゃないか。その方が気合が入るというものだろう」
 ニタニタと笑みを浮かべるマスケラ。
 次の瞬間。

「君達が一番恐れていることは、何かな? 私はその恐怖を――具現化する」

 その姿が消失した。



 マナは誰よりも早く動いていた。
 マスケラの姿は消失したが、瞬間移動したかもしれないとマナは即座に身を反転させた。同時にマスケラの言葉を思い出す。一番恐れていること。それは考えるまでもなく、匠哉の消失だ。不愉快にも色々なコネのある匠哉ならば戦力を集めることが出来るかもしれない、という名目でマナは匠哉を庇うように抱きついた。
 だが、気づく。
「――ぁ」
 匠哉の背後にマスケラが浮かんでいることに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 マナが突き飛ばすよりも、マスケラの外套が広がる方が速かった。闇の傘が広がり、匠哉を包むように閉じてゆく。マナの目の前で。誰も反応できない。見ているだけしかできない。
「ぃ――」
 黒の帯が匠哉を包み、そこでようやく身の危険を察知した匠哉は逃れようと動くが、帯が絡まって動けない。ずぷずぷと、匠哉の姿が飲み込まれてゆく。
「――ゃ、ぁ」
 足が、脚が、胴が、両手が、両腕が、両肩が、胸が、喉が――顔が。

 ぷつん、と。
 月見匠哉はマナの前から消滅した。

「――たくやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 瞬間、凍結した時間が動き出す。
 マナの背後に八雷神が、緋姫の手に銃器が、瀬利花の手に破月が、要芽の手にハンマーが。
 しかし、
「いいのかい? 私は匠哉を取り込んだばかりなのだけど」
「……ッ!!」
 その腕を止めてしまった。
 笑みを浮かべるマスケラの外套から幾重もの帯が飛び出し、収束して翼を形作った。それを烏のように羽ばたかせ、マナ達が硬直している隙に夜空へと上昇する。
「月の少年を手に、塔の頂上で君達を待つ! その間を阻むのは混沌の手足! 願望機、血の貴族、指環の竜、影の軍勢、百の鉄機兵――お前たちの心の闇だ!!」
 大鳥となったマスケラが羽ばたき目指すのは塔の方向。マナ達が見上げる中、黒の大鳥は宣言する。
「さあ駆け上って来るがいい!! 神の遊戯を始めよう!!」
 ゲームの始まりを。



―次回予告―

不幸を司る私は、だから輝くモノに憧れた
たとえるならば、御伽噺おとぎばなしのヒーローだ
折れず屈せず諦めず
だから私は憧れた
でも私は、ヒーローの帰りを待ってるヒロインになりたかったわけじゃない
ただ、そんな人の傍に居たかった
たとえ私が不幸の神でも、気にも留めないはずだから
でも、理想と現実は違う

次回、グッドナイトムーン第三話――『かの塔は血と殺戮を孕む混沌の祭壇』

だって、私の理想なんかよりずっと輝いているからね





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