「はぁ……!!」
 麗衣が、黒衣の男を斬り伏せた。
「がぁぁ……!!?」
 男は、サンフォールの祭司の一角。デュヴァリエ政権時のハイチ秘密警察――トントン・マクートに所属していた、影の祭司。
 ……ナンバーが刻まれたプレートを残して、男が消滅する。
「ふぅ……」
 麗衣は1人、息をつく。


貧家外伝・メイド戦記7
〜ムーンフォール〜

大根メロン


 始まりは、麗衣の一言だった。
「私達は、毎回後手に回っています。今度は、こちらから攻めるべきですわ」
 部屋にいた俺と清水さんの視線が、麗衣に向けられる。
「……しかし御嬢様。お言葉ですが、いきなり敵の拠点――あの旅館に攻め込むのは、さすがに危険では?」
 と、清水さん。俺もそう思う。
「確かに。ですがサンフォールも宗教団体であるからには、あちこちで布教のための集会を行っています。そこを、襲撃するのですわ」
「……さすがに、集会場に例の倉橋舞緒などは現れないでしょうが……ハロルド達、不死の祭司くらいなら現れる可能性がありますね」
 俺はとりあえず、思った事を口にする。
「それに布教を妨害すれば、人々がサンフォールに入信するのを防ぐ事が出来ます。入信者の何%かは、殺されてゾンビや不死の祭司に変えられる。それも、許せる事ではありませんから」
「それで、御嬢様。具体的には……?」
 俺が尋ねると、
「すでにIEOに依頼して、近々開かれる集会の場所と日時を調べ上げていますわ。そこを、分担して襲撃しましょう」
 地図を取り出し、俺達に見せた。仕事が早ぇなぁ。
「分担、ですか?」
「ええ。一時にいくつも開かれるのですから、そうするのが1番ですわ」
「しかし御嬢様。私や茨木さん、谷川さんには、不死の術師を滅する手段がないのですが……」
 清水さんが、申し訳なさそうに言う。
 だが麗衣は、
「抜かりはありませんわ。カナさんに、色々と造ってもらいましたの」
 机から、様々な武器を取り出した。
 メリケンサックに鏃……これは茨木と花音のための装備だな。となると、あの靴が清水さんのか。
「おお……」
 珍しく、清水さんが驚く。
 ……カナ作か。ならば、一級品の神器なのだろうが……気になるのは、報酬だ。
 麗衣、何かとんでもない物を要求されなかっただろうか。緋々色金のアーマーとか。
「そういう事で、この日時に私、茨木、清水、花音で集会場を襲いますわ」
 おや? この日は。
「……私が休日の日ですね」
 おわー。気になって、素直に休めなくなる気がする。






 で、問題の日。
 家に帰って来た俺は、暇潰しに散歩に出かけた。バイトが休みだと、逆にする事がなくてちょっと悩んだりするのだ。
 一通り、街中を回った後。
「……お?」
 街外れに、とある建物を見付けた。
 ……サンフォールの、集会場である。
「そう言えば、星丘市でも開かれるんだっけな……」
 興味が湧いた俺は、会場に向かう。
 ……面白半分で集会に参加して、気が付いたら改造されてた奴がいたよな。二の舞にならないようにしなければ。



「この世は腐っている! 古より続く我等の信仰の力で、白人至上主義を打ち破るのだ!」
 会場の講壇では、1人の男がいかにもカルトっぽい説教を行っていた。
 壇上には、燕尾服に山高帽という、一昔前の英国紳士みたいな格好の像が鎮座している。ヴードゥーの死神、ゲーデの像だろう。
 ……いやでも、白人至上主義を打ち破るって。あんた達の団体、アメリカの大統領がいるんですけど。まぁこんな所で説教するのは下っ端だろうから、ダニエル・ヴィンセントの事は知らないのかもな。
 それにしても。よく考えたら、何で俺がこんな敵情視察みたいな事をしなければならないのか。渡辺家のバイトは月見マナであって、月見匠哉ではないのだ。
 早くも飽きてきた俺は、帰ろうとして出口を目指す。
 ――なのに。
「……あれ?」
 会場内で、道に迷ってしまった。
 いや、迷ったと言うより……迷わされた、という感じ。狐に摘まれたような感覚。
 ……それも、そのはず。
「こんにちは、月見匠哉さん」
 俺の目の前には、あの旅館の女将――白狐葛葉の末裔が、立っていた。
「……倉橋、舞緒」
 えっと。これって、もの凄くまずい状況だよな?
 集会場に倉橋舞緒は現れない、とか言ってた奴がいた気がする。誰だ、そんな事言ったバカは。俺か。
「……何の用だ?」
 俺は精一杯虚勢を張って、尋ねる。
「そんなに警戒なさらなくても大丈夫ですよ。貴方は、2度も旅館に足を運んでいただいた御得意様ですから」
 御客様は神様です、と舞緒は付け加える。
 ……祀る神を敗かしたような奴が、よく言うものだ。
「如意宝珠なら渡せないぞ。何せ、今は俺じゃなくて渡辺家が持ってるからな」
「承知しています。今日は、もっと簡単なお願いをしに参ったのですよ」
「簡単なお願い……?」
 舞緒は、ふふふと笑う。まるで、世間話でもしてるかのような気軽さだ。
「貴方に、渡辺家との縁を切ってほしいのです」
「……それはまた、どうして?」
「説明する必要がありますか? 貴方の活躍によって、私達は何度も作戦を失敗しています。しかも茨木さんを懐柔するつもりが、逆に花音さんを懐柔されてしまいました」
「……ちなみに。断ると、どうなるんだ?」
「失礼ながら、少々手荒な事になるかと」
 つまりは殺す、という事か。んで、ゾンビの仲間入りと。
「…………」
 少しだけ、考える。
「……そうだな。渡辺家のバイトは、月見マナであって月見匠哉じゃない。俺が、命の危機を犯してまであんたに逆らうのは不合理だ」
「では――」
「その申し出、悪いが断らせてもらう」
 舞緒が、眼を細めた。
 ……じわじわと。嫌な気配が、向かって来る。
「……何故? 情が移ったのですか?」
「つまらない質問をするな。そんなの、生活のために決まってるだろうが。渡辺家の高額バイト料は今や生命線。縁など切れるはずもない」
「そうですか……なら、仕方ありませんね」
 ……来る。
「御得意様を討たなければならないとは、とても残念です」
 舞緒の両手に、巨大な鉄扇が現れる。
 左は純白、右は漆黒。
「易に太極あり、これ両儀を生ず――『天烏天兎扇てんうてんとせん』」








 1つの集会場を潰した麗衣は、次の目標――星丘市の会場へと突入していた。
 人々が逃げ去った後の広間で、麗衣は説教していた不死者を倒す。
 これで、ここでのやる事は終わり……のはずだったのだが。
「……何ですの?」
 向こうから、大きな物音が聞こえた。
 まるで――誰かと誰かが、闘っているような。
 行ってみようと、足を動かす麗衣。
 だが、その前に――
「悪いが、行かせる訳にはいかない」
 ひとりの男が、立ち塞がった。








「東海の神、名は阿明、西海の神、名は祝良、南海の神、名は巨乗、北海の神、名は禺強、四海の大神、百鬼を避け、凶災を蕩う――」
 舞緒は、閉じたままの二扇を構える。
「――急々如律令」
 そして、一振り。
「うぉあ……ッ!!?」
 まるでバカでかいチェーンソウを振り回しているみたいに、廊下が崩壊する。
 俺はカチューシャを取り出すと、すぐに魔法冥土マジカル・メイドに変身した。
 念じると、手に草薙剣が現れる。舞緒自身は不死者ではないらしいから、天羽々斬よりこちらの方がよい。まぁ、外見通りの年齢でもないだろうが。
 ……さて。この姿になった以上、俺は渡辺家に奉仕しなければならないのだ。
 床を蹴って、舞緒が迫る。鉄扇を草薙で受け止める俺。
 だが――
「くぅ……ッ!!?」
 もう一方の鉄扇で殴られ、壁まで吹っ飛ばされた。
 くそ、やっぱり強い……!
「オン・マリシエイ・ソワカ、サラティ・サラティ・ソワカ、オン・マリシエイ・怨敵即滅・ソワカ」
 さらに、鉄扇での打撃。
「が――っっ!!!?」
 まるで、内側から壊されるような衝撃だ。ボタボタと、口から血が落ちる。
 ……ヤバい。死ぬぞ、コレ。
「くそ……っ!!!」
 俺は逃げるように、舞緒との距離を取る。
 しかし相手も速い。すぐに間合いを詰められ、鉄扇が飛ぶ。
「ぐ……っ!?」
 再び、打撃が叩き込まれた時。
「――ッ!!?」
 変身が、解けてしまった。
 ……魔法冥土マジカル・メイドの力を以ってしても、この猛攻を防ぐ事は出来なかったらしい。
 女装変身が解けた途端、草薙を握る手から、じゅうじゅうと肉の焼ける音。
 ぐぅ……! まだだ、まだ剣は離せない……!!
「おや、もう限界ですか」
 舞緒が、くつくつと嘲笑う。
「では、これにてお開きといたしましょう――」
 白と黒の扇が、開いた。
「南無蟲鳴之書――南無九頭龍神」








「ダニエル・ヴィンセント……!?」
 麗衣は、立ち塞がった男の名を呼んだ。
「いかにも」
 相手はそれを肯定する。
「……まさか、貴方のような大物が現れるとは思いませんでしたわ」
 髭切を中段に構え、間合いを計る麗衣。
「我等の教祖が、野暮用でここに来ているのでね。それに付き合っているまでだ」
 ヴィンセントの手には、鍔のない日本刀があった。いわゆる長ドスである。
 三尺ほどのその刀を抜き放ち、漆塗りの鞘を後ろに放り投げた。
「……ここに、倉橋舞緒が来ているんですの? 何のために?」
「悪いが、それは答えられん」
 切っ先を床に向けたまま、ヴィンセントは麗衣に歩み寄る。
「――まぁ、わざわざ口にするまでもないだろうが。ここで、足止めさせてもらおう」
 切っ先が、動いた。
「――ッッ!!!?」
 下からの、すくい上げるような斬撃。麗衣は躱すが、刃が返りもう一斬。
 それを太刀で受け止め、麗衣は相手から離れる。
「――遅い!」
 追撃する、ヴィンセント。
 数合打ち合った後――麗衣が、髭切を振り上げた瞬間。
 ヴィンセントはがら空きとなった胴を、思い切り蹴り飛ばした。
「ぐぅ……ッ!?」
 床に倒れた麗衣は、1回転して起き上がる。
「これでも軍にいた頃は、刀1本で戦地を渡り歩いた身だ。甘く見ると、首を落とすぞ」
「……1つ、訊きますわ。どうして貴方は、サンフォールに入信したのです?」
 ヴィンセントが、微笑む。
「簡単な事だ。国益のためだよ。陰陽術には、国家鎮護や敵国調伏などもある。舞緒の力なら、国を1つ左右する事など容易いだろうからな」
「……金、ですか」
「そうだ。仕方がないと言えばそれまでだが、民には貧富の差がある。だが金がなければ、人間は衣食住を得る事が出来ない。それは、生きられないのと同義だ。……まぁ、君のように裕福な者には、永遠に分からないだろうがね」
「…………」
「私は民に、そのような思いをさせる訳にはいかない。少しでも国を発展させ、民の幸福を護る事。そのためなら、資源を求めて他国に攻め入る事も、自分の魂を悪魔に差し出す事も出来る」
 麗衣は、ヴィンセントを睨む。
「自分の国以外は、どうなってもいいんですの?」
「限界があるのだよ、私のような凡人には。全てを護る事は不可能だ。自分の子と他人の子が火事に巻き込まれた時、母親はどちらを助けるべきだ? 愛する子を見捨てて、他人の子を助けるのが正しいのか?」
 ヴィンセントが跳ぶ。
 下方から襲いかかる刃を、麗衣は髭切で受ける。
 相手の刀はすぐに太刀から離れ、間髪入れずに次の斬撃が麗衣を襲う。
「違うだろう? 母親なら、他人の子を見捨ててでも己の子を助けるべきだ。同じく――私は国と民を護るためなら、何を犠牲にしても構わない。無論、君の命もな」
 とっさに退いた麗衣の首を、ヴィンセントの刀が掠めた。
「……ッ!!」
 太刀を身体の正面に構えている麗衣は、攻撃も防御も万能に行える。一撃必殺の力を持つ人外どもと戦う彼女にとっては、防御はまさしく命綱だ。
 しかし――それでは相手を斬るのに、太刀を振り上げ、次に振り下ろすという2動作が必要。それに対してヴィンセントは、下げている刀を振り上げる1動作だけで、相手を斬る事が出来る。
 1秒にも満たない、僅かな時間の差。だがその差が、確実に麗衣を追い詰めてゆく。
「悪くはない。だが……両親には及ばないな」
 ヴィンセントは、ふと漏らした。
「……何ですって?」
「以前闘った君の両親は、もっと強かった」
「……まさか、貴方……」
「殺害する必要性はなかったのだが、ついつい元軍人の血が騒いでしまってね。ただの人間相手に、大人気ない真似をしてしまった」
「――ッッ!!!!」
 麗衣はヴィンセントに向かって、一気に踏み込む。
「はぁぁぁぁあああああッッ!!!!」
 そして、眼にも留まらぬほどの連撃。
 だがヴィンセントは、それすらも捌き切る。
「ぐ――っ!!?」
 先ほどと同じように、蹴り飛ばされる麗衣。
「分かっただろう。残念だが、君では私に勝てん。君は家を背負って戦っているのだろうが、私は国を背負って戦っている。刃の重みが、まるで違うのだよ」








「……え?」
 俺は思わず、声を漏らした。
 舞緒の、トドメの一撃。だがそれは、俺を砕く事なく。
「まったく……マナ様の頼みとはいえ、何でチカがこいつを助けなきゃいけねえでおじゃるか」
 一柱ひとりの少女によって、完全に防がれていた。
「……チカっ!?」
 道返大神のチカ。マナが、俺から吸い取った金運というエネルギィを使って実体化させた、境界の神である。
「お前、いつの間に……!?」
「ずっと憑いてたでおじゃる。お前がアホだから気付かなかっただけでおじゃる」
「ならもっと早く助けろよ……!」
「助ける理由がねえでおじゃる。でもお前が死んだらマナ様が金運を吸えなくなるから、仕方なく出て来てやっただけでおじゃる」
 ……酷ぇ話だ。
「おやおや、記紀の神……ですか?」
 舞緒は突然の乱入者にも、驚く様子はない。
「人間如きが、随分と分不相応な力を付けたものでおじゃるね」
「私にも、達成しなければならない目標がありますので」
「ふん、笑わせるなでおじゃる。あんたは皇居陰陽寮でアレを読んで、頭がおかしくなっただけの狂人でおじゃる」
「…………」
 二扇が、チカに向けられる。
「退きなさい。私は、匠哉さんを殺したいだけです。その方と一緒に滅ぼされるのは嫌でしょう?」
「けっ、退かないでおじゃる。昔っから、化物女に襲われてる男を見ると、つい助けたくなるんでおじゃるよ」
 チカが小さな声で、
「匠哉。マナ様から離れてる今のチカじゃ、防げて数発。その間に、尻尾巻いて無様に逃げるでおじゃる」
 俺に、そう言った。
 けれど、俺は。
「……いや。この場で……あいつを斃す」
「な……っ!!? しょ、正気でおじゃるか!? お前じゃ、勝ち目なんてねえでおじゃる! いやそれ以前に、女装してないお前がこれ以上草薙に触れていたら、確実に魂を喰い尽されるでおじゃるよ……!!!」
「…………」
 分かってる。
 俺が命を賭してまで、舞緒と闘う必要はない。生活のためと言っても生きてなきゃ意味がないし、月見マナメイドじゃない今の俺に奉仕義務はない。
 ……でも。
 つまらない話だが――どうやら、ホントに情が移ったみたいだ。
「闘わなきゃ。だって俺、渡辺家の皆が好きだし」
 ったく………逃げ専門の俺が、こんな相手と闘うとは。我ながら、気がふれてるとしか思えない。
 草薙を、構える。
「……天叢雲」
 言霊により、剣の力を全て引き出す。
 どんどん剣に命を吸われている感じがするが、無視。
 勝機はあるのだ。舞緒が俺を舐めている今なら。その、油断を突けば。
 伯爵と闘った時のように、俺を中心として暴風雨が吹き荒れる。まるで、台風の如く。
 平均的な台風は、広島型原爆の10万倍以上のエネルギィを持っている。無論、こんな小規模な風に台風ほどの力はないが……それでも、かなりのエネルギィを秘めているはずだ。
 その力を、全て剣に乗せ――
「はぁぁぁ……ッッ!!!!」
 舞緒に、叩き込んだ。








「潔く退いたらどうだ? 私も、追ってまで君を殺そうとは思わん」
「…………」
 ヴィンセントは言うが――麗衣に、その様子はない。
「そうか。なら、消えてもらおう」
「……消えるのは貴方の方ですわ、ダニエル・ヴィンセント」
 麗衣は刀を振り上げ、上段に構えた。
「……ほう」
 これならヴィンセントと同じく、1動作だけで斬る事が出来る。
「上段は久し振りですが……まぁ、何とかなるでしょう」
「これで、条件は互角か」
 ならば――単純に、強い者が勝つ事になる。
「――……」
 両者は時を待つ。
 待ちながらも、ふたりにはすでに決着が見えていた。
 麗衣には、1%たりとも勝ち目はない。付け焼刃に近い上段では、歴戦の兵士を上回る事など夢のまた夢。
 ――その時。大きな力の波動が、迸った。
「天、叢雲……っ!!?」
 それに意識を向ける、麗衣。
 ヴィンセントはそれを隙と見て、床を蹴った。狙いは、麗衣の足元。
 同じ条件ならば。尚更、ヴィンセントが敗ける道理はない。
 なのに――
「何……ッッ!!!?」
 雷のように振り下ろされた髭切が、刀を握るヴィンセントの腕を斬断する。
 戦場で鍛えられ、生死も越えた彼ですら、その太刀を見る事は出来なかった。
 明らかに、剣を振り始めたのはヴィンセントが先だった。それでも麗衣の太刀は、まるで時を止めたかのような速度で――敵を、斬り裂いたのだ。
 麗衣は、もはやヴィンセントなど眼中にないかのように、
「――月見さんっ!!!」
 一声叫んで、駆け出した。



「…………」
 ヴィンセントは斬り落とされた腕を見て、唖然とする。
 1%すら、勝ち目はなかった。だがそんな事は、年頃の乙女には関係なかったらしい。
「……クク」
 彼は自分ひとりだけの広間で、楽しそうに笑う。








「……くそ、駄目だったか」
 天叢雲の一撃によって、爆心地のようになった廊下。
 だが、舞緒が立っていた場所にあるのは――1枚の形代。式神を使った身代わりだろう。
「……っ」
 俺は、天叢雲――草薙を手放して、倒れる。
 あー。身体の傷も酷いが、女装なしで剣を握り続けたダメージも大きい。何か、とにかく体調が悪い。
「ったく、どこまでも愚か者でおじゃるね。こういうのを、犬死にというでおじゃるよ」
「まだ死んでねえ……が、一理ある」
 ホント、俺の闘いは何の意味もなかった訳だ。やらなきゃよかった。
 それに――
「…………」
 麗衣が、俺を見て呆然としてるし。
「何故……貴方が、その剣を持っていますの?」
 困った。どうしよう。
「けっ。渡辺の跡取りとやらはどんなモノかと思っていたでおじゃるが、観察力はゼロでおじゃるね」
 チカが、詰まらなそうに言う。
「さすがに想像は付いてると思うでおじゃるが、月見マナと月見匠哉は同一人物でおじゃるよ。ただ、女装していただけでおじゃる」
「……ッッ!!!」
 麗衣が、強張った表情で息を呑んだ。
「……おい、チカ。人が必死に隠し続けて来た事を、あっさりバラすんじゃない」
「これ以上隠しても、何の意味もないでおじゃる。お前は月見匠哉のまま、渡辺家の敵である倉橋舞緒と闘った。ならもう、月見匠哉と月見マナを分ける境界は存在しないでおじゃるよ」
「…………」
 正論だ。だからこそ、こいつに言われるとハラ立つなぁ。
「――ッ!? 倉橋舞緒と闘ったんですのッ!!?」
 麗衣が、俺に走り寄って来る。
「ああ。勝てなかったけど」
「どうして、そんな無謀な事を……!」
「別に、逃げてもよかったんだが。でも……」
「……でも?」
 麗衣が半泣きの顔で、俺を見る。
「……やっぱ言うの止めた。そろそろ限界だから、寝る」
 俺は、瞳を閉じる。
 麗衣の呼び声が聞こえたが――それに答えられぬまま、俺の意識は失われていった。








 舞緒は、説教が行われていた広場まで戻る。
 そこでは――ひとりの男が、彼女を待っていた。
「おや、酷い姿ですね」
 舞緒はヴィンセントに、笑いながら語りかける。
「ああ、まさか腕を落とされるとは思わなかった。あの髭切で斬られた以上、本部に戻らなければ治せまい」
 ヴィンセントも笑みも浮かべ、答えた。
「我ながら、情けない話だがね」
「まぁ、仕方ありませんよ。貴方は、私のような魔人に頼らなければ国1つ護れない小物ですから」
「いやはや、まったくだ。凡なる身は辛いな」
 肩を竦める、ヴィンセント。
「しかしそう言う君も、何か怪我を負っているようだが?」
 ヴィンセントは悪戯を思い付いた子供のような表情で、舞緒を見る。
 う、と舞緒は息を詰まらせた。
「……目聡いですねぇ」
 舞緒が右手を持ち上げると――指の先から、血の雫が落ちる。
「身代わりの式を破られた事による、咒詛返しですよ」
「……君にしては、珍しいミスだな」
 舞緒はそれに対して、心外そうに首を振った。
「私ではなく、あらかじめ用意しておいた代人に式が返るように設定しておいたはずなんですけど」
 咒術というモノは、破られた場合は術者に跳ね返る。
 舞緒はソレを、自分ではなく、別の者に返るように仕掛けた――はずなのだが。
「天叢雲の一撃はその咒を強引に捻じ曲げて、私に傷を与えた。匠哉さんは、よほど私を斃したかったのでしょうね」
 ふふふ、と微笑む舞緒。
 その人間として当たり前の笑いに――何かとてつもなく異様なモノを感じ、ヴィンセントは僅かに身を震わせる。
「とにかく、行くぞ。ハロルドの方も、そろそろ終わらせている頃だろう」
「…………」
 だが、舞緒に動く様子はない。
「……舞緒?」
「ねぇ、ヴィンセントさん」
 舞緒は、指先の血を見る。それは、生命の証。
「血が、流れてます。私って、本当に人間だったんですね」
 偉大な発見をした科学者を思わせる、歓喜に満ちた顔で――舞緒は呟いた。



「ほら、さっさと行くでおじゃる。急がないと、こいつ死ぬでおじゃるよ?」
 チカは匠哉の身体を、爪先で蹴る。
「……ッ」
 麗衣は、匠哉を抱えた。
 だが、意識を失った人間は自分で自分の体重を支えようとしない。故に、とても運び辛い。
 チカは草薙を拾い、去って行く。
「月見さん……」
 匠哉を支えながら、麗衣は少しずつ歩を進める。



 麗衣がクリスティーンで屋敷まで戻ると、玄関に清水、茨木、花音が集まっていた。
 車から降り、駆け寄る麗衣。
「……何事ですの?」
「御嬢様……」
 茨木が、小さな声で答える。
「ふん、見ての通りだ」
 花音は顎で、屋敷を示す。
「な……っ!?」
 屋敷は、外からでも分かるほどに傷を負っていた。
 いたる所に、銃撃の痕。武装メイド達が闘ったのだろう。
「……私達が出撃していた間に、敵が屋敷に攻め込んだようです」
 清水が、悔しげに言った。
「幸いにも、死者はいませんが――」
「如意宝珠が、奪われたんですわね?」
「……はい」
 麗衣は思い切り、門を殴り付ける。
 サンフォールは、麗衣達が屋敷にいなくなった隙を衝いて襲撃を行った。
 つまり――相手は、皆が今日集会場を攻撃する事を予測、あるいは予知していた事になる。
 結局、この作戦はサンフォールの掌の上だったのだ。あの、匠哉の死闘も。
「……ッ!!」
 麗衣は唇を噛み締め、己の無力を呪う。
 ……それでも、まだやらなければならない事があった。
「今は、それどころではありませんわ。月見さんを助けないと……!」



「たまのをを、むすびかためて、よろづよも、みむすびのかみ、みたまふゆらし……奥津鏡、辺津鏡、八握剣、生玉、足玉、死反玉、道反玉、蛇比礼、蜂比礼、品物比礼、布瑠部由良由良、布瑠部由良由良止布瑠部」
 比較的無事な部屋に、匠哉は寝かされていた。
 ……部屋の中に、花音の奉唱が響く。
「じゃあ、月見さんの正体を知らなかったのは私だけでしたの……」
「申し訳ありません、御嬢様」
 清水が、麗衣に頭を下げる。
「……別に、謝る必要はありませんけれど」
 麗衣は思いを馳せる。
 京都で匠哉と会った時、彼はどこかおかしかった。思えば、そこで気付くべきだったのかも知れない。
「でも、でも……どうして月見さんは、倉橋舞緒と闘ったのでしょう。闘う必要なんて、なかったはずなのに」
 眼に涙を浮かべ、俯きながら呟く茨木。
 茨木は、その答えが分かっている。しかし分かっていても、口にしなければ気が治まらない。
「月見さんは、必要のない闘いばかりする人ですもの。他人事に首を突っ込んで、莫迦を見るのが生き甲斐なんでしょう」
 ……自分が莫迦を見れば、他の誰かが莫迦を見ずに済むかも知れない。
 くだらない、ありがた迷惑な理論。でも本人はそれなりに真剣で、そこに価値を求めている。
「なら、これで死んでも本望であろうな」
 いつの間にか奉唱は終わっており、花音が不愉快そうな顔を向けていた。
「とりあえず、命は繋いだ。だが運悪く状態が急変すれば、そのまま死ぬ事も在り得る」
「そんな……!」
 茨木の声。
 だが花音は無慈悲に、
「私に出来る事はここまでだ。精々祈れ」
 それを、切り捨てた。
「…………」
 部屋の扉へと向かう、花音。
 しかし――最後に、足を止めて。
「……麗衣。月見の傍にいながら、どうして其方は奴を護れなかった」
「――……」
 麗衣に、返せる言葉はない。
「どうして――月見は皆を護れるのに、誰も月見を護れないのだ」
 振り返る。
 茨木と清水が思わず構えるほどの殺気が、麗衣に叩き付けられる。
「八つ当たりだとは分かっているが……覚悟しておけ、渡辺麗衣。月見が死んだら、その首を頂く」
 扉が開かれ、花音は歩き去った。
「御嬢様……」
 清水が、不安そうに口にする。
 麗衣はそちらを見ずに、
「……少し意外。あの娘、思ってたよりも情熱的なんですわね」
 と、ふざけたような事を呟いた。
「大丈夫、花音は私を殺せませんわ。月見さんは死にませんもの」



 ――深夜。
「あ、御嬢様……」
 廊下で、茨木は麗衣とばったり出くわした。
「茨木? こんな時間にどうしたんですの?」
「そう言う御嬢様は、こんな時間まで何を?」
「宗家に提出する報告書を書いていただけですわ。で、貴方は?」
「…………」
 茨木は、顔を落とす。
「……眠れなくて」
「月見さんの事が、心配なんですの?」
「はい……」
 茨木は、搾り出すように声を出す。
「もし、このまま……月見さんが、眼を醒まさなかったら――」
「…………」
 麗衣が、動いた。
 その先を言わせまいと――茨木の唇を、自分の唇で塞ぐ。
「……っん」
 長い長い、キス。
 ……唾液の糸を引きながら、ふたりの唇が離れる。
「御嬢様……」
「貴方は考え過ぎですわ。もう少し力を抜いた方が、気楽に生きられますわよ?」
「……?」
 麗衣の様子は、昼と比べてやけに明るかった。
 かと言って、空元気ではない。茨木には、何となく分かる。
「お、御嬢様ぁ……?」
 恐る恐る、尋ねる茨木。
「不安になっても仕方ありませんわ。あの人は月見さんですわよ? しばらくすれば、勝手に眼を醒ますに決まっています。心配するだけ損ですわ」
「…………」
 なるほど、と茨木は納得した。
 ――しばらくすれば、勝手に眼を醒ます。
 月見マナ――月見匠哉が死ぬなどという話よりは、よほど現実味のある話に思えた。
 何しろ、匠哉の生命力はゴキブリ並みである。彼が害虫ゴキブリっぽいのは、匠哉と茨木が初めて会った時に証明済みだ。
「……そうですね」
 茨木が、笑う。
 それを見て、麗衣も微笑んだ。
「あぁ、そう言えば。貴方に話しておきたい事があるんでしたわ」
「――? 何ですかぁ?」
「連中が如意宝珠を手に入れた以上、すぐに将門の蘇生に取りかかるでしょうが……そのような大咒が、1日2日で成るとは思えません」
 頷く、茨木。
「つまりこちらにも、戦う準備のための時間があるという事ですわ」
 茨木を見る麗衣の視線が、強くなる。
「星丘市の病院に、凄腕の<医師>がいます。彼女なら、我が祖に斬り落とされた貴方の腕を、完璧に治療出来るはずですわ」
「……へ?」
「今は、少しでも戦力が欲しい。貴方がかつての力を取り戻せば、大きな助けとなるでしょう」
「え、えぇぇええ!? 御嬢様、そんな素敵情報をどうして今まで黙っていたんですかぁっ!!?」
 大きく、溜息をつく麗衣。
 彼女の疲れ切った動きに、思わず茨木は追求の言葉を止める。
「……その<医師>、あまり好ましい者ではありませんの。私も貴方も、出来れば一生関わらない方がよかったのですが」
「…………」
 これから治療を受ける身としては、そんな嫌な真実は知りたくなかった茨木。
「まぁ、背に腹は変えられません。確率は五分五分ですが、試す価値はありますわ」
「…………」
 一体何の確率が五分五分なのか、気になっても恐くて訊けない茨木。
「と、とにかく分かりましたですぅ。じゃあ、お休みなさい」
 茨木は部屋に戻ろうと、麗衣に背を向けたが。
「……待ちなさい」
 麗衣は背後から、茨木を抱き締めた。
「誰も、部屋に戻っていいだなんて言ってませんわよ?」
 麗衣の左手が茨木の胸元に伸び、右手は茨木のスカートの中に伸びる。
「さっきのキスで、眼が冴えてしまいましたわ。少し、相手をして貰いましょうか」
 麗衣の指が、妖しく動く。
「……ぅんっ……ちょ、御嬢様、廊下の真ん中で……」
「大丈夫ですわ。もう皆、部屋に戻っている時間です。誰にも見られる心配はありませんわよ――……」
 ――しかし。
「大丈夫な訳なかろう」
 突如、廊下の扉が開いた。
 真ん前にいた麗衣と茨木は、開いた扉に吹っ飛ばされる。
「まったく……某の部屋の前で、何をやっているのだ」
「か、花音……」
 巫女服姿の花音が、倒れたふたりを見下ろす。どうやらそれが寝巻きらしい。
「……しかしまぁ、アレだな。こういうのを見ると、ここが女の園である事を実感出来るな」
 立ち上がる、ふたり。
「何を他人事のように言ってますの。貴方だって、その女の園の一員ですわよ」
 ニタリと笑う、麗衣。
「……おい?」
 何やら、危険信号を感じる花音。
「月見さんが言っていましたわ。貴方は、エロの遺伝子を持っていると」
「――何だそれは!!? そんな物が存在するのなら、素直に学会に一石でも投じろッ!!!」
「こんな夜中に、大声出しちゃダメですよぉ?」
「ですわね。他のメイドを起こさないように、続きは花音の部屋でやりましょう」
 茨木と麗衣は、少しずつ花音との距離を詰める。
「そ、其方等、何を考えている?」
「前々から思っていたのですけど……貴方は私のメイドであるのに、服従心が足りませんわ。ダメなメイドに主人がすべき事は、1つしかありません」
 けっへっへっ――と笑い声を上げ、花音を部屋に押し入れる麗衣。
 茨木も、トテトテとその後ろに続く。
 ……部屋の扉が、閉められた。逃げ道が閉ざされた感じである。
「あら。貴方の部屋には似つかわしくない、ぬいぐるみが飾ってありますわね」
「UFOキャッチャーの景品みたいですねぇ」
「――ッ!!? わ、悪いかッ!!!?」
「……まぁ、その追求は後にしましょう。今は、貴方にメイドとしての調きょ――ゲフンゲフン、教育を施さなくては」
 生弓矢を使えないように、花音の手を後ろに回して手錠を嵌める麗衣。
 何故そんな物を常時携帯しているのだと、花音は本気で疑問に思う。
 そのまま、ベッドに寝かされる花音。
「で、御嬢様。どう料理しますぅ?」
「そうですわね……まずはメイドの基本、主人の指の舐め方から教えましょうか」
「おぉ。どの辺が基本なのか、まったく謎ですねぇ」
 手錠の時と同じく、麗衣は何処からか怪しげな器具を取り出す。
「……ッ!」
 花音は決断した。展開に付いて行けず呆けてる間に手を封じられてしまったが、まだ足が使える。
 隙を見て、足技を使いこのふたりをブチ殺すしかない。色々な事のために。
「茨木、花音の足を押さえておきなさい」
(なぁ……っ!?)
 数秒で崩壊した脱出作戦。
 花音の緋袴を、捲り上げる麗衣。完全に痴漢の所業である。
「おや、思っていたよりも可愛らしい下着ですわね」
「そ、それは月見が某に……!」
 ここまで言って、花音は己の失言に気付いた。
 ピタリと、動きが止まる麗衣&茨木。
「……ほう? 月見さんが、何ですの?」
「う……っ!」
 かぁっと、顔が赤くなる花音。とても、他人に話せるような事ではないのであった。
 麗衣と茨木の瞳から、温度が消えてゆく。
「茨木、私の部屋からアレを持って来なさい」
「アレですねぇ。……可哀想な花音さん。アレを使う以上、正気のまま夜を終えるのは無理ですぅ」
「――ッ!!!? な、何だか分からんが止めろぉぉぉぉぉぉッッ!!!!」
 響く、花音の絶叫。
 ……まだまだ、夜明けは遠い。






「…………」
 閉館後の、ユズリハ旅館。
 その屋根の上に、倉橋舞緒は立っていた。
「……狂人、ですか」
 舞緒は、昼に言われた事を思い出す。
 狂人呼ばわりされたのは、これが始めてではない。倉橋家にいた頃にも、よく言われた。
 舞緒自身は、自分を狂人だとは思っていない。まぁ、真の狂人とは狂気を自覚しないモノだろうが。
「――……」
 舞緒は、記憶を紐解く。
 ある時を境に、彼女は狂っていると囁かれるようになった。その時を思い出す。

『――貴方に相応しい本が、在るんですよ』

 倉橋家は、陰陽寮において陰陽頭を世襲した土御門家の分家である。
 その縁で、舞緒は皇居陰陽寮の書庫に何度も足を運んだ事があった。
 いつものように、舞緒が書庫に訪れると――その日は、いつもの司書がいなかった。
 だが舞緒は気にしなかった。司書も人間なのだから、仕事を休む事くらいはある。
 ……その代わりに、ひとりの男がいた。
 背が高く、妙に色が黒い男。
 口の中まで真っ黒で、瞳が非人間的な赤色をしていたような気がするが――それは自分の見間違いだろうと、舞緒は思っている。
 名は、鳴羅黒人なるらくろひとという。
 黒人は舞緒に、一冊の本を読ませてくれた。
 ――『蟲鳴之書』。役行者が著したとされる、皇居陰陽寮の秘書である。
「…………」
 何故か、舞緒はその本の内容を覚えていない。
 ……別に大しタ事もナい、単なる咒術書だッタはズだ。
「確か、その後からでしたね」
 舞緒は周囲から、狂人扱いされるようになった。
 特に、舞緒の何が変わった訳でもないのに。
 ただ、強いて挙げるならば。一族の先祖が平将門であるという伝説を妄信し――その復活のために、あらゆる事を行い始めたくらいだ。
「狂人扱いされるほど、大きな変化でもないと思うのですが……」
 舞緒は息をついて、過去への逆行を止めた。
 天を見上げる。夜空の月は雲に隠され、地上から見る事は出来ない。
「…………」
 月見匠哉――あのおかしなツキを持つ少年は、倒れた。
 ならば後は、太陽の世界を征服するのみだ。
 かつて、太陽の裔である皇室に刃向かった新皇――平将門公。彼を現世に再臨させるための準備は、整いつつある。
 太陽堕としサンフォール。その言霊に込めた本懐を遂げる時が、刻一刻と近付いているのだ。
「ふふ……」
 舞緒は、屋根から歩き去る。
 深い闇夜。だが、それを照らす月光はなく。
 ……まだまだ、夜明けは遠い。






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