「しゅ、駿兄! そんなにウロウロしたらマズいよ」
 浴室で高橋さんの遺体を見つけた後、駿兄は何を思ったのか高橋さんの部屋の中を色々と見て回り始めた。
 いわゆる家探しというやつだ。
「大丈夫だって。ちゃんと手袋だってしてるし、何か動かしても元の場所に戻してるからな」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
 駿兄はそんな僕を尻目に、部屋の中を入念に調べて回る。
 いや、駿兄だけじゃない。
「研究に行き詰って、もう生きる希望が無くなった――かぁ。これが遺書ってやつかな?」
 部屋の隅に置かれたパソコンのモニターを見ながら、飛月が呟く。
「おい、下手に触るなよ? 何かの手がかりがあるかもしれないからな」
「分かってるって! ふむふむ、なるほど……」
 駿兄からこの一件についての疑問の事を聞いた後、飛月も、これが単なる自殺と思えなくなったようだ。
 謎を解く手掛かりを見つけるんだと張り切って、今も駿兄とともに部屋をぐるぐると回って見ている。
 必然的に、僕は一人で部屋の入口でドキドキしながら二人の様子を見ているしかできないわけで。
 ――ちなみに、一緒にいた隣人の男性は、既に自分の部屋に戻っている。
 そして、そんな二人の家探しは結局、警察が来る直前まで続いたのであった……。


僕と彼女と探偵と
〜玉虫の死〜 中編

civil


「つまり、約束の時間にここに来たものの反応がなくて、仕方なく帰ろうと思った矢先、鍵が開いてることに気づいた、と」
 飛月の通報を受けた警察が到着したのは、僕達が遺体を見つけてからおよそ二十分後のことだった。
 そして、到着した警察の面々の中には、見慣れた顔もあったわけで――。
「で、開いてるドアから、中を確認するために部屋に侵入。隣人の上野うえのさんも追ってくるように入ってきて、それから間もなく遺体を発見……」
「おいおい、侵入って言い方はないだろ。俺が入って確かめなきゃ、死体を見つけられなかっただからよ」
「無断で入ったんだから、どこからどう見ても侵入でしょ。本当なら住居不法侵入でしょっぴくことも出来るんだから」
 刑事の苑部奈都子さんが駿兄に呆れたような表情を向ける。
 奈都子さんは、これまでに何度か、事件に巻き込まれた際にも顔を合わせたことのある刑事だ。
 そして、同時に駿兄の大学時代の友人でもある。
 いや、ただの友人だったかどうかについては、いささか気になることもあるのだけど。
「まぁ、今回の事件は単純そうだから、あなた達に長く付き合う必要もなさそうね」
「単純……だと?」
 駿兄の呟きに、奈都子さんは首を傾げる。
「え、えぇ。状況を見たところ、自殺のようだし、軽く調書を取る程度で今回は――」
「ところがどっこい自殺じゃないんだって、これが!」
 飛月が話に割って入ってきた。
 そして、飛月は先ほども駿兄が話してた今日の約束の件を例に挙げ、自殺ではない根拠と主張する。
「つまり、あなたは高橋さんの死が、自殺ではなく他殺だと言いたいの?」
「自殺じゃないなら、他に可能性はないじゃない。あのパソコンに残ってた遺書だって、作ろうと思えば誰でも作れるようなものだし」
「他殺ねぇ……」
 奈都子さんは、怪訝そうな顔をする。
「確かに言いたいことは分かるけど、自殺を疑う材料としては薄すぎるわね」
「そ、そんなぁ……。どう考えても怪しいじゃない! なっちゃんもそう思うんでしょ?」
「だから、なっちゃん言わないの! ……って、それはともかく。これだけじゃただの机上の空論よ。約束の件は突発的な衝動だったってことで説明できるし、遺書の事も普段からパソコン使ってる人ならあり得る事よ」
「そ、そうだけど……」
 さきほどまで張り上げていた飛月の声が、だんだん小さくなっていく。
「もっと、自殺の可能性を否定出来るような状況が見つかれば、警察としてもその方針で動けると思うけど」
「そんなこと言われても……」
 飛月は、目を泳がせると、駿兄へと視線を向けた。
 何か助けを求めている視線だ。
 すると、それを見て駿兄は肩をすくめながら笑った。
「ったく。一度言い切ったら、最後まで責任持ってっつーの」
「うぅ……」
「ま、後はこの俺に任せなさいな。手本ってもんを見せてやらぁ」
 そう言って、飛月を下がらせる駿兄の姿は頼もしく見える。
 が、その一方で、下がらされた飛月は腑に落ちないような表情をしている。
「何よ〜、少し推理が出来るからって、いい気になっちゃって……」
「ま、まぁ、駿兄はそれを生業にしてるんだし……」
 なんとか飛月をフォローしながら、駿兄は奈都子さんに向けて言葉を発し出した。



「なぁ、奈都子。俺達がここに入った時、部屋の鍵が開いてたのは知ってるよな」
「そ、そりゃあ勿論よ。何せ、あんた達から直接聞いてたんだから」
 奈都子さんがここにきてすぐに、僕達は彼女から事件のあらましについて説明を求められた。
 そのため、僕達が見聞きしたことについては、奈都子さんも知るところとなっている。
「じゃあ聞くが、これから自殺しようっていう人間が部屋の鍵を開ける必要があるか?」
「それは確かにない……けど」
「まぁ、普段から鍵をかけないで生活してたなら話は別だが、どう考えても不自然だろ」
「で、でも、それを言うなら他殺だとしてもおかしいでしょ!」
 駿兄の言うことはもっともだったが、奈都子さんは負けずと反論を始めた。
「わざわざあんな風に殺害したってことは自殺に偽装したかったってことでしょ? だとしたら、それこそ犯人がドアに鍵を掛けなきゃおかしいじゃない」
 それも確かにもっともな話。
 鍵が開いたままという状況が自殺としておかしいという説明は、同時に自殺に偽装した他殺という可能性にも疑問符を打つことになる。
 そして、そんな奈都子さんの反論に答えたのは意外な人物だった。
「他殺だとしたら、犯人は鍵を外から掛けたことになる。……すなわち、合鍵が必要だということだ」
「……え?」
「しかし、施錠するために合鍵を持ち出したら、後で警察に鍵の本数を調べられた際に、その事に気付かれてしまう。……他殺の可能性がある、とね」
 後ろを振り向くと、そこにはそこには白髪交じりの頭をしたスーツ姿の男性がいた。
 奈都子さんの直属の上司、源賢矢警部だ。
「け、警部。いつの間に……」
「何、面白そうな話をしていたからつい、ね。それよりもだ」
 源警部は、奈都子さんのそばに歩み寄ると、彼女の肩を叩いた。
「犯人には、合鍵を残す代わりに施錠しないでおくか、施錠する代わりに合鍵を持ち出すかのどちらかしか選択肢がなかったんだ」
「でも、合鍵くらいなら複製すれば……」
「大家さんに聞いたんだがね、ここの鍵は防犯対策に複製しにくいタイプのものらしい。そして支給された合鍵は二本。ともに部屋の中から見つかったよ」
 つまり、施錠可能な合鍵の持ち出しはなかったということだ。
「開け放たれた部屋と消えた合鍵……どちらも自殺にしては怪しいが、どちらかといえば後者の方が他殺のセンで我々が動く可能性が高い、そう犯人は思ったんじゃないかな」
「だからこそ、犯人はあえて鍵を持ち出さずにこの部屋を離れた……ということですか」
 何か行動の選択を迫られた時。
 普通ならば、人は良い方向の選択肢を選ぶ。
 もし仮に、二つの選択肢がどちらとも悪い結果を招くものだとしても、少しでもマシな方を選ぶに決まっている。
 今、源警部が話してくれたのはまさにそんな選択肢の話だった。
 鍵を開けたままの部屋というのは確かに怪しいけれど、後々の捜査で合鍵が一本足りないなんてことになったら、尚更怪しい。
 僕としても、選択肢の選び方については源警部と同意見だった。
 奈都子さんも僕と同様のようで、一人考え込むような仕草をすると大きくうなずいた。
「……分かったわ。確かに、これは単純な自殺……というわけじゃないみたいね」
「うむ。もう少し色々と調べてみなければいかんな。この手帳の人物についても」
「手帳、ですか?」
 源警部は頷くと、奈都子さんに黒いシステム手帳を手渡す。
「ホトケさんのバッグの中から見つかったものだ。随分とマメな性格だったようでね、一日の予定を事細かに書き込む習慣があったらしい」
「えぇ。確かにどの日付にもびっちり予定が書き込まれてますね。今日のところも午後一時から駿太郎達に会うように……って、これは……!」
「なになに? なっちゃん、何か見つけたの?」
「だから、なっ……まぁ、いいわ。警部、手帳の人物というのは……」
 言葉を止めた奈都子さんが何を見つけたのか気になった僕と飛月は、奈都子さんの背後に回り手帳をのぞき見た。
 すると、今日の日付には確かに午後一時から僕達と会う旨が書かれており、更にその左横には、

 ――十一時 前崎来宅予定 返済の件相談

 と書き込まれていた。
「あたし達より前に誰かと会っていたの!?」
「それに返済ってことは……」
 物の貸し借りなら返却と書くはずだし、返済と書いてある以上、高橋さんと前崎という人物の間で何が貸し借りされていたかは明確。
 この世界でもトラブルの種になりやすいトップクラスの物品――金だ。
「先ほど、高橋さんの通っていた大学に問い合わせてみたが、前崎まえさき達馬たつまという同じゼミの友人がいるらしい」
「それじゃあ、その人が?」
「前崎なんて苗字、そこかしこにいるようなものでもないし、恐らくは、な」
 ということは。もし、この前崎達馬という人との間で金の貸し借りのトラブルがあるとすれば……。
「自殺する前に会っていた人物だ。何か見たり聞いたりしているかもしれない。苑部君、早速この人物と連絡を取ってくれないか?」
「え? でも、連絡先が分からないですし……」
「その手帳の後ろについているアドレス帳に住所や電話番号も書き込まれているよ」
「わ、分かりました! ただちに連絡してみます!」
 奈都子さんは警部に敬礼すると、飛んでいくようにその場を離れていった。
 そして、その背中を見送ると、警部は駿兄の方を向き、笑みを浮かべる。
「手帳に書かれていた予定の件、谷風探偵は知っていたね?」
「さぁて、何のことか」
「あの手帳はバッグを開いた一番上、最初に目に入る場所に置いてあった。……が、普通は手帳をカバンに入れる時はそんな置き方しないはずだ。となると、誰かが一度手帳を見た後に、その存在に早く気づいてもらおうとわざと一番上に置き直したとしか思えんのだよ」
 源警部の言葉に、駿兄はうつむきながら、くっくっくと笑う。
「流石に警部さんの目は誤魔化せないねぇ。奈都子なら、何も違和感を気づかなかっただろうに」
「彼女ももう少し現場の経験を積めば、これくらいは気づくはずさ。きっと」
 普通なら、部外者が被害者の私物を漁った事が分かった時点で、何かお咎めでもありそうなものだ。
 だけど、今の警部さんからは、そんなことをする雰囲気はない。
 駿兄を信用している、ということだろうか。
「……さて、と。君は先ほど、まだ気になる事があると言っていたね。……詳しく聞かせてもらおうか」
「あぁ、いいぜ。……だが、混乱しないように気をつけてくれよ」



 駿兄が何を気にしているのか。
 そして、なぜ混乱するのか。
 今の僕には分らないことだらけだったが、そんなことお構いなしに駿兄は指を一本立てて話を始めた。
「まず一つ目の疑問点、高橋さんの命を絶ったあの剃刀だ」
「剃刀というと、あの浴槽に沈んでいた日本剃刀のことかい?」
「日本剃刀? ただの剃刀じゃあないと思ったら、やっぱ特別な名前がついてたのか」
 僕が風呂場で見た剃刀は、家庭用の使い捨て剃刀でもなければ、床屋で顔そりに使っているような折りたたみ式のそれとも違った。
 柄の部分まで刃と同じ鋼で出来ている重厚感あふれるそれは、どこか日本刀に通じるものを感じた。
「まぁ、用途は普通の西洋剃刀や安全剃刀と一緒なんだがね。ただ、名前の通り純国産で、刀鍛冶が一つ一つ作ってる場合が多くて、高級品として出回ってることがしばしばしばあるんだ」
「あ! てことは、警察が来る前にアンタが見つけた桐の箱! あれって、やっぱりあの剃刀の……」
 飛月に言われて思い出した。
 確かに、駿兄はあの時、高橋さんの使っていたと思われるデスクの引き出しを開けて、桐の箱を手に取っていた。
 あの時は中身が空っぽだったこともあって、何を入れてたのか分からなかったけど、どうやらそういうことのようだ。
「てことはつまりだ。事件当時、この剃刀はわざわざ引き出しの奥から引っ張りだされてきたってわけだ。他にもカッターやら包丁やら目に付く場所に刃物があったにも関わらずな」
「なるほど。手近な刃物ではなく、わざわざ目につかない場所にあったものを犯人が凶器に使った理由が分からない、と。そういうことだね?」
「そういうこった。他殺だとすると、犯人は犯行をいち早く済ませかったはずだ。それなのに、わざわざ凶器にあの剃刀を選ぶなんて不自然だ」
 別に他に刃物がなかったわけでもない。
 言い方が悪いけれど、カッターや包丁は手首を切る道具の定番だ。
 むしろ、自殺に偽装したいのなら、そっちを使わない理由がないはず……確かにそうかもしれない。
「他殺で不自然っていうのなら、自殺の方が可能性が高いって、駿兄は言いたいの?」
「この点に注目すれば、な。自殺だとすれば、何らかの個人的な理由であえてあの剃刀を選んだという可能性も残るだろ」
「で、でも、それじゃ、さっきの鍵の件と矛盾しちゃうって! さっきまで他殺説の方が濃厚だったのに……」
 今までの流れから他殺説を信じ切っていた飛月にとって、今の話は寝耳に水だったに違いない。
 ここに来ての自殺説への回帰に、動揺を隠せないでいた。
「そう。こいつの言ったとおり、この事件、自殺にしても他殺にしても不可思議なところがいくつもある。……シャワーの件もそうだ」
「シャワー……って、あの風呂場の?」
 僕が尋ねると駿兄は頷く。
「あの隣人曰く、あのシャワーはずっと出っぱなしになってたって話だった」
「……うん、まぁ、僕達が風呂場に入った時も出ていたしね」
「じゃあ聞くが、何でシャワーが流れてたんだ? 手首切るのにシャワーは必要か?」
 考えるまでもない。
 そんなの必要なわけがない。
 ……って、あれ?
「必要ないのにどうしてシャワーが出てたんだろう……」
「そういうこった。他殺にしても自殺にしても、シャワーを流す必要なんてどこにもないんだよ。ある種、最大の謎かもしれんな」
「ちょ、ちょっと! シャワーを流す理由ならあるじゃない!」
 飛月が手を上げながら、駿兄に反論しだした。
「ほら、死体にお湯かけ続けると体温が変化して死亡推定時刻が狂っちゃうって言うでしょ? つまり、やっぱりこれは他殺で、犯人が殺害時刻を曖昧にするために――」
「でもさ飛月。自殺に偽装するんだったら、そんな小細工しちゃうと他殺って思われちゃうんじゃない?」
「う……。そ、それもそうだけど……」
 これが明らかな他殺なら、そんな小細工をする意味も出てくるだろう。
 だけど、状況からして、他殺だとすれば犯人は自殺に偽装しようとした可能性が非常に高い。
 そんな中で、こんな露骨に偽装を疑われるような行為は絶対にしないはずだ。
「で、でも、それじゃあ、これは一体全体どういうことなの!? 他殺でも自殺でもおかしいところだらけじゃない!」
 そう、今までに駿兄が提示したのは、この事件を解き明かす上で大きな障壁ばかり。
 他殺を匂わせるような状況。
 自殺を匂わせるような状況。
 そして、その両方を否定するような状況。
 一見すると整合性のないように見えるけれど、実際に事件が起きている以上、必ずどこかにこれらの状況を満足させる答えがあるはずなんだけど……。
「……ふむ。ならば、これらの謎を解くヒントを得るためにも一度、彼から話を聞いてみるかね。事件前の状況を」
「彼って……でも、前崎さんは今なっちゃんが……」
「もう一人いるじゃないか。事件について何か知っているかもしれない人物が。壁を隔てた向こうに」
 源警部が顔を向けた先には、壁があった。
 しかし、その壁の向こうには確か…………。



「えぇ。確かに今日はずっと家にいましたよ。一日非番でしたから」
 腕を組んで源警部の問いに答えているのは、高橋さんの部屋の隣人――上野うえの功輔こうすけさん。
 駿兄とともに高橋さんの遺体を発見した第一発見者だ。
 非番という言葉を使っていたが、どうやら看護師をやっているらしい。
 今は、高橋さんの部屋に来てもらって、話を聞いている最中だ。
「亡くなった高橋さんとは親しかったりしましたかね」
「まァ、隣人同士ですからねェ。顔合わせたら挨拶したりは勿論しますよ? でも、個人的な付き合いは無いですよ。職業柄、学生さんと生活パターンが違いますからね」
 つまり、普通に隣人として友好な関係を築いている以上の付き合いはないということだ。
「一番最近顔を見たのはいつですかね? あ、勿論生前の姿でですが」
「今日の朝だよ。朝のジョギングから帰って来た時、入れ違いに部屋から出てきたのを見たんで」
「その時、何か変わった様子は? 思いつめてたとか、顔色が悪かったとか」
「いや、特には。いつも通り、微妙に辛気臭い顔してたよ」
 思い出すような仕草を取りながら、上野さんは語る。
 どうやら、今日の朝の段階では生存が確認されているようだ。
「今日は、ずっと家にいたということですが、隣の音というのは結構聞こえたりするんで?」
「ま、ある程度は。水道使ったり、玄関のドア開けたりすると聞こえることがありますかね」
「水道……つまり、今日聞こえたというシャワーの音も?」
 シャワーというフレーズを聞いて、上野さんが露骨に嫌そうな顔をした。
「またですか? さっきも女の刑事さんにその話を聞かれたんですが……」
「いや、申し訳ない。もう一度聞かせていただけると嬉しいのですが」
 ひたすら平身低頭で、源警部は頼み込む。
 すると、上野さんも警察のそんな姿に困惑したのか、意外とあっさり口を開きだした。
「……確かに聞いたよ。隣からずっとジャージャーとシャワーが流れる音が」 
「シャワーの音とすぐに分かったんですか?」
「普段なら気付かないだろうけど、今日のはやたらに勢いよく出されてたからかな。タイルに跳ねる音がやけに響いてきたんだよ」
 確かに、遺体を発見した時、風呂場のシャワーの勢いは必要以上に強かった。
 それは事実に違いない。
「あれは昼の番組が始まる前だったから……大体十二時前くらいに気づいたかな」
「それからずっと聞こえていたんで?」
「テレビに注目したり、昼飯作るんでキッチンで作業したりしてたから、正確にはずっとじゃないがね。だが、ふと耳を傾けると、止まることなく流れてたよ」
 まぁ、逆にずっと音を傾聴していたなんていう方が怪しいわけで。
 この上野さんの証言については、不確かな方が自然かもしれない。
「あの〜、音って、他には何か聞いてないんですか?」
「他に……?」
 いきなり飛月が、上野さんにそんな問いかけをしていた。
 警部さんと話していた最中だというのに、相変わらず唐突な行動をすることで。
「当然、隣の音です。ほら、壁越しに口論する声が聞こえてきたとか!」
「口論ねえ。確かに誰か来てたみたいだけど、そんなの聞こえなかったな」
「なんだぁ……残ね……って、えぇえ!? 誰か来てたんですか!?」
 他殺だとしたら、今日の午前、高橋さんの部屋には来訪者がいたはずだ。
 しかし、それは可能性の域を出ない単なる推測にすぎなかった。
 そこで、沸いて出てきたのが今の上野さんの証言。
 可能性が事実に変わるかもしれないその重大な証言に、飛月だけでなく僕や警部さんも驚きを隠せないでいた。
「その事は、先ほどの刑事には話していないんですかな?」
「ま、まぁ。そこまで重要な話じゃないと思ったし……」
 飛月や警部さんの勢いに気圧される上野さんには、今の言葉の重要性が分からないらしい。
 まぁ、他殺説でも考えない限り来訪者については大して意味がないと思っても無理はないだろうけど。
「た、ただ隣からうっすらインターホンが聞こえた後に、ドアが開く音がしたから、その前に誰か来てたのかな、と思っただけですって」
「それはいつ頃の話で?」
「俺が聞いたのはた、確か……十時半過ぎくらいだったかな」
 来訪者が来たのは十時半過ぎ。
 十時半過ぎといえば、もう少し先に高橋さんには予定があったはず。
 そして、そこで会う予定だったのは……
「もしかして、前さk――」
「では、その時間の後でドアが開く音を聞いたりは?」
「多分、聞いてないと思いますよ。シャワーと一緒で、ずっと壁に耳当ててたわけじゃないから、聞き洩らしがあるかもしれないけどな」
 飛月の言葉をかき消すように、警部さんは上野さんに重ねて質問した。
 まるで、前崎さんの話をさせないかのように。
「ただ、流石にドアが開けられた直後に、もう一回開いたなんてことはなかったみたいですがね」
 そこまで話すと、上野さんは不安げに警部さんの顔を見る。
「あ、あの、警部さん。これって、単なる自殺なんですよね? それなのに、どうしてそんな色々聞いてくるなんて、まるで殺人でもあったみたいに――」
「まぁ、念のためにです。念のため。そこまで深く考えなくていいですよ」
「そ、それなら、いいですけどね……」
 警部さんの言葉にほっと胸を撫で下ろしながら、上野さんは安堵の表情を浮かべる。
「あ! そうだ、忘れてました。最後に一つだけ」
「な、なんです?」
「……あなた、看護師ということでしたが、勤務先を教えてもらえますか?」
「な、なんだ。そんなことですか……」
 最後の質問ということで、構えていた上野さんは、想定していたよりも質問が易しかったためだろう。
 拍子抜けしたような表情を浮かべていた。
「医科薬科大の大学病院ですよ。吉祥寺の大学に併設してある」


 上野さんが自室に戻った後。
 僕達は作戦会議でもするかのように円形に陣取って、話をしていた。
「ねぇ、ドアが開いたのって、やっぱり前崎さんだよね?」
「確かに、手帳には十一時に会うって約束だったみたいだけど……」
 インターホンの音に続いてドアが開いたということは、高橋さんは来訪者を迎え入れたということだ。
 十時半の来訪者というと真っ先に思い浮かぶのは当然、十一時に会う予定だった前崎さんだろう。
 ただし、来訪者というだけなら、まだ他にも可能性はある。
 たとえば――
「宅配便や勧誘の人かもしれないよ? 偶然あの時間に来たのかもしれないし」
「……いや、その可能性は薄いだろうよ」
 駿兄はそんな僕の提案をあっさり一蹴した。
「さっき、一緒に言ってただろ? 最初にドアが開いた後、間髪入れずにまたドアが開いたような音はしなかったって」
「そういえば、そんな事言ってたけど……って、そうか」
 宅配便や勧誘なら、ドアを開けて入った後、大して時間を掛けずに出ていくだろう。
 それならば、ドアが開く音が短い間隔で二度聞こえるはずだ。
 それが聞こえないということは……。
「やっぱりそうなんだ! 前崎さんには高橋さんを殺害できるチャンスがあったってことだよ!」
「十時半以降に高橋さんが亡くなっていたなら、ね」
 上野さんの証言を全て信用するならば、高橋さんが死亡したのは今日の朝から僕達がここを訪れた昼過ぎまでの間のいつか。
 そのうち、前崎さんがここを訪れたとされているのは、十時半以降。
 つまり、十時半から昼の一時すぎの間に亡くなったのならば、前崎さんが犯行が行えたということだ。
「警部さん。高橋さんが亡くなった時間っていうのは、もう分かっているんですか?」
「こっちで簡単な検死しかしていないが、死亡してから二、三時間程度しか経ってないんじゃないかと言ってたよ」
「今二時半すぎだから……、十一時半から十二時半にかけて……ってことね」
 まさにドンピシャ。
 前崎さんが訪れてから僕達がここに来る前の間に亡くなった、というわけだ。
「えっと、シャワーのお湯が当たっていたことで、死亡推定時刻が狂った可能性みたいなのは……」
「当然、あんな状況じゃ、正確な時刻は割り出せないだろう。だから、あくまで今のは検死した人の経験と勘による補正を加えた結果だ。詳しくは精密な検死を行わないと分からんよ」
 ということは、まだ死亡時刻が確実に決定したわけではないということか。
 あくまで、死亡「推定」時刻なのだろう。
「警部! よろしいでしょうか?」
 すると、突如僕達のそばに一人の制服警官が近づいてきた。
 そして、その警官は敬礼をすると、警部さんに何やら報告を始めた。
「今しがた、本庁に戻っていた鑑識から例の錠剤の調査の結果が出たのですが……ここで話してよろしいでしょうか?」
 警官は僕達の姿を見ながら、不安そうに尋ねる。
 まぁ、警察とは無関係の人間がすぐそばに立っているんだ、無理もない。
「あぁ、いいよいいよ。で、結果は?」
「は、ハッ! それがその……どうやら、睡眠薬の成分が多く検出されたようです。それも市販のものよりもかなり強力なようだということで……」
「睡眠薬か……」
「はいっ! それこそ研究所や大病院が所持するレベルものだとか」
 錠剤。
 その言葉から、僕は一つのことを思い出した。
「ねぇ、莞人。錠剤ってやっぱりあのビンのかな?」
 警察が来る前。
 僕は駿兄が飛月とともに部屋を調べている中で、テーブルの上にある錠剤のビンを見つけた。
 その瓶はラベルが貼られておらず、その当時から明らかに怪しい雰囲気を出していた。
「でも、どうして睡眠薬なんかあったんだろう……」
「そ、そう言われても困るけど……。そ、そうだなぁ。意識を朦朧とでもさせないと自殺なんてできないから、とか?」
「あるいは、薬を砕いて粉末にしたりして何かに混ぜて飲ませることで、犯行を行う際の被害者の抵抗を無効化するとかな」
 いつの間にか、僕達の会話に駿兄が混じってきていた。
「そうなると問題になるのは、そんな特別な睡眠薬をどうやって手に入れたか……だが、今回に限れば、意外とそこは楽なのかもしれんな」
「そ、そうか。高橋さんは薬学部だから、そういう薬が研究室に保管されてるかもしれないし、手に入れる事も出来るかもしれないんだ」
「それを言ったら、前崎さんも高橋さんと同じゼミだっていうから、チャンスは同じくらいあったはずだよ!」
 相変わらず他殺説を主張し続ける飛月は、更に意気込んだ。
 そして、そんな飛月を横に見ながら、警部さんが口を開いた。
「そして同様に、そのチャンスは病院に勤務している人間にもある、というわけだ」
「病院勤務って、もしかして……」
「シャワーの音に来訪者の事、全ては彼の証言のみに頼ってる現状、逆に考えれば、彼はいくらでも虚偽の証言で自分に有利な状況を作ることができるわけだ」
 どうやら、また一人疑わしい人物が出てきたみたいだ。
 確かに、隣に住んでいるなら高橋さんが部屋にいるかどうか、一人でいるかどうかも分かるし、犯行に及びやすい。
 犯行のチャンスという面では、一番有利なのかもしれない。
「だけど、動機がないんじゃない? ほら、マンションでもそこまで顔合わせないって言うし……」
「マンションで顔を合わせないのなら、職場で顔合わせしてる可能性もある」
「職場って……。上野さんの職場は大学病院なんだよ? 大学生の高橋さんとどうや……って…………もしかして」
 僕の呟きに源警部が頷く。
「高橋さんが通っていたのは東京医科薬科大学。そして、先ほども確認した通り、上野さんの勤務先はその系列の大学病院。……接触できる機会は大いにあるというわけだ」
 薬学部に通ってるってことは聞いていた。
 だけど、どこの大学かまでは知らなかった。
 だからこそ、今までピンと来なかったけれど、そういうことなら話は変わってくる。
 高橋さんと上野さん……まだ薄ぼんやりとだけど隠れた接点があったんだ!
 僕が一人納得していると、
「源警部!」
 先ほどの制服警官のように、警部を呼ぶ声が聞こえてきた。
 しかし、今度の声は先ほどのような男の声ではなく、若い女性のものだ。
 それもよく聞いたことのある。
「おぉ、苑部君。早かったね」
 つい先ほど、外に出ていった奈都子さんが、戻ってきたようだ。
 その背後に、一人の若い男の人を引き連れて。
「思いのほか近所だったもので。直接連れてくることにしました」
「ふむ。……それじゃあ、そちらさんが?」
「はい。高橋絹一郎さんの友人、前崎達馬さんです」
 どうやら、到着したようだ。
 この事件で、最も話を聞くべきだろう人物が。



 奈都子さんが連れてきた男性、前崎さんは何かスポーツをやっていそうなしっかりした体格の持ち主だった。
 秋を迎えたにもかかわらず、肌はやや浅黒く、頭も短く刈り込んでいる。
 仏頂面でガリ勉タイプの高橋さんの友人、と言われてもいまいちピンとこないのが現実だ。
 源警部は、そんな前崎さんに一歩近づくと頭を下げた。
「あぁ、どうも。私、ここの捜査の指揮をしてる源です。こちらは事件の第一発見者の方々。よろしくお願いしますわ」
「あ、あぁ。どうも……」
 いきなり、警察の動きまわる室内に案内されて戸惑っているんだろう。
 せわしなくあたりを見渡していた前崎さんが頭を下げた。
「苑部君。事件の事はどのあたりまで?」
「ひとまず遺体を発見するまでの経緯を軽く。ですが、ちょっと気になることが……」
 すると、前崎さんが奈都子さんの前に出て、自ら説明を始めた。
「刑事さん達、何か勘違いしてるんだと思うんスよ」
「勘違い、というと?」
「そっちの刑事さんにも言ったんスけど、俺今日、ケンとは会ってないんスよ」
 ケンというのは高橋さんのことだろう。
 下の名前がケンイチロウだからケン。よくある話だ。
 と、今はそれよりも重大な発言が今あったわけで。
「どういうことですかな? 高橋さんの手帳には、本日の十一時にあなたと会う予定とありましたが」
「いや、まぁ、そうなんスけどね、今日になって突然、急用が出来たから、今日は話が出来ない、って電話が来たんスよ」
 そう言って、前崎さんは携帯の着信記録を見せる。
 すると、そこには確かに「高橋 絹一郎」と表示された記録があった。
 着信時刻は今日の十時四十九分。
「十一時に会う予定なのに、五十分に電話とは、これまた急ですな」
「まぁ、確かに。……でも、俺ン家、こっから原チャリで十分くらいだし、これくらいに届いても別に問題ないんスよ」
「電話を受け取った時もまだ家に?」
「そうッスねー。ちょうど出かけようと思った矢先ッス」
 その時間に出かけようとしたってことは、十一時ほぼぴったりに来る予定だったということか。
「電話の声は高橋さん本人に間違いありませんでしたか?」
「そりゃそうッスよ。あいつの携帯から電話が来たんですから」
 前崎さんは携帯をポケットにしまう。
「そんなわけで、今日は俺、ケンに会ってないんで、今日のあいつの様子がどうだったかとかは分からないんスよ」
「ふむ、ならば、あなたは今日はここに来ずに、ずっと家にいたということですかな?」
「まぁ、そうなるッスねー。外で遊ぶ余裕もそんなにないッスし、テレビでも見ながらダラダラ過ごしてたッス」
 前崎さんは、今日ここに来ていない。
 しかし、上野さんは十時半過ぎにドアの開く音、誰かが部屋を訪れた音を聞いたという。
 二人の証言を信じるならば、高橋さんは別の誰かを会ったということになる。
 そして、その別の誰かと会うことこそが、電話にもあった「急用」ということにも。
「では、今日以外の事で話を聞きましょうか。過去、この部屋自体に訪れたことは?」
「そりゃ、家も近いっすし、何しろ同じゼミっスからね。何度も来たことあるッスよ」
「何度も、ですか」
「生活費に困った時は、ここで寝泊まりさせてもらったりもしたッス」
 どうやら、想像していた以上に親しい仲だったらしい。
 そんな親しい人を、自殺に見せかけて殺せるだろうか、と言われると正直難しいかもしれない。
「生活費といえば、手帳には借金の件、とあなたと会う予定のところに書いてあったのですが、やはりお金を?」
「ま、まぁ、それは……ちょっとばかり借りてたんスよ。で、その返済が少し遅れてたんで、ケンがその事について話がしたいって言ってきて……」
 それで、今日話し合うことになったということだろう。
「あいつ大袈裟だったんスよ。金借りる時もパソコンで作った借用書用意するし、利子こそつけないにしても返済期限をきっちり設定してくるし……」
「うわぁ……かなり神経質そう……」
「そこの子の言うとおりッス。最近なんかは、研究が上手くいってないせいかピリピリしすぎたのか、そのせいで誰かにつけられてるとか、部屋に誰かこっそり出入りしてるとか、最近は幻覚めいたものまで見えるようになってたみたいッス」
 前崎さんが幻覚というソレについて、高橋さんは本気で心配をし、駿兄に相談したわけか。
「俺は相談された時に言ったんス。そんなの気のせいだって。何かでストレス発散させれば、そんな悪い幻見なくなるって」
「しかし、彼はそんな幻を見続けた?」
「真相はどうか分かりらないッスけどね。でも、あいつが手首切ったってんなら、そういうことに思い詰めた結果だったのかもしれないッス……」
 前崎さんは、そう言うと項垂れてしまう。
「思えば、あの頃から、もっとケンと話してればよかったのかもしれないな……」
「あの頃、というと?」
「いや、先月のことなんスけどね。ケンが研究に関わっていた新薬の治験の最中に、副作用で死人が出ちゃったんスよ」
 治験――すなわち、研究開発された新薬の人体を使った臨床試験の事だ。
 高額のバイトになっていることで有名でもある。
「別にあいつが新薬開発の中心にいたわけじゃないんで、責任は特に負う必要なかったんスがね、その新薬の研究は抜本的な見直しをすることになっちまって……」
「まぁ、投与した人間が死亡してしまったのだから無理はないと思うけれど……」
「抜本的見直しってのは、つまり今までの研究が水の泡になるってことッス。今までずっと熱入れて研究が全否定されるされたも同然ッス。特に研究に熱入れてたケンにとっては耐え難い屈辱だったと思うッス」
 前崎さんが悲痛な面持ちで言葉を続ける。
「しかも新薬研究の監督者だったってことで色々追及されたウチの教授も、ケンにネチネチ愚痴を言うようになって……。それで前にもまして研究に神経質になっちまったみたいで……」
「それが自殺の原因の一端、とあなたは考えるわけですな」
「そうッスね。……相談に乗れば良かったと今になって後悔でいっぱいっスよ」
 話を聞く限り、自殺の動機として十分に思える。
 パソコンに残されていた遺書に書いてあった「研究の行き詰まり」という文面とも一致する。
 だけど、この事件には、それだけで単純な自殺とは思えない要素も多くある。
 結局のところ、自殺なのか他殺なのか。
 まだまだ分かりそうになさそうだ。



「ねぇ、今の話怪しくない?」
 前崎さんが出て言ってすぐに、飛月が口を開いた。
 それも真剣な面持ちで。
「会う予定の時間の十分前に電話で予定のキャンセルなんて、やっぱりおかしいよ」
「でも、前崎さんは電話を実際に受け取ったし、それは着信履歴にも残ってるのよ?」
「そう、そこなの! それこそが、あの前崎って人の使ったトリックなわけよ。高橋さんのケータイを使った、ね」
 奈都子さんの問いかけに、待ってましたと言わんばかりに、飛月は顔を輝かせる。
 そして、そのまま得意気に自らの推理を語り出した。
「いい? 上野さんが隣の部屋のドアが開くのを聞いたのは十時半過ぎだったでしょ? もし、その時間に本当は前崎さんが来ていたとしたら?」
「来ていたとしたら、どうなるの?」
「そりゃ勿論、高橋さんのケータイを使って自分のケータイに電話をすることができるに決まってるじゃない!」
 上野さんの証言通りなら、来訪者があった時刻は十時半過ぎ。
 そして、前崎さんの携帯が着信したのは十時四十九分頃。
 その情報のどちらも正しいならば、飛月の言ったような行動も可能だ。
「片方のケータイで発信して、もう一方のケータイで着信。それで会話の内容を適当にねつ造すれば、高橋さんと会話した風に見せかけられるでしょ?」
 高橋さんが亡くなった以上、電話の内容を語れるのは前崎さんのみ。
 例え、その内容が全く異なっても、文句を言う人が誰もいるはずがない。
「ということは、高橋さんのケータイには、操作をした前崎さんの指紋が残ってるはずだよ。それって、今の話の有力な証拠に――」
「残念ながら、そうは上手くいかないようだよ」
 唐突に、源警部が僕達の会話に割り込んできた。
「携帯電話については、既に指紋を調べてあるがね。高橋さんのものしか見つからなかったよ」
「で、でも、犯人がふき取ったとか、手袋を付けてたっていう可能性も……」
「確かに可能性はあるわ。でも、何度も言うように、それは可能性止まりにすぎないのよ」
 可能性はしょせん可能性。
 それを確証に変えるには、大きな労力が必要だ――奈都子さんはそう言っているのだろう。
「それじゃあ、前提をひっくり返してみようか」
「前提って、何?」
「例の電話があったかどうかって前提だよ。飛月は今、電話が嘘だって前提で話を進めてたけど、今度は電話が実際にあったって考えてみようよ」
 物事を違う視点から見ることで、新しい発見が出来る。
 ミステリに限らず、何事においてもそれは重要なことだと思う。
「う〜ん、でもそれだとやっぱり不自然だし……。だって、元々予定の入ってた時間の十分前だよ?」
「うん。だけど、不自然だからこそ、急用が何なのかっていうのが重要になってくると思う」
「ほう。中々いっちょまえに語るじゃねぇか」
 今まで何かを考えていた駿兄も、僕達の会話に加わってきた。
「で? お前はどう考えてるんだ、莞人」
「うん。急用って言うからには、電話をする直前に何かがあったんだと思う。高橋さんが心変わりするような何かが」
「でも……それって、つまり自殺する決意がついたってことじゃない? 急用っていうのは言葉の綾なのかもしれないし」
 口を挟んできた奈都子さんに僕は首を縦に振った。
「それも一つの可能性です。ですけど、それは可能性に過ぎないんです。まだ他にも考えられる可能性はあります」
「ハハハ、お前の受け売りだな、奈都子」
「う、うるさいわね! 莞人君。さっさと話を続けて」
 奈都子さんに促されるまでもなく、僕は話を続けた。
 自殺じゃない、もう一つの急用の可能性を。
「自殺じゃないとすれば、あの時間に急な心変わりをする何かが、電話をする少し前にあった、と考えるのが自然だと思います。」
「何か……って、もしかして十時半の!」
「うん。あの時間の来訪者が、急用になるほどの何かを高橋さんに突き付けたってことは、十分に考えられると思う」
 招き入れた来訪者が思わぬ用件を持ち出してきたため、前崎さんの用事を後に回してまで、話を聞くことにした。
 他殺だとすれば、僕はその可能性も高いと思う。
「んで、その肝心の心変わりするほどの急用って、たとえばどんなのだ?」
「そ、それは……」
「ククク……。相変わらずツメが甘いな。カルピスの原液並に甘すぎるぜ、莞人」
「そ、そういう駿兄はどうなのさ」
「俺か? 俺は秘密だ。禁則事項ってやつだな」
 いつも通り、のらりくらりと逃げられてしまった。
 しかし、駿兄の顔にはいつものおちゃらけた表情は浮かんでない。
 これは、自身の考えをまとめに入った時の表情だ。
「……さてと。それじゃ、最後の情報収集と行きますか」
「情報収集って、また上野さんか前崎さんに話を聞くの?」
「主観的な意見はこれ以上いらないさ。今必要なのは、客観的なデータ……あんたら警察の捜査情報だ」



 駿兄は早速源警部を問いただした。
 その内容は――
「指紋……のことかね。別に構わんよ。で、何を話せばいい?」
「全部だ。この部屋から検出された指紋について、分かったこと全部」
「ま、言うとは思ってたがね」
 苦笑気味に警部さんは肩をすくめた。
「先に結論を言うと、手が触れそうな場所について色々と調べてもらったが、高橋さん以外の指紋は見つからなかったよ」
「本当に高橋さんの指紋だけ?」
「まぁ、一部でそれ以外の指紋も見つかることには見つかったが……」
「そ、それ本当ですか!? ど、どこに!? 誰の!」
 それを聞いて、飛月が色めき立つ。
 他殺説を主張する身としては、当然有り難い情報になるはずだ。
 だが、警部さんはそんな飛月の期待に反して、残念そうな……どこか呆れたような表情で答える。
「君達、それに上野さんの指紋だよ。玄関や風呂場にいくつも見つかった」
「え? でも、あたし、物を触る時はちゃんと軍手越しとかで……って、あっ!!!」
 どうやら、飛月も気づいたようだ。
 確かに高橋さんの遺体発見後、警察が来るまでに駿兄や飛月が行った捜査では、カメラ設置用に用意していた軍手を使って指紋を付けないように注意していた。
 だが、それはあくまで遺体発見後の事。
 それまで、つまり部屋に入ってから遺体を見つけるまでの僕達がそんな事を意識するはずもなく――
「言い直そうか。風呂場と玄関を除けば、高橋さんの指紋以外は見つからなかったよ」
 上野さんの指紋が見つかったというのも当然、遺体発見の際に一緒に立ち会ったからだろう。
「なんだ……。何も見つからなかったんだ。がっかり」
 指紋が他殺説を確信させる事を期待していた飛月は、肩を落として落胆する。
 だが、一方の駿兄は興味ありげに笑みを浮かべていた。
「……だとすりゃ、やっぱりこれは単なる自殺とは言えないだろうな」
「え? ど、どういうこと駿兄?」
「ちったぁ、自分のおツムで考えてみろ。いいか? この部屋には入り口部分を除いて、住んでる本人の指紋が見つからなかったんだろ」
 風呂場は玄関を入ってすぐの場所にあった。
 すなわち、僕達の指紋が付着したのは、この部屋の入り口部分に限られているわけだ。
「じゃあ、聞くが何で指紋はなかったんだ?」
「それは、本当に誰もこの部屋に来てなかったとか……」
「犯人が指紋をふき取ったのよ! この部屋に来た痕跡を残さないために!」
 僕の言った可能性か、飛月の言った可能性か。
 大きく分けると、大体その二つに分かれるだろう。
「んじゃー、それを踏まえて、さっきお前の言ってた前提ってのをもう一度考えてみな」
「前提……って、前崎さんの電話があったかどうかってこと?」
 僕が尋ねても、駿兄は答えてくれない。
 ……ここから先は、ヒントなしで考えろってことだろう。

 さっき、僕は飛月と対照的に前崎さんの電話が本当にあったという前提を用意した。
 今回もそれをスタート地点とすると、まず確定するのが前崎さんが自宅に残ったということ。
 そして、ここで問題になるのが上野さんの証言にあった十時半の来訪者の話。
 これについても、真偽両方で仮定を置いてみるとする。
 まず分かりやすいのは、上野さんが偽証している場合。
 高橋さんの部屋について偽証するってことは、何かやましい事をかくしているからである。
 そして、そのやましい事とは、ほぼ間違いなく高橋さんの死についてのはずだ。
 一方で、上野さんの証言が真実の場合。
 この場合、十時半の来訪者とは、前崎さん以外の第三者ということになる。
 来訪したのが事実だとすれば、部屋にそれらしい指紋がないのは不自然であり、その第三者が痕跡を抹消したということになる。
 そんな事をする理由もまた、高橋さんの死に関係しているに違いない。
 つまり、高橋さんが本当に前崎さんに電話をかけていたのなら、自殺の可能性はほぼ消えてしまうということだ。
 そしてさらに、その前提をひっくり返す。  すなわち、前崎さんにかかってきた電話というのがそもそも嘘だったとしたら――って、そうか。  駿兄が言いたいのって、もしかして……
「二人の証言の真偽に関わらず、自殺の可能性は……」
「限りなく薄くなるってこと、か」
 どうやら、警部さんも気づいたようだ。
 駿兄の言わんとしてた事が。
「そう。この事件、調べれば調べるほど不自然なんだよ。普通の自殺だと考えるにはな」
「だ〜か〜ら。さっきからあたしがずっと言ってるじゃない」
 ふふん、と飛月は胸を張る。
 比喩表現ではなく、実際にその豊かな胸を僕のそばで突き出していたりするので、目の毒だ。
「でも、そこから先に進まないんだよね。話が……」
「そうね。怪しい指紋が見つからない以上、私も犯人の特定に至るのは無理だと思うわ」
 他殺か自殺かははっきりした。
 しかし、肝心の犯人ははっきりしない。
 一歩一歩推理を進めていくのが常道とはいえ、これではもどかしいと思うのは僕だけだろうか。



「警部。ここは、動機から犯人を絞り込んでみた方がいいと思うのですが」
「ふむ……。確かに何もしないよりは意味があるな。それでは、苑部君頼むよ」
「分かりました!」
 警部さんに敬礼をすると、奈都子さんは颯爽と踵を返した。
 動機の線……やっぱり、そこからいくと、怪しいのは借金のあった前崎さん。
 次点で、隣人でなおかつ、今回の証言者になった上野さんといったところだろうか。
「なぁ、警部さん。話が戻るんだが、指紋についてもう少し聞いていいか?」
「む? ……まぁ、別に構わんが、さっき話した以上の情報はないと思うよ」
「情報はアレ以上には求めないさ。ただ、指紋を調べた場所のリストとかがあれば見せてほしいと思ってな」
「リスト、リストねぇ…………あ、ちょっと君、いいか?」
 偶然傍を通りかかった青い制服の鑑識官に、源警部は声を掛ける。
 そして、何やら話をすると、その鑑識官は小走りでどこかに向かうとすぐに戻ってきた。
 戻ってきた鑑識官にクリアファイルを手渡された源警部は、それをざっと見ると、すぐに駿兄に渡した。
「几帳面な鑑識さん達に感謝してくれよ。ちゃんと記録してたみたいだ」
「あぁ、そりゃどうも」
 駿兄が受け取ったクリアファイルには、数枚もの紙が入っていた。
 そして、そこには指紋を調べた箇所とそこから検出された指紋について記述され、指紋の付着状況の図示までされている。
 確かに、これを記録した鑑識さんは、とても丁寧な人だったみたいだ。
 駿兄は、そんな指紋の記録について、一枚一枚じっくりと調べはじめた。
「うわ……そんなにあるのに、全部見るの?」
「…………」
 そんな飛月の言葉にも、駿兄は耳を傾けない。
 よほど指紋の記録に集中しているようだ。
「わっからないなぁ。警部さんは怪しい指紋は見つからなかったって言ってるのに、どうして改めて調べるんだろ」
「まぁ、駿兄には駿兄の考えがあるんだよ、きっと」
 それがどんな事なのかは分からないけど。
「と、とりあえず僕達も一度見てみようよ。もしかしたら何か見つかるかも」
 僕は駿兄に、駿兄が読んだ分を自分たちに回してくれるよう頼む。
 すると、駿兄は無言で今まで読んだ分をざっと手渡してきた。
「こんなの役に立つのかな〜?」
 飛月は、未だに半信半疑のままだが、何もしないよりはマシだろう。
 僕は、記録に目を通し始めた。
 しかし、当然のことながら、記録に記されているのは高橋さんの指紋ばかり。
 駿兄に次々と既読の記録が渡されるが、それは同じ。
 机の引出しにも、剃刀の入っていた木箱にも、流しにあったコップや皿にも高橋さんの指紋しか付着していない。
「ねぇ。さっきから気になってたんだけど、電気のスイッチとかパソコンのキーボードに指紋がついてないってどういうこと? 普通そういうところにこそ、ここで生活してる高橋さんの指紋が付いてる気がするんだけど」
「いや、だから拭き取ったんだよ、きっと……。ほら、パソコンとか遺書を偽装する時に触ったりしてるだろうし」
「し、知ってたわよ、それくらい! そ、そう! 莞人を試しただけよ、試しただけ!」
 飛月は顔を少々赤らめながら、取り繕うようにまくし立てる。
 ……けど、それと一緒に腕を小突くのはよして欲しい。
 その拳が、いつ本気を出すか怖い。
「で、でも、そうだとすると、指紋がない部分もそこそこ多いし、犯人は結構指紋をふき取ったってことになるんだね」
「そりゃあ、犯人にしてみたら自分が触った部分の指紋全部を消さなきゃならないしね」
「でも、だったら最初から手袋でもつければいいのに」
「いや、手袋なんてつけたまま部屋に入ったら、迎え入れた高橋さんに怪しまれちゃうよ。ま――ふげっ!!」
 まぁ、高橋さんを殺した後なら、手袋をしようと何をしようと大丈夫だろうけど。
 そう言おうとした瞬間、飛月の拳が飛んでいた。
「分かってるって、それくらい!」
「な、なぜ殴ったし……がふ」
 久々に食らった鉄拳。
 鋭さや重さは相変わらずのようだ。
「ま、まぁ、つまるところ、犯人が律儀に部屋をふき取り回ったせいで、高橋さん以外の指紋は結局どこにも見つからなかった、と。そういうことだよね?」
「それ以上のことは結局分からなかったね……」
「いや、分かったことならあるぜ。大収穫がな」
 記録を読み終えたのか、駿兄は僕達の前に立つと、僕が手に持っていた記録を取り上げた。
「あ、ちょ、ちょっと駿兄!」
「んで、となると、残る問題は理由ってことになる」
「理由って……一体何言ってるの!? 大収穫って何?」
 飛月が駿兄に詰め寄ると、背後から慌ただしい足音が聞こえてきた。
 どうやら、奈都子さんが戻ってきたようだ。
「警部、高橋さんの身辺について、ある程度聞いてきました」
「ふむ、そうか。で、結果は?」
「はい、それが――」

 奈都子さんの調査結果曰く。
 大学の関係者からの聞き取りによると、治験中の事故やそれによる研究の見直しは全て事実らしい。
 つまり、遺書や前崎さんの話の件は、いずれも事実ということだ。
 そして、これは同期の学生から聞き取りの結果なのだが、どうやら高橋さんは以前から人に好かれるようなタイプじゃなかったとのことだ。
 なんでも、相当プライドが高かったようで、家が金持ちで大学に首席入学、しかも入学後の成績も常にトップだったことから、常日頃からそれを鼻にかけていたという。
「うわぁ、そりゃ嫌われもするよ」
「人に恨まれるようなタイプではあったということですね」
「実際、親しい友人は少なかったと聞いてるんだけどね。でも……」
 奈都子さんは言葉を濁す。
「どうも、前崎さんは、そこらへんは大して気にしてなかったみたいなのよね」
 高橋さんとは対照的に、前崎さんは誰とでも打ち解ける気さくな人物だったらしく、高橋さんとも同じゼミに配属された去年頃から、すぐに打ち解けるようになったらしい。
 しかも、高橋さんには僅かながらに及ばないものの成績もかなりの上位で、成績のひけらかしも気にはしていなかったようだ。
「意外だな〜。性格的には二人で全然反りが合いそうにないのに」
「むしろ、それくらい不一致な方が仲良くなる、とも言うけどね」
 飛月も僕とは正反対な性格だったけれど、今は何だかんだでそれなりにやっていってるし。
「僕的には、成績がすごく良かったって言うのが意外かも。なんて言うか、そのスポーツマンなタイプだったし……」
「いわゆる文武両道っていうやつね。研究も随分熱心にやってるみたいで、教授たちにも評価されてたとか」
「そっちの研究は、治験の件でストップしてたりしてないの?」
「分野が違うから、別にそんなことはないわね。むしろ、対照的に順調だったみたい」
 研究の調子まで正反対。
 唯一共通しているのは、成績上位だったということくらい。
 ここまで正反対な事項が多いというのも、逆に珍しい気がする。
「ただ、前崎さんが苦学生で生活に困っていたっていうのは事実みたいでね。高橋さん以外にもお金を借りてたみたい」
「そんなにたくさんのお金を借りてたんですか?」
「まぁ、高橋さん以外は数千円単位だったみたいだけど、高橋さんには万単位の借金があったとか……」
 性格の面で問題がなかったとすると、借金の件がますます怪しくなる。
 金は人を変えるという。
 温厚そうな人みたいだけど、金が絡むともしかしたら……。
「あ、警部。治験といえば、興味深い事が分かりました」
「ふむ、興味深い……とな」
「えぇ。例の治験で死亡したのは大学病院に入院していた患者らしいのですが、その患者を担当していた看護師というのが――」
「もしかして、上野さんとかだったりするの!?」
 飛月の問いに、奈都子さんは首を縦に振った。
「ただ、互いに患者さんを通じて、そんな繋がりがあったことは知らなかったみたいだけどね」
「ふむ。病院内部で二人が接触していた可能性については?」
「それも薄いと思います。高橋さんが大学病院に行ったのも治験の都合で数回きりみたいだし」
 とは言っても、接点が見つかったのは事実。
 まだ奈都子さん達が見つけていない接点がそこから見つかるかもしれない。
「他に何か高橋さんにトラブルがあったりは? 大学だけでなくアルバイト先やマンションでも火種は出来ると思うが」
「先ほども言いましたが、性格のためか高橋さんには深く付き合っていた人がいないようです。逆に言うと、トラブルが出来るほどの付き合いをしていなかったようです。アルバイトはしていなかったようですし、マンション関係者から話を聞いても、こちらで何か問題を起こしたという事実はないようです」
 そうなると、やはり高橋さんが関わったトラブルになりうる出来事というと、例の治験くらいしかないということだ。
 他に、トラブルとまではいかないもののその火種になりうる事として、例の前崎さんへの借金があるくらいだろうか。
「今のところ、調べられたのはここまでです」
「ふむ、そうか……」
「これから、もう少し調べてみて、更に動機の線で洗って――」
「いや、その必要はない」
 背を向けかけた奈都子さんの肩を、駿兄が掴んで止めた。
「今のお前の話で、最後の謎がなんとなく分かったよ」
「最後……って、ちょ、ちょっとまさか、あんた……!」
「あぁ。はっきりと見えたよ。今日、この部屋で何が起こったのが。玉虫色が何色かはっきりするかのごとくな」
 玉虫色……か。
 思えば、この事件は最初から色々とあやふやだった。
 自殺なのか、他殺なのか。
 部屋に誰か来たのか、来なかったのか。
 前崎さんに電話があったのか、なかったのか。
 動機が治験の失敗にあるのか、借金にあるのか、果ては全く違う何かなのか。
 はっきりとしないことばかりだった。
 それを、駿兄ははっきりさせたと言う。
 それはつまり、玉虫色が本当が何色が特定の一色となったということ。
 僕にはまだ、それが何色なのかははっきりとは分からない。
 色を知っているのは、駿兄だけ。

 ……駿兄は、玉虫色だったこの出来事の中で、一体どんな色を見つけたのだろうか。

<後編に続く!>


【出題コーナー】

 どうも、谷風莞人です。
 今回から、出題はミニコント形式ではなく、語り形式になるそうなので、よろしくお願いします。
 さて、早速ですが出題です。

 Q:
 高橋さんの死の真相は?

 シンプルですが、これが出題となっています。
 これまでに提示された状況から解けるようになっているそうなので、頑張って解いてください。
 ……とはいっても、僕にはまだ何も分からないわけだけど。
 あ、勿論、推理した答えはメールや掲示板でドシドシお伝えください。
 作者が泣いて喜ぶそうです。
 それでは、また解決編となる後編で会いましょう。
 それでは!



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